6月は私にとって一年でもっとも心身のストレスがたまる月で、例年苦労していますが、今年は何とか乗り切れそうなところまで来ました。
大事なのはきちんと食べることとしっかり寝ることですね。
食欲が落ちたら素麺で炭水化物とかでもいいし、どらやき食べて餡こで脳に糖分を送ってその日を凌いだっていいんです。
さて、今日の「気になる語法」は、
- 不定詞と形容詞と形式主語の it と「生息域」
です。
不定詞の項目を学習する際に、多くの教材で形式主語の “it” のパターンを学ぶと思います。
次のようなものが代表的でしょうか。
It is important to develop good study skills.
優れた勉強法を身に付けることが重要だ. (OALD英英和)
It is important to be clear about what Chomsky is doing here.
チョムスキーがここで何をしているのかをはっきり理解することは重要だ。 (COBUILD米語英英和)
不定詞の意味上の主語を明示するパターンもあります。
it is important for somebody/something to do something It is important for him to attend every day.
彼にとって毎日出席することが重要だ. (OALD英英和)
親は子供の潜在的な能力を引き出してあげることが大事です
It is important for parents to bring out a child's potential ability. (O-LEX和英)
このitが形式主語となる表現形式に関して、学参などでよく見る説明が、
主語の位置に不定詞 (= to 原形)のチャンクが来ると、「頭でっかちになる」ので、それを避ける。
文末重点で、重要な情報を文末へと移動させる。
聞き手(読み手)にとって未知/意外な情報に焦点を当てるために文末へと移動させる。
というようなものです。
中村 捷 『発話型英文法の教え方・学び方』(開拓社、2018年)の第2章「予備のit」(pp.6-12)では、
- It is wrong to tell a lie. (嘘をつくのは悪いことだ)
という英文を例として、
予備のitを形式主語と呼んで、意味のない虚辞とする考え方もありますが、この文型を解釈するときには、文頭から訳し下げる形で解釈し「それは間違っている、嘘をつくのは」のように、itを指示詞として訳して、「それ」が後ろにくる不定詞やthat節や疑問節を指すというように理解しましょう。それが英語の流れに沿っているのです。
と解説をしています。大いに頷くところです。
ただ、私が気になるのは、高校生のエッセイライティングや、所謂「自由英作文」で使われる英文で、この
- It is 形容詞 (for +意味上の主語) + to 原形
が多用されることです。
ただ頻度が高いのであればまだ良いのですが、教材で見るお手本が、一文単位だからでしょうか?適切な生息域や意図のもとに使われていることがあまり多くない実感を持っています。
入試問題でも出てくるので教えなければ、などという声も耳にします。
では、どんな英文で見聞きしますかね?
1. It is important to recognize that certain things are just not worth your effort.
(努力に値しないものがあるということに気づくのは大切です。)
いきなり身も蓋もない内容の英文が来てしまいました。
今、私は「身も蓋もない」と言いましたが、「誰にとって身も蓋もない」内容なのでしょうか?一般に努力することが期待される人って誰?では、その人に対して、この文を言う人ってどんな人?教師?
2. It is natural for babies to cry when they are hungry.
(赤ちゃんがお腹をすかせたときに泣くのは当然です。)
この文は、誰が誰に対して、何のために言っているのでしょうか?
子育て相談に乗っているカウンセラーが、初めての赤ちゃんに戸惑っているママに向けて?
次の文はどうでしょうか?
3. It would be better for her not to lose her temper.
(彼女はあまりかんしゃくを起こさないほうがいいでしょう。)
学級担任が保護者に?獣医が飼い主に?
では、こちらは?
4a. It is necessary for you to go there immediately.
(あなたはすぐにそこへ行く必要がある。)
この4a. の例は、1から3までと違って、話し手(書き手)が直接相手をしている “you” が不定詞の意味上の主語になっています。対面であれ、オンラインであれ、「喫緊の事態」「火急の要件」なら、
4b. You should [need to / have to / must / had better] go there immediately.
のような助動詞的な表現を用いたり、
4c. Go there immediately.
のように、まさに「命令文」で伝えることもできるはずです。
4bや4cの表現形式を避ける、どんな生息域が 4a.の表現にはあるのでしょうか?
そのところを解説してくれる教材が殆どないのに、テストで、しかも一文で答えを言わされる(書かされる)のは理不尽だなぁ、という気がします。
こんな感じ?
5. It's unreasonable to be tested on writing a specific expression when we haven't been taught in what situations to use it.
