the way = how

冬季のオンラインセミナーも終了!
年末年始にわざわざ受講してくれた皆さんに御礼申し上げます。
お疲れさまでした。

新たなフィードバックも寄せられております。

1月4日の新春セミナーを受講された方から。

自分は特に英語教育に関わったこともなく、しかも普段はまとまった量の英文を読み書きする機会も稀な一般会社員です。英語学習についても、数年前にTOEICを受検したきり、特に情報収集などしていなかったのですが、ツイッターでたまたま今回のセミナーのお知らせを目にして申し込んだ次第。生成AI関連も日進月歩の昨今、何か勉強するためのヒントが得られれば…
というくらいの気持ちでした。数年前まで大学の研究室で日本語のコーパスの作成などもやっていたのですが、英語のコーパスについては(特に最近のものは)ほぼ知識ゼロの状態でしたので、今回ご紹介いただいたCOCA系コーパス、NOWコーパスなど、検索の実演も見せていただいてとても参考になりました。また、アプリで利用可能な各種辞書も、また「紙」の辞書も本当に多種多様なものがあるのだなとわかり、感心しました。他にも色々と興味深いトピックやニュースソース等ご紹介いただき、ありがたかったです。

次は、1月11日の「和文英訳と英文ライティングの両立」講座を受講された方から。
長文ですが匿名で全文を。

200枚超のスライドに圧倒されながらも、あっという間の3時間をありがとうございました。今の自分には当日の内容のすべてを消化できている自信はありませんが、英語の学習者としても指導者としても、これから長く実践を重ねながら自分なりに理解を深めていこうと思います。以下、いくつか具体的な点について、自分なりに振り返ってみました。
• まずは表現の段階での深掘りです。各種オンラインコーパスやツールの活用に加えて、言語使用経験に裏打ちされた語(義の)感(覚)や文法解説の提示が鮮やかでした。中でも特に「文頭の副詞節は先行文脈との糊しろ」や「固有名詞に前置する無冠詞名詞句」は目から鱗でした。文法書レベルの指導事項を超え、ライティングに資する文法指導というものが確かに存在することを実感しました。私にとって「永遠にたどり着けなさそうだけど、常に目指すべきゴール」を見せていただいたような気がします。
• 次に、語句整序は極力避ける一方、副詞節マッチングや文の整序は活用する、という違いについてです。断片から全体を完成させるという点では同じなのに、とも一瞬思いましたが、形式と意味の対応関係を保持できる単位で操作させるのが要なのかな?と自分なりには考えています。そう考えれば、「チャンクで積み上げ」がその前段階として位置付けられているのも納得です。先生のお考えはいかがでしょうか?
• 和文英訳からテキストタイプ別ライティングへのシラバス構成も、複数学年を長い目で見ればずいぶん多くのことができることを改めて実感しました。セミナー受講後に考えてみれば、「訳しただけでは英語にならない日本語をそのまま訳しても何にもならない」ということは自明に感じられるわけですが、しかしそんな「トホホ」な状況がまだまだ自分の中にも残っているのが現状です。一方、初中級段階のライティング指導では「論証文を封印」しておくことを最近少しずつ意識し始め、おかげさまで指導者も学習者も少し楽に、その時集中すべきことに集中して取り組めているかな?という実感が生まれてきました。
• 同じセンテンスを複数の異なる文脈に置いて複数回理解する手法は、実際に学習者の視点で取り組むことができました(ElevenLabsの読み上げ音声が変わるのも私にはよい刺激でした)。異なる文脈で自然に何度も反復するうちに、全体としてのつながりやまとまりと同時に、ターゲットのセンテンスがいつの間にか染み込んできてしまうという、なんとも不思議な感覚を味わえました。
• 例文提示の中で、先生が「四角化で視覚化」を(それと宣言なさらずに)サラッと繰り出されていましたが、以前よりブログで拝読していた「視覚化」を初めて「生」で見せていただくことができ、大満足でした。先生のスピード感というか、眼の働かせ方というか、とにかく身体化された感覚に少し触れられた気がします。今後、生成AIの出力も含めて読んで処理すべき英文の量が増える一方だという状況を考えると、「四角化」の持つ威力は大きいと思います。
• 総じて、大学受験の英語ライティング問題演習まで含め、単に書かせるだけでは不十分で、「書かせる前に何ができるのか?」「ライティングの過程やフィードバックで、学習者の英語の知識や思考の枠組みにどのような影響を与えるか?」という視座で、綿密な指導を展開されている一端を伺うことができました。「説明」や「解説」の中にも随所に学習者が考える余地が残されており、「教室の息づかい」とでも呼ぶべきものが伝わってきました。また、フィードバックの手法も実際のところを伝えてくださり、諸条件を活かしながらどのように実践されているのかもよく理解できました。

今後とも、先生のTwitterやブログ、セミナーで学ばせていただきます。
何卒よろしくお願いいたします。

暖かいフィードバックをありがとうございます。

12日に2回目となった「その英語、気になりませんか?」のセミナーはまだ受講者からの声は届いていませんが、年明けのブログ記事も取り上げたので、年末の回よりもさらに充実したものになったと思います。年末の回の受講者にも、今回の新たなスライドから事後共有ファイルを提供していますので、ご確認ください。

特に、includingに句や節が続く事例を、ブログ公開日よりもさらに深く考えられたのは良かったと思います。いろいろと加筆修正していますので、既にお読みの方も是非再読を。

たとえば
tmrowing.hatenablog.com

今日の「気になる語法」は

  • because of how SV

です。

既に、because of the way SVについては、twitterでも発信していたと思います。

私は高校1年生の授業では、前置詞の項目を扱う際に教えています。

それを経ての、このツイートです。

第一文because of how SVを確認。the way SVがbecause of に続くのは今では一般的。一方、こちらのhowは近年急増しているが辞書では未対応。parchは他動詞で「乾き切らせる;からからに乾かす;焦がす」。 第二文の付帯状況のwith+名詞+過去分詞は存在文と同様の処理。後置修飾の読みにしないこと。

元ツイ

Climate scientist Daniel Swain describes Santa Ana winds as “atmospheric blow dryers” because of how they parch landscapes. With additional winds expected this weekend, Southern California will face continued wildfire risks, Swain said.


気候科学者ダニエル・スウェイン氏は、サンタアナの風が大地を乾燥させる様子から、これを「大気のドライヤー」と表現している。 今週末にはさらなる風が吹くことが予想されており、南カリフォルニアは引き続き山火事の危険に直面するだろうとスウェイン氏は述べた。

例によって反響はもちろん反応も殆どないツイートでしたが、Ngram Viewerから推測できる実態はこんな感じ。 勿論、その続きを一次ソースで精査する必要はありますけどね
because of how は赤のラインです。




続いてCOCA系でざっくり。
COCAをベンチマークにNOWで最近の動きを。

COCAでthe way

COCAでhow

NOWでhow

NOWでthe way

数値自体は2016年以降

  • because of how > because of the way

ですよね?


類例。

Richardson’s suspension may not last nearly that long. In fact, Rogers said he would be shocked if Richardson doesn’t resign by the end of this week because of how the FBI’s case was built.
tucson.com
リチャードソンの停職はそれほど長く続かないかもしれません。実際、ロジャースは、FBIの事件の構築方法から、リチャードソンが今週末までに辞任しないなら驚くと述べました。

not because …, but because … のパターンを見聞きします。

She usually spent all of her disability check within days of the first -- even that which wasn't reserved for bills -- not because of how much she received, but because of how little. What was the point in saving when, even if she could scrape together every free dollar, it would never be enough to change her life?
www.chicagotribune.com
彼女は通常、最初の数日以内に障害手当の全額を使い果たしてしまった - 請求書のために予約されていない分も含めて - それは彼女が受け取る金額の多さではなく、少なさのためだった。たとえ彼女が自由に使えるお金をすべてかき集めたとしても、それが彼女の人生を変えるには決して十分ではないのだから、貯金する意味は何だったのだろうか?

not/butのコントラストにはなっているけれど、どちらかがbecause of how にはなっていない例も多いようです。

How many times did the audience perceive Daenerys’ judgments to be just, wise, necessary, or even thrilling — not because of the face value of her decision-making, but because of how the characters surrounding her reacted?
www.theverge.com
観客は何度、デナーリスの判断を公正、賢明、必要、あるいはスリリングだと感じたでしょうか — それは彼女の意思決定の表面的な価値ではなく、彼女を取り巻くキャラクターたちの反応によるものですか?

I know you're not doing this in any partisan way at all. These stories inevitably become partisan, not because of you. Not because of how the media necessarily covers it, but because partisans seize upon it.
https://www.realclearpolitics.com/video/2017/11/17/franken_accuser_tweeden_tears_up_on_cnn_ive_been_angry_about_it_for_10_years.html
あなたがこれを党派的な方法で行っているわけではないことはわかっていますが、これらの話は必然的に党派的になります。それはあなたのせいではありません。必ずしもメディアの報道の仕方のせいでもありませんが、党派がそれに飛びつくからです。

大学入試の読解素材文にも出ていますよ。
20年ほど前の入試問題の素材文から。

The brain of any animal has been described as its on-board computer. It does not work in the same way as an electronic computer. It is made from very different components. These are individually much slower, but they work in huge parallel networks so that, by some means still only partly understood, their numbers compensate for their slower speed, and brains can, in certain respects, outperform digital computers. In any case, the differences of detailed working do not disempower the metaphor. The brain is the body’s on-board computer, not because of how it works but because of what it does in the life of the animal. The resemblance of role extends to many parts of the animal’s economy but, even, the brain simulates the world with the equivalent of virtual reality software.

以下、Kagi訳。

動物の脳は、そのオンボードコンピュータとして説明されています。それは電子コンピュータと同じようには機能しません。非常に異なるコンポーネントで構成されています。これらは個々にははるかに遅いですが、巨大な並列ネットワークで動作するため、まだ部分的にしか理解されていない何らかの手段によって、その数が遅い速度を補います。そのため、脳は特定の点でデジタルコンピュータを上回ることができます。いずれにせよ、詳細な動作の違いは比喩を無効にするものではありません。脳は、どのように機能するかではなく、動物の生活において何をするかによって、体のオンボードコンピュータです。役割の類似性は動物の経済の多くの部分に広がりますが、脳は仮想現実ソフトウェアの同等物で世界をシミュレートします。

比較的新しい入試素材文からも引いておきましょうか。

単純な理由付けではなく、in part because of how SVの例。partly because SVで表し切れない何を意味しているか確認。

But those who grew up in Western households may not think too highly of seaweed as a food. Jonathan Kauffman, author of Hippie Food, says that may be in part because of how Westerners were introduced to it ― as a health food eaten by “hippies1” in the 1960s.
しかし、西洋の家庭で育った人々は、海藻を食べ物としてあまり高く評価しないかもしれません。「ヒッピー・フード」の著者であるジョナサン・カウフマンは、それは、西洋人がそれをどのように紹介されたか ー1960年代に「ヒッピー」によって食べられた健康食品としてー が一因かもしれないと言います。

次の英文では、第一文では、because SVとのコントラストで、not because of how SVが使われていますが、最終文では単独でbecause of how SVが使われています。

An athlete is an athlete because he consistently bats around .300 or because she can drive a golf ball over two hundred yards, not because of how he or she performs under pressure; mentality is undermined constantly by physical skill and physical appearance. We need to deeply critique and offer alternatives to the biases surrounding mentality in sports and shed light on many overlooked concepts that are rarely investigated because of how common sense they seemingly are.
アスリートは、常に打率が.300前後であるか、200ヤード以上のゴルフボールを打つことができるからアスリートであり、プレッシャーの下でのパフォーマンスによるものではありません。メンタリティは常に身体的なスキルや外見によって損なわれています。私たちは、スポーツにおけるメンタリティに関する偏見を深く批判し、常識的に思えるためにほとんど調査されない多くの見落とされた概念に光を当てる代替案を提供する必要があります。

次の例では、how SV, why SVからの流れでの because of how SVを捉えることが大事ですね。

Likewise, their body language is also telling you all about themselves in just the same way. Our feeling about a new acquaintance is primarily influenced by how we feel about the way the other person is expressing himself through his body. We do not necessarily know why we have reacted to them with like, dislike or trust, but it is because of how we are culturally and instinctively conditioned to guess the communicative signals that they are sending us.
同様に、彼らのボディランゲージもまた、同じように彼ら自身についてすべてを語っています。新しい知り合いに対する私たちの感情は、主に相手が自分の体を通してどのように表現しているかによって影響を受けます。私たちは、彼らに対して好意、嫌悪、または信頼を抱く理由を必ずしも知っているわけではありませんが、それは私たちが文化的にそして本能的に彼らが送っているコミュニケーションの信号を推測するように条件付けられているからです。

次の例では、just because of how SVとなっています。

Last week, Wal-Mart, America’s largest grocer, became the first retailer to sell apples with minor flaws, under the brand “I’m Perfect”, as part of their larger trial effort of selling ugly fruits and vegetables. However, such imperfect produce often ends up being thrown away, just because of how it looks.
先週、アメリカ最大の食料品店であるウォルマートが、「私は完璧です」というブランドの下で、軽微な欠陥のあるリンゴを販売する最初の小売業者となりました。これは、見た目が悪い果物や野菜を販売する大規模な試みの一環です。しかし、このような不完全な農産物は、見た目のためだけにしばしば廃棄されてしまいます。

次は、the reason is because of how のパターン。

The other reason these companies multiply in Japan is because of how the country’s family-run businesses have been passed down through generations. Japanese business owners typically left entire companies to their eldest sons.
これらの企業が日本で増えているもう一つの理由は、家族経営の企業が世代を超えて受け継がれてきた方法にあります。日本の経営者は通常、会社全体を長男に譲っていました。

次の例では、先にbecause of how SVが来て、その後に not because SVが続くもの。

But now, according to Dr. Margaret Livingstone, a Harvard neuroscientist, there is another, more concrete explanation. Mona Lisa’s smile comes and goes, she says, because of how the human visual system is designed, not because the expression is ambiguous.
しかし、ハーバード大学の神経科学者マーガレット・リビングストン博士によれば、別の、より具体的な説明があるという。モナリザの微笑みは、彼女が言うには、人間の視覚システムの設計によるものであり、表情が曖昧だからではない。

さあ、いかがですか?
テストで問われると知ると、この語法が気になる人は増えるのでしょうか?
そして、まだこんな言語事実も待っているのです。

becasue of what

こちらに関しては、また日を改めて。

本日はこの辺で。

本日のBGM: 私に彼氏ができない理由 (あいみょん)

open.spotify.com

"Success is not about chance, but about choices," Joe said.

引用符つきのタイトルで始まりましたが、私のする「話法」の宿題も目鼻が立ってきました。
良い感じです。

1月4日の新春セミナー:オンラインコーパス、辞書&SNSの英語ニュースの活用
の受講者からの声も届いています。
匿名でのご紹介。

先日はセミナーでの貴重なお話、ありがとうございました。
今まで何回か松井先生のセミナーを受けさせていただきましたが、それらを総集し、さらに深めた内容になっており、これまでの復習にもなり非常に充実した3時間でした。
コーパスはこれまで検索の仕方がわかなかったのですが、実演していただき、入力法も学べ、今後の教材研究に活用させていただきます。
実際に使ってみると、やはり一日20回というのは少ないですね。有料版に登録するか悩ましいところです。NOW corpusなどは、無料版だと制約が結構あるようです。
辞書は、物書堂を使っていますが、まだまだ使いこなせていないなと実感いたしました。使いこなすためには、もっと自身の語に対するアンテナを張らなくてはいけないとも感じました。
生徒にも、辞書を読むことの大切さを伝えているつもりですが、また新鮮なアプローチを学べたので、さらに辞書を読むことの大切さを伝えていきたいと思います。
今後もセミナー楽しみにしています。
ありがとうございました。

次の方は、年末28日の「その英語、気になりませんか?」のセミナーと新春セミナーの両方を受講してくれました。

12/28の語法セミナーについて
今回のセミナーを受講して一番思ったことは英語という「ことば」への意識です。英語を教え、学習するものとしてセミナーで取り上げられた英語の実態について気になるか、ならないかが大きな分かれ目になってしまうことを実感しました。英語教育・言語教育にとって大切なのは、基本的・「規範的」な語義、用法を先ずは身につけること(これ自体もセミナーで何を基本とし、何を一番に習得しなければならないのかということへの警鐘もありました)ですが、ことばの性質上、時代変化や文化の変化とともに変わっていくものですので、そのような変化に気づくためのことばの感覚を身につけることが大切です。松井先生はその感覚を常にアップデートし続けていて、さらにそれを生徒へ教えるということを継続されているのだということに感銘を受けました。それと同時に自分の態度を改めなければと思いました。学生への指導に活かせることも多かったですので、それをきちんと伝えなければとも思いました。「より良い英語で、より良い教材」ということを強く実感しましたし、それが教える方の責任であるかと思います。

1/4の新春セミナーについて
新春セミナーはこれまでに開催されたものを含めている内容なので、もしかしたら松井先生のセミナーの入門としての性格を持つものかも知れないと思いながら受講していました。3部構成でしたが、オンラインコーパス、辞書活用、SNSのニュース英語、それぞれについての実演もあり大変参考になりました。この中で興味を持ったものについて、個別のセミナーを受講することをお勧めしたいと思います。というのも、それぞれの内容が3時間のセミナーとして十分成り立つものですので、今回のように凝縮した形では物足りなさを感じてしまったのが正直なところです(それでも得ることが多かったのは松井先生の説明がわかりやすいという一言に尽きます)。英語を学習する上で便利で有用なツールは私たちの手元にあるのに、それを十分に活かしていないことを実感させられましたが、すぐにでも実践できるということを教えてもらったのは大変ありがたかったです。

両日とも参加できて大変良かったです。また別のセミナーに参加する機会があれば参加したいと思います。ありがとうございます。

暖かいフィードバックに感謝します。
今後ともよろしくお願いします。

物書堂のアプリ辞書の活用法にしても、COCAなど著名なオンラインコーパスの活用法にしても、本来届くべき人に、その情報やスキル、価値や意義が伝わっていないのは本当にもったいないと思います。

オンラインコーパスを使う方の多くが

  • COCA

を使っている印象を受けますが、私は基本的に「COCA系」と言っています。
セミナーでも示しているように、

COCA系(個人の資格でプレミアアカウント登録) ※現在は24時間で201クエリーまで

  • NOWコーパス (2010年から昨日までのデータ) ※2025年1月1日には780万語強を処理
  • →GloWbE (2012/13年) ※現代性と地域差・文化差
  • COCA レジスター;使用域の確認 ※均衡コーパスなので、これをベンチマークとして確認
  • →(COHAで経年変化を推測 ※均衡)→ TVコーパス ※話し言葉の確認

というような使い方で、最も使用頻度が高いのはNOWコーパスとGlowbeなんですね。
私が実際に見聞きした、自分で書いた英語表現と、複数のサブコーパスの検索結果を照らし合わせることで、実態を推測していますが、このアプローチでCOCA単体のみの検索では見えないところまで光が届くと思っています。
特に、指導者がその情報やスキルを身につけていることで、より多くの学習者に還元が出来るので、また年度末辺りに、セミナーを開くべく準備します。

そうは言っても、実例ありきですので、今日の「気になる語法」を。

先日、「しけんや英語塾」を主宰する四軒家忍先生のnoteの記事で、「固有名詞に定冠詞のtheがつく場合」を取り上げていました。

固有名詞に the がつく事例
note.com

非常に有益な情報になっていると思いますので、是非お読み下さい。

固有名詞の扱いでは、私のこのブログでも

2024-08-21
How proper is it?
tmrowing.hatenablog.com

  • <不定冠詞+形容詞+固有名詞>

というチャンクを取り上げていました。
今日取り上げるのはそれとはちょっと違う気になり方での対照。

  • 不定冠詞+一族の名

です。
辞書にも出ている用法で、文用例も収録されていたりします。

He is a Smith. 彼はスミス家の人です. (ランダムハウス英和)
His mother was a Smith. 彼の母親はスミス家の人であった (O-LEX英和)

その程度の知識は私にもあります、私の「違和感」は、その「某家」の括り方にあったと言えばいいでしょうか。
年明け早々トルドー退陣で揺れるカナダですが、年末にNational Postでこんな記事が出ていたのです。

Explaining Canada to Americans: What's in the video Trudeau posted amid Trump's trolling
nationalpost.com

その動画に関する記事本文の一節が気になっていました。

“In the long history of sovereign neighbours, there never has been a relationship as close, productive and peaceful as the U.S. and Canada,” Brokaw says.

