巡礼

ライティング部会の研究大会反省会。この部会は外語大がまだ、西ヶ原にあった時代(部長Richard Smith氏)にスタートした。6時から8時過ぎまでRichardの研究室で部会を行い、その後、巣鴨駅前の「千成」で懇親会を繰り広げていたのだった。当時、NEW(西ヶ原英語教育ワークショップ;Richardと私が「村さ来」で英語教育を語り一晩飲み明かしたことから発足した会なので、初めは「紫の会」と呼んでいた。)も開催されていたため、本当に足繁くRichardの研究室へ通っていたのだなぁ。「千成」は我々にとって原点のような場所である、というわけで、数年ぶりに「千成」へと集結したのであった。「牛筋煮込み」、「とんぼ」などの定番メニューに歓喜の声を上げながら、懇親。楽しかった。
N先生がSELHiである新潟県立村上中等教育学校の中間発表に参加したので、その資料をお借りした。またひとつ、日本の高校ライティング指導におけるエポックな指導評価の試みがなされていることを知る。しかも、村上は中等教育学校、6カ年の実践となるので、今後も注目必至である。
英国のナショナルカリキュラムの8段階+1のattainment targetを参考に、生徒の書いた英文をもとに、レベル表の記述を試みながら現在の形になっているとのこと。この「生徒の英文をもとに」というところが大切。なぜこれが大切なのかというと、学校教育での教科指導を考えた場合に、中学校3年生と、高校3年生では、同じproductが出て来たとしても、同じ評価はつけないから。評価論を考えるときに、ここはとても大事なことで、欧米の評価の枠組みをそのまま教室のシラバスに「輸入」するだけではうまくいかない。資料を読んだ限りで即断は難しいが、中1から高3への発達段階を考えるときに、英文の分量(使用語数)を単純に増やす方向だけで考えず、量は多いが評価の低いサンプル、量は少ないが評価の高いサンプルを準備しておくことが望まれるのではないかと思う。このあたりは、福岡の香住丘の実践が参考になるだろう。また、トピック・テーマが各学年で被らないように設定しているそうだが、同じ「話題」を異なるテキストタイプで書かせる試みや、同じタスクを同じ生徒に異なる学年で実施し、発達段階を精査することもSELHiの中等教育学校ならではの「研究」になるのではないだろうか。
いやぁー、ライティングって本当に素晴らしいですね。
高3ライティングの総括表を整理しているのだが、面白いものをいくつか紹介。
項目は、
「もう一度初めからこの講座を受け直すとしたらどうするか、または、来年度この科目を履修するであろう、可愛い後輩たちへの親身のアドバイスを!」
というもの。

  • 指示を良く聞いてその通りにやること。それが一番大切だと思います。あと、先生がポロッとこぼした言葉も大切だったりするので、それを拾えるくらいの余裕を持てると良いかと。書き上がらなくても、めげずに努力することが大事です。フィードバックは自分のためになるので、しっかり目を通し、できれば指示に従って書き直すと良いと思います。『表現ノート』は自分の好きなテーマを扱えるので、比較的やりやすい課題です。記事選びに少し時間をかけて、相応しいものを選ぶと良いノートになると思います。これについても先生の指示があるので聞き漏らさない方が良いです。英語が苦手に人には辛い授業になってしまうかもしれません(私には辛かったです…)乗り切ると達成感が待っています(笑)がんばって下さい。

この生徒が最後に「自分で最も伸びた・進歩した・力がついたと思う点を簡潔に述べよ」という項目に書いたのがこちら。

  • 大嫌いな英語が、少しだけ興味の持てる科目になったことが最大の収穫です。進歩です!!

