11月28日、今年もharatomo様の生誕祭を祝うことができました。
このタイミングで、ミニアルバムも発売されました。
先行配信されていた曲も含めて、ストリーミングでもお聴きいただけます。
CDも既に店頭にも並んでいることでしょう。
ストリーミング等、こちらからご確認を。
原田知世 ミニアルバム 『カリン』
tomoyo-harada.lnk.to
出講先の高3は、レギュラーの授業が終了。
昨年度と違って、高3になってから『チャンクで積み上げ英作文』のStandardを扱ったので、苦労しました。多分、生徒も同じでしょう。
やっぱり(中3〜)高1でBasic (赤)をやって、高2〜高3でStandard (緑) というのが一番良いかな。
現在、採択していただいている学校に置かれましては、使ってみての感想、改善の要望などをお寄せいただけると幸せます。
今日の気になる語法は、授業でも扱った、hitの界隈。
私が高校生に教える際には、
- Home is where the heart is.
という比喩を足場として、hit homeなど関連表現を押さえています。
noteで公開している「語義8題」でも扱っていますので是非。
それ以外にも、動詞としてのhitは様々な場面・文脈で比喩的に使われています。
- hit the books (猛)勉強する
- hit the road (長)旅に出る; 車で出かける
などは大学入試でも取り上げられたことがあるのでは?
“hit the books” の”books” は「教科書」で、この成句も通例は生徒・学生の使うものです。この場合のhitは、その行為・動作の「勢い」重視。
一方の、“hit the road” は、もともとは「ヒッチハイクをするために通りに出る」の意だったとか。背景も生息域も、『アメリカ口語辞典』(朝日出版社、1983年)が詳しいので是非。
私が気になっているのは、
- hit the streets
という表現の語義・生息域です。
辞書で成句扱いされているものでは、
- hit the streets [stores; shops] 商品が店頭に出回る;雑誌などが発売される
という語義が与えられ、名詞のバリエーションとして、streets以外に、storesやshops、さらにはshelvesなどが示されていることが多いでしょう。
G6
hít the stréets
⦅略式⦆〈製品などが〉店頭に並ぶ, 〈雑誌などが〉発売される.
Wisdom 英和
hìt the stréets [shóps, stóres]
(くだけて)店頭に出回る
The magazine hits the streets every Friday.
その雑誌は毎週金曜日に発行される.
O-LEX
hìt the stréets
(雑誌などが)発売される
クラウン・イディオム
hit the streets [shops, stores]
⦅口⦆売り出される
A new games console hits the streets tomorrow.
新型コンピューター・ゲーム機が明日発売になる.
これらの例では、主語は商品・品物です。
一方で、同じhit the streetsでも、主語に人がくることがあります。
What would YOU double this Christmas?
From double helpings of mince pies to twice the twinkling lights, we hit the streets to discover what everyone wants more of this festive season!
Watch, share, and tell us what YOU’d double this Christmas!What would YOU double this Christmas? ✨
— Big Give (@BigGive) 2024年11月29日
From double helpings of mince pies to twice the twinkling lights, we hit the streets to discover what everyone wants more of this festive season!
Watch, share, and tell us what YOU’d double this Christmas! 👇 https://t.co/3HYBk9SX11 pic.twitter.com/Xe56gzpoHg
今年のクリスマスに何を倍増させますか? ✨
ミンスパイのダブル盛りから、きらめくライトの2倍まで、このお祭りシーズンにみんながもっと欲しいものを見つけるために街へ出かけます!
見て、シェアして、今年のクリスマスに何を倍増させたいか教えてください!
We hit the streets of Dublin to find out what issue you guys cared about most this election
What issue do you think is most important?We hit the streets of Dublin to find out what issue you guys cared about most this election
— Lovin Dublin (@LovinDublin) 2024年11月29日
What issue do you think is most important? #dublin #dublincity #irishelection #ireland #election2024 pic.twitter.com/B5F1SSKUCq
私たちはダブリンの街頭に出て、今回の選挙で皆さんが最も関心を寄せている問題は何かを調べました
最も重要な問題は何だと思いますか?
この2例とも、「街に繰り出す;街に出かける」というような意味合いで用いられていますが、近年では報道など街頭取材の場面で使われることが多い印象です。
英和辞典でも、『コンパスローズ』(研究社)は、次の (2) のような語義も収録しています。
hít the stréet [tówn, stóres, shóps]
動 自 [主に新聞で]
⑴ ⦅略式⦆ (商品が)(広く)出回る(ようになる).
⑵ (街に)買物に出(かけ)る.