The video returns to glorious flyovers of snowy mountain ranges for a rousing line in the words of John F. Kennedy: “Geography has made us neighbours, history has made us friends, economics has made us partners, and necessity has made us allies. Those whom nature has so joined together, let no man put asunder.”

This is the emotional climax of the video, the schmaltzy comparison of U.S.-Canada relations to a marriage, by a Kennedy no less.

どこが気になったかお分かりですか?
「不定冠詞+一族の名」という前振りがありましたから簡単でしたね。
私が引いた最後の文、

  • This is the emotional climax of the video, the schmaltzy comparison of U.S.-Canada relations to a marriage, by a Kennedy no less.

です。

“ … no less” も「他でもないあの…;なんとまあ…で;仮にも…ともあろう人が」 といった、主観的評価を露にして、驚きや落胆、皮肉、批判などを表す独特の物言いですが、それがあるからこその違和感と言えるでしょうか。
この記事では、John F. Kennedy (1917-1963)が取り上げられています。
事実としては、確かに He was a Kennedy. ではあるのですが、一般の人が the Kennedys (ケネディ一家(いっか))を明確に意識する契機が、まさにJFKの存在なのではないか、と思ったわけです。であれば、その中心人物であるJFKを指して、a Kennedyと言うのは適切、的確な表現なのか、という「?」が浮かんだのでした。

JFKに至る三代三族を整理。

JFK: ジョン・フィッツジェラルド・ケネディ (JFK; 1960年当選、1961年アメリカ合衆国大統領就任)

父: ジョセフ・パトリック・ケネディ("Joe"; 1888-1969) 実業家(株式、不動産)。1914年ローズ・フィッツジェラルドと結婚。ボストン政界の大物に。

祖父: パトリック・ジョセフ・ケネディ (1858-1929) 実業家、民主党下院議員、上院議員。19C末には裕福な一家であった。

実業家としては、JFKの祖父、パトリック・J・ケネディの頃に既に成功していて、ジョセフ・P・ケネディが第二次大戦後にさらに財を成し、JFKを政界で押し上げる豊富な資金源となっていたようですから、JFK以前から「ケネディ家」という評判、名声はあったと考えられますが、その名声をより一層高めたのがJFK名のではないか、と思うわけです。

JFKの前の時代で、どのくらい "a Kennedy" は使われていたのか? それがわかると、解像度が上がるように思います。
COCA系でちょっと見てみましょうか。

NOW で「ケネディ家」「ケネディ夫妻・一家」など

最もヒット数の多い “the Kennedy” はその後にadministrationとかpresidencyなどの名詞が続くことが多いでしょうし、 “a Kennedys” は誤用レベルでしょう。

COCA

spokenの頻度が高いのが特徴的ですが、全体の頻度は21世紀になって半減。

COHAで経年変化

1960年代が異常にも思える高頻度ですね。

a KennedyをCOHAの初出(1959) から


a Kennedyに名詞が続いている例も(が?)多いですね。

参考にCOHAでthe Kennedy

このサブコーパスを忘れていました。

TIMEコーパス


やはり名詞がさらに続く例が多いので、この程度の実例を見ただけでは、断定的なことは言えませんね。

私の語感や実感として、”a Kennedy no less” が用いられるのは、こんな人の、こんな場面です。

What? A white, privileged man—a KENNEDY no less (although disavowed by the entire Kennedy family)—lecturing Black people about RACISM?? What an asshole.
x.com

If there’s only ONE 45 second video you can watch today, make it this one!
This is exactly what they do to Trump. But this? This was what they did to a Democrat— a Kennedy no less, running against their hold on power.
x.com

このような文脈であれば、「痩せても枯れてもケネディー家の一員である…」「腐ってもケネディー家の一員の…」という、話者の評価をしっかりと感じられると思うんですね。

ということで、当該記事での、この “a Kennedy (no less)” の使われ方についての意見を生成系AIに尋ねてみました。

私の問いかけ。

Q. 次の英語ニュースでの不定冠詞+固有名詞の意味・意図・表現効果についてお尋ねします。
“In the long history of sovereign neighbours, there never has been a relationship as close, productive and peaceful as the U.S. and Canada,” Brokaw says.
The video returns to glorious flyovers of snowy mountain ranges for a rousing line in the words of John F. Kennedy: “Geography has made us neighbours, history has made us friends, economics has made us partners, and necessity has made us allies. Those whom nature has so joined together, let no man put asunder.”
This is the emotional climax of the video, the schmaltzy comparison of U.S.-Canada relations to a marriage, by a Kennedy no less.
この文脈での最終文の、by a Kennedy, no lessはどのような意味・意図・表現効果として使われていますか?通例この不定冠詞は固有名詞と共に用いて、「ケネディ家の一員」の意味で用いられるものですが、一般常識で考えると、「あのケネディ家の一員」と言われて認識するのは、J.F. Kennedy 以降のケネディ家の意図を指す場合だと思われます。ここで、先行文脈で出てきているのは、まさにそのJ.F. Kennedyその人なわけですが、このような文脈での不定冠詞は、どのように解釈すればよいのでしょうか?後置された、no lessと結びついて特別な意味合いを持つのでしょうか?もし、類例があれば、それも併せて教えてください。

ChatGPT 3.5の回答

この文脈での “by a Kennedy, no less” について、以下のように解釈できます。
1. “a Kennedy” の意味
不定冠詞 “a” を固有名詞と組み合わせる場合、その人物が特定の集団(ここでは「ケネディ家」)の一員であることを意味しつつ、その一員が持つ象徴性やステータスを強調します。この場合、“a Kennedy” は「ケネディ家の一員」という一般的な認識を呼び起こしますが、特にケネディ家がアメリカ政治における象徴的な家系であり、その名が持つ権威や特別な意味合いを背景にしています。

すでに引用の中でジョン・F・ケネディの言葉が登場しているため、ここで「ケネディ家の一員」と言うのは、特にその発言の由来に注目させる意図があると考えられます。

2. “no less” の意味と効果
“no less” はここで「なんと」「さすが」というニュアンスを持ち、驚きや感銘を表現します。ジョン・F・ケネディという特別な存在が、この感動的な関係(米加関係)を「結婚」にたとえたことに重みを与えています。
“no less” は強調表現として使われ、通常以下のような意味を持ちます:
• 話者が意図的にその重要性を認識させようとしている。
• 聞き手に「そうだ、あのケネディ家だよ」と納得させる効果を持つ。
この場合、引用された言葉が「ケネディ家の象徴たる人物、ジョン・F・ケネディによるものである」ということを強調し、発言の価値や重みをさらに増幅させています。

3. 表現効果
“by a Kennedy, no less” は以下のような効果を持っています:
1. 感動の増幅
ケネディ家のような象徴的な存在が、このように米加関係を讃えたことを特筆すべきこととして伝えています。
2. 親しみと驚きのニュアンス
不定冠詞を用いることで、「ケネディ家の人物」というやや親しみやすい表現になり、続く “no less” によってその重みと意外性が強調されています。
3. 聴衆の期待感の喚起
聴衆に「あのケネディ家」の偉大さや特別感を思い起こさせる効果があります。

4. 類例
固有名詞に不定冠詞を使い、続けて強調表現が来る類例として以下のものが挙げられます:
• “It was written by a Shakespeare, no less!”
(「なんと、あのシェイクスピアが書いたのだ!」)
• “The painting was authenticated by a da Vinci, no less.”
(「なんと、あのダ・ヴィンチの作品だと認定された!」)

これらも、偉大な人物の名前に不定冠詞をつけて一般化し、続く “no less” でその特別感や驚きを強調する表現です。

5. 結論
“by a Kennedy, no less” は、「ケネディ家という象徴的な存在からの発言」であることを強調し、その特別感や発言の価値を増幅させる効果を狙っています。不定冠詞を用いることで親しみや軽い驚きを伴わせつつ、no less によって聴衆の注意を引き、その発言の重みを再認識させる表現です。

続いてGeminiの回答。

"by a Kennedy, no less" の意味・意図・表現効果について
ご質問ありがとうございます。この文脈における "by a Kennedy, no less" という表現は、非常に興味深いですね。
1. 表面的な意味
• ケネディ家の一員によって: 文字通りの意味としては、この引用がケネディ家の人物によって語られたということを示しています。
• しかもケネディ家の人物によって: "no less" という副詞が加わることで、「なんと、ケネディ家の人物によって」という驚きや強調のニュアンスが生まれます。
2. 文脈における意味
この文脈では、以下の意味合いが複合的に働いていると考えられます。
• 歴史的な重み: ケネディ家はアメリカの歴史において特別な地位を占めており、その一員であるという事実は、引用される言葉に歴史的な重みと信頼性を与える効果があります。
• 感情的な訴えかけ: ケネディ大統領は、国民に強い感動を与える演説で知られていました。彼の言葉が引用されることで、視聴者の感情に訴えかけ、アメリカとカナダの特別な関係性をより深く印象付けようとする意図が見られます。
• 意外性と強調: 前述の通り、このビデオではジョン・F・ケネディ大統領の言葉が引用されています。にもかかわらず、「ケネディ家の一員」という表現が使われていることに、一見すると矛盾を感じます。しかし、この意外性が、ケネディ家の名声と、アメリカとカナダの特別な関係性の結びつきを強調する効果を生み出しています。
• アイロニー: ケネディ家といえば、ジョン・F・ケネディ大統領だけでなく、その後の世代の政治家も含まれます。しかし、この文脈では、特にジョン・F・ケネディ大統領の言葉に焦点を当てているため、"by a Kennedy, no less" という表現は、ある種のアイロニーを含んでいるとも解釈できます。
3. "no less" の役割
"no less" は、この文脈において以下の役割を果たしています。
• 強調: 「なんと」「しかも」といった意味で、前述の内容を強調します。
• 意外性: 予想外の要素を加え、読者や視聴者の注意を引きつけます。
• 文語的な響き: よりフォーマルで文語的な印象を与えます。
4. 類例
• "by a Shakespeare, no less": シェイクスピアの言葉が引用された場合に、その言葉の文学的な価値や影響力を強調するために使われます。
• "by a Picasso, no less": ピカソの絵画が紹介された場合に、その芸術的な価値や独創性を強調するために使われます。
まとめ
"by a Kennedy, no less" という表現は、この文脈において、単にケネディ家の一員が引用したという事実を示すだけでなく、以下の効果を生み出しています。
• 歴史的な重みと信頼性の付与
• 感情的な訴えかけ
• 意外性と強調
• アイロニー
これらの要素が複合的に働き、アメリカとカナダの特別な関係性をより深く印象付けようとする、巧妙な表現と言えるでしょう。
補足
• このような不定冠詞の用法は、文脈によって様々な解釈が可能です。
• "no less" という副詞は、文脈によって様々なニュアンスを持つ言葉です。
• 類例は、文脈によって異なる表現が使われることを示唆しています。
ご質問の理解に少しでもお役に立てれば幸いです。

最後にClaudeの回答

これは非常に興味深い言語表現の質問ですね。この "by a Kennedy, no less" という表現について、文脈を踏まえて詳しく分析してみましょう。
1. 基本的な解釈:

  • ここでの "a Kennedy" は、単にケネディ家の一員という意味ではなく、むしろ「ケネディという格の高い、重要な政治家」という含意を持っています。
  • "no less" という付加表現は、この重要性をさらに強調する役割を果たしています。

2. 表現効果:

  • この不定冠詞 "a" の使用は、ケネディという存在を一種の「カテゴリー」として扱う効果があります。
  • つまり、「ケネディ」という名前が持つ政治的威信、歴史的重要性、アメリカ政治における象徴的な意味を示唆しています。
  • "a Kennedy" と言うことで、その名前が持つブランド性、権威性を強調する効果があります。

3. 類例:
"The speech was delivered by a Churchill, no less."
(その演説はチャーチルによって行われた)
"The painting was authenticated by a Rothschild."
(その絵画はロスチャイルド家の人物によって真贋が証明された)
"The event was hosted by a Rockefeller."
(その催しはロックフェラー家の人物が主催した)

4. "no less" との関係:

  • "no less" は「それも」「しかも」という意味で、先行する要素の重要性や意外性を強調します。
  • "a Kennedy" と組み合わさることで、「それもケネディという重要人物による」という驚きや重要性を強調する効果が生まれます。

5. この文脈での特殊性:

  • 確かにご指摘の通り、先行文脈で具体的にJFKが特定されているにもかかわらず、その後で "a Kennedy" という不定表現を使用している点は興味深いです。
  • これは、具体的な個人としてのJFKから、より抽象的な「ケネディという存在が持つ威信」へと視点を移行させる効果があります。
  • つまり、「単なる一政治家の言葉ではなく、ケネディという特別な存在による言葉である」という含意を強調しているのです。

6. レトリック効果:

  • この表現は、アメリカ-カナダ関係の重要性を語る文脈において、その発言の信頼性や重要性を高める修辞的効果を持っています。
  • ケネディという名前が持つ政治的・歴史的な重みを利用して、その発言内容の正当性を強調しています。

このように、"by a Kennedy, no less" という表現は、単なる「ケネディ家の一員」という意味を超えて、その名前が持つ歴史的・政治的な重要性を強調し、発言の権威付けを行う修辞的機能を果たしているといえます。

説得力のある回答となっているでしょうか?
そもそもの私の「違和感」がおかしいのでしょうか?
皆さんは、この表現、どのように理解、評価されましたか?

たかが不定冠詞、されど不定冠詞ですね。

本日はこの辺で。

本日のBGM: Just Another Family (Paul Heaton feat. Rianne Downey)

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saying half to myself

この「冬休み」は、オンラインセミナーを開催する以外に、自分が出講中の高校での教材を作成するという宿題に取組んでいます。
所謂

  • 「話法」

の扱いです。所謂と「」づけで言っているのは、旧態然とした問題集などの教材での扱いに不満を持っているからでもあります。
本当に学んで身につけるべき内容は、

・「話法」の類型
・「時制の一致」での日英のギャップ
・伝達文と伝達動詞のダイナミズム
・引用と要約と換言の実感

辺りだろうと思うのですが、とかく瑣末な「話法の転換」での書き換え問題と、時制の一致の例外の処理に終始しがちな問題集の扱いを何とかしたかったわけです。
文の種類のバリエーションでの「規則の適用」をどれだけ覚えているか、複数の伝達文の混在で二つ目以降の伝達動詞と被伝達部を整えられるか、などなど、ほぼほぼ「一文」で問題を解いているわけですが、我々の日常でそんな杓子定規な書き換えをしているわけではないでしょう。
とは言え、レファレンスは必要なので、「問題演習抜きでいいなら、私が作りますよ」ということになった次第。

普段から「語義」と「生息域」推しの私ですが、この「話法」と「時制の一致」に関しては、私が高校生の時に、河上道生 『英語参考書の誤りを正す』(大修館書店、1980年)を読んでいたので、時制の一致に関しては瑣末な問題演習の沼に足を踏み入れずに済んでいましたし、その当時読んでいた雑誌、『翻訳の世界』で連載されていた安西徹男先生の「訳し方」の講座(後に『翻訳英文法』バベルプレス、1982年となる原型のようなもの)で、日本語の癖のようなものに触れていたことが、指導する側になった私の視座に大きく影響しています。
また、『よくわかる新高校英文法』(=『早川本』 三友社出版、1982年)とそのレファレンスとなった “Situational Grammar” を教師駆け出しの頃に読んでいましたから、

  • 話法は絵を描き内容整理

ということを指導の初期から強調していました。

『早川本』に関しては過去ログ参照。
「教えて!絶版先生」第2回: よくわかる新高校英文法
tmrowing.hatenablog.com

その宿題の中から、「直接話法」の生息域に関してちょっとだけご紹介。

「言った!」「言わない!」

  日常の言語活動では、圧倒的に間接話法の方が多く用いられますが、直接話法を使うことが重要な意味を持つ場面としては、「物語や小説でのセリフや独白(内省;内言)」以外に、

・裁判の証言記録や裁判官の判決文の引用
※米国の連邦裁判所の記録(Transcripts and Testimony) はアメリカ合衆国裁判所事務局の例などを参照。
https://www.uscourts.gov/sites/default/files/jcd_rules_redline_-_proposed_changes_-_9.13.18_0.pdf

・警察の事情聴取、報道の目撃者インタビュー
7. “It was the closest thing I can imagine to a warzone,” Parsons said.
「その光景は私が想像できる戦場に最も近いものだった」とパーソンズは言った。
www.nola.com

・名言の引用や重要人物の談話の引用
8. “Genius is one percent inspiration, ninety-nine percent perspiration,” Thomas Edison said.
「天才とは1%のひらめきと99%の努力である」とトーマス・エジソンは言いました。

・訃報・死亡記事(obituary)での死者の残したことばの引用/近しい人の談話の引用
9. “The role of my manga,” he said, “is to be a work of entertainment through and through.”
   「私の漫画の役割は、徹頭徹尾エンターテインメント作品であり続けることです」と彼は言った。
www.nytimes.com
(鳥山明氏の訃報を伝えるNYTより)

・授賞式・表彰式でのスピーチでの感謝のことばなどの引用。
10. "It was an East-meets-West dream project with respect," said Sanada.
   「それは東西が出会う夢のプロジェクトであり、敬意を持って行われました」と真田は言いました。
mashable.com
   (エミー賞授賞式での真田広之氏のスピーチの引用)
11. Sanada wrapped his speech with a message for those coming after him.
“For the young actors and creators in the world, please be yourself, believe in yourself and never give up. Good luck!”
真田は(次のように)スピーチを締めくくり、後に続く人々にメッセージを送りました。「世界の若い俳優やクリエイターの皆さん、自分らしく、自分を信じて、決して諦めないでください。幸運を祈ります!」
deadline.com
   (ゴールデングローブ賞受賞式での真田広之氏のスピーチの引用)
12. “Every Paralympic moment is very emotional and important to me,” said eight-time Grand Slam singles champion Kamiji.
「すべてのパラリンピックの瞬間は、私にとって非常に感動的で重要です」と、グランドスラムシングルスで8回優勝した上地選手は言いました。
www.paralympic.org
(2024年パリ五輪で金メダルを獲得した後のインタビューから)
などがあるでしょう。

今、最新のニュースを見て、用例を差し替えているところです。

ということで、その授賞式スピーチを取り上げた報道から気になる語法を。
今日は、

  • take home

です。
homeという語に関しては既に

2024-11-30
what they have to go through before hatching
tmrowing.hatenablog.com

で慣用表現を取り上げていますが、今回は別の項目で。

次のツイートをご覧ください。

Anna Sawai took home the Golden Globe for best actress in a drama series for her role in Shogun on Sunday night.


アンナ・サワイは『将軍』での演技により、日曜夜に、ゴールデングローブ賞のドラマ部門最優秀女優賞を受賞した。

Golden Globeのドラマ部門で最優秀女優賞を獲得したAnna Sawaiさんの受賞スピーチを取り上げたものです。このツイートの元記事の見出しはこうなっています。

Anna Sawai Wins Golden Globe for Best Actress in a Drama Series for ‘Shogun’: “I Have So Many People to Thank”
www.hollywoodreporter.com
アンナ・サワイ、『将軍』でドラマシリーズの主演女優賞を受賞:「感謝したい人がたくさんいます」

この文脈では、

  • take home + 賞=win +賞

となっています。辞書の成句では、take homeには「税抜き後の手取り分の給与を受け取る」というような意味が載っているのですが、ここでは当てはめられません。

授賞式や受賞者決定の報道での現代の英語では「あるある」表現です。
GGの公式アカウントから、ジョディー・フォスターの受賞を取り上げたもの。

Cheers to Jodie Foster for taking home the #GoldenGlobes award for Best Female Actor – Limited Series, Anthology Series or Television Motion Picture for True Detective: Night Country!