続いて他の生徒のものを徒然に。

  • とりあえず精一杯、一生懸命にやる!お互いが頑張ることで、自分の作品がどんどんよくなるから。先生の授業は、みんなの団結力と気合いが必要不可欠です。あと、先生が話すことは一言も聞き漏らさないほうが自分のためになります。面白い話もいっぱい聞けます。面白かったら、素直に笑いましょう。絶対、授業は休まないこと!!一回休むと、次が本当に辛いです。遅刻もダメ!!他人にも自分にも先生にも迷惑です。
  • 単語わからないとにっちもさっちも行かない。授業は真っ向勝負するのみ!!寝るなんてあり得ない。課題への取り組みは、もち真剣に!できなくてもクヨクヨしない!!先生が作ってくれたコロケーションのプリントを120%活用すべし!
  • 例えばディベートの際には下準備が必要なように、この授業でもtopicに関する事柄を調べることは必須。時事ネタの英語は電子辞書では分からないので、その時こそ予習プリントが役に立つ。授業中の活動は、出来る人間の話には耳を傾けるべき。効率の悪い内職よりはるかに高い価値を持つ。
  • 予習復習より何より、授業中真剣に100%集中すること!英語で頭の中いっぱいにする。先生が添削して下さった課題は必ず見直して、次の課題に生かすこと。力がつきます。他の人の良い作品を良く読んで学ぶことも大事です。とにかく辞書の例文を活用して、コロケーションを常に意識すること。表現ノートはたくさんやればやるほど力がつくし、語彙が増えるのでもっとやりたかった。まず、授業を休まないことが大事です。一回休んだだけでもけっこういたいです。あとは授業中集中して大事なことはメモをとること。とにかくクラスが団結してみんな真剣にやれば、授業も楽しくなるしみちがえるほど自信がつくのでがんばって下さい。団結重要です。
  • 毎回毎回レベルが上がっていくので一回一回を全力でこなすべきです。下書きで失敗しても見直し、書き直しでやり直せるのでどんどん書いた方が良いです。表現ノートは慣れないとどうまとめていいか分からないかもしれませんが、いくつかやっていくと英文を読むのが面白くなると思います。辞書は例文検索を使ってどんどん利用しましょう。英英辞典には例文がたくさんのっています。先生のおっしゃったことはメモを取っておくとテスト前の復習や例文を覚えるときに楽になります。なので、話はしっかり聞いた方がいいです(あたりまえですが)。
  • 超猛習。先生は赤い服より青い服の時の方が機嫌がいい傾向あり。
  • 下調べとかをよくやっておくと文章を書くときに助けになると思います。英語が苦手でもここ頑張れば全然違う。先生や周りから自分のためになることを吸収するつもりで!! 常にアンテナを張ってること!! 同じ授業は二度と帰ってこない。電子辞書等は常に持ってくる。大切な語は単語帳にinput、これ常識☆プリント類はファイリングしておくと便利◎提出期限は絶対に守ること!! 与えられた時間内で自分がどれだけ完成度の高いものを書くかに意味がある。見直しや書き直しは念入りにやること。表現ノートはコツを掴むまで大変だけど、コツを掴めば楽しくなると思います。これをつくることで、辞書を上手く使えるようになるし、英文の読み方が変わってくる。ポイントとなる語いもpick up出来るようになる。授業の雰囲気が大切!!良い環境の中でこの授業を受ければ、凄い力が身に付くはず。お互いに切磋琢磨して頑張って☆☆
  • まじめにやりましょう!まじめにやれば光は見えてきます。絶対自分の力になるので頑張って下さい!! 努力は人を裏切りません。
  • 英語力に自信がなくても嫌になるというより頑張ろうと思える授業なので心配せずに☆
  • フィードバックのプリントに自分の英文が毎回のように載せられて、たたかれていたら、それは自分の文を良くするchanceだ☆☆って、ポジティブにとらえて下さい。笑。
  • 字はキレイに!! 汚いと怒られる。
  • 取り組みの姿勢に少しでもムラがあると怒られるので、気を緩ませない方がいい。最近怒ってないから大丈夫だな、と思ったときは気をつけるべきです。
  • 去年の先輩のアドバイスを見たとき、「実際、ウソくさい」と思ったけれど、本当にそんなことないから、偏見とか、先入観とか捨てて、騙されたと思って真面目にやってみる。それでダメだと思うならしょうがないけど、おそらくそんなことはない。

愛憎メッセージからも一例。

  • 1年間お世話になりました。テストの点数は最後まで思うように上がりませんでしたが、2年生の時と比べたら大分変わったと思います。塾に行っていない分、周りとの差があらわれ、焦りを感じた時期もありましたが、先生の言うように、一つ一つの課題に丁寧に取り組むことによって自分は変われた、と思います。

この<記名の上での自由記述による自己評価+授業の評価+後輩へのアドバイス+裏面での教員への愛憎メッセージ>は私への通知票であり、卒業記念文集のようなものなのですね。
こちらこそ1年間、ありがとうございました。
本日のBGM: Growin’ up (Bruce Springsteen)