ジャングルの金メダリスト

試験前の授業終了。
現任校は3つの課程を持っているのだが、今回の期末考査は、課程によって授業のところと試験初日のところに分かれる。行事や入試などで、学年で試験日程が違うということは今までにもいくつかあったが、同一学年でも課程により試験開始が異なるというのはこの学校に来て初めて体験した。立場を変えれば、試験監督や自分の出題した試験の巡回などと授業が並行、または混在するので、時間割を作る教務泣かせでもある。
普通科再入門講座は、試験前の最後の授業が自習となるのは避けたいので、復習でもしっかりトレーニング。文から名詞句を取り出すのが難しいものの補充、解説に続けて、試験範囲の例文・用例を音読、Read & Look up。怪しい綴り字の縦書き練習。
商業科1年は、<大関>の持ち味をハンドアウトの用例と解説で辿る。「キーパー川島のどや顔」と「ちびまる子ちゃんのスダレ顔」を補足。
日本語で意味は与えられている。では、英文を見た時、何がその前に出ている、既習 (のはず) の文と違っているのか、その観察力を養うのが大事。その後は、類例で頭の働かせ方、その形の表す気持ちの刷り込み。日本語の解説も含めて、ハンドアウトの音読。いくら、心情に働きかけたとしても、「認知」面での処理向上に繋げないと定着には遠い道のりとなる。喩え話を覚えているだけではダメで、その喩えが表している主題・寓意をいつどのように自分で掴めるのか。手がかり、足がかりを揃えさせ、使わせて、磨かせる、そういうトレーニングの場を教室に作るのは何年教師をやっていても大変であることに変わりはありません。
高3のライティングは、argumentationでも応用可能な、「議論」での定型表現。
前任校でまだ「ライティング」のカリキュラムを担当していなかった年度に、「英語II」でやっていた「ディスカッション」用のキーフレーズ集のカードをコピーして配布。4年ぶりの登場。五輪なみ。
これは確か、アテネ五輪後の2学期の授業だったと思う。ハンマー投げの室伏選手が繰り上げ金メダルとなったことに端を発した「ドーピング問題」に関するグループディスカッション。この頃は、まだこのブログを始めて間もなかったので、授業記録も余り詳しくは残っていない (過去ログ参照 http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20071101)
『オーラルコミュニケーション』の教科書を書いていた時に使っていた書籍、資料などをさらって、定型表現、頭出しチャンクを100のカードにしたもの。
自分が学生の頃は、

  • 大杉邦三 『会議英語 国際会議・英語討論のための表現事典』 (大修館書店、1980年)
  • Blundell, J.A. et al (1982). Function in English. Oxford University Press

くらいしか参考にするものがなかったのだが、その後、ディベーターの同僚にも刺激され自分でも積極的に表現を集めていたので、

  • Dörnyel, Z. and S. Thurrell. (1992). Conversation and Dialogues in Action, Prentice Hall
  • R.F. Verderber. (1994). Speech for Effective Communication, second edition. Holt, Rinehart and Winston
  • Trevor Sather. (1999). Pros and Cons A debater’s Handbook, 18th edition, Routledge
  • 篠田義明、J.C. マスィーズ、D.W. スティーブンソン 『国際会議・スピーチに必要な英語表現 解説と実例集』 (日興企画、1994年)
  • 粼村耕二 『英語の議論によく使う表現』 (創元社、1995年)
  • Carter, R. and M. McCarthy. (1997). Exploring Spoken English. Cambridge University Press
  • デイビッド・ワグナー 『ワグナー・メソッド エクセレント・マニュアル 「ミーティング」マネージメント編』 (朝日出版社、1999年)
  • 小野義正 『ポイントで学ぶ英語口頭表現の心得』 (丸善株式会社、2003年)

など、自分がお世話になった書籍から、いいとこ取りをしたわけですね。

過去ログでもカード化の手順は取り上げたことがあるのですが、授業の流れの方はまだだったので、自分でも忘れないうちに書き残しておきます。
まず、大テーマを設定する。グループの数だけ、サブテーマを設定し、私の方で用意した資料の分析、読み込みをまずはグループ全員にこなしてもらい、役割分担。「基調講演」のようなスピーチを1名が約3分で行い、講演者とは別に司会者1名がフロアから質問、意見や反論を受け、講演者がそれに対して応答する。その間、書記が2名ほど準備していて、克明に発言の記録を取るとともに、「黒子」を2名配置して、資料を片手に、書記とも連携して講演者の当意即妙な受け答えを支えてもらい、担当グループの全員が協力しながら、クラスで「ディスカッション」をする。最終的に、基調講演に賛同が得られたり、または異論が噴出してその場が上手く収まらなかったり、はたまた、そもそも基調講演の切り口が甘すぎたり、他の生徒が聞いてすぐに理解できるような表現や伝達ではないがために議論にならなかったり、といろいろな終わり方はあれども、最後には「サマリー」を発表グループの側でその場で用意し、フロアに還元するのをルールとしていた。フロアにいてディスカッションに参加する他の生徒は、発表グループの評価をすると共に、その議論での結果投げかけられた「サマリー」も踏まえて、自分が考えたことを簡潔に英語で書いて提出、という流れ。サンデル教授のような熱い授業ではないが、それなりに機能していたように思う。
そのさらに前、公立校勤務時代にやっていた英語によるディスカッションは反省点が多かった。この時は、当時出たばかりのDavid Nunan監修のテキスト、ATLASを使い、「英語は英語で」の生徒によるマイクロティーチングの鉄人対決 followed by クラス・ディスカッションという形式だったのだが、そこで得られた多くの反省点がこのカード化で克服できたと思っている。ジャングルで迷子になった経験が後になってネイチャーガイドとしての財産となっているということか。
このようなレベルでの授業展開は現任校では望めないし、今の私は望んでいないけれども、まずは材料を揃えておかなければ、仕込みもできないのでね。

作問は順調。
解答はやや低調。
高3ライティングは後日、問題をDLできるようにしておこうと思います。
冬に向けて、密林からも書籍が続々と届く。日本酒も届く。書棚と冷蔵庫は充実。懐の寒さもなんのその。
『相棒』を見て、『修羅の門』を読み、岡村ちゃんを聴いて就寝。

本日のBGM: ターザン ボーイ (岡村靖幸)