『トゥルー・ディテクティブ ナイト・カントリー』でリミテッドシリーズ、アンソロジーシリーズ、テレビ映画部門の最優秀女優賞#GoldenGlobesを受賞したジョディ・フォスターに乾杯!

ここでは、前置詞forに続く動名詞句 (taking home the Golden Globes award” になっています。

エンタメ系から類例。

The #ShogunFX sweep.
The series took home the Best Television Series Drama award at the #GoldenGlobes on Sunday, sweeping all four categories for which the historical epic was nominated.


#ShogunFX スイープ。
このシリーズは日曜日の#ゴールデングローブ賞で最優秀テレビシリーズドラマ賞を受賞し、歴史的叙事詩がノミネートされた4つのすべてのカテゴリーを席巻しました。

sweep 「席捲(する)」は「全勝」とか「完勝」の文脈で用いられる語。カテゴリーが4つしかなければ、日本語訳は「総嘗め」でもいいでしょうが、ここでは、「ノミネートされた4カテゴリー全てで賞を獲得」ということです。

一般の報道で別媒体から。

Award season kicked off Sunday night at the Golden Globes.
Actress Demi Moore took home the award for best performance by a female actor in a motion picture, musical or comedy — the first Golden Globe win of her career.


授賞シーズンは日曜の夜のゴールデングローブ賞で幕を開けた。
女優のデミ・ムーアは、映画、ミュージカル、コメディ部門で最優秀女優賞を受賞した。これは彼女にとってキャリア初のゴールデングローブ賞受賞となった。

「受賞」を表すwinも具体的に「手に入れる」実感が重要ですが、このtake homeも「家に持ち帰る具体物」の実感が重要ですね。授賞式にはノミネートされた候補者が通例揃いますが、その後発表され登壇する受賞者は1人(1チーム;1作品)に限られるわけで、他の候補者は「手ぶら」で帰宅することになります。そのような絵を前提にしているという点では「身体知」が色濃く出た表現といえるかも知れません。

さあ、具体的な使用場面、生息域を感じたところで、この「比喩」の成り立ちや、この表現をwinの代わりに選択する人の「頭の中」「心の中」を覗いて見たい、ということで、生成系AI四者に尋ねてみました。

以下、列挙しますので、winとtake homeとの互換性も含めて、皆さんの語感との一致不一致を確かめてください。

まず、私からの問いかけ。

In present day English, especially in the fields of entertainment, they say
1. She won the Golden Globe for the best actress for her role in “Shogun.”
2. She took home the Golden Globe for the best actress for her role in “Shogun.”
meaning the same.

How come the phrase “take home” means that someone wins the award? Is that because they were chosen as the only one who won the very award, not just because they were nominated for it but missed winning it?
(現在の英語、特にエンターテインメントの分野では、こう言います。
1. 彼女は『将軍』の役でゴールデングローブ賞最優秀主演女優賞を受賞した。
2. 彼女は 『将軍』の役でゴールデングローブ賞最優秀主演女優賞を受賞した。
同じ意味です。

どうして "take home "というフレーズが、誰かが賞を受賞するという意味になるのでしょうか? ノミネートされていたのに受賞を逃したのではなく、まさにその賞を受賞した唯一の人物として選ばれたからなのでしょうか?)

Copilotの回答

The phrase "take home" in the context of winning an award, like a Golden Globe, is an idiomatic expression. It means that the person not only won the award but also physically took it home with them. This phrase emphasizes the achievement and the tangible aspect of receiving the award.

The use of "take home" implies that the person was the winner, as opposed to just being nominated. It highlights the finality and success of winning the award, as they are the ones who get to bring the trophy or prize back with them. This expression is often used to add a more casual, conversational tone to the announcement of the win.

So yes, "take home" is used because the person was chosen as the winner and not just a nominee. It underscores the accomplishment of being the one who ultimately receives the award.


ChatGPT 3.5の回答

The phrase “take home” in this context emphasizes the act of receiving and possessing the award, as if the winner physically brings it back with them after the ceremony. It conveys a sense of achievement and ownership, highlighting that the individual not only competed but successfully won the award.

This usage likely originates from the literal idea of carrying the award home after winning it, but over time, it has become an idiomatic way to describe achieving a victory or securing a prize. The implication is that the person was chosen as the sole recipient of the award, distinguishing them from others who were merely nominated.

In other words, “take home” reinforces the finality and exclusivity of winning—bringing the physical or symbolic recognition of the achievement into their personal sphere. It wouldn’t apply to nominees who didn’t win, as they wouldn’t “take home” anything.

Geminiの回答

You're right, "take home" in this context means to win an award. The phrase evokes the image of physically taking the award statue or trophy home with you after the ceremony. It implies not just being nominated, but actually winning and possessing the physical prize.
Here's why "take home" is used in this way:
• Physicality of the Award: Awards like the Golden Globes are physical objects. The winner literally takes the trophy home with them. This tangible aspect is central to the phrase.
• Exclusivity of Winning: Only one person (or group) can win in each category. "Taking home" the award emphasizes this exclusivity. It signifies that the person was the sole recipient of that particular honor.
• Figurative Meaning: Beyond the literal act of taking the trophy, "take home" also has a figurative meaning of acquiring or achieving something. In this case, it's the achievement of winning the award.
So, while everyone at the ceremony might "take home" memories of the event, only the winners "take home" the award itself. This distinction is what makes the phrase so effective in conveying the idea of winning.

Claudeの回答

"Take home" in this context is an interesting idiom that has evolved in award show and competition language. It goes beyond the literal meaning of physically carrying the award home and has become a colloquial way to say "win."

The phrase likely gained this meaning for a few connected reasons:

1. Physical possession: When someone wins an award, they literally get to take the trophy/statuette home, unlike other nominees who leave empty-handed. This physical act of possession has become symbolic of winning.

2. Finality and exclusivity: As you suggested, "taking home" implies a definitive result - only one person gets to physically possess the award at the end of the night. This emphasizes the exclusive nature of winning.

3. Informal tone: "Take home" has a more casual, conversational feel than simply saying "won," which makes it popular in entertainment journalism and casual discussion. It's similar to other informal victory phrases like "walked away with" or "snagged."

The phrase has expanded beyond awards to other contexts, like:

  • "He took home first prize in the competition"
  • "The team took home the championship"
  • "She took home a hefty bonus this year"

In all these cases, "take home" emphasizes both the tangible reward and the finality of the achievement - there's a clear winner who gets the prize, trophy, or reward, while others don't.

如何でしょうか?
皆さんの語感は四者のうちの誰に近いでしょう?
生成系AIも四者四様の個性がありそうですね。

本日はこの辺で。
本日のBGM: home by now (Aimee Mann)

open.spotify.com

as if to defy gravity

今朝は朝から私のツイッターのタイムラインが

  • 菅井円加
  • ジゼル

で溢れていました。

こちらですね。

www.koransha.com

今日から仕事始めという人も多いかと思いますが、私は年末のセミナーに続いて、1月4日、5日と新春セミナーを既に2コマ終えています。
この冬のセミナーの告知を私がしたのが昨年の12月1日。
その直後の12月5日、菅井さんが、代役で来日しジゼル全幕を踊る、という情報を得て「!」

直前の告知がこちら。

そして昨日の公演は絶賛の嵐。目の肥えたバレエファンをして驚愕せしめるパフォーマンスだった模様。

  • 上の方の席は結構空いてた

なんていうのを目にしたら、嗚呼…。

そんな中でも、私は私の「持ち場」でベストを尽くしていました。
1月4日のセミナーは「3部構成」。

  • SNSの英語ニュース&辞書&オンラインコーパスの活用法

ちょっと欲張り過ぎて、第3部がちょっと端折り気味になってしまいました。申し訳ありません。
受講者からのフィードバックをご紹介。
フリーランスで英語を教えていらっしゃる橋本百合子さんから。

本日は誠にありがとうございました。自分は海外在住期間があるせいで“脳内コーパス”で済ましてしまうことが多く、ちゃんとコーパスを使えるようになりたいと願い、受講いたしました。
時代によりあれだけ語の使用が変わってくるということだと、昔取った杵柄(1980年代と2000年前後在住)に頼っていると危険だなと痛感いたしました。辞書ごとの特徴も知っておりませんでしたので、興味深く思いました。
大変勉強になりました。ありがとうございました。

次は、北星学園大学の松浦年男先生から。

長時間ありがとうございました。英語を読み書きしていて気になる表現に出会ったときに自分の力でどうできるかを体感できるセミナーでした。学習者としては「これで決まり」とか「安心」というような規範的な考えを持ってしまいがちですが,言葉が生ものである以上,現状がどうなっているか,そしてここに至るまでどうなってきたかにどう目を配ればいいのかを見ることができたのが大きかったです。物書堂の辞書もある種データベースとして持っている機能をより活かす方法を知ることができたと思います。

続いては匿名でご紹介。

先日は年初から貴重なお話をありがとうございました。

第1部では, 実際にCOCAとサブコーパスを用いて, それぞれの特徴も実際に操作画面や結果画面を見ながら示して頂き, 活用の仕方を具体的に想像することができました。
特に [ ] や記号を使った検索テクニックも一部見せて頂いたこと, 時制による使用頻度の違い, また相対的な頻度でどの程度許容される表現かを判断する視点もとても参考になりました。
また, 指導者としての視点として, 個々の表現における発達段階ごとの獲得順序と一般の話者の使用頻度は区別して考えるという視点もとても大切であると感じました。

第2部では, 日本における学習英語辞書の歴史の外観から始まり, 良い辞書とはどのようなものか, 個々の辞書の特徴や注意点まで, 膨大な情報をダイジェストで紹介して頂きました。
また, アプリ辞書のテクニックについても詳しく実演して頂き, 物書堂の辞書の後方一致検索などは, 思わず, なるほど!と感動しました。

第3部では, ニュース英語やメディアの時代ごとの移り変わりを概観しながら, SNS時代のニュース英語の現在の姿を垣間見ることができました。
こちらも生の英語から個々の表現の生息域を見つけ出していく松井先生のご慧眼に脱帽でした。
改めて, これを気に先生のブログ, Xでの個々の表現の生息域を観察する目を養っていきたいと思わされる内容でした。また, 週末のライティング指導講座の方も楽しみにしております。
引き続き何卒よろしくお願いいたします。

続いては長文です。
奈良女子大学附属中等教育学校の平田健治先生より。

今回も、英語やことばに対する姿勢や考え方から、極めて実際的なスキルまで幅広く、多くを学ぶことができました。松井先生に、手引いてもらいながら、さまざまな英語の生息域に踏み込み、それぞれの英語表現の襞に触れるような経験であったように思えます。

今回のセミナーで、まず、事前に、最も学びたいと思っていたのは、COCA等のコーパスの使い方、生かし方でした。アカウントこそ持っていはいるものの全く使いこなせていなかったのですが、実際の画面を操作しながらの実演はたいへん参考になりました。これを機に、有料アカウントにアップグレードして、自分で使ってみながら、活用していきたいと思います。

辞書活用もたいへん有意義で刺激的なものでした。今までは、Genius 6th(紙版)、ウイズダム4th(紙版)とオンライン辞書を主に使っていました。生徒に用例を示す時には、オンライン辞書の画面のキャプチャをしていました。と同時に、松井先生のブログ等で知った物書堂の辞書もいくつかiPadには入っていたのですがほとんど活用できていませんでした。早速、物書堂版のGeniusを購入しました。

これに限らず、松井先生のブログやTwitterを受けて購入する/した書籍もかなりのものになっています。逆に、紹介される書籍でも、ブログを拝読する前に持っているものもあって(『生きた英語の上達法』やComposition through Picturesや『ルイちゃんの英文法』など)、そこからどれだけ学べているかは別に、その選択は間違っていなかったと自負するととともに、改めて、書架から取り出し読んでいるものも多いです。

辞書の活用実演では、今回は、横にiPadを置き、松井先生の実演に合わせて操作しながら受講をしていました。iPadの二画面分割やブックマーク機能についても、実際に実演してもらってみることができたので、たいへん参考になりました。こちらも、これからどんどん活用していきたいと思っています。
「画像検索」についても、先生のご指摘通り、Google検索で写真が出てくるから、という程度にしか思っていませんでした。実際、インターネットがない以前は、小説などを読んでいて商品名が出てきてもよくわからなかったのですが、「インターネットのおかげでそのようなことが少なくなり便利になった」という程度にしか考えていなかったことに気づきました。今回のセミナーでの「画像検索の有効性と限界」での鋭いご指摘に、あらためて、ことばに対する姿勢に心した次第です。
「知識のアップデート」「自分のresourceの整備」の重要性にも改めて心いたしました。

辞書指導関連のセミナーや、辞書選びのガイダンスは他所でも聴けると思いますが、今回のように「オンラインコーパスの活用」や「現代のニュース英語で変わりつつある英語の姿を実感する」といった内容ともリンクした切り口で実演つき、というのは有益だと自分でも思いますので、年度末辺りでまた日を改めて開催したいと思っています。


1月5日のセミナーは、12月30日に開催したものとほぼ同じ「チャンク」を中心としたもの。
年を跨いでの二回目、ということで時間配分は概ね上手くいき安堵。
新たに筒井一輝さんからフィードバックが寄せられています。

修士論文を書き終えた自分自身へのご褒美に、以前から気になっていたチャンクセミナーに参加しました。
なぜその配列で、なぜその記号付けなのか。何に配慮して、何を優先するのか。机上の空論ではなく、実際のご著書の1部や資料を用いてレクチャーいただきました。特に「名詞句の限定表現」の例文配列は圧巻で、noteを買って読むだけでは得られない、セミナーだからこそ得ることができた内容だと思います。
セミナー中に仰っていた「生産性(情報価値)の低い練習に学習者のエネルギーを割かせない」「網羅性よりも実感や言葉の生息域を大事に」「正解にたどり着くまでに不要な認知負荷をかけない」など、普段SNSやブログでも発信されている内容ではありますが、より実感を持つことができました。加えて、松井先生はそれらを達成するための方法をセミナー内で何度も示されていました。
大人の都合で貴重な時間を費やしている学習者が不利益を被らないために。意味の無い慣例で、指導者の怠慢で、英語や言葉そのものを歪曲してしまわないために。セミナーで得たものをじっくり消化しながら、日頃の指導に活かしていきます。
最後になりましたが、くれぐれも体調には気をつけてお過ごしください。セミナーを開催していただきありがとうございました。

年末の「その英語、気になりませんか?」のセミナーの受講者からもフィードバックが追加されました。匿名でご紹介。

年末のセミナーに参加させていただきありがとうございました。
先生のお話を聞かせていただき、私自身まだまだ「英語そのものに着目する」ことができていないことを感じました。これまで参加させていただいたセミナーでもNgram viewerやコーパスデータから、英語の語法などの変化等を提示・説明してくださり、その後実際に私自身も授業(準備)で活用するようにしてきました。しかし、Ngram viewerやコーパスデータを見て、「あっ、そうなんだ」という段階で満足してしまっており、それが実際の現代英語ではどのように使われているのか、その語の生息域をニュース英語などの実例から確かめるところまではできていません。今年はここまで意識していきたいと思います。
また、セミナーの中で紹介してくださった上本先生の小辞典を早速取り寄せました。まだ、最初のページに目を通した程度ではありますが、私が普段さらっと流してしまいそうな部分を、ことばで詳細な説明がされており、今後ことあるごとに参考にしていきたいと思いました。
また機会がございましたらセミナーに参加させていただきたいと思います。
ありがとうございました。

みなさん、暖かいフィードバックをありがとうございます。

こちらのセミナーは12日にも、(ほぼ)同じ内容で開催します。受講者のフィードバックを参考にご検討ください。申し込み締め切りは9日(木)の18:00ですので、お早めに!

英文法・語法・表現セミナー:その英語気になりませんか?
passmarket.yahoo.co.jp


本日はこの辺で。
本日のBGM:踊り子 (Vaundy)

youtu.be

「たとえば…」

2025年のスタート。
本年もよろしくお願いします。

年末のセミナーで12月30日のチャンクのセミナーにも、受講者からのフィードバックが届きました。

抜粋でご紹介。

文未満の単位としてのチャンクの内部構造とそれを授業などにおいてどのように練習させるかについて、たっぷりと解説していただいて有意義な時間でした。
2024年冬の第一弾である語法・文法セミナーにも参加したことで、実際に使われている形での英語表現を教授者自らも観察・収集し、それを生徒に示していくことの重要性を改めて感じました。
以前にもチャンクセミナーを受講したことがありますが、今回のセミナーでは以前の会よりも学びが多かったです。それは、会を追うごとに松井先生が講座内容をバージョンアップしていることもあろうかと思いますし、私自身の成長というものもあるのだと思います。

学習者に、英語だけでなく母語の「語形成」についての気づきと知識を与え、英文を読んだときに迷った時の拠り所となる「戻ることができる基本となりうる地点としての知識」を体感させることのできるチャンクでの指導は、一見地味なように見えて、実は深い知識と洞察に裏打ちされた体系がそこにあることを多くの人は気づいていないかもしれません。
チャンクの「赤本」・「緑本」が一般書籍になると、恩恵を受ける方々が多数いるかと思います。
今回改めて、チャンクの配列には、いわゆる形態論である語の内部構造への配慮があること、記号づけには統語論的な「主要部」・「足あと」などを学習者にもわかるように示していることに感動しました。

『学習英文法を見直したい』(研究社)p.98の中で、松井先生が述べられていた「学習英文法」が活かされるための3つの要素の
・「文」の束縛からいったん自由になる。
・学習者が「局地戦」を生き延びるための物資を保証する。
・ことばによる記述、解説の精度を高める。
を実作をもって、世に示していただけたこと、感謝いたします。
文単位のではなく、文字・形態素・語・句単位で考えることができると、学習者が言葉の森で迷子になったときに考える足場を作ってあげられますよね。
この休み期間は、語法・文法、(チャンクを考える上での)レキシカルアプローチ、形態論の勉強をしようと思っています。2024年末、松井先生のセミナーを受講することで学びや気づきの機会をいただいたことに感謝します。ありがとうございました。

ありがとうございます。新年も4日からセミナー開始です。

さて、
新年最初の「気になる語法」は

  • including

です。
辞書では既に「前置詞」の扱いで項目が立てられていますが、もともとの動詞 includeの他動詞のイメージにとらわれていると、このincludingの表す意味がこぼれ落ちてしまうかも知れません。

ツイッターの引用RTでの英語ニュース紹介&詳解でも何度も取り上げてきました。

Recent decades have seen numerous skirmishes along the border, including a brief but bloody war in 1962.
これまでにも指摘してきた
「目撃」の主語が時・期間で現在完了のsee。
全体概要→個々の事例へと移るマーカーのincluding
そして、bloodyは?
https://x.com/tmrowing/status/1272966271479377922

元記事は

https://www.deccanherald.com/india/the-key-dates-in-india-china-border-tensions-850380.html
上記引用の英文
Recent decades have seen numerous skirmishes along the border, including a brief but bloody war in 1962.
の和訳
近年、国境沿いで多数の小競り合いが発生しており、1962年には短期間ながらも血なまぐさい戦争がありました。

イマドキの用法では、殆ど具体例を導く単なるマーカーです。

「現実味のcould」 例示のincludingは、その続きではなく、includingの前(=左)をこそ丁寧に読みましょう。 関係詞的thatは主格相当。それに続くandの分配は「恒常的性質、一般論」と「現実世界での個々の事例、見通し・見込み」であることに注意。
https://x.com/tmrowing/status/1290800988375351296

元ツイは

Anti-coronavirus efforts could help reduce other infections as well, including a rare, polio-like illness that strikes children and is due for a periodic resurgence this fall.
https://x.com/NYDailyNews/status/1290798188509761536
コロナウイルス対策は、子供たちを襲い、今秋に定期的に再発すると見込まれている、まれなポリオのような病気を含む他の感染症の削減にも役立つ可能性がある。

ここではas wellの添加に続けて用いられています。

living は「現在分詞」の後置修飾。includingは前置詞扱い。generalな情報に対しての、その要素となる「端的な具合例」。food insecurity は 「名詞1+名詞2」での名詞句。元になるsecureは形容詞(または動詞)で「確実に得られる(ようにする)」。「必要十分な食料を安定的に得られないこと」。
https://x.com/tmrowing/status/1343301507354034177

元ツイは

More than 50M people living in America, including 17M children, will likely experience food insecurity by the end of the year, according to Feeding America, the country’s largest anti-hunger organization.
https://x.com/MSNBC/status/1343293343225307141
アメリカ最大の飢餓撲滅団体フィーディング・アメリカによると、アメリカに住む5000万人以上、うち1700万人が今年末までに食糧不安に陥る可能性が高いという。

分詞構文由来ですから、元の動詞の「含む」という意味を保持して、名詞句を単独で従えている分には、それほど理解にも表現にも苦労しないでしょう。

名詞句には当然、動名詞 (-ing形)も含まれますから、次のようなものも問題なく広く使われています。

よりgeneralな情報から、よりspecificな情報へと展開する「流儀」に則って読んだり書いたりする「体質」を作っておかないと、
includingが来たら具体例
などと言われても「えっ?何の具体例?」と後戻りすることになりますよ。
https://x.com/tmrowing/status/1269011299310039041

元ツイは

BREAKING: Minneapolis City Council unanimously votes for immediate reform within the city's police department, including banning chokeholds.
https://x.com/ABCWorldNews/status/1269008911228637184
速報: ミネアポリス市議会は、市警察署内の即時改革を全会一致で可決し、絞め技の禁止を含む。


動名詞で「ことがら」がOKなら、より「コト」の性質が強くなった「名詞句」も行けそうですよね?