この辞書では「買物」とありますが、hit the streets の場合は、目的は買い物に限らないので、むしろ「語義の記述」としては「(買い物などで)街に出かける;(取材で)街頭に出る」などの方が適切ではないかと感じます。
上述の2例では、主語は「取材する側の人」ということで、少人数でしたが、同じ人主語でも次のような例もあります。
#Hindus hit the streets in Bangladesh; supporters demand ISKCON seer #ChinmoyDas' release
#Hindus hit the streets in Bangladesh; supporters demand ISKCON seer #ChinmoyDas' release #Bangladesh #BangladeshCrisis #Hindus #ITVideo | @snehamordani pic.twitter.com/fPna8VyYCx
— IndiaToday (@IndiaToday) 2024年11月26日
バングラデシュで #ヒンズー教徒 が街頭活動を開始、ISKCON の #チンモイダス師 の釈放を求める。
この例での、hit the streets の意味としては、“take to the streets” 「街頭に繰り出す; (集団で)街頭に出て(抗議)行動をする」と同様のものでしょう。
次の例では、主語は1人で、街頭での活動に「合流する」というイメージでしょうか。
Kenyan protestor Kasmuel McOure returned home after missing for almost 48 hours (reportedly abducted during crackdown by a rogue unit of the police force) quickly freshened up, changed his clothes and hit the streets to rejoin anti-gov't demonstrations in Nairobi.
Kenyan protestor Kasmuel McOure returned home after missing for almost 48 hours (reportedly abducted during crackdown by a rogue unit of the police force) quickly freshened up, changed his clothes and hit the streets to rejoin anti-gov't demonstrations in Nairobi. pic.twitter.com/i3quiSw6aP
— Cyprian, Is Nyakundi (@C_NyaKundiH) 2024年6月27日
ケニアの抗議活動家カスミュエル・マコーアは、約48時間行方不明になっていた後(警察の無法部隊による取り締まり中に拉致されたと報じられている)、急いで身支度を整え、着替えて街頭に出て、ナイロビの反政府デモに再び参加した。
参考までに、take to the streets と hit the streets とで比較してみました。
Ngram Viewerでざっくりと。hitの活用形は悩ましいところ。
hit the streets で大人数が主語になる例は、次のような場面でも見られます。どのような場面でしょうか?大人数が道にでるので「参勤交代」?いえいえ、
More than 40,000 runners hit the streets of Ethiopia's Addis Ababa for Africa’s biggest road race
More than 40,000 runners hit the streets of Ethiopia's Addis Ababa for Africa’s biggest road race pic.twitter.com/Q4gkuUrukO
— Reuters (@Reuters) 2024年11月19日
アフリカ最大のロードレースに4万人以上のランナーがエチオピアのアディスアベバの街頭に集結
文字通り「道の上」の活動=集団でのランニング/競走です。このロードレースの参加者の目的は抗議行動ではありませんね。
類例のこちらも「マラソン」であって、抗議行動ではありません。
The marathon is set to hit the streets of NYC this weekend, shutting down major roads and bridges across the city.
The marathon is set to hit the streets of NYC this weekend, shutting down major roads and bridges across the city. https://t.co/kw5D0kn5xh
— FOX 5 NY (@fox5ny) 2024年10月30日
マラソンは今週末、ニューヨーク市の街頭で開催され、市内の主要道路や橋が閉鎖される予定だ。
次の例は、抗議行動でもないし、取材活動とも少々異なります。
Leadership in action. Today, our executives and officials hit the streets of Johannesburg's Inner City to assess challenges and opportunities.
From tackling infrastructure theft and vandalism to addressing water issues and revitalising the areaLeadership in action. Today, our executives and officials hit the streets of Johannesburg's Inner City to assess challenges and opportunities.
— City of Joburg (@CityofJoburgZA) 2024年11月28日
From tackling infrastructure theft and vandalism to addressing water issues and revitalising the area. #JoburgUpdates #JoburgServices… pic.twitter.com/2xvDuq9dh8
リーダーシップの実践。今日、当社の幹部と役員はヨハネスブルグの都心部に視察に出かけて、課題と機会を評価します。インフラの盗難や破壊行為への対処から、水問題への対応や地域の活性化まで。
都心部の視察、ということで、「街頭での活動」という部分は共通しているといえるでしょうか。
人主語での活動を指すのではなく、「品物が店頭に並ぶ;発売され消費者の目に触れる」という従来からある用法の例もないわけではありません。
Our July Print Issue has officially hit the streets!! Pick up a copy while you can
Our July Print Issue has officially hit the streets!! Pick up a copy while you can 🐊 pic.twitter.com/nBCdk1hZJz
— EU Jacksonville Newspaper (@EUJacksonville) 2024年7月18日
7 月号の印刷版が正式に発売されました。お早めにお買い求めください
Two Magazines hit the streets today talking about Sunny Bleau and The Moons! First is the Jan/Feb issue of Relix Magazine and the second is Music Connection Magazine!
