酸いも甘いも

本日は家事手伝い半分、仕事半分。
仕事が捗るようステレオでCD。
仕事の合間にiTunes Storeで視聴をして購入の検討など。
随分長いこと、勘違いをしていたことに、今日気づいた。
歌手の BoAさん。
私は -o- の発音は、二重母音、アルファベットの名前と同じ音だとばかり思っていました。ごめんなさい。

布団を買い換えに街まで繰り出す。
商店街のとある建物で催し物をしていたのだが、妻が知人を発見して談笑する間、私と娘とで時間をつぶす。
私の腰の具合を考慮し、体圧を分散する敷き布団を購入。
娘はお店の方に可愛がられてご満悦。

さて、
センター試験の出題の講評などがネット上でも出回っている頃かと思う。
使われている英語の語法に関しては英語ネイティブも含めて多くの専門家の目を通して適切なもののみが使われていると信じたい。講評の多くは、作問に関してテスティングの観点での適不適などを評価するのではなくて、昨年までの傾向との比較に終始し、昨年までの平均点とどの程度差があるのか、を指摘するもの。そうです、世間の関心があるのはセンター試験の結果・平均点なのです。今回の各教科を合わせた全体の平均点が上がったのか下がったのか?他が下がって英語は上がったのか?などという、「易化」「難化」の方が意味を持つと考えられていて、現行の入試制度ではそれは無理からぬことなのでしょう。
ですから、その問題を解いた受験生の英語力がいったいどのようなプロファイルなのかは全く問われません。例えば、123点は123点という意味しか持ちませんから、第2問で得た30点と、第5問で得た30点と第6問で得た30点は同じ重さです。でも、英語力のプロファイルは全く異なるはず。そう考えると、志ある優秀な英語教師の作成する定期試験の出題とフィードバックの方が受験者に親切です。受験産業の行っている「模試」でもクロス集計をかけて、弁別力などが推測できる程度には分析できます。それと比較した場合に、センター試験は「入学試験の合否」を左右する high-stakes testであり、毎年50万人以上のほぼ同世代の日本の学習者の英語力を分析できる「基礎データ」が得られるのですから、もっと有効利用してもらいたいものです。
私の個人的な意見は、英語のセンター試験は、一日も早く、資格試験に道を譲るべきだというもの。
昨年の出題に関しては、基本動詞の語法と、第6問の読解問題の見識のなさを指摘したが、今年も気になる出題は多々あります。
よく、

  • 作問や出題に難癖付けたり、批判したりしても無意味。そんなことより、ちゃんと得点できるように生徒を鍛えるべし.

などということをしたり顔で言う輩がいるのですが、私が高校生ならそういう人に「ことば」を教わりたいとは思いません。
誰も何も言わない出題に関して、「本当に痒くないですか?」というコメントを投げかけておきます。Item writerをやった経験のある人なら反応してくれると思うのですが…。
第2問Aの問1と問6を比較して見て下さい。問1は対話文なので、新情報・旧情報はこの当事者同士の問題。これに対して問6は、陳述・叙実文。しかもト書きなどなし。とすると、この文での3つの定冠詞theとりわけ、最後のtheが気になってしょうがない。
問10の定冠詞theと所有格の itsが気になる。influenceの波及先となるべき隣国・他国や政治・経済・文化などの分野・領域が示されていないので、特に2つ目のitsが気になってしょうがない。
第2問Bの対話での人名。対話中で、その人物名が必要不可欠でないなら Aさん、Bさんで充分。
Bethanyさんとか Zhangさんとか、普通の高校3年生は発音できるのでしょうか?
第2問Cの問2。お金を借りたら返す時にいうべきことばは、まずThank you. でしょ?なぜ、"could"で可能性の示唆なのかしら?
問3の第一話者の第2文では、sureの後に続くべき内容が省略されているにもかかわらず、第2話者の発話でdecidedと動詞を繰り返しているのが気になる。ここは何か、強調して声に出しているということなのでしょうか?
第3問は、「ディスカッション」を文字でおこしたものとされているのだが、3人が言った個別の意見を司会がまとめているだけで、何も議論してはいない。昨年も言ったのだが、これを第6問にして、もっと議論を戦わせればいいのに。そうでなければ、これをリスニングの第4問に使えばいいのです。「コミュニケーション能力」とか「パラフレーズ能力」が問われる良問、等という人が時々いるようですが、出来の良い高校生はもっとうまいパラフレーズしますよ。うまいパラフレーズをそのまま選択肢にしたら直ぐに正解が分かってしまうので、不十分だけれども、敢えて消去法で選べる英語にとどめておくという「寸止め」にしているというのなら、それはそれで見上げた見識だと思います。
第4問A。我々がグラフを用いて英語でコミュニケーションを図ろうという時に、最も困難なのは、visual messageの理解ではなく、story messageの構築だと感じています。このタイプの問題をたくさん解いたとしても、クイズに正解する頭の回転は速くはなっても、英語力はそれほど高められないでしょう。このグラフや表の問題は、読解問題としてではなく、ライティングに転ずることの出来る潜在的な英語力を見る出題として初めて機能すると思います。
第4問Bは流行の「非連続型テキスト」の読解。しかも、教室・学校の「外」での実際の言語運用の場面を取り込むことを画策したもの。国際線の時刻表を読み解くという設定はどの程度「もっともらしい」ものでしょうか?こちらに Air CanadaのFlight Scheduleを用意してみました( http://www.actimetable.com/AC.pdf ) が実物はもっと複雑で読み取るのは一苦労ですよ。