次のような "they" が「橋渡し」になっているように感じています。
Nonconsensual photography is a rising problem in Japan. Authorities say they're also seeing a spike at schools - including more cases of kids committing the crime against their peers.
https://x.com/tmrowing/status/1874205335168442727
日本では、同意のない写真撮影(=盗撮)が増加している問題です。学校でもこの問題が増えており、子供たちが同級生に対してこの犯罪を犯すケースが増えていると当局は述べています。

ここでは、casesに続くof に意味上の主語つき動名詞が来ていて、より「ことがら」の度合いが濃くなっています。

統語面、機能面での拡張もそうですが、意味の面でも、最早「含む」では括れない、such as とかespeciallyとかと置き換えられるような使われ方が増えている印象です。

別媒体でその後の経過。“showed some signs of abating but continued”という過去形の記述で、その前後をしっかりと繋ぐことが大事。その前は「被害・損失」強調の現在完了。including は端的・顕著な例示のマーカー。文脈によってはespeciallyとかnotablyと類義。関係副詞whereの前にカンマなし?
https://x.com/tmrowing/status/1549135285258113024

元ツイは

A heatwave sweeping southern Europe that has caused hundreds of deaths and huge wildfires in past weeks showed some signs of abating but continued to move north, including towards Britain where authorities issued an extreme weather warning
https://x.com/Reuters/status/1548989344177725440
過去数週間にわたり数百人の死者と大規模な山火事を引き起こした南ヨーロッパを襲った熱波は、弱まる兆しを見せたが、北方への移動は続いており、中でもイギリスへと向かったものは当局が異常気象警報を発令した。

includingがさらに前置詞のtowardsを従えて、 (to) move north の拡散・伝搬の方向の具体化をしているものです。across from とかfrom underなどの二重前置詞とは明らかに違う結びつきで、includingは単に副詞的な意味の付与にしかなっていないような印象です。

さらに、現代英語では、次のようにthat節を従える用法も認められています。「ことがら」の名詞節ですね。

#that節を導くincluding
「立ち向かい系」の他動詞face。
a string of A(複数名詞)「一連のA」。カンマ+ includingが前置詞として単独の名詞句ではなくthat節をとっている例。
attemptに続くto haveは完了不定詞ではなく、使役のhave+人+過去分詞のmurdered。「死なれる」ではなく「殺させる」。
https://x.com/tmrowing/status/1438444414779625476

元ツイは

Nomia Rosemary Ndlovu faces a string of charges, including that she attempted to have her mother murdered
https://x.com/SundayTimesZA/status/1438345608172081159
ノミア・ローズマリー・ンドロヴは、母親の殺害を企てたなど、一連の容疑に直面している。

関連記事別媒体。
あらためて合掌。
including that節中の主従過去形確認。
The four Indigenous children 中略 have shared limited but harrowing details of their ordeal with their family, including that their mother survived the crash for days before she died.
https://x.com/tmrowing/status/1668038174936035330
4人の先住民の子供たちは、家族に自分たちの過酷な体験について限られた情報を共有しました。その中には、母親が墜落事故の後、数日間生き延びてから亡くなったということも含まれています。

that節は、“their ordeal with their family” の具体化で「ことがら」です。
これ、結構衝撃的ですよね?元々の動詞includeってthat節を含め名詞節を目的語としてとらない動詞ですから。

さあ、ここまでの流れを踏まえて次の実例を。

continue to surge + assistance というgeneralな情報を受けての具体化でincluding +specificな事例。ここでは単純な(動)名詞句ではなく手段を表すby -ingが続いている。help/support/assist → provide/send/deliver の流れに多い印象。話題(主題)→焦点でのbe動詞の補語に来るby -ingと比較。
https://x.com/tmrowing/status/1873803345544298745

元ツイは

US President Joe Biden has said his administration will continue to surge 'as much assistance to Ukraine as quickly as possible', including by delivering older American equipment to the battlefield.
https://x.com/FT/status/1873798753745793116
ジョー・バイデン米大統領は、旧式の米国製装備品を戦場に届けるなどして、政権は「ウクライナへの支援を可能な限り迅速に」強化し続けると述べた。

本来は手段を表す副詞句であるはずの by -ingがincludingの目的語相当の位置を占めています。私のツイートにあった「生息域の実感」は結構いいところを探り当てていると思いますよ。

類例
ここではsupportの具体化でincluding by providing
https://x.com/tmrowing/status/1873804144999620903

元ツイ

With wildfires raging in Ecuador, @USAID has been mobilizing quickly to support – including by providing 122 of these special backpack pumps to local responders. This easy-to-operate equipment can quickly be deployed to hard-to-reach areas in order to help suppress the blazes.
https://x.com/USAIDSavesLives/status/1840759407409291642
エクアドルで山火事が猛威を振るう中、 @USAIDは迅速に支援活動を展開しており、地元の救助隊にこの特殊なバックパックポンプ 122 台を提供しています。操作が簡単なこの機器は、手の届きにくい場所に素早く配備して、火災の鎮圧に役立てることができます。

あくまでも具体例のマーカーである点は同じですが、ここでも本来は手段を表す副詞句の by -ingがincludingに続いています。

類例追加
assistance の具体化でincluding by providing
https://x.com/tmrowing/status/1873805226400243956

元ツイ

The United States supports Somalia in its efforts to degrade al-Shabaab through various security assistance, including by providing training and equipment to the Somali National Army’s Danab Brigade.
@US2Somalia was pleased to discuss our support with Somali Chief of Defense Maj Gen Ibrahim Sheikh Muhiyadin.
https://x.com/US2SOMALIA/status/1757403144777007536
国は、ソマリア国軍のダナブ旅団への訓練や装備の提供を含む、さまざまな安全保障支援を通じて、アルシャバブを弱体化させるソマリアの取り組みを支援している。
@US2Somaliaソマリア国防軍司令官イブラヒム・シェイク・ムヒヤディン少将と我が国の支援について協議できたことを嬉しく思う。

さらに類例追加
helpの具体化でincluding by sending
https://x.com/tmrowing/status/1873806414218748258

元ツイ

Mayor Adams' budget head today blamed "stringent" application rules for NYC only getting $49M in federal migrant aid so far.
But a Biden official says FEMA has tried to help NYC unlock the full $156M for months, including by sending a team here last week.
https://x.com/C_Sommerfeldt/status/1764789859724472421
アダムス市長の予算責任者は今日、ニューヨーク市がこれまでに連邦政府から受け取れる移民援助がわずか4,900万ドルにとどまっているのは「厳格な」申請規則のせいだと非難した。
しかし、バイデン政権の関係者は、FEMAは先週チームを派遣するなど、数か月間ニューヨーク市が1億5600万ドル全額を解放できるよう支援しようとしてきたと述べている。

動名詞の否定でもOKです。

Elon Musk and his rocket company, SpaceX, have repeatedly failed to comply with federal reporting protocols aimed at protecting state secrets, including by not providing some details of his meetings with foreign leaders, according to people with knowledge of the company and internal documents.
https://www.nytimes.com/2024/12/17/technology/elon-musk-spacex-national-security-reporting.html
イーロン・マスクと彼のロケット会社スペースXは、州の秘密を保護することを目的とした連邦報告プロトコルに繰り返し従わなかった。これは、外国の指導者との会議の詳細を提供しなかったことを含むと、同社に詳しい人々や内部文書による。


そして更なる展開。
「本来は副詞句だったby -ingがincludingに続くのなら、副詞節も来れるのでは?」と思いますよね?
次の例はどうでしょうか?

including if you ‘re … の例。
https://x.com/tmrowing/status/1873819945102139816

元ツイ

Got kids aged 5-16?
There's still time to find some peace and quiet by booking them on to some of our wonderful winter activities!
Find out more, including if you're eligible for free activities!
https://x.com/lbbdcouncil/status/1872223429660721563
5~16歳のお子様はいらっしゃいますか?
弊社の素晴らしい冬のアクティビティを予約して、平穏と静けさを満喫する時間はまだあります!
無料アクティビティの対象となるかどうかなど、詳細をご確認ください。

ここではincludingは殆ど「…など」の意味を表す働きしかしていませんが、よくよくそれに続く情報を見ると、 ifで「条件」ではあるのですが、「その条件を満たすか否か」という名詞節の色が濃く現れているように感じます。

including if you’re …
類例追加
https://x.com/tmrowing/status/1873820424578228280

元ツイ

And as health officials scramble to identify the source of the McDonald's E.coli outbreak, many are left wondering if their beloved burgers are safe to eat — including if you’re a consumer in Canada.
https://x.com/globalnews/status/1849164218643218491
そして、保健当局がマクドナルドのE.coli感染源を特定しようと奔走する中、多くの人々が自分たちの愛するバーガーが安全に食べられるのか疑問に思っています。カナダの消費者である場合も含めて。

including if there was …
https://x.com/tmrowing/status/1873820724324164059

元ツイ

Mayor Strom's Election 101 series with @JeffCoClerk continues--and this week we’re talking signature verification. Sign up for Ballottrax to get updates on your ballot, including if there was an issue with your signature verification
https://x.com/LakewoodCOgov/status/1849966386606415918
ストロム市長の選挙入門シリーズ@JeffCoClerkは続きます。今週は署名の検証についてお話します。
署名の検証に問題があったかどうかなど、投票用紙の最新情報を入手するには、Ballottrax に登録してください:

次の例では、同じ「条件」でも、副詞節の色が濃くでているように思います。

記事本文
A bill printed Monday could require schools to inform parents if there is a change in a student’s “mental, emotional or physical health or wellbeing,” — perhaps including if the student discloses they are gay or transgender.
ダッシュ前後でgeneral →specificの展開を確認。
https://x.com/tmrowing/status/1873821654327185694
月曜日に印刷された法案は、学生の「精神的、感情的または身体的健康や幸福」に変化があった場合、学校が保護者に通知することを要求する可能性があります。おそらく、学生が自分がゲイまたはトランスジェンダーであると明かした場合も含まれます。

類例をもっと多く集めて精査する必要がありそうです。

※2025年1月12日追記

including if SVで条件の副詞節の色が濃い例

Any single-adult households are also eligible for a 25% discount on council tax. You’re also exempt from council tax payments for several reasons, including if you’re a full-time student or a live-in carer.
www.birminghammail.co.uk
単身世帯もまた、25%のカウンシル税(=自治体が不動産にかける税)の割引を受ける資格があります。また、フルタイムの学生や住み込みの介護者である場合など、いくつかの理由でカウンシル税の支払いが免除されます。
※ここでのif節は、reasonsの具体例ですが、for ... reason に対応する副詞要素としては、ほとんど in the case wehere SVのような意味しか担っていません。

次は、and でif SVがペアとなっている例

Have you wondered, what is the average salary of a wound care nurse practitioner? The average wound care nurse practitioner salary is $114,504 a year or $55.05 per hour. As I stated above, this number varies based on multiple factors, including if you work full time or part-time and if you work for an organization or a private practice. Also, the state you live in and if you work in a city vs. rural setting will impact your salary. Years of experience are also often factored into your average salary.
www.nursingprocess.org
傷のケアを行う看護師の平均給与について考えたことはありますか?傷のケアを行う看護師の平均給与は年額114,504ドル、時給55.05ドルです。上記のように、この数字はフルタイムまたはパートタイムで働くか、組織で働くか個人開業で働くかなど、複数の要因によって異なります。また、住んでいる州や都市部と農村部で働くかどうかも給与に影響を与えます。経験年数も平均給与にしばしば考慮されます。
※この例では、factorsの具体化で、andのペアでif A and if B が続いています。ここではifの条件設定で、「もしAならそのこと、もしBならそのこと」という副詞節経由の名詞化と捉えるか、「Aが当てはまるかどうか」「Bが当てはまるかどうか」という「ことがら」をfactor=要因と見做しているか、とでも考えないと、意味の整合ができないのでは、と思います。

ここまで述べてきたようなincludingの機能、生息域の拡大は、辞書でも、教材でもまだまだ未対応ですが、現実には使われていて、拡がっている印象です。

個人的には、次のようなexceptが「除外」して「排他的」に「例外」を表す用法と対照的に、includingが「内包・包括」的に、言ってみれば「例内」の文脈を作るものとして使われるようになってきたと見ています。

I liked the job except (that) I had to work on Sundays.日曜日に仕事がある以外はその仕事が気に入っていた (Wisdom英和)
緊急[来客]のとき以外はその出入口は使いません
We never use that gateway except in an emergency [except when we have guests].(Wisdom和英)
Don't say anything except if you are spoken to. 話しかけられなければ何も言うな (O-LEX英和)
You cannot lose except 「through your own carelessness [by being careless].
不注意による以外は負けるはずがない ⦅目的語は前置詞句⦆.(コンパスローズ英和)

最後の用例を引いたコンパスローズでは、exceptが「(代)名詞以外を目的語にとることがある」として例をあげていますので、比較してみるといいでしょう。

本来副詞(句・節)だった筈の表現が、名詞(句・節)が占めるべき位置に来る表現形式は、過去ログでも取り上げています。

2024-03-10
焦点=副詞=補語?
tmrowing.hatenablog.com

その時に例として示した

The first time I saw San Francisco Ballet principal Yuan Yuan Tan dance was as a 9-year-old child in the early aughts.
The only time I saw him in person was as a boy at St Barnabas church Pimlico, where I was in the choir in the late 50s.
The only time I saw her being harassed was by a grumpy old man as we were waiting for the elevator in Firestone Library.
The only time I saw Ginger Rogers in the flesh was by chance in a book store on New York’s Fifth Avenue.
Another way animals learn is through imitation. Some young birds learn to fly by imitating their parents.
One reason for going to the street shops is because of the relationship you have with the owners.

といった句のレベルでも、

The only time he knows where he is is when he has to call collect and ask his parents for money.
The only time G2G would have been a good deal was if we were getting the oil cheaper.

のような節のレベルでも、主語に(強い)限定がつき、話題化→焦点化でbe動詞等に続く補語の位置を占める表現であるという共通点(制約)がありました。

今回のincludingの振る舞いは、そのような制約ではなく、general → specificの流れから出てきたもののように感じられます。
どのような説明が一番尤もらしいものになるでしょうか?
一つ一つの実例を愛でるくらいの大らかさで、受け入れ、包み込みたいものです。

本日はこの辺で。

本日のBGM: 君がいるだけで (米米CLUB)

open.spotify.com


追記:
例によって、世間は英語表現そのものには興味関心が薄いようですが、大学入試でも次のように、読解の素材文では、単純な名詞句以外の英語表現がincludingに続くものが出てきています。

For young college graduates, living abroad alone can be a very exciting experience. At the same time, it can also be difficult to get used to a new life without knowing anyone in the country. To lessen that difficulty, graduates can prepare for their new lives in several ways before departure, including by living on a small budget, by going to many places, and by meeting many people.
大学を卒業したばかりの若者にとって、海外での一人暮らしはとてもエキサイティングな経験になる。同時に、その国に知り合いが誰もいない状態で新しい生活に慣れるのは難しいことでもある。その難しさを軽減するために、卒業生は出発前に、少ない予算で生活する、多くの場所に行く、多くの人に会うなど、いくつかの方法で新生活の準備をすることができる。

including の後に、by+ ing形が列挙され、"prepare" の具体化をしています。

次の例では、"including that SV" が出てきていますね。

FDR’s vice president after the election of 1944 was a little-known politician named Harry Truman, with whom the president shared virtually no information ― including that America was developing an atomic bomb. Ironically, it was Truman to whom the decision to use it would fall.
FDRの1944年の選挙後の副大統領は、ハリー・トルーマンというあまり知られていない政治家であり、大統領は原子爆弾を開発していることを含め、ほとんど情報を共有していなかった。皮肉なことに、それを使用する決定が下されるのはトルーマンであった。

因に、次の出題では、thatを従えるincludingが錯乱肢に入っています。

Ralph forgot his computer, ( ) he was unable to contribute to the meeting.
(1) including that (2) resulting in (3) with it
(4) without which

正答は (4) without which で簡単な問題ですが、選択肢の (1) を空所に入れるとなると、thatの後にSVで節が来ることになります。(2)を入れると前置詞inの後に更に節を続けるためにはthatやwhatなどの語が必要です。(3)では意味の上でも統語的にも整合させるのは難しいですね。
出題者が(1)のincluding thatを錯乱肢に入れた見解を聞きたいものです。

最後に、"except if節" をベンチマークにして、Ngram Viewerの結果を載せておきます。



2025年1月3日追記:
NOWコーパスの新春メンテナンスが終わったので、関連の検索結果を貼っておきます。

私がなぜ、今回の "including by" に反応していたのか、よくわかるNOWの検索結果です。

ニュースの英語では、群を抜いて、including by のヒット数が多いことが見て取れます。

同じ世界20エリアでも、GLOWBEは2012-2013のデータ。

including byは英文化圏で結構ヒット数が多い印象。

COCAは2019年までですが、均衡コーパスとしてベンチマークに。

SPOKENでの数値で、including byが41、except byが56ですね。

参考程度にTVコーパスも。

そろそろ辞書でも、"including by" の用例を検討する時期では?

alive and well

いよいよ大晦日。
この2024年は、会いたい人に会いに行く、見たいものを見に行く、書きたいもの書く、ということを努めて実行しようと生き延びてきました。
ライブや原画展、展覧会などに足を運ぶこともでき、昨年とはかなり違う一年になったと感じています。

昨日の講座をもって、冬季セミナー祭り、年末の3連チャンも終わりました。
お疲れ様でした。充実した時間となっていれば幸いです。
皆さんからのフィードバックをお待ちしております。

事後共有スライドは1月に開催されるそれぞれの同内容の講座終了後、お送りします。
今回のセミナーが良かったと評価していただけるようでしたら、同内容で開催される1月の回を、お知り合いの方にお薦めください。

早速12月28日、29日のセミナー受講者からフィードバックが寄せられました。

まずは28日のセミナー。

  • 英文法・語法・表現セミナー:その英語気になりませんか?

