effectiveな技術、appropriateな指導

冬の雨。寒さが堪える朝。
某社企画は原稿が進んでいないので、催促のメールが…。この冬休みで頑張りますから。
もう一つの方は、シラバスが好評だったようで執筆のゴーサインが出た模様。おそらく、私の高校ライティング指導の集大成になるかと思われます。今度はGWTとは違って教師に向けた市販本になるので、なんとか完成させたいものです。
明日の英授研に備えて、ビデオのタイムシート作成とオーラルイントロダクションのスクリプト起こし。ここにあまり書いてしまうと明日の醍醐味が薄れるので、詳しくは明日午後、筑波大附属駒場中高の会場でお会いした時にでも。英授研のサイトでは「授業に関する協議は、従来とは少し違った角度で行うことも検討しています」と告知されています。私が司会を引き受けるにあたって、英授研の方にこのように伝えていたのですが、その背景には次のような思いがありました。

  • ビデオでの授業を1本の映画を見るように見るのではなく、ネタばれも含めて予め授業者の意図や展開・生徒の反応などを、参加者に知ってもらった上で授業を見てもらい、研究協議の方に時間を割きたい。その意味では、授業の後ろから backwardに見るという手法も考えられるだろう。
  • ともすれば、「明日の授業で使えるアイデアや小ネタ」などの「即効性の高い・効き目のある(=effectiveな)」指導技術が脚光を浴びるが、長い目で見たときに「無理のない・体質にあった(=appropriateな)」指導理念・環境整備についても考えを及ばせてもらいたい。

「時間がかかっても、英語教師としての体質改善を図りたい」、という方々の参加をお待ちしています。
先日のスタジオ収録をMP3に変換して送ってもらった。解説の際に、日本語で解説している中で英文を一つだけ取り上げて読むような場面の英語の音声を聴いていると、我ながらかなり「朗読」が下手だ。自分が書いている英語でもこうなのだから、他の人が書いた英語は苦労するだろうなぁ。反省の意味も込めて、今読んでいる本は、

  • 青木常雄著『英文朗讀法大意』(研究社、昭和8年)

文における強勢・イントネーション・卓立などを解説している128ページの薄い本です。朗読のうち、とりわけ、イントネーションに重点を置いているように思います。レコードでの指導用教材もない、オープンリールで実際のネイティブ話者の発話を記録することさえできない時代に、いかにして、音声指導のノウハウが継承されていたのか、読むページごとに感動があります。
第一章 Intonationの種類 では、

  • You broke this window yesterday.

を5通りのイントネーションで読むことを極めてコンパクトで明快に解説している。ネイティブ話者によるモデル音声を聴かせてまねさせればいいというものではないのだ、ということがよく分かる。以下、和訳のみ紹介。(実際の表記は旧字)

  • 昨日この窓を壊したのは君だ(他の者ではない)
  • 君は昨日この窓を壊したのだ(ただ触っただけぢゃない)
  • 君が昨日壊したのはこの窓だ(他の窓ぢゃない)
  • 君が昨日壊したのはこの窓だ(椅子でも机でもない)
  • 君がこの窓を壊したのは昨日だ

第七章 文の区切り方 では、
(七)挿入句はどう読むか
(八)省略ある文
など、中学校では(恐らく高校でも)手薄になりがちな項目にもページを割いている。(八)では、

  • A bird in the hand is worth two in the bush.
  • “Do you think he will come?” “I think not.”
  • “Do you understand?” “No, not quite.”
  • To err is human; to forgive divine.
  • I am afraid you will have to get another watch, or I another secretary.

などを簡潔明快に解説している。
最近のオーラル重視の英語指導で、「うまくまねできない生徒」「強勢や抑揚で意味の区別を理解できない生徒」の指導に困っている教師は、古い教材や指導法にも目を向けてみてはどうだろうか?オーラルイントロダクションでせっかく教師の英語で意味の理解から導入をしたのに、それとは無関係に教科書TM附属の音源であるネイティブ話者の朗読CDをそのままかけてしまうのはもったいない。教科書附属の音源で練習する前に、やはり、英文を自分で読んでみる作業が不可欠に思う。教材研究の基本を再認識させてくれる名著である。
本日のBGM: Follow Me (Jason Falkner)