第5問 これは今年初お目見え。証言の英文の文構造やつなぎ語を見る限りでは、「口頭での証言」を記述したものと思われるので、これもリスニングで課せば済む問題。もし読解で問うのであれば、証言者の一人は大人、もう一人は子どもとして、使われている語彙や構文、物語る構成の差、などを確認できるような出題にして欲しかった。語義類推とパラフレーズの能力を見る意味では、証言者Aの記述にある、”swerve” の語義を文脈から推測させ、与えられた定義から選ばせれば良かったのに。

第6問 これはargumentationですかね?昨年は、日本の大学生が書いた設定の文章で興味深かったのだが、今年はどこででも見かけるようなテーマの説明文で、800語以上ある英文を読ませておいて、しかも配点が減ってしまったのに、「読解力」を軽視した出題と言われないのが不思議。私が気になったのは、問4のステムにある動詞、argues。主語が「段落」だしね。
内容スキーマに依存できないように、良質のライターを確保して、書き下ろしで小説や物語を課すべし、というのが私のかねてよりの主張。

ということで、駆け足で気になるところを指摘してみました。日本の英語教育をリードする大学の先生たちも、こと大学入試問題になると議論の刃が鈍り、センター試験の出題そのものが「批評」されることがないので、いろいろ書いてみた次第です。高校生がその出来不出来で必死になるのに値するようなテストなのか?という問いかけだと思って下さい。
ちなみに、受験産業でも「後出しじゃんけん」程度には、批評的な述懐はしているのです。(ちょっと古いのと、信憑性が明らかではないのですが、→ http://passnavi.evidus.com/teachers/topics/0607/0701.pdf の3頁以降をご覧下さい。)
現行課程での試験作成者の声はいつ下々の耳に届くのだろうか?そしてその時には「センター試験」なるものはまだ存在しているのだろうか?

心の平静が保てそうな時に読まないと読み切れないと思い、書棚に置いてあった、

  • 寺島隆吉 『英語教育が亡びるとき』 (明石書店, 2009年)

をようやく読了。タイトルがインスパイアーされたと思しき『水村本』には、首肯できないことが多々あったが、この『寺島本』では、特に、中盤のある部分は、ことごとく頷くことばかりであった。英語教師という仕事の重さを痛切に感じる。

明日は、0限の高2から。
その後は自分のクラスの自己採点の世話。
高1、高2の授業もあるので、慌ただしい午前中になりそう。
平常心で、下っ腹に力を入れ、邪気を吸い込まないように。
まずは、新しい布団で快眠が得られますように。

本日のBGM: Peel me a grape (Blossom Dearie)