こんな概要の講座です。

ブログの20周年を記念し、これまでに取り上げてきた「気になる語法」を中心として、主に松井が解説するものですが、参加者からの質疑応答など、チャットを通じて、またはマイクオンでのやりとりも想定しています。巷のメディアや英語教材で示される「英語表現」に関して講師の松井が持っている疑義も共有出来ればと思います。

匿名でフィードバックのご紹介。

本日は大変貴重なセミナーを開催して下さりありがとうございました。
日々、英語に接しておりますが、自分の英語との付き合い方を再確認させられる内容でした。先生の用例との向き合い方を見て、自分も松井先生のようにもっと深く・広く用例と向き合わないといけないなと感じました。

研究者レベル、学習参考書作成者レベル、教師レベルで話題にすべき問題がたくさん取り上げられていたことも良かったです。いち英語語法の研究者としてもっと英語の実態を伝えていかなければいけないなと思いました。まずは現在取り組んでいる書籍の原稿を世に送り出せるように頑張ります。


続いて、北星学園女子中学高等学校の吉田努先生より。

松井先生が示す実例に全て納得してばかりの3時間でした。
12月末のこの時期だからこそ、心身が健康な状態でブログで発信していただいていた情報を読み・考え・調べることができました。特にpick, pick out, choose, selectの話は納得しきりでした。
言語の実態に沿って、その表現がどの場面で使用されるのか(USE)の部分をしっかりと理解し、指導することの大切さを改めて感じました。

私事ですが、2021年から2023年にかけてCambridgeの指導者資格であるDelta取得のため勉強し、資格を取得しました。その過程の中で、教える言語項目をUSE, FORM, MEANINGの観点から分析する必要があります。今回松井先生に示していただいた実例は深いレベルでのそうした分析そのものでしたので、言語の生息域を生徒に教えることの意義を再確認しました。

辞書や書籍には載っていないけれども、実は既にそこに現れていたことを見せていただき、自分の言葉への感受性を高める努力が必要だと痛感しました。先生がセミナー中におっしゃった「あ、雨降ってない?」という比喩表現、言い得て妙ですね。コロナ後の変化を見ると、もう雨は降っていますね。

今回のセミナーで先生から直接お話を聴くことで、ブログにまとめていただいていた情報の価値に気づくことができました。こんなにも豊かな記述があることに改めて感謝します。ブログを読んで、自分でも考え、調べてみることができるかと思うとワクワクします。先生と一緒に見晴らしの良い展望台に連れて行っていただき、街の見取り図を見せていただいたような晴れやかな気分です。

この冬、先生に多くのオンラインセミナーを開催していただけること、嬉しく思っています。既に申し込んでいる回だけでなく、年明けのセミナーの受講も検討しています。世界中どこからでも先生のセミナー受講できることに感謝しています。今回はありがとうございました。楽しい時間でした。

丁寧な振り返りをありがとうございます。深謝。

同内容のセミナーは1月12日開催です。

passmarket.yahoo.co.jp

29日のセミナーは、

  • 英文ライティング指導法セミナー:表現も・論理も〜和文英訳と英文ライティングの指導法

高校段階では「和文英訳」にしても、お題に基づく「自由英作文」にしても「志望校の過去問を解かせて添削」に、中学段階でも「英検の過去問を解かせて添削」が「ライティングの指導法」のように思われがちですが、お題の選択から指導者が関わっていない場合には、適切で効果的なフィードバックを与えることが難しく、学習効果が上がり難くなります。特に「和文英訳」では、巷に蔓延る、かなり雑な「和文和訳」の処理をしてから英訳に取り掛かるアプローチが、折角の学習者の英語力の向上を阻害しかねない事例も目にしています。「和文英訳」であれ「お題作文」であれ、「エイブン」ではなく「英文」であることが求められるわけですから、この二つに通底しているはずの「ライティング力」を実践例をつうじて浮かび上がらせたいと思います。ChatGPTに代表されるAI支援では行き届かない、人間のライティング教師ならではの、関わり方に関しても実践例を紹介し、知見を共有したいと思います。
以下の観点に留意して、主として高校生や大学受験生の指導者を対象とした、適切で効果的な「和文英訳」「英文ライティング」の指導のあり方を考えます。
・「良い英文」とは?
・和文英訳での英文の「つながり」と「まとまり」
・「効果的な過去問」の利用法、「過去問」日本文の修正法
・高校生が書いた英文へのフィードバックの実例検証
・DeepLやChatGPTの使用例
・オンラインコーパスとアプリ辞書の活用

こちらの講座にもフィードバックをいただいております。

長時間、非常に有意義なお話をお伺いでき光栄に思います。前日もセミナーをされていたと聞き、非常にお疲れのことと思います。本当にありがとうございました。普段はXでの投稿やブログ記事、購入したノートを眺めているのですが、仕事が休みに入ったタイミングでセミナーにようやく参加でき、松井先生がどのような視座で英語に向き合っているのか、その一端を垣間見ることができたと思います。

私は中高の教職ではありませんが、英語を指導する立場として、日々生徒相手に奮闘しています。その指導の中で適切な課題の提示やフィードバック、ガイダンス等で頭を悩ませる日々です。どんな学生であれ、彼らにとって英語そのものに興味を持てるような授業でありたいと思いつつも、現実は「英作文の汎用的な型を教えて欲しい。」「この英作文だったらどのくらいの点数が出るのか教えて欲しい」「何をすればいいのかわからない」といった文言に苦悩しています。指導力向上のヒントを得られたらと思い、松井先生のセミナーには非常に興味を持っていました。

テクストタイプの重要性、obituaryや偉人伝等の活用、文法問題へのアプローチ等、実践的なアドバイスを多くいただき、早速教材の活用法を改めたいと思っています。特にいわゆるAIの指導現場への活用は非常に難しいと感じていて、なんとなくChatGPTをはじめとする添削の違和感を松井先生がしっかり言語化してくださったことが印象的でした。その違和感を払拭することが人間である私が身につけるべき姿勢であり、うまく活用することで、業務の効率化にもつながってくるのではと感じています。年末で身体を休めたいなと思っていた中、心は来年度の指導に勤しみたい、そういう葛藤を抱けるくらいに勉強させていただきました。本当にありがとうございました。

次は、白梅学園高等学校の細井俊克先生からの超長文のレポートです。
研究会の月例会のまとめ以上の精緻な観察と分析だと思います。ありがとうございます。

本セミナーでは、高等学校における英作文指導の課題と可能性について、具体的な実践方法の面から考察が行われました。先生がかねてから強調されていた「つながり」と「まとまり」を最終的にどのように育むかというテーマが据えられており、現場での指導の質を高めるための多くの示唆を得ることができました。

とくに、先生が強調されていた、できない理由を生徒に転嫁しない、という教師の姿勢の重要性については共感することしきりでした。現在、私が指導している生徒を含めて、多くの生徒が英作文に必要な基礎的なスキルに達していない現状がありますが、それを生徒の問題として片付けるのではなく、教師自身が指導の目的意識を明確に持ち、生徒の状態に応じた指導を行う必要があると認識致しました。この視点は非常に印象深く、英語教育が単なる知識の伝達ではなく、生徒ひとりひとりをどのように導くかという点に重きを置くべきであることを再確認させられました。

具体的な指導方法についてもご紹介いただきました。特に、名詞句の後置修飾や副詞節マッチングといったチャンクを意識した指導法が取り上げられ、それが生徒の論理的な思考を育む鍵となることが示されました。私もちょうど先生のチャンク赤本から緑本を高校1年~2年で採用させて頂いて指導させて頂いており、ちょうど現在担当している高校2年生で緑本の演習2が終わった位のところにおりますので、高3の1学期までには緑本を終えるというシラバスで展開させて頂いております。その為、どういった視点で生徒に『覚える方が早い』ということを実感させられるかな、ということを考えながら先生の実践を聞いておりました。赤本も緑本も句単位、節単位での配列に工夫が凝らされており、教材研究をしながら「あ、ここでこうつながるか!」といつもヒザを打つことしきりで、ある意味、感覚的な言い方で申し訳ありませんが、伏線回収の妙というか、よく練られた推理小説を読んでいるような気分になり、大変勉強になっております。こういったチャンク単位での指導法は、動詞型を中心とした文法知識だけの指導と対比しても、英文全体の「つながり」を意識させるものであり、その有効性を実感しています。
ディスコース・コンプリションのような課題は、「つながり」と「まとまり」、論理という意味でいえば、検定教科書でさえも散見される不自然な「英語もどき」を克服する一助にもなると感じました。実際のところ、「つながり」や「まとまり」を重視する姿勢は、日本語教育においても必要不可欠であり、母語で論理性を認識する機会が減少している現状が、英語での指導の難しさをさらに高めているな、という事にも思い至りました。この点については、ソーシャルメディアの断片的な情報に慣れている現代の生徒たちが、瞬間的に消費されるコトバに慣らされ、情報の「論理性」や「文脈」を捉えにくい環境にあることも一因なのかな、と感じております。いずれにしても、言葉の意味は文脈からは切り離しては存在せず、こういった視点を涵養することの重要性を再認識させられた次第です。

オンラインツールや生成AIを活用した指導について紹介がありました。とりわけ、生成AIによるフィードバックが、現場のニーズに応えるレベルに達していない現状や、AIに頼りすぎることで教員自身のフィードバック能力が向上しないリスクも指摘されました。このように、ツールを導入する際には、教師側が確固たる運用能力を持つことが不可欠であり、それがなければツールの善し悪しを判断することも難しいという意見には深く共感しました。確かに、現状の生成AIのアウトプットはまだまだ底が浅いものであり、先生の行われているマニュアルでのフィードバックには到底敵わない出来のものであるという認識は共有しております。しかし残念ながら、生成AIで出て来たフィードバックの良し悪しを見取れる教員もまた少ないというのが現状です。私は情報科の教員でもある為、生成AIをどのように活用するのかについては常日頃、課題意識を持ちつつ模索しておりますが、先生がご指摘されたように、単に教師がアタマを使わずに丸投げするための道具になってしまっては、教員のフィードバック・スキルが低下することは間違いありません。であるならば、生徒にとっても教員にとっても如何にして自己の能力涵養に役立つ道を見つけ出すかは、私たちに課せられた重大な課題であると認識しています。道具はヒトの能力を拡張させるべきものであり、ではどのように拡張できるのかを議論しなくてはなりません。先生のように生成AIを実際に使ってみて現状の課題を認識され、その上でその限界を把握されて、現状では人手によるフィードバックが有益であるという結論に至られていることに敬意を表します(情報科の教員として)。この事は非常に重要で、業者が作ったものに単に丸投げして何も考えないで無批判に依存してしまったり、また逆に同じく丸投げして使えないからダメとダメ出ししているといった低次の批判とは、いわば批判の階層がまったく異なる高次の批判であると思うのです。技術的には、先生の経験知や見識を反映できるような生成AIが実現できなくてはなりません。さらにいえば、その良し悪しをきちんと見取ることのできる教員であらねばならないと思っております。

セミナー全体を通じて、英語科教員としても情報科教員としても多くの学びがありました。英作文指導におけるチャンク指導や論理性の育成を引き続き実践しつつ、より良い英語教育を実践できる環境を目指していきたいと考えています。引き続き、ご教示頂ければと思います。

このレポートを文科省で、次期「学習指導要領」を策定しているチームの方たちに熟読していただきたいですね。パブリックコメントで出したいくらい。私も、日々の実践の積み重ねを頑張ってきた甲斐があるというものです。あとは授業で頑張ってくれた生徒諸君に感謝。

同内容の講座は1月11日に開催です。

passmarket.yahoo.co.jp

年末最後の講座となった30日のセミナーは、

  • 英語学習&教育セミナー:名詞句を中心とした英語の 「チャンク」の捉え方・学び方と「四角化ドリル」の活用法

英語の名詞句の理解と定着は、英文法の全体像を理解するためにも重要です。
学習者も指導者も、とかく「問題演習」と称して、「英文」の空所補充や並べ替えで「ひとつの文」を完成させることに躍起になりがちですが、その前段階の文未満の単位である「チャンク」、とりわけ「名詞句」に着目し、段階的なドリルを積みあげる上での表現の取捨選択の背景、記号付けの手順などをお話しします。
・なぜ「チャンク」?
・なぜ「名詞句」?
・なぜ「四角化」?
・文未満の単位から文へ
・文を超えた「つながりとまとまり」から文へ
講師の松井による学校採択教材『チャンクで積み上げ英作文』(三省堂)の執筆の背景となる理念や使用上の注意点、また四角化ドリルに至る、またそこから展開する教室内外での実践についてもこの機会にお話しします。

今回は期せずして、受講された方は皆、英語指導者の方でした。

まだフィードバックは届いておりませんが、同内容の講座は1月5日に開催です。
申し込み締め切りは1月1日の18:00ですのでお早めに!

passmarket.yahoo.co.jp

年明けにはもう一つセミナーがあります。
こちらは既に申し込みを締め切っております。

  • 2025年1月4日
  • SNSの英語ニュース&辞書&オンラインコーパスの活用法

①SNSのニュース英語の活用法:講師の松井が日々ツイッター(現X)で行っている「英語ニュース引用RT」を実演し、着眼点や現代英語の語法の変化などを解説します。

②辞書活用法:この目的のためにはこの辞書を買え!という辞書の薦めではなく、英和・和英辞典/英英辞典を含めた「自分の持つ辞書の特徴・特長」を知り、その機能をフルに活かすための「活用法」をお伝えします。最近普及しつつあるアプリ辞書の操作画面を共有しながら解説し、「フォルダー」のカスタマイズの工夫などもお見せします。

③現代英語の実態を把握するのに今や不可欠な「オンラインコーパス」のうち、COCA系とNgram Viewerを中心に、講師の松井が普段、どのように使っているか、入力方法、絞り込みの工夫などをお伝えします。

3部構成で、それぞれ50分程度で、盛り沢山です。実演を交えて実践的な情報・活用法をお伝えします。本当は、辞書を作っている方とか、辞書の研究をしている学者さんに来てほしかったんですけどね…。

年末のセミナー祭りが一段落なので、やっと自分の好きなものを読む時間が取れます。
まずはこちら。



  • Ann Sherif (1999). Mirros: The Fiction and Essays of Koda Aya University of Hawaii Press

もうちょっと作品の英訳があるかな、とは期待していたのですが、まあいいでしょう。楽しく読みます。

2024年はこの記事を入れて、合計で103本のブログ記事を投稿できました。
ご愛読に感謝します。

皆さんにとって2025年がよい年でありますように。

本年はこの辺で。
本年最後のBGM: Verdi Cries (10,000 Maniacs)

open.spotify.com

freedom of choice

  • 選ばれたのは綾鷹でした

https://youtu.be/XCjomqoLYw8?si=jHaXNzwh7jjlk0ah

というCMが話題になって久しいですが、この「選ぶ」「選ばれる」に対応する英語表現は、学習の発達段階を考慮し、運用で適切に使い分けるためにも、一度きちんと整理した方がいいと思っています。

大学入試で頻出とされる「選ぶ」に対応する英語表現では

  • pick out

を思いつく人が多いでしょう。
日本語のカタカナ語の「ピックアップ」をそのままスライドさせてpick up を選ぶと間違えるように問題が作られているか、同意語としてchoose やselectなどとの互換が問われることが多い印象です。
ソーシャルメディアなどWEBで得られるお手軽な情報を見ていてもそんなのばっかりでしょ?

入試での出題例としても、pick outって「頻出」というほど実際に出ているのかちょっと疑問。
「車で迎えに行く」以外の、pick upの多義具合を理解しておく方がよっぽどご利益があると思います。

個人的にはそれほど頻出とも思えないpick outの出題例を見てみると、

Kate picked ( ) five beautiful peaches.
で、chose (=choose)の過去形と同意となるように、空所にoutを選ばせる出題

She picked out the shoes that matched the dress.
で pick(ed) out の同意語として chose (chooseの過去形)を選ばせる出題

She picked out the shoes that match the dress.
でpick(ed) outの同意語として select(ed)を選ばせる出題

Cathy picked out a good book to give to her brother as a graduation gift.
でpick(ed) outの同意語としてselect(ed)を選ばせる出題

などでパターンは出尽くしている感じ。
普段から英語を使っている人が話したり、書いたりする英語では当然のことながらpick up と言い間違える、書き間違えることはまずないわけで、ことさら「ピックアップ」を持ち出すこと自体が悪手なのでは、とさえ思います。

私が気になるのはむしろ、同意語とされるchooseやselectとの使い分けと、そもそも動詞のpickに「選ぶ;選び出す」という意味がある筈で、単独のpickと句動詞のpick outの使い分けです。

語義の確認といえば『英語表現辞典』(研究社、第2版、1985年)ですね。以下pp.216-217のchooseとその類語より抜粋で引用。

Choose (選ぶ)は一般的な語・物・人・コースなどで若干の選択の可能性のあるものの中から選んで決めたものを実際に取ることを意味するときにその決定が最終的な行為であることが含意される : choose one (from) among (or out of) many (多くの中からひとつを選ぶ) / There are only five to choose from. (選ぶものは5つしかない)/ There's nothing (not much or little) to choose between them. (あまり大差はない)/ They choose him as (or to be) their president. (彼を会長に選んだ)/ He was chosen (as) president. (彼は会長に選ばれた) / He cannot choose but obey. (彼は, 従わざるを得ない). 不定詞を従えて prefer, decide と同意となることもある: I would choose to live his life. (彼のような人生を送りたいものだ)/ He chose not to know. (彼は知るまいと決心した)
(中略)
Pick は個人的な理由, 通例好みや希望などに従って注意して選び出す意味を表わし、select よりもくだけた, 形式ばらない語である: pick a good one out of the lot (全体の中からよいのを選ぶ) / pick one's words (言葉づかいに気をつける) / pick one's way (or steps) along a muddy road (どろんこ道を足もとに気をつけて歩く) | pick a number from 1 to 10 (1から10までの中の任意の数を選ぶ) | Pick out the books that you'd like to read. (読みたい本をよりなさい).
(中略)
Select は、 ある物がもっとも目的にかなっているためにそれを選ぶことを示し,慎重にえり抜くという意味合いがあり, choose よりも選択範囲が広くかつ強い語である。 しばしばfor, among, out of や不定詞を伴う: select the date (日取りを決める) / select the best book for reading (読書にもっともよい本を選ぶ) / select a toy for a child (子供におもちゃを選んでやる) / select the best among (or out of) many works (多数の中から最優秀作品を選ぶ)/ select the chairman by vote (議長を投票で選ぶ) / I was selected to make a speech. (私は選ばれて演説した).

同意語・類義語の確認でお世話になってきた「父上本」による労作、

  • 上本佐一 『英語同意語小辞典』(研究社、1970年)

の pp82-83より抜粋で引用。

choose 選ぶ: 通例、自分が好む好まないにかかわらず、あるものを最良 [最適] と判断して決定する。
select 同種の多数の中から、もっとも好むものを一つ [二つ以上] 慎重に選び出す。chooseよりも意味の強い語。
pick 通例、有形のものを、人の好みや希望にしたがって注意して選(よ)り出す。selectほど形式ばらない語。pick out the best book 一番良い本を選び出す。
single out 多数の人 [物] の中から一人 [一物] を選り出す。 I singled her out of the applicants. 志願者の中から彼女を選んだ。

1970年以前の英語で編まれた「父上本」の『小辞典』で句動詞のsingle outを入れていたのは意外でした。

私のそもそもの問いの

pick
pick out
choose
select

の使い分けに関しては、句動詞のpick out を含めた類語の扱いが教材にも辞書にも殆ど見られないので、自分で探ってみるしかないのかな、と思います。

まず、他動詞としてのpickの語義や生息域を押さえることが大事でしょう。
「物書堂」では引けない辞書から引用します。
マクミランの米語上級学習者版(MED)でのpick

to choose someone or something from a group:

  • Out of all the girls he could have gone out with, he picked me.
  • She was picked for the school play.
  • I haven’t picked my team yet for the new project.


MW’sの学習用でのpick

to choose or select (someone or something) from a group

  • Pick a card---any card.
  • The winner will be picked by lottery.
  • She was picked to replace the retiring CEO.
  • Who do you think he will pick as/for his running mate?
  • He picked the blue tie to wear to the interview.
  • He picked the right/wrong answer.
  • They both picked New York to win the World Series. [= they both said that they thought the New York team would win the World Series]

LDOCEでのpick

to choose a person or thing, for example because they are the best or most suitable:

  • Students have to pick three courses from a list of 15.
  • I don’t know which colour to pick.
  • Who’s going to pick the team for the match on Saturday?
  • I wasn’t picked for the hockey team.
  • The hotel was picked as the best small hotel in the area.

Cambridge でのpick

to take some things and leave others:

  • Pick a card from a pack.
  • One of my sisters has been picked for the Olympic team.
  • The police asked him if he could pick (out) the killer from a series of photos.
  • He’s brilliant at picking winners ( = choosing what will be successful).

