リスニング試験は英語の試験

センター試験初日。ともあれ、大地震などの天災がなかったのはよかった。明け方にはもうかなりの積雪だった関東地方は幾つかの地域で試験時間を繰り下げて実施していたようだ。
リスニングテスト元年の今年、終わってみれば案の定「トラブル続出」などの見出しがメディアを賑わすこととなった。相変わらず、リスクマネジメントという発想の希薄な我が国。49万2586人の受験者に対して、425人の再試験者ということは、初期不良の割合が約0.086%ということである。これなら家電の出来としてはまだいい方なのではないのか?ソニーのPS2などは0.1%どころか、数%にも上る初期不良であったと聞く。
ちなみに受験生一人一人が使うメモリー型ICプレイヤーの単価が約2000円。おおよそ1億円が使い捨てである。
TVのニュースでは「使い方が全然分からなかった」という女子高生を映していたが、使用機器の説明に30分も取っているのだから、「使い方がわからない」というのは説明を聞いていないということだろう。現代の多くの高校生に当てはまる行動様式であり自業自得というしかない。問題は、初期不良は必ずあるのだ、という想定で手際よく対応するのが、試験を実施する側だけになることである。全国高校進路指導協議会事務局長の都立高校教諭にコメントを求めること自体がおかしな話だが、「問題は、トラブルに巻き込まれた受験生が、2日目の試験に心理的に不安を持たないようフォロー、ケアができたのかどうかだ。マニュアル通り対応してくれたかどうかを知りたい」というコメントなど愚の骨頂である。こういうのは「心のケア」ではなくて過保護というのだ。むしろ、高校生に対して「何があっても慌てるな」という教育ができていないことを協議会として反省すべきだろう。
大手予備校が試験実施後すぐにリスニング問題のスクリプトや音源を入手できるのは相変わらず持ちつ持たれつの構図であり、SKYなどのサイトでは内容に関して「概要」を示すだけで、一つとして出題そのものの「批評・評価」をしていないことと基本的には同一の路線にある。たとえば、リスニング問題が実施されたにもかかわらず、筆記試験の第一問で音声に関わる出題が消えなかったことなどは大いに問題にすべきである。どの設問で総語数が何語増えた、減ったなどといったことが「長文化」とか「速読・速解力」の指標となると思っているらしい。毎年、センター試験直後は、解答のミス(発表された正答以外にも正答と考えられるなど)や、資料の不備などは指摘されるのだが、少し時間をおいてから全体としての「学力評価」としての適否・是非のコメントを一般人が目にすることがない、というのはシステム・制度的な欠陥であろうと思う。理科などの教科に関しては、学会がそれぞれ分析評価をしているのを知っているが、それをメディアが取り上げることはほとんどない。大学入試センターが出しているお手盛り電話帳冊子は論外である。
全英連会長でも、JACET会長でも、全国英語教育学会会長でもいいので、英語の試験なんだから、肝心の英語の話を誰か「世間」に向かって語って下さいよ。