Principles of effective peer response

今日は、ライティングの発表があるというので、ホームグラウンドを離れ、英授研の月例会。筑駒へ。
実践発表は、大学に於けるライティング指導。Teacher Feedback(=教師→生徒フィードバック)、Peer Feedback(=生徒間(同輩者間)フィードバック)のアンケート分析が主であった。
発表を聴く限りではライティングをメインとしたコースでのリサーチではなかったようである。大学1年生の必修リーディングの授業の中にライティング活動を取り入れ、なおかつ、そのライティングをプロセスアプローチで、peer feedbackとteacher feedbackを採用しているのだが、ライティング力への効果を検証するわけでもなく、リーディング力への貢献をみるわけでもなく、少し欲張りすぎというか、急ぎすぎという印象を受けた。
「リーディングマテリアルからライティング活動を組み立て、draftにpeer feedbackを与え/受け、reviseまでするプロセスアプローチを取ることによって、critical readingなどの視点が育成され、reading comprehensionの能力が向上する」というようなリサーチデザインであったら、面白かったかもしれない。
ライティングにおけるフィードバックの功罪はこれまでにも内外で研究は行われているが、今回の発表で気になったことをいくつか挙げておきたい。
まずアンケートの項目でいうと、「フィードバックの評価」では、

  • 教師からのフィードバックをより高く評価する
  • 同輩間フィードバックをより高く評価する
  • どちらも評価しない

という選択肢もあり得るのだが、その可能性は全く考慮していないことと、クロス集計など、学習者のprofileが見える工夫が足りなかったのが少し残念であった。アンケートは、項目設定を突き詰めて考えることが命といってよいだろう。
また、ハンドアウトに挙げられていた先行研究への言及は甘かったといわざるを得ない。
Ferris は1997年のTESOL Quarterlyでの論文が挙げられていたが、Ferrisに言及するのであれば、
Ferris & Hedgcock (1998) Teaching ESL Composition, purpose, process, and practice, Lawrence Erlbaum Associates, Publishers はマストであろう。この第6章で指摘されている、効果的なpeer responseの原則が考慮されている(または考慮した上で無視/却下している)ようには思えなかった。
8項目のうち、とりわけ、Modeling the processとStructuring the peer response taskに関しては再考の余地があるだろう。editing exerciseや、commentのtemplate化など、段階的な導入がなければ、feedbackを与える視点もスキルも伸びていかず、当然、processingが上手くいかないことになる。習熟度が高くないからこそ、individualではなく peer involvementが望まれているわけだから、この部分のscaffoldingをもう少し考慮しておかないと、「一定の英語力がないと、peer feedbackが機能しない」という評価に落ち着いてしまう懸念がある。また、「学生の習熟度・運用力に差がある」からこそ、Vygotsky的なアプローチが生きるのであって、グループ内の習熟度を均質にしてしまえば、上位層だけのクラスでしかpeer feedbackが機能しないことになってしまう。
やはり、12週間しかないリーディングのコースで、peer responseを大々的に取り入れるライティング指導をする、ということに無理があったのではないだろうか。
リーディング指導とのリンクを考えるのであれば、もっと明示的に段落の形式スキーマを取り出して指導し、 学生に書かせる文章は全てを自由にするのではなく、formatted writingに設定して、結論部分とか、ボディ部のリーズニングだけを自由に書かせるなど、ある程度のコントロールをするべきではなかったかと思う。
さらには、少なくとも、feedback processingについては Cohen(1987;1990)あたりを押さえておくべきだし、国内の例であれば、JACET関西支部の4カ年レポートあたりには目を通しておくべきだと思った。
今後は、独立したライティングのコースで考えられたリサーチを見てみたい。
この手の実践発表では、司会の切り盛りも大事だが、フロアの良識も大事。「みなさんはこの問題を克服するためにどうしているかお聞かせ下さい」と言われていないのに、自分の実践例をとうとうと述べるのは反則。そんなことより、まず、ハンドアウトやプレゼンだけでは不明だった指導手順などの事実確認をもっときちんとやらないと、実践発表の評価そのものが出来ないでしょう。しつこいくらい確認するくらいでちょうどいいのです。