Cambridgeの最後から2例目のカッコ付きが気になりますよね?その他の例では互換不能で、この例だけが互換可能なのか?違いがあるとしたらそれは何か?
辞書や語法書、学参ってそういうところで有益な情報を与えてほしいと思います。

pick out の用例を抜き出してみましょう。

Have you picked out a dress for the party? (MED)
It took him an hour to pick out [=pick] what to wear.
They let their two-year-old daughter pick out her own clothes.
I’ve picked out the perfect spot for our picnic. (以上MW’s)
She picked out a navy blue dress. (LDOCE)
I have been picked out to represent the whole team.
There are so many great newscasters it’s difficult to pick one out. (以上COBUILD)
She was picked out from dozens of applicants for the job.
He was picked out as the best player. (以上OALD)
She picked out a pink shirt for me to try on.
Over 200 people applied for the job and we had to pick out eight to interview. (以上Cambridge句動詞辞典)

MW’sの用例の一つには pick outをpickの意味で読みなさい、という=がついていますが、その他の例では、そのように読み替えることが出来るのか、出来ないのか、というところがよくわかりません。

「物は試し」で生成系AIに投げ掛けてみることにしました。

まず、日常、インフォーマル/カジュアルな場面を想定して、

1. In the morning, I get up and pick clothes to wear myself.
2. 1. In the morning, I get up and pick out clothes to wear myself.
3. 1. In the morning, I get up and choose clothes to wear myself.
4. 1. In the morning, I get up and select clothes to wear myself.
の4つの表現は、全て同じ意味となるか?
これらの表現を選択する人が頭の中で何をどう考えているか推測できるか?
4つの表現の使用頻度の高低、自然さでの上下が分かれば教えて。

と投げ掛けてみた回答です。

Copilot
Those sentences all mean the same thing in terms of the action described—getting up in the morning and deciding on clothes to wear. However, the different word choices convey subtle variations in tone and style:

1. "Pick clothes to wear myself": This feels straightforward and casual. The word "pick" is a common, everyday term.
2. "Pick out clothes to wear myself": Adding "out" can make it slightly more informal and conversational.
3. "Choose clothes to wear myself": "Choose" is a bit more formal than "pick," lending a slightly more deliberate tone.
4. "Select clothes to wear myself": "Select" is the most formal and precise of the four, giving a sense of careful consideration.

People might choose different versions based on their personal speaking style, the formality of the context, or just personal preference. As for common usage:

  • "Pick" and "choose" are more commonly used in everyday conversations.
  • "Pick out" is also quite common and feels more relaxed.
  • "Select" is less common in casual speech and is more often used in formal contexts.

Hope this helps! Which one do you find yourself leaning towards?

Gemini
You're asking about subtle differences in meaning and usage, which is a great question! Here's my take on those sentences:
Do they all mean the same?
Essentially, yes. All four sentences convey the basic action of selecting clothes to wear. However, there are slight nuances:

  • "Pick": This is the most general and informal. It implies a simple act of choosing without necessarily implying careful consideration.
  • "Pick out": The addition of "out" emphasizes the act of separating the chosen clothes from the rest. It suggests a slightly more deliberate selection.
  • "Choose": This is a more formal and neutral term. It implies a conscious decision-making process.
  • "Select": This is the most formal and implies a careful and considered choice, often from a larger set of options.

What's going on in their mind?
It's hard to say for sure, but here are some possible interpretations:

  • Someone who says "pick" might be someone who doesn't spend much time thinking about their outfit. They grab something and go.
  • Someone who says "pick out" might be slightly more thoughtful, perhaps considering factors like matching colors or weather.
  • Someone who says "choose" might be more deliberate in their selection, perhaps considering the occasion or their personal style.
  • Someone who says "select" might be very meticulous about their appearance, perhaps choosing from a wide wardrobe or for a special event.

Most/least common and natural?
In everyday spoken English, I'd say:

  • Most common and natural: "Pick out" is probably the most common and natural way to express this idea in casual conversation. "Pick" is also very common.
  • Less common/more formal: "Choose" is slightly less common in this specific context, though perfectly acceptable. "Select" is the least common and sounds the most formal or deliberate.

In summary: While all four sentences are grammatically correct and convey the same basic meaning, they differ slightly in formality and the degree of deliberation they imply. "Pick out" strikes a good balance between informality and clarity, making it likely the most common choice in everyday speech.

Claude

1. Yes, all four expressions essentially mean the same thing - describing the morning routine of selecting clothing. The slight variations reflect different nuances:

2. Word choice analysis:

  • "pick" is casual and straightforward
  • "pick out" emphasizes the selection process more deliberately
  • "choose" sounds more formal and thoughtful
  • "select" is the most formal and precise of the options

3. Common usage:

  • Most natural: "pick out" and "choose" are most commonly used in this context
  • Less common: "select" feels more formal for daily routine description
  • "pick" alone, while correct, feels slightly less specific than "pick out"

4. The choice often reflects the speaker's mindset:

  • Casual conversation: "pick"
  • Discussing a specific outfit selection: "pick out"
  • Making a conscious decision: "choose"
  • Formal or professional context: "select"

さあ、彼らの回答をどう解釈し、受け入れますか?

次はちょっと別な場面を想定して同じ質問。

1. Ohtani picked the Dodgers as the team he should belong to.
2. Ohtani picked out the Dodgers as the team he should belong to.
3. Ohtani chose the Dodgers as the team he should belong to.
4. Ohtani selected the Dodgers as the team he should belong to.

以下、彼らの回答です。

Claude
Based on the search results, while all these expressions convey similar meanings, there are important differences:

  • 1. "Chose" is the most natural and commonly used expression, as evidenced by Ohtani's own words: "I had to choose one team, and the Dodgers were my choice".
  • 2. "Selected" is also formal and appropriate but feels more methodical and analytical.
  • 3. "Picked" is more casual and implies a more spontaneous decision.
  • 4."Picked out" is the least natural in this context - it's typically used for choosing items from a display or selection, not for major career decisions.

The choice of words might reflect the speaker's perception of the decision-making process. Ohtani's actual use of "choose" aligns with the thoughtful, humble approach demonstrated in his interviews.

Gemini
The sentences all convey the same basic meaning: Ohtani selected the Dodgers as his preferred team. However, there are subtle differences in nuance:

  • "Picked" is the most casual and informal of the options. It suggests a simple choice, perhaps made quickly or without much deliberation.
  • "Picked out" implies a more careful selection, as if Ohtani considered several options before choosing the Dodgers.
  • "Chose" is a neutral and common word for making a selection. It doesn't imply any particular level of care or -deliberation.
  • "Selected" is the most formal and deliberate of the options. It suggests a conscious and thoughtful decision-making process.

In terms of naturalness and frequency:

  • "Chose" is likely the most common and natural in this context.
  • "Selected" might sound slightly stilted or overly formal for casual conversation.
  • "Picked" and "picked out" are both acceptable, with "picked out" slightly more nuanced.

The choice of which word to use might also depend on the speaker's personal style and the overall tone of the conversation.

Copilot
The sentences all convey the idea of Ohtani deciding on the Dodgers as the team he should join, but there are subtle differences in their usage and tone:

Here’s a breakdown:

  • Picked: Informal and casual. It suggests a simple act of choosing without much deliberation.
  • Picked out: Slightly more specific than "picked," emphasizing the act of distinguishing and choosing from a group.
  • Chose: Neutral and versatile. It suggests a deliberate decision but is still casual.
  • Selected: Formal and suggests a careful and considered decision-making process.

In terms of naturalness and commonality:

  • Most common and natural: "Chose" and "picked" are more likely to be used in everyday conversation due to their simplicity and versatility.
  • Less common but still natural: "Selected" might be used in formal contexts, such as official announcements or news articles.
  • Least common and somewhat less natural: "Picked out" is less frequently used, and can sound a bit awkward in casual conversation.

The choice of words can reflect how the speaker wants to convey the decision-making process, the level of formality, and the speaker's style.

I hope this helps! Is there a specific context you have in mind for these sentences?

「自分で自分が着る服を選ぶ」場合と、「大谷選手が自分に相応しいチームを選ぶ」場合で結構差がでてきたように感じます。

続いてもう一つ投げ掛けてみました。

1. Ohtani was picked as the best player.
2. Ohtani was picked out as the best player.
3. Ohtani was chosen as the best player.
4. Ohtani was selected as the best player.

受け身 での判断です。
以下、彼らの回答。

Claude
Based on the search results about Ohtani
1. All four expressions essentially convey the same core meaning - that Ohtani was identified as the best player. However, there are subtle nuances:

2. Usage nuances:

  • "picked" - casual, everyday language
  • "picked out" - implies careful selection from multiple options
  • "chosen" - more formal, dignified choice
  • "selected" - most formal, often used in official announcements

3. Frequency of use: Most common → least common:

  • 1. "selected as" (most formal and widely used)
  • 2. "chosen as" (formal but versatile)
  • 3. "picked as" (casual)
  • 4. "picked out as" (least common, slightly awkward)

Gemini
All four sentences convey a similar meaning, but with slightly different nuances:

  • "Ohtani was picked as the best player." This is the most common and neutral option. It simply states that Ohtani was selected as the best.
  • "Ohtani was picked out as the best player." This suggests a more deliberate or careful selection process. The "out" implies a separation or distinction from others.
  • "Ohtani was chosen as the best player." This is very similar to "picked" but perhaps slightly more formal or deliberate.
  • "Ohtani was selected as the best player." This is also a formal and neutral option, often used in official contexts.

Frequency:

  • "Picked as" is likely the most common in everyday conversation.
  • "Chosen as" and "selected as" are more frequent in formal settings or written contexts.
  • "Picked out as" is probably the least common of the four.

Subtle Differences in Meaning:

  • "Picked" is the most general and straightforward.
  • "Picked out" emphasizes the act of identifying and choosing Ohtani specifically.
  • "Chosen" implies a more deliberate and thoughtful decision.
  • "Selected" suggests a more formal or official process.

In summary: While all four sentences are grammatically correct and convey the same basic idea, the choice of verb can subtly influence the perceived tone and emphasis.

Copilot
They are quite close in meaning, with some subtle nuances in choice of wording:

  • 1. Picked: Casual and straightforward. It suggests an informal selection process, often used in everyday conversation.
  • 2. Picked out: Emphasizes the act of distinguishing or identifying from a group. It can suggest a bit more effort in the selection process, though still relatively informal.
  • 3. Chosen: Slightly more formal. Implies a decision made with consideration.
  • 4. Selected: The most formal. It can suggest a meticulous, often official or structured, selection process.

What's going on in their mind?:

  • Someone using "picked" or "picked out" might be thinking in a more casual or conversational tone.
  • "Chosen" suggests a bit more deliberation.
  • "Selected" might convey the idea of an official, careful decision.

As for common usage, it often depends on context and setting:

  • Picked and chosen might be the most common in casual conversation.
  • Selected is frequently used in formal contexts or writing.
  • Picked out is less common but used to emphasize the selection process.

So if you're trying to understand the intent behind the choice, it's all about the degree of formality and the nuance of how deliberate the selection process feels.
Isn't language fascinating?

なかなか興味深い情報が寄せられたのではないでしょうか?
生成系AI三者の回答が全ていつも正しいとは限りません。

  • The choice is yours!

ただ、入試であれ小テストであれ、単純な一般化で = で書き換え、言い換えてお終い、とするのがいかに危険かを分かってもらえれば、このエントリーを書いた甲斐があるというものです。

よりよい英語表現で、よりよい英語学習&英語指導&評価、ですね。

本日はこの辺で。
本日のBGM: 選択 (寺尾紗穂)

open.spotify.com

追記:
pick やpick out の同義・類義として

  • single out

を示している辞書や教材もあるようですが、語義や生息域は精査が必要だと思います。

  • 「主として称賛や批判の対象として」選び出すとしているものは、「主として」があるとはいえ、少々制約を狭め過ぎという印象。

恐らくはCambridge系の辞書の定義に依拠しているのではないかと思いますが、Cambridgeの句動詞辞典の定義はそれこそsingled out されているのでは?

  • to choose one person or thing from a large group in order to criticize or praise them

CambridgeのAdvancedの辞書の方の定義を見るともう少し柔軟。

  • to choose one person or thing from a group for special attention, especially criticism or praise

OALDの語義も

  • to choose somebody/something from a group for special attention

と目的に関してはやや広めとなっています。

少し古いですが、Oxfordの句動詞辞典では、

  • choose, pick (one person/thing) from among several for special comment, treatment etc.

とあり、目的語の典型例として、

  • assistant, companion; victim, prey; incident, event

をあげています。

Oxfordの類語辞典では、chooseのグループにsingle outを含めていますが、このグループに pick outは入っていません。single outの定義はOALDと同じで、

  • to choose sb/sth from a group for special attention

です。

LDOCEの定義は簡明。

  • to choose one person or thing from among a group because they are better, worse, more important etc than the others

MW’s の学習用の定義は一味違います。

  • to treat or to speak about (someone or something in a group) in a way that is different from the way you treat or speak about others

COBUILDでは、句動詞辞典の方の定義の最後、= での置き換えが気になりました、

  • If you single someone or something out, you choose them from a group for special attention or treatment. = pick out

とあり、同意の英語表現として pick outをあげています。いつでも、どんな目的語でも互換可能なのかは精査が必要でしょう。

多くの辞書で、"special attention or treatment" と定義づけている背景には、プラスマイナス様々な名詞を想定していることがあるでしょう。

"Under these new guidelines, almost every American Muslim who travels to see family or friends or goes on pilgrimage to Mecca will automatically be singled out for special security checks -- that's profiling," said CAIR National Executive Director Nihad Awad. "While singling out travelers based on religion and national origin may make some people feel safer, it only serves to alienate and stigmatize Muslims and does nothing to improve airline security."
www.govexec.com
「これらの新しいガイドラインの下では、家族や友人に会いに旅行するほぼすべてのアメリカのムスリムやメッカへの巡礼に行く人々が、自動的に特別なセキュリティチェックの対象として選り分けられることになります。これはプロファイリングです」とCAIRの全国執行ディレクター、ニハド・アワドは述べました。「宗教や国籍に基づいて旅行者を特定し選別することは、一部の人々に安全感を与えるかもしれませんが、ムスリムを疎外し、スティグマを与えるだけで、航空会社のセキュリティを改善することには何の役にも立ちません。」

ここでのsingle out は recognize/identify の意味も含まれているでしょう。それであっても、良くも悪くもspecial treatmentであることがわかります。
某熟語集で、似たような用例がありましたが、和訳は補足修正が必要だと感じました。

101回目のブログ更新

本年、101回目の投稿になります。
年内、後何回更新できるかわかりませんが、いい年だったなと思えるよう日々を丁寧に生き、美しいものを愛で、旨い酒を味わいたいものです。
年越し、新春用に準備した日本酒はこちら。

似てるけど違いますからね。

さて、今日も今日とて「気になる」ことはあるわけでして、

  • <比較級 and 比較級>

などという括られ方をすることが多い、英語の言い回しを取り上げようと思います。

各種学参・問題集で扱われている例文を確認していきます。

主に高校生を対象とした英語の参考書で、冠に「コーパス」とついたこちら、

  • 『コーパスクラウン総合英語』(三省堂、2022年)

では、「比較級 and 比較級」の項目(p.286)で、

Gas prices are getting higher and higher.
ガソリン価格が、どんどん高くなっている。
I became more and more interested in American history.
私はますますアメリカ史に興味を持つようになってきた。
The sound of footsteps is getting closer and closer.
足音がますます近づいてきている。
More and more students are using smartphones these days.
最近ではスマホを使う生徒がますます多くなってきている。
The traditional method is getting less and less effective.
伝統的なやり方はますます効果が薄れてきている。

という例を示しています。同書では進行形の用法のうち「ある状態に変化している最中・途中であること」(p. 69) を表すものとして

His performance is getting better.
彼の演奏はよくなってきている。
Your breakfast is getting cold.
朝ごはんが冷めてしまうよ。

という用例を示しているのですが、動詞の特性や上述の比較級の用法との関連は書かれていません。

  • 『アルティメット総合英語』(啓林館、第2版、2022年)

では、「比較級を使った構文」(p.336) として

It’s getting hotter and hotter.
だんだん暑くなってきている。
She is becoming more and more popular.
彼女はますます人気者になってきている。
More and more people are using the mobile devices in the world.
世界中でますます多くの人たちがモバイル機器を使っている。
Following fashion is becoming less and less important to me.
流行を追うことは私にとってますます重要ではなくなってきている。

という例を示しています。
同書では、「進行形の注意すべき用法」(pp.81-82)の、「become, get, grow などの『〜になる』という状態の変化を表す動詞を進行形にすると…」という件で、

The leaves are becoming yellow.
葉が黄色になってきている。

の例をあげていますが、比較級の用例はなし。

杉山忠一先生の『英文法詳解』(学研、初版1998年、新装版2022年)では、「比較級を含むその他の注意すべき語句・成句」の項目で、「比較級+and+比較級」(だんだん〜)(pp.544-545)を取り上げ、

It grew darker and darker. だんだん暗くなった。
The road got worse and worse. 道はだんだんひどくなった。

という例を示していますが、進行形の用例はなし。

俗に言う『安藤本』、安藤貞雄『現代英文法講義』(開拓社、2005年)では、「漸層比較級」(p.571)という項目を立て、

(1) The road got worse and worse. (道は次第に悪くなった)
(2) I’m getting fatter and fatter. (私はだんだん太ってきた)
(3) We’re going more and more slowly. (私たちはだんだんゆっくり進んでいる)

という例を示しています。進行形と単純形の両方を扱っているのに、時制や相に関する解説や注記はありません。『安藤本』では、進行形の「推移的特徴」(p.125)で、

Good food is costing more since devaluation. (Leech 1987)
平価切り下げ以来、よい食品は次第に高くつくようになってきた

というLeechのMeaning and the English Verbsの第二版からの引用を示しています。

古い学参だと

  • 『ロイヤル英文法』(旺文社、2000年)

では「比較級+and+比較級」(p.371)で

Our world is getting smaller and smaller.
我々の世界はますます狭くなってきている

という1例を示すのみ。解説はなし。

  • 『クラウン受験英語辞典』(三省堂、2000年)

では、moreの項目で「more and more ますます」を取りあげ、

Introducing is an experience that you will be having more and more frequently.
紹介という行為はこれからますます頻繁に経験することである。
ここアメリカでも、いろいろな大学で国際学部作られ、その入学者数は毎年増加している。
Here in America, various universities have established international studies departments, in which more and more students enroll.

という2例を示していますが、時制や相への言及はなし。

  • 『ランドマーク』(啓林館、1994年)

では、比較の章で(p.344)

I’m getting fatter and fatter.
私はだんだん太ってきている。
He wanted more and more.
彼はほしいものがどんどん増えた。

という進行形と単純形の例があるのですが、用例と和訳だけで解説が全くありません。

  • 江川泰一郎『英文法解説』(金子書房、改訂三版、1991年)

では、「慣用句」として(p.176)、

As time went on, he grew more and more (= increasingly) uneasy about the future.
時がたつにつれて、将来のことがますます不安になった

という例を示すのみで、解説はなし。一方で、進行形(進行相)の「参考」の項目(p.230)に、次のような説明と用例があります。

比較級などを伴って「だんだん、次第に」という進行をあらわすこともある。
She is resembling her mother more and more as she grows older.
年を取るにつれて、彼女はだんだん母親に似てきた。

翻訳書ですが、

  • ロナート・デクラーク『現代英文法総論』(開拓社、1994年)

では、「比較級+and+比較級」(p.472)で、

漸増あるいは漸減を表すには、「比較級+ and +比較級」」とする。
The balloon is getting bigger and bigger.
We’re progressing more and more slowly.
His behaviour is becoming less and less acceptable.
The kite rose higher and higher.

と用例を示していますが、英文用例のみで、その和訳も解説もなし。その一方で、進行相(継続相)の項目(p.233)では

徐々に進む過程(の始まり)を表す場合
He is resembling his grandmother more and more as he is getting older. (=become like)
Petrol is costing more since the beginning of the month.
The colour of your skin is again mattering more these days. (=become more important)

という有益な例を示しています。こちらも残念ながら、和訳も解説もなし。


次に、問題集の扱いを見てみましょう。
問題文ではなく、正答となる英文を示します。

  • 『ヴィンテージ』(いいずな書店、第3版、2018年、pp.152-153)

年がいくと、だんだん骨がもろくなるらしい。
They say our bones get weaker and weaker as we get older.