(その表現を使うべき状況を教わっていないのに、特定の表現をテストで書かされるのは不合理です。)
大学入試の読解問題で出てくる事例では、概ねその「生息域」を確かめることが可能です。
6. The globalized world has become frighteningly complex for many people. Students who had felt certain of the career they would follow have suddenly been thrown into doubt and confusion about what they should do, as they see well-known companies and even whole industries disappear. Survival, not to mention prosperity, has come down to one’s ability to analyze economic options, make the most reliable predictions possible, and then to act strategically according to those analyses and predictions. That is what economics ultimately is all about. Even if one has no intention of becoming a “professional” economist, it is essential to have some economic knowledge, for the sake of one’s nation as well as for one’s personal career.
What does economics teach? Economics teaches how the costs and benefits of a course of action can be calculated and compared. It teaches how appropriate choices can be made.
グローバル化した世界は、多くの人々にとって恐ろしいほど複雑になりました。自分が進むべきキャリアを確信していた学生たちでさえ、有名企業や業界全体が消えていくのを目の当たりにし、何をすべきか突然疑念と混乱に陥っています。繁栄はおろか、生存さえも、経済的な選択肢を分析し、可能な限り信頼性の高い予測を行い、その分析と予測に基づいて戦略的に行動する能力にかかっています。それが経済学の本質です。「専門」の経済学者になるつもりがなくても、個人のキャリアだけでなく国のためにも、ある程度の経済知識を持つことが不可欠です。
経済学は何を教えるのか?経済学は、行動方針のコストと利益をどのように計算し比較するかを教えます。適切な選択をどのように行うかを教えるのです。
長々と第1段落を書いて、読み手との共通基盤を作り、主題を導入し、次の段落で切り口を作って読者をゴールへと連れて行くタイプの文章のようです。不定詞を含む文
- it is essential to have some economic knowledge
は、あくまでも筆者の主張・主題の前振りの役割ですね。
古くは20世紀後半のLongmanのCGEL (1985年)で、四半世紀前であれば、LongmanのLGSWE (1999年)で、不定詞や名詞節での外置、非人称主語の働きや情報構造など、英語学の知見はそこそこ教育現場にも降りてきたような印象を私は持っていたのですが、教科書や学参などにはあまり反映されていないまま今日に至っているのでしょうか?
次の論文などは、20年前のものですが、近年でも引用されているのを見た記憶があります。
Stance and engagement: A model of interaction in academic discourse
K Hyland
Discourse studies, 2005
journals.sagepub.com
journals.sagepub.com
ぼやいているだけでは埒が明かないので、いくつか生成系AIに投げ掛けて見ました。
私が書いたのはこんなプロンプトです。
英語表現で
- It is important for us to think globally and act locally.
などという際の形式主語と不定詞による補文は、どこかよそよそしい、白々しい、他人事めいた印象を読み手に与えるような気がして使用を躊躇うことが多いです。
確かに、同じ主張を明確に述べるのでも、Think globally; act locally. と命令文を使ったり、We must think globally and act locally. と人主語を立てることによって読み手に与える、圧、のようなものをIt is で始めることで軽減し、クッションとしたり、主観的な意見を、あたかも客観的に受け入れられている命題であるかのように見せることはできるとは思うのですが、その文に「筆者として書いている自分はいません」と言っているような申し訳なさを感じます。
文体論的な分析評価をお願いします。先行研究があれば論文も教えてください。
最初のプロンプトは拒否されたのですが、やり取りの中で回答を得ることはできました。
ChatGPT 4.1
ご質問ありがとうございます。英語文体における「形式主語(it is ...)」+「不定詞」構文とその語り手性・態度表現についての鋭いご指摘、たいへん興味深く拝見しました。文体論の観点と先行研究もあわせて下記に整理します。
1. 文体論的分析
(1) 形式主語+不定詞構文 (It is important for us to...)
この構文は、書き手の視点や責任を曖昧化し、普遍的・客観的トーンを生み出すことが一般的です。たとえば
- It is important for us to think globally and act locally.
- It is necessary to reduce our carbon footprint.