Two Magazines hit the streets today talking about Sunny Bleau and The Moons! First is the Jan/Feb issue of Relix Magazine and the second is Music Connection Magazine! More at https://t.co/DpkP7nhaaU #relix #musicconnection pic.twitter.com/dvU65GgkyV
— Music Connection (@musicconnection) 2022年1月25日
今日、Sunny Bleau と The Moons について取り上げている2つの雑誌が発売されます。1 つ目は Relix Magazine の 1 月/2 月号、2 つ目は Music Connection Magazine です。
The London Standard has hit the streets for the first time today as the capital’s most-loved and most trusted news brand launched an upmarket weekly newspaper
The London Standard has hit the streets for the first time today as the capital’s most-loved and most trusted news brand launched an upmarket weekly newspaper https://t.co/O5XdqbBKwK
— Standard News (@standardnews) 2024年9月26日
首都でロンドンで最も愛され、最も信頼されてきた(日刊紙の)ニュースブランドが、高級な週刊紙のロンドン・スタンダードとして(新たに生まれ変わり)今日初めて発行販売された。
※the London Evening Standardが日刊紙としての歴史を閉じ、新たに、週刊の新聞としてthe London Standardを立ち上げた、という背景の補足が必要でしょう。
ただし、私が普段英語ニュースを眺めている印象では、 “hit the streets” は人主語で、取材活動か、集団の街頭活動であることが多いですね。
気になる用法の、さらに気になる記事がありましたのでご紹介。
hit stores 「発売される;店頭に並ぶ;市場に出回る」は比較的新しめの言い回し。
storesは通例無冠詞複数形。shopsもないことはない。
販売店・陳列に関わる似た意味の他の名詞stands; shelvesなどが来ることもあり。とは言えmarketsだとねぇ…。hit stores 「発売される;店頭に並ぶ;市場に出回る」は比較的新しめの言い回し。
— Takashi “即時停戦” Matsui (@tmrowing) 2024年11月28日
storesは通例無冠詞複数形。shopsもないことはない。
販売店・陳列に関わる似た意味の他の名詞stands; shelvesなどが来ることもあり。とは言えmarketsだとねぇ…。 https://t.co/jdOCyEhJR4
元ツイはこちら。
Taylor Swift's Eras Tour book hits stores Friday. Here's what to know.
Taylor Swift's Eras Tour book hits stores Friday. Here's what to know. https://t.co/GTX11pr4sS
— CBS News (@CBSNews) 2024年11月28日
テイラー・スウィフトのEras Tourの本が金曜日に店頭に並びます。知っておくべきことは次のとおりです。
私は自分の感触で、「storesは通例無冠詞複数形」と書いていたのですが、あらためて検索してみると、なかなかどうして、という感じでした。備忘録としてもこちらに検索結果を残しておきます。
GLOWBEでの検索結果。2012/2013年のデータです。
storesの類語で検索。無冠詞複数形。
定冠詞+複数形
名詞のshopsがどちらかといえば英文化圏で使われる語である、ということは考慮するべきでしょう。
NOWコーパス。
stores類語、無冠詞複数形。
定冠詞+複数形。
この15年間で、
- トータルでのヒット数では、無冠詞複数形 (19698 ) > 定冠詞複数形 (16772)
直近5年間のヒット数では、
- 無冠詞複数形 (10922) > 定冠詞複数形 (8014)
ということで均衡コーパスではないので単純な比較はできませんが、近年では「無冠詞複数形」を見聞きする頻度が高くなっているのではないか、という印象です。
“stores” だけを取り出して、Ngram Viewerで見てみると、
全体
米
となっており、米語法での書き言葉で近年、無冠詞複数形の頻度が高まっている事が窺えます。
均衡コーパスのCOCAでstoresだけ取り出してみましょう。
無冠詞複数形
定冠詞複数形
トータルでは
- 無冠詞複数形 > 定冠詞複数形
ですが、これは「雑誌」「ニュース」の頻度が高いことによるもの。話しことばでは定冠詞つきが優勢、ということが見て取れます。
COHAで見てみると
無冠詞複数形
定冠詞複数形
定冠詞の用法も、それほど昔からあるわけではなく、頻度の上昇には10年分くらいのズレが推測できるような印象です。
hit + stores の無冠詞複数形で、物書堂の辞書で検索できたものは以下の2例。
hit stores (商品が)店に出回る (O-LEX)
The CD will hit stores in January. CDは1月に発売される (Oxfordコロケーション)
まだまだ辞書ではカバーし切れていない表現だと思います。
- 『書を捨てよ、町へ出よう』
といえば寺山修司。
変化しつつある現代の英語表現の実態を把握するためには、書も読み、コーパスも活用し、町にも出かけて行き、実際の英語の姿に触れ、その表現の差異と、生息域を観察、体験することが大切でしょう。
そんなことを今回取り上げたhitに関わる表現を眺めていて感じました。
本日はこの辺で。
本日のBGM: winter pupa (原田知世)