ここでは問題の解答の下に「重要表現」として<比較級+and+比較級>が「どんどん/ますます/次第に」を意味することが記されていますが、肝心の「比較」の項目では該当する用例を含む問題は収録されず。この辺が、頻出問題集の限界ですね。テストで出たものしか学ば(べ)なくなります。

最新の入試問題を謳う、

  • 『アップグレード』(数研出版、四訂版、2023年)

では「比較の熟語的表現」(pp.176-177)として

地球の将来を心配する人がますます増えるだろう。
More and more people will be concerned about the future of the earth.
The database is getting larger and larger.
データベースがますます大きくなっている。

という例が示されていますが、時制・相に関する解説等は一切ありません。

この表現は、やはり「進行形」と「単純形」の選択で注意するべきポイントがあるように思います。

私自身の心構えですが、

漸増漸減の意味で、

  • 進行形を選択する場合で、変化推移の動詞を使う場合には比較級は一つでも可。比較級含意動詞の場合はそれ自体を進行形にすることでも、漸増漸減の意味を表すことが出来る。変化推移を表す動詞の進行形で、比較級を足すと漸増の強調となる。
  • 単純形を選択する場合、比較級一つだけだと、単なる段階の変化と解釈される畏れがあるので、比較級を足すことで「段々;どんどん;ますます」の意味を明確にする。

という認識で表現を選択しています。

ソーシャルメディアの英語ニュースから実例を拾っていきましょう。

次のツイートが、私の授業での平常運転での説明と言えるでしょうか。

「現在進行形」の肝がわかる見出し。
get +比較級は変化。言ってみれば「階段を一段」。is gettingの進行形で「始まりと終わりを設定しその途中」で推移漸増。その足し算でis getting +比較級は「段々」。比較級含意動詞rise の現在分詞rising も推移で上昇中。対応する進行形are handlingも対処中。

元ツイの英語。

Is your commute getting more expensive? Or are you avoiding the pinch? We're interested in hearing how you and your family are handling the rising gas prices.
通勤費が嵩んでいっていますか?それとも値上げの影響を避けていますか?上がり続けるガソリン価格に対して、あなたやご家族がどのように対処しているかをお聞きしたいです。

ここでの「ガソリン価格の上昇」は明らかに「持続継続的なもの」ですから、比較級一つでも、getの進行形で「漸増」を表す例となっています。

「警鐘を鳴らす」warnは現在完了「今へと至る余波・波紋」にぴったりの状況。that節に相当する伝達部には進行形+比較級で「マシマシ」。withの付帯状況では、分詞から派生した副詞increasingly
が、比例に対応。aroundは「周囲・拡散」を含意。ここでは全方位?特定?詳しくは、本文を読まないとね。

元ツイの英語

Former prime minister John Howard has warned China is becoming more authoritarian under President Xi Jinping’s leadership, with Beijing increasingly determined to “throw its weight around” the Asia-Pacific region.
ジョン・ハワード元首相は、中国は習近平国家主席の指導の下でますます権威主義的になっており、北京はアジア太平洋地域で「影響力を行使する」決意を強めていると警告した。

ここでも、becomeの進行形でエスカレーターのような推移を表しますから、比較級ひとつで「漸増」となります。

twitter見出しと写真のキャプション(通例は記事本文の見出し)の英語表現の比較が重要。この例では、後者が記事の主題を表すには不正確。
getなど変化を表す動詞の進行形はそれ自体で推移、グラデーションを表すので、比較級1つでも十分に「どんどん;ますます」の意を表すことが出来ることを確認。

元ツイの英語。

Some chimpanzee communities may be getting more technologically advanced over time thanks to cultural knowledge transmitted between groups by migrating females
チンパンジーのコミュニティによっては、メスが群れと群れの間を移動することによって伝達される文化的知識のおかげで、時間の経過に比例して技術的にますます進歩している可能性がある。

基準時制は過去。peace talks「和平交渉」は常に複数形。
ソナーを打つ「打診」の文脈での動詞soundではなく、聴覚的形容だったものが印象評価で使われている例。Sounds like a good idea.ならお馴染みの筈。比較級のmore realistic + 進行形で「だんだんと現実味を帯びてきている」という漸増変化。

元ツイの英語。

Ukrainian President Volodymyr Zelensky said peace talks with Russia were sounding more realistic, but more time was needed.
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ロシアとの和平交渉はより一層現実的になってきているが、さらに時間が必要だと述べた。

ここが整理できていないと、「比較級含意の動詞」が進行形になったり、主語や目的語が複数形だったりしたときの「解像度」に影響します。

私が授業でよく言う「比較級含意動詞」の一つgain。
進行形で用いて「漸増」を表すことができます。thatでの後置修飾が長いですが、isは目立つ(?)ので大丈夫でしょう。
この見出しではイントロは前置詞amidで始まる副詞句ですが、widespreadがあるおかげで「漸増」への伏線は機能していますね。

元ツイの英語

Amid the widespread protests and anger over police brutality, an iPhone shortcut that allows users to automatically record their interactions with the police is gaining popularity
警察の暴力に対する抗議と怒りが拡大する中、ユーザーが警察とのやり取りを自動的に記録できるiPhoneのショートカットが人気を集めている。

単純な進行形ではない例でも「漸増」になることがあるので、丁寧な処理が必要です。

#asの前景後景
#現実味のcould の2連発。
第1文は後景のas節は現在形で「比較級含意動詞」のmultiply。前景の主節は動詞startの進行形と比較級のmoreの合体。「一段」のグラデーションか「一段、また一段」の漸増かを丁寧に。第二文は手段のByのイントロから主節の比較級。That shiftで先行文脈要約。

元ツイの英語

Japan is starting to rely more on its own military as threats multiply in the region. By asserting its own power, Japan could become less a military protectorate of the U.S. and more an equal partner. That shift could alter the balance of power in Asia.
地域における脅威が増大する中、日本は自国の軍事力にますます依存し始めている。日本が自らの力を主張することで、米国の軍事的保護国という立場から、対等なパートナーという立場へと日本は変貌する可能性がある。この変化はアジアの勢力バランスを変える可能性がある。

比較級の代わりに、副詞が推移・漸増を担う例。

比較的近年見聞きすることの増えた印象の
(be) growing increasingly +形容詞 での漸増の表現。 growそのものが比較級含意の動詞なので、その進行形はグラデーションを表せるので、increasinglyと一緒では冗長。どっちを採るか?
(be) growing anxious よりは
(be) increasingly anxious でしょうね。

元ツイの英語

NYC Council leaders are growing increasingly anxious that this year’s municipal budget will be late as negotiations with Mayor Adams have grounded to an “intractable” halt on a number of key issues
ニューヨーク市議会のリーダーたちは、アダムス市長との交渉がいくつかの重要な問題で「解決不可能な」停滞に陥っているため、今年の市予算が遅れるのではないかとますます不安を募らせている。

このようなことを普段から呟いているので、次のような投稿になるわけです。

ここで「要注意」と書いたこの事例も、教材や辞書で関連の文法項目と語彙項目が整理されていないので、学習者だけでなく、英語教育に携わる方にもなかなか理解してもらえないことの一つとなっています。

元ツイはこちら。

写真のキャプションの Earth is warming faster.は要注意。warmは比較級含意動詞。変化を表す動詞の進行形+比較級はひとつだけでも「グラデーション」で漸増漸減の「段々」を表すことを確認。見出しでは even worse than it used toで評価の上乗せの「一段」。詳細は記事本文で確認するしかないかな。

その元ツイの英語

Both the speed of climate change and the workings of the climate might be changing. The future might look even worse than it used to

記事本文見出しの英語

Earth is warming faster. Scientists are closing in on why

この辺、痒くないですか?
辞書の扱いをちょっと見ておきましょうか。
物書堂のアプリ辞書で用例検索をした結果から抜粋。


単純形で比較級 and 比較級と重ねる例も収録されていますし、進行形で比較級が一つの例も収録されていることがわかるでしょう。
日々の運用はもちろん、学習でも指導でも評価でも柔軟な対応が必要かと。

「入試では…」などという受験生や指導者もいるかもしれませんが、その入試でも、<進行形+比較級1つ>で「漸増」を表す英語が実際に使われています。

In the United States, by the end of the nineteenth century important natural resources were increasingly being wasted, and great damage had already been done. Many farms could no longer provide normal-sized food crops, and some grasslands had ceased to produce enough grass for livestock. Large forests had been thoughtlessly cut down for timber and not replanted, leaving bare hillsides, where water from heavy rains then cut ugly gullies. As forests became fewer, many kinds of animals lost their homes and food supplies, and great numbers died. Dust storms were becoming more frequent.
アメリカ合衆国では、19世紀の終わりまでに重要な天然資源がますます浪費され、大きな損害がすでに発生していました。多くの農場はもはや通常のサイズの食料作物を提供できず、一部の草原は家畜のために十分な草を生産することをやめていました。大きな森林は無思慮に伐採され、再植林されることなく、裸の丘が残され、そこでは豪雨の水が醜い谷を切り開いていました。森林が減少するにつれて、多くの動物の種類が住処と食料供給を失い、大量の動物が死にました。砂嵐はますます頻繁になっていました。

最終文の主語が無冠詞複数形であることも確認して下さい。

In Japan by the 1980s, family size was growing smaller and relationships with aunts, uncles, cousins, grandparents, neighbors, and friends were growing more distant. Therefore, the lessons that could be learned in kindergarten were considered to be very valuable. For example, a large class size and the opportunity for children to experience conflict with one another were important ways for kindergartens to teach the traditional Japanese belief in the importance of not the individual but the group. Thus, kindergartens were considered to be more a means of teaching traditional Japanese beliefs than of making cultural change.
日本では、1980年代までに、家族の人数がどんどん少なくなり、叔父、叔母、いとこ、祖父母、隣人、友人との関係もますます遠くなっていた。そのため、幼稚園で学べることは非常に貴重だと考えられていた。例えば、クラスの人数が多く、子ども同士が衝突する機会が多いことは、個人ではなく集団が大切であるという日本の伝統的な考えを幼稚園が教える重要な方法であった。このように、幼稚園は文化的な変化をもたらすというよりも、日本の伝統的な信念を教える手段であると考えられていた。

冒頭の一文で、2つの (be) growing 比較級がありますが、両方とも「漸減」「漸増」のグラデーション=段々を表しています。「比較級 and 比較級」という呪文だけではダメだ、というのが分かってもらえるのではないでしょうか。

最後にCOCAでの検索結果を載せておきます。
動詞はget/become/turnで検索しています。

COCAでmore and moreで単純形

more and moreで進行形

進行形でmore一つ

単純形でmore 一つ

最後の単純形でmore一つという環境は、単に「一段」の変化に(も)対応しますので、ヒット数自体で、何か結論めいたことは言えませんが、

  • 比較級 and 比較級

という呪文だけで全てをわかったつもりになるなんて、傲慢ですよ。

生成系AIが急速に発達進化しつつあるといわれる中、授業や教材、辞書、そしてテストで扱う英語表現を人の目で、耳で、頭で、そして心で精査する必要性はますます増えているのではないでしょうか?

本日はこの辺で。

本日のBGM: My ever changing moods---Extended version (The Style Council)

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「そこで愛が待つゆえに」

フィギュアスケートの2024年全日本選手権の競技の部は終了。
競技結果はこちらから。

www.jsfresults.com

試合内容&結果について、世界選手権等派遣メンバー選考について、あれこれ言いたいことはあるのですが、書き始めると涙でスクリーンも見られなくなるでしょうから、日を改めて。
あとはGala、宴を残すのみです。
楽しんで下さい。

国内最大の大会である全日本選手権は、毎年、この年末に訪れます。
このあと「国スポ(かつての国体)」があるにはあるけれど、ここが現役最後の大舞台という選手も多くいます。

既に今季限りでの引退を表明していた、「元祖ぐうかわ」こと

  • 白岩優奈 (しらいわゆうな) さん

に続いて、
今シーズン、現役続行する中で、女子シングルの歴史に残るべき名作 “Adios Nonino” を演じた

  • 青木祐奈 (あおきゆな) さん

も、競技からの引退を口にしたようです。(※この記事の掉尾に追記がありますのでご確認を)

この2人は、所謂「同期」で、ノービス、ジュニアの頃から注目され、国際大会でも活躍してきました。
今年の全日本でインタビュアーなどを務めた本田真凜(ほんだまりん)さんと、白岩さん、青木さんの3人がジュニア、シニアと駆け登っていった様子が思い起こされます。

白岩さんは「ゆうな」、青木さんは「ゆな」、そして、私が世界で二番目に好きなスケーター “Queen Yuna” ことKim Yunaさんは、日本語のカタカナ表記では「ヨナ」でした。

10年ちょっと前の過去ログのこちらを再訪されたし。

私の好きなキム・ヨナ
tmrowing.hatenablog.com

今大会は、白岩さんも、青木さんも、上位でのフィニッシュが叶わなかったのでGalaには呼ばれていません。映像で試合を見ていた私でさえ、何度も落涙し、大量のティッシュを消費したくらい心を打ち震わせていたのですから、現地大阪でSPそしてフリーを見届けた人の心には、2人の最後の演技がいつまでも焼き付いて残るのだろうと思います。

白岩さんは大学卒業後、就職して会社員とのこと。
青木さんは競技からの引退後、ショーアイスで滑る道を選ぶのか、振付師として活躍するのか、追々明かされることでしょう。
スケオタに愛され、フィギュアスケートの神に愛された彼女たちのセカンドキャリアに幸あれ。

2024年のブログ記事が今日でちょうど100本目です。
60歳を迎えた怒濤の1年をよく生き延びて、ここまで書けたと思います。

今年はとにかく「個々の英語表現」「英語ということばそのもの」を残そうと思って書いてきました。

  • 気になる語法

という括りで書いていますので、マニアックな「語法オタク」とか、口やかましい「語法警察」のような評価をされがちですが、私の思いは単純で、以前から言っている通り、

  • 1979年に高校1年生だった当時の松井少年がしたくてもできなかったauthenticな英語の姿を見せ、その生息域に連れて行く
  • 1982年に受験生で、「自分は英語が出来る」、とタカを括っていた松井少年の鼻をへし折るべく、英語表現の豊かさ、奥深さを教えてあげる

ということです。

今同時代を生きている皆さんへのメッセージがあるとすれば、

  • 筋の悪いテストの唾棄・撲滅
  • テストによる支配からの卒業

でしょうか。

かねてより、「正誤(誤箇所)指摘問題;誤文(誤箇所)訂正問題」への異議を唱えている私ですが、今年の「気になる語法」を読んでもらえれば、「…とは絶対に言わないなんて怖くて言えないよ絶対」と思ってもらえると思ってずっと書いているんですけど、ツイッターなどのソーシャルメディアでも、例によって「英語表現そのもの」についての話しは、殆ど読まれないんですよ。

えっ? この英語表現って気になりませんか?
だって、あなた、それこそ、私がさっき書いたところをテストで問うていません?

っていうことがとにかく多いので。

今、○○だけじゃなく、XXでも通用する英語表現になってきていますから、選択肢に両方あっては拙くないですか?
それって、同じ意味にはなりませんから、正答無しになりますよ。
その英語表現は、テストで英語として書くことを求めるほど、現代英語での頻度は高くないですよ。

などということを面と向かって指摘されたら嫌だと私自身も思いますから、人の振り見てなんとやらで、まずは拙ブログの今年の記事を振り返ってみて下さい。

12月28日と2025年1月12日のオンラインセミナーでは、参加者が気になった記事と私が「推したい」記事を中心にお話します。
ブログ執筆20周年を記念した「ご愛顧感謝セミナー」です。
両方とも同内容の予定ですが、28日の流れによっては1月12日の内容に更なる深みが出るかも知れません。ご都合のつく日程でお申し込み下さい。

12/28
passmarket.yahoo.co.jp

1/12
passmarket.yahoo.co.jp

既に過去ログの

tmrowing.hatenablog.com

tmrowing.hatenablog.com

tmrowing.hatenablog.com

で指摘してきた、増減などの変化・推移に関わる英語表現での “see” と “show” の関係。

さらには、casesの語法を中心に展開していた、

tmrowing.hatenablog.com

などでも「増減の表現が時代とともに大きく様変わりしていく」記録とも言えるエントリーを残していますが、少しだけセミナーのtrailerとして。
最近の進化が著しい生成系AIに語法の調査分析をやらせてみたら、結構デタラメで、何回かのやり取りを経てそこそこちゃんとしたことを言うようになりましたので、ご紹介。

私がお願いした内容とはズレた回答をしてきたので、軌道修正を噛んで含めて。

A rare deadly virus is spreading in the northeastern US. Another virus has spike 800% in South America. Both are mosquito-borne illnesses, which are seeing a spike around the globe.

ここでの see [are seeing] の主語に当たるものは関係代名詞のwhichで、その先行詞となるものは、感染症が発生する地域やそこにいる人間や、病院や保健所などの機関ではなく、その前段のboth illnessesとでもいう「モノ」であることを確認してください。
ここでは観察者が主語で動詞seeを用いるのではなく、観察されるはずのものが主語に来ているのに、能動態の動詞でseeを進行形で使っているのです。あなたの示したseeとshowの使い分けの原則を逸脱している例です。このような逸脱を英語話者はどのように捉えて、この表現を選択しているのかを推測して説明するか、このような変化するものそのもの、本来見られる側のものが主語になるseeのさらなる類例を示してください。

そんなやり取りを繰り返しての末の生成系AIの回答。

確かに、私の先ほどの例では、地域や抽象的な主体(region, industry)が主語であり、変化する「モノ」そのものが主語になっていませんでした。ここでは、あなたが求めている「変化する対象(観察されるモノ)そのもの」を主語とし、see を能動態で進行形に使った例を挙げます。

1. 変化する対象そのものが主語となる例

  • Heavy rainfalls are seeing unprecedented levels this year.

(豪雨が今年は前例のないレベルに達している)→ heavy rainfalls(変化そのもの)が主体的に「変化を経験している」ように描写されています。

  • Ocean temperatures are seeing a rapid rise due to climate change.

(海洋温度が気候変動によって急速に上昇している)→ 海洋温度そのものが変化の主体として描かれています。

  • Mosquito populations are seeing an explosion in tropical areas.

(熱帯地域で蚊の個体数が急増している)→ 蚊の個体数(変化の対象)が主語となっています。

  • Carbon dioxide levels are seeing a continuous increase.

(二酸化炭素濃度が継続的な上昇を経験している)

  • Forest fires are seeing a dramatic increase in frequency.

(森林火災が頻度の劇的な増加を経験している)

2. この用法の特徴と心理的背景
(1) 主語としての「変化するモノ」
ここでは、変化や現象そのもの(例: heavy rainfalls, ocean temperatures, mosquito populations)が主語となっています。これにより、観察者の存在を省略し、対象そのものが自ら変化を「経験している」ように描写されます。
観察の主体(人間や機関)を省略しているため、以下のような効果があります:

  • 簡潔な表現
  • 抽象的な変化の直接的な提示

(2) 進行中の変化を強調
「進行形」が使われることで、変化がリアルタイムで起きている様子を強調します。病気や環境現象のように急速に進行している事象を伝える際、特に有効なスタイルです。

(3) 擬人化された捉え方
変化するモノ自体を主体的に描写することで、読者や聞き手に対し、変化の切迫感や深刻さを印象づける効果があります。

3. 類似例と文脈での使用
このような用法は特に、以下のような文脈で頻繁に見られます:

  • 1. 環境問題: Glaciers are seeing accelerated melting rates.

(氷河が加速的な融解を経験している)→ 自然現象を擬人的に描写し、危機感を強調。

  • 2. 社会的変化: Divorce rates are seeing a decline in some regions.

(離婚率が一部地域で減少を経験している)→ 社会的指標の変化を直接的に描写。

  • 3. 医療・感染症: Rare diseases are seeing a rise in diagnosis rates.

(希少疾患が診断件数の増加を経験している)→ 医療データを動的に表現。

このような表現は、抽象的な変化を視覚的かつ生き生きと伝えるための言語的工夫として、英語の中で自然に受け入れられています。

「英語の中で自然に受け入れられています」と来ました。
辞書でも教材でもまだ捕捉し切れていない表現ですので、更なる精査が必要ではありますが、ここで生成系AIが頑張って拵えてくれた実例は、私の観察でも実際に見聞きするものの特徴を良く捉えていると思います。

辞書や教材で取り上げられているお馴染の表現との異同については、先にリンクを示した私の過去ログを再読されるか、年末年始のセミナーに是非お立ち寄り下さい。
年末の28日の講座の方は明日(24日)が受付締め切りですのでお急ぎを。

2024年の記事100本記念の本日はこの辺で。

本日のBGM:キャノンボール (中村一義 / 100s バージョン)

open.spotify.com

追記:
青木さんのIGの投稿によれば、報道記事が先走っているとのことで、去就については落ち着いてからの報告を待って下さいと。


www.instagram.com

🎶 the answers I came up with didn't fit🎶

フィギュアスケートの全日本選手権が始まりました。
男子は宇野昌磨(うのしょうま)さんの出場しない大会(解説にはいらしてました)で群雄割拠という思いからか、総じて堅い演技が多く、女子は自己ベスト更新など持ち味を発揮できた人が多かった印象。
日本の男子選手で私が好きなのは友野一希(とものかずき)選手ですが、今年は山本草太(やまもとそうた)選手も応援しています。

会場を一体感で包んだ織田信成(おだのぶなり)「選手」のマツケンサンバII は日本フィギュア界の語り草になることでしょう。それにしてもジャッジのNo.1の採点はイヤハヤナントモ…。

男子SPのプロトコルはこちらから
https://t.co/wFupCxq8pi

比較のために、SP4位の三浦佳生(みうらかお)選手と並べて貼っておきます。

レフリーやTC、ジャッジ等オフィシャルの方たち
www.jsfresults.com

女子では青木祐奈(あおきゆな)選手と松生理乃(まついけりの)選手を楽しみにしていましたので、2人ともフリーでは最終組に残ったので大満足です。
女子で昨年初出場4位と一大センセーションを巻き起こした上薗恋奈(うえぞのれな)選手がミスが続いてスコアが伸びず、フリーに進めなかったのですが、何かトラブルがあったのか心配です。何より本人にとってショックが大きかったことでしょう。コーチングスタッフ等、周りの大人が十分に配慮して上げてほしいと切に願います。

ということで本日の気になる語法は

  • anxious

です。

やや堅い印象の形容詞ですが、日常の使用頻度は結構高いと思います。

Staff 'anxious' for child cancer patients - inquiry

写真キャプションの方では、センテンスの形ででています。

  • Medical staff were ‘anxious’ for child cancer patients.

記事本文では、形容詞のanxiousではなく、名詞のanxietyが使われています。

A former infection control nurse has told the Scottish Hospitals Inquiry that staff at Glasgow's children's hospital felt "extreme anxiety" that child cancer patients were unsafe.
www.bbc.com
元感染管理看護師が、グラスゴーの小児病院のスタッフが、小児がん患者が安全でないという 「極度の不安 」を感じていたと、スコットランド病院調査委員会に語った。

ここでのanxietyは「不安;懸念」ですから、当然対応する形容詞anxious for も「不安;懸念」を表す意ものとして使われていることが分かります。

次のような場面でもanxious forは実際に使われています。
ちょっと前の記事ですが、ハリー・ベラフォンテのobituaryの一節です。

John F. Kennedy, at a time when Blacks were as likely to vote for Republicans as for Democrats, was so anxious for his support that during the 1960 election he visited Belafonte at his Manhattan home.
www.pbs.org
ジョン・F・ケネディは、黒人が民主党と同様に共和党に投票する傾向が強かった当時、彼の支持を熱望し、1960年の選挙中、マンハッタンの自宅にベラフォンテを訪ねた。

was so anxious for his support のhis は「ベラフォンテの」を表す所有格。ここでの anxious for は「…を取り付けようと」のような意味合いでしょう。

こちらの例でのanxious forはどういう意味、心情を表しているでしょうか?

Meet Witchuda Wungdee, the QA Supervisor at Sennics Thailand. As the company's first local employee, she's been dedicated to her work from day one. Her advice to new employees is, "Don't be anxious for success. Knowledge is acquired gradually. Haste leads to more mistakes."


Sennics Thailand の QA スーパーバイザー、Witchuda Wungdee さんをご紹介します。この会社の最初の現地従業員として、彼女は初日から仕事に専念してきました。新入社員へのアドバイスは、「成功を焦らないでください。知識は徐々に身に付きます。急ぐとミスが増えます。」です。

ここでは「…を得ようと躍起になる」というような意味合いで用いられていると考えられます。
私の語感では、日本語の「やきもきする」ということばの持つ「もどかしさ」が結構近い心情を表している気がします。

同じanxious for なのに、ちょっと違う顔を持っているように感じませんか?

この形容詞anxiousは大学入試レベルのテストでは時折その理解習熟が問われるようです。

世界中の人々が平和を切望している。
People all over the world are anxious for peace.

では前置詞forとの結びつきで「切望」を表すという知識が、

私は彼の健康が心配だ。
I am anxious about his health.

では前置詞aboutとの結びつきで「心配」を表すという知識が問われているようです。

They were not in the least anxious about it.
彼らはそのことを少しも心配していなかった。

でも、「心配」なので、前置詞はabout。

次の例では、前置詞との結びつきを問うのではなく、「やきもき感」でanxiousが思いつくかが問われています。

I am anxious to know about the results of the examination in the chemistry.
私は化学の試験結果を知りたくてたまらない。

とはいえ、次のような出題は感心しません。

I am anxious ( ) the result of the examination.
1. about 2. for 3. of. 4. to

「切望」の文脈でanxiousが使われる場合に、前置詞aboutと結びつくことは通例無く、ofとの結びつきも極めて稀で誤用のレベルで処理されることでしょう。
しかし、「試験結果が気がかりだ;心配だ」という意味になる場合の前置詞の結びつきで、確かに頻度では

  • about > for

ではあるのですが、実際に anxious for が「不安、懸念、気掛かり」を表す言語事実がある以上、選択肢にaboutとforの両方を入れておくのは、作問者が現代英語の用法に無頓着であるか、意地が悪いかということになるでしょう。

Ngram Viewerでanxious for your に続く名詞を検索した結果

NOWコーパスで、aboutとforに続く名詞の上位を検索して比較したもの。

この結果のうち “anxious for their children” の環境を取り出したものが次のCL。

16例中9例が不定詞が続くもの。「childrenにどうなってほしいのか;どうしてほしいのか;どうしてほしくないのか」という「切望系」の典型例です。裏返せば、anxious for childrenのうちの7例は「心配系」で使われていることが推測されます。

私が高校生時代に読んだ古い教材では、aboutとforの2つの前置詞との結びつきでの意味の区別に注意喚起をしていました。

西尾 孝 『実戦英単語活用辞典』(日本英語教育協会、1981年)

そこから約20年の受験英語を集めたデータから作られた、古藤晃『クラウン受験英語辞典』(三省堂、2000年)でも、同様の注意書きをしていました。
そこからさらに24年。
いまだに単語集・熟語集、頻出問題集では (?) 「anxious for は切望、anxious about は心配だから区別しよう」みたいなことに躍起になっているみたいで、とても心配です。

まずは、anxiousの語義を押さえましょうか。
ちょっと長いですが、レファレンスとして引用します。

anxious この語は後続の前置詞などによって意味が変化するから注意が必要である:
I am very anxious about my son's health. (私は息子の健康が心配だ) / He is anxious for (or about) her safety. (彼は彼女の安否を気づかっている)/ I am anxious to point out your errors. (間違いをお教えしたい)/ We were all anxious that you should return (= anxious for your return) (われわれはみんなきみが帰ってくることを願っていた). 「~が気がかりである」という意味で, anxious ofが使われることがあるが,これは誤りで, 正しくは上例のように anxious about (or for)
を使うべきである.
荒木一雄・大沼雅彦・豊田昌輪 編 『英語表現辞典・第二版』 (研究社、1985 年、p.72)

1985年の辞典で、「…が気がかりである」という意味の場合の前置詞の選択で、aboutとforの両方を挙げていることを確認して下さい。

同辞典では形容詞eagerとの考察も載せています。(pp.73-74)

anxious, eager
Anxious は 「心配で落ち着かない」 であり, eager は 「熱心な」 であるが,とくに不定詞を従えた場合など、 この相異なった意味を持つ2語が意味的にほとんど変わりがなくなる : He is anxious (or eager) to see the girl. (彼はその少女に会いたがっている)。もともと eager は「鋭い」(keen), 「刺激性の」 (pungent) といった意味であり,このような意味合いがいまだに多少とも残存している. したがって anxious な人は 「はらはら」 (fearful) しているのであり、eager な人は 「わくわく」 (hopeful) しているということになる。 しかし, 心理的には anx-ious の 「そうなるかどうか心配」ということは,その裏に実現をせつに望む気持ちが潜んでいるのであり, eager の 「熱望している」 ということは,ひょっとするとだめかもしれぬといういちまつの懸念が意識されているのであり,こういった事情からこのふたつは同意語になりうるのである.
なお, anxious には自分の気持ちをわかってもらいたいと懸念になっている意味合いを含むことが多い: He is visibly anxious that his wife should be on easy terms with us all. (彼は奥さんが私たち皆と, 気軽につき合えるようになってほしいと,目にみえてやっきとなっている)。

他に何か付け加えることがありますかね?

ちょっと変わったところで、

  • 安井 稔・久保田正人『英語クラスターハンドブック』(開拓社、2017年)

では、語義を二つ示し、

1. 「気になっている」
2. 「一生懸命だ」

と訳語を示していて、語感を養うという点では参考になると思いました。

学習用も含めて辞書の扱いを見ておきましょう。

OALD vs COBUILD

OALDでは語義項目の1, 2が「心配系」で、3が「切望系」。1,2ともCEFRのランク表示はB2。
COBUILDは1が「切望系」で、2,3 が「心配系」。1がB2表記で、2はB1+Tなっていることを確認。使用頻度では1が多いが、発達段階、習熟度では2の方が先、ということが推測されます。

Cambridge vs LDOCEその1

Cambridgeは語義で見出しを別立て。こちらは「心配系」でB1表記を確認。LDOCEはこちらの語義を最初にあげていますが、前置詞のforも太字で示していることを確認。

Cambridge vs LDOCE その2

こちらは「切望系」。CambridgeではB2表記です。LDOCEでは、前置詞単独のforよりも先に、for名詞 to 原形のパターンを太字で示していることを確認。


「切望系」の語義の扱いでは『O-LEX英和』(旺文社)に注目。

O-LEX vs G6

O-LEXのカッコでの但し書き、「願望の達成に不安があるという意味の含みがある」というのは有益です。

Wisdom vs Compass Rose

Wisdomでは、前置詞for単独の用例を載せず、for 名詞 to 原形の例を示していることを確認。Compass Rose では “anxious for help” で何も限定のない名詞helpの続く例を載せているが、これは要再考ではないかと思います。

NOWコーパスでも僅かに3例のみ。

COCA系のサブコーパスではGLOWBE/COCA/TVみなヒットしませんでした。
SKELLでもヒットなしです。

辞書の扱いでは、小学館から出ているOxfordの専門辞書の英和版での、この「心配系」と「切望系」のズレは深刻だと思います。

OALD では「心配系」の用例として収録しているものと同じ例文を、小学館版の『Oxfordコロケーション辞典』では「切望系」の日本語訳をつけて収録してしまっています。

こんなところにも、(?) 日本のローカルルールなのか、(?)「anxious for は切望系」、(?)「心配系は anxious about」という思い込みが現れているように思いますし、学習にも指導にも、さらには運用にもマイナス面が大きいと思います。

2024年12月22日追記:
英和辞典でも、適切な扱いをしているものもあるのですが、改善の余地はあります。
私の手元の「物書堂」のアプリ辞書で検索した用例を並べてみました。
anxious for が「心配系」で用いられていることが分かるでしょう。

3例目と4例目が、上述した、「大間違い」とまでは言えないものの、「大違い」であることは間違いない、ズレの例。
こういうことがあると、折角の用例を眺めても、「心配系」に anxious for が使われていると思ってもらえないのではないか、と「心配」になります。
「英和」の良さが活きるように、語義区分ごとに適切な定義と用例を記述してほしいと「切に願う」次第。

私が普段見聞きする英語はニュースに偏っていますが、「切望系」で前置詞forが続く場合は、to原形が更に続いて、forの後の名詞が意味上の主語として使われることが多い印象を持っています。

先ほど引用した辞書の用例にもありましたが、大学入試の読解素材文でも出てきますね。

Another block to listening occurs when we form an opinion about the level and value of what will be said. We label the information ahead of time as unimportant, too boring, too complex, or nothing new, and we are anxious for the speaker to get to the point.
話を聞くことを妨げるもう一つの原因は、これから話されることのレベルや価値について意見を形成してしまうことである。重要でない、退屈すぎる、複雑すぎる、目新しいものがない、などといったレッテルを事前に貼り、話し手が本題に入るのを待ち望んでしまうのだ。

物は試し、でClaudeなど生成系AIに調べてもらいました。

現代英語の用法として、形容詞のanxious が前置詞forと結びつく場合に、その意味が
1. …を切望する;…であることを願う、強く求める (≒ eager)
となる場合と
2 .…を気がかりに思う;…を心配する、不安に思う (≒ fearful)
となる場合があると思うのですが、使用頻度でいえば、名詞句が単独でforの目的語となる場合には、2. の意味で用いられるのをより多く見聞きする印象です。1の意味になるケースの多くが、anxious for 名詞 to原形(=不定詞)である印象を持っています。オンラインコーパスの検索結果の報告や研究論文など、資料をもとに、あなたの見解をまとめてください。

以下Claudeの回答です。

「anxious for」の用法に関する興味深い観察ですね。これを詳しく分析してみましょう。
「anxious for」の使用パターン分析
1. 構文パターンと意味の相関
A. 「anxious for + 名詞句」のパターン
このパターンでは、確かにご指摘の通り、「不安・心配」の意味(意味2)が優勢です。
例文:

  • I'm anxious for her safety. (彼女の安全を心配している)
  • He was anxious for the test results. (テスト結果を心配していた)
  • Parents are anxious for their children's future. (親は子供の将来を心配している)

B. 「anxious for + 名詞 + to不定詞」のパターン
このパターンでは、「切望・期待」の意味(意味1)が顕著に多くなります。
例文:

  • I'm anxious for spring to come. (春が来るのを切望している)
  • We were anxious for the movie to start. (映画が始まるのを待ち望んでいた)
  • She's anxious for her son to succeed. (息子の成功を切望している)

2. コーパス分析の結果
COCA (Corpus of Contemporary American English) の傾向
「anxious for + 名詞句」の場合:

  • 意味2(不安・心配): 約70%
  • 意味1(切望・期待): 約30%

「anxious for + to不定詞」を含む構文の場合:

  • 意味1(切望・期待): 約85%
  • 意味2(不安・心配): 約15%

BNC (British National Corpus) の傾向
イギリス英語でも同様のパターンが観察されます:

  • 単純な「anxious for + 名詞句」では意味2が優勢
  • to不定詞を伴う場合は意味1が優勢

3. 歴史的な変遷
18-19世紀の文学作品では、両方の意味で比較的均等に使用されていましたが、20世紀以降、上記のような使い分けのパターンが確立してきました。

4. 意味的背景の考察
この使い分けには以下のような要因が考えられます:
1. to不定詞の性質:

  • to不定詞は本来的に「目的」や「志向性」を含意
  • そのため、「切望」の意味と自然に結びつく

2. 名詞句単独の場合:

  • 心配の対象として具体的な人・物を示すことが多い
  • そのため、「不安・心配」の意味と結びつきやすい

5. 教育的含意
英語教育の観点からは、この使い分けを明示的に教授することで、より自然な英語使用を促進できる可能性があります。

分析結果からは、ご指摘の傾向が統計的にも裏付けられることが分かります。特に以下の点が重要です:

構文による意味の偏り:
名詞句単独の場合は「不安・心配」の意味が優勢
to不定詞を伴う場合は「切望・期待」の意味が優勢

この傾向は、英米両方の英語で観察される安定したパターンです。
さらに詳しい側面や特定のコンテキストでの使用例について興味がありましたら、お聞かせください。

さあ、興味深いClaudeの調査と考察ですが、どの程度信頼が置けるでしょうか?

Geminiにもやってもらいました。

以下、この考察に対する詳細な分析と、オンラインコーパスや研究論文に基づいた見解をまとめます。

1. "anxious for..." の意味の二面性**
"anxious" は確かに、文脈によって大きく異なる二つの意味を持ちます。

eager (切望する): 何かを強く望んでいる、待ち望んでいる状態を表します。
例: She was anxious for news of her family. (彼女は家族からの知らせを切望していた。)
fearful (心配する): 何かを心配している、不安に思っている状態を表します。
例: She was anxious for his safety. (彼女は彼の身を案じていた。)

この二つの意味は、"anxious" の後に続く目的語によってある程度区別できます。前述の例のように、良い知らせや機会など、ポジティブな事柄が続く場合は「切望する」の意味になりやすく、危険や不幸など、ネガティブな事柄が続く場合は「心配する」の意味になりやすい傾向があります。

2. 名詞句単独の場合の "for" の目的語
ご指摘の通り、名詞句が単独で "for" の目的語となる場合、特に抽象的な概念や漠然とした状況を表す名詞が続く場合は、「心配する」の意味合いが強くなる傾向があります。例えば、"anxious for the future" (将来を案じる)、"anxious for the outcome" (結果を心配する) などが挙げられます。

3. "anxious for 名詞 to 原形" の用法
「〜を切望する」という意味で "anxious" を使う場合、"anxious for 名詞 to 原形" の構文は非常に一般的です。この構文は、誰か(名詞)が何か(to 原形)することを強く望んでいるという意味を表します。例えば、"She was anxious for her son to succeed." (彼女は息子が成功することを切望していた。) この構文は、「心配する」の意味ではほとんど使われません。

4. コーパスと研究からの裏付け
オンラインコーパス(例えば、COCA: Corpus of Contemporary American English)を検索すると、上記の傾向が裏付けられます。"anxious for 名詞" の組み合わせでは、「心配する」の意味で使われている例が多く見つかりますが、"anxious for 名詞 to 原形" の構文では、ほぼ全て「切望する」の意味で使われています。

さらに、英語学の研究論文などでも、"anxious" の意味の使い分けに関する議論が見られます。これらの研究では、文脈、目的語の種類、構文などが意味の解釈に影響を与える要因として指摘されています。

まとめ
"anxious for..." は文脈によって「切望する」と「心配する」の二つの意味を持ちますが、名詞句が単独で "for" の目的語となる場合は「心配する」の意味合いが強くなる傾向があります。"anxious for 名詞 to 原形" の構文は、「切望する」の意味でのみ用いられると言って良いでしょう。オンラインコーパスや研究論文などの資料も、これらの傾向を裏付けています。

この分析が、ご質問への回答としてお役に立てれば幸いです。

皆さんの語感と照らし合わせて如何でしょうか?

個人的には、辞書の記述、用例でもより適切なものが求められると思いますし、Claudeの指摘ではありませんが、教材やテストではより適切な配慮が求められると思います。

大学入試問題や、難易度を上げて生徒の弁別をしたい指導者は安易に正誤指摘問題を多用しがちですが、例えば「心配系」の文脈で、anxious for を誤箇所とするような出題をしてはならないでしょう。

次の問題は実際の入試問題から引いていますが、錯乱肢として eager for と anxious forという文脈によっては同意となる語句が使われています。錯乱肢だから同意となっても良い?あまりにも筋が悪いと言わざるを得ません。猛省を促します。

次の英文の下線部と最も意味が近いものを,それぞれ下の1~4の中から一つ選びなさい。
We must make them aware of the danger.
1 keen on 2 eager for 3 anxious for 4 conscious of

※この出題は好ましくない例として示しています。

本日はこの辺で。

本日のBGM: Anxious (the Housemartins)

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