これは「意見・要求・提案」を「個人的な思い」として出すのでなく、どこか「事実」「一般的な真理」「社会的合意事項」に見せかける効果があります。
このため、命令文(Think...)、We must...のような直接的な語り口より読者への「強圧感」や「押しつけ」は緩和されます。
(2) 書き手の消失・責任回避
ご指摘のように、こうした構文は「誰がそう考えているのか」という主体を背景に退けます(agent backgrounding/invisibility)。
筆者「自らの主張」を「事実」や「空気」として提示することで、「自分は責任主体ではない」という印象すら生み出します。
(3) 客観性の演出/クッション的機能
また、「それ(It)が重要だ」という訳出自体、意見を婉曲化して表明するクッション表現としても使えます。
これは学術論文やビジネス文書、国際的な公式声明で多用される「客観性」「中立性」の演出方法です。2. 他の表現との比較
- 命令文 (Think..., Act...): 直接的・アクティブで、書き手の強い存在と強制力を感じさせる。
- We must ...: 共同体感覚を伴うが、「我々」の主観的・強制的な響きあり。
- 形式主語It is ...: 平板・客観的・間接的。書き手の「手触り」が消える分、他人事感や責任回避的印象になる。
3. 文体論での扱い・先行研究
このような問題意識は、以下の領域で論じられています:
- 言語の主観性/客観性
Lyons, J. (1982): "Deixis and Subjectivity"
Fowler, R. (1986): "Linguistic Criticism"
- アカデミック・ライティングのエンゲージメント・ディスタンス
Hyland, K. (2005): "Stance and Engagement: A Model of Interaction in Academic Discourse"
ここでは、筆者が一歩引くための諸表現(It is important..., There is a need to..., etc.)による「ディスタンス」の作り方が細かく分析されています。
- 無主語文の機能
日本語での議論もありますが、英語でも
Halliday, M. A. K. (1994): "An Introduction to Functional Grammar"
主語の消失(impersonalization/agent deletion)がイデオロギー的にどのような意味を帯びうるかが論じられています。
- 学術・官僚表現の無主語性
Biber, D., Johansson, S., Leech, G., Conrad, S., & Finegan, E. (1999): "Longman Grammar of Spoken and Written English"
報告文・学術論文での impersonal construction (It is ... that...)の多用とその機能的説明が見られます。4. 結論・評価
ご懸念のように、「It is important for us to...」は、
- 主張の「熱」や「当事者感」を薄れさせる
- 責任の所在を曖昧化し、「みんなが考えるところの常識」と印象づける
という効果があります。文体的には「遠ざけ・白々しさ」というネガティブな効果もたしかにあります。
ただし、これは文脈とジャンル次第で「丁寧さ」「客観性」「控えめさ」が美点となることも多く、その機能に応じて使い分けるのが賢明です。
ご要望の論文・研究文献は以下を参照ください。
参考論文・文献(先行研究)
- Hyland, K. (2005). "Stance and engagement: A model of interaction in academic discourse." Discourse Studies, 7(2), 173–192.
- Biber, D., Johansson, S., Leech, G., Conrad, S., & Finegan, E. (1999). "Longman Grammar of Spoken and Written English." London: Longman.(Chapter 16 "Impersonal constructions")
- Halliday, M.A.K. (1994). "An Introduction to Functional Grammar."(agent suppression や impersonalityの項など)
- Lyons, J. (1982). "Deixis and Subjectivity: Loquor, ergo sum!" In R. J. Jarvella & W. Klein (Eds.), Speech, Place, and Action. Chichester: Wiley.(主観性をめぐる理論)
- Fowler, Roger. (1986). "Linguistic Criticism." Oxford University Press.
- (日本語)山田恒夫(1990)「無主語文の機能と意味」『言語研究』 97: 39-49.
必要でしたら論文PDFや要約のお取り寄せもご支援します。
結構な情報量で、観点も明確な印象。
ただし、回答で示された英語の参考文献の存在は確認できましたが、日本語の参考文献が不明です。
こういうのがあるので、丸投げは禁物です。
次にGemini 2.5 pro
ご質問ありがとうございます。大変鋭いご指摘で、文体論的に非常に興味深い論点です。`It is important for us to ...` という構文が持つ「よそよそしさ」「白々しさ」「他人事めいた印象」という感覚は、多くの洗練された書き手が共有するものです。その感覚は決して間違いではなく、この構文の持つ機能と深く関わっています。
以下に、文体論的な分析評価と、関連する先行研究の分野について解説します。文体論的な分析評価
ご指摘の通り、`It is important for us to think globally and act locally.` という文は、以下の代替表現と比べて明らかに異なる印象を与えます。
1. 命令文: `Think globally; act locally.`
2. 人主語+助動詞: `We must (should) think globally and act locally.`
3. 形式主語構文: `It is important for us to think globally and act locally.`
これらの文体的な差異は、いくつかの側面から分析できます。1. 非人称性 (Impersonality) と客観化 (Objectification)
・機能: `It is ...` の最大の機能は、主張の非人称化です。主語に `I` や `We` といった行為者を置かず、形式上の主語 `It` を使うことで、発言者個人の意見や感情であるという印象を薄めます。
・効果: これにより、述べられている内容(この場合は `to think globally...` の重要性)が、個人的な主観的判断ではなく、あたかも客観的な事実や社会的に合意された真理であるかのような響きを持ちます。ご指摘の「あたかも客観的に受け入れられている命題であるかのように見せる」効果は、まさにこの非人称性から生まれます。
・ 「白々しさ」の源泉: しかし、読み手がその主張を自明の理だと思っていない場合、この客観化の操作が透けて見え、「本当はあなたの意見なのに、さも当然のことのように言っている」という印象、つまり「白々しさ」や「よそよそしさ」につながります。筆者の姿を意図的に消していることが、かえって不誠実に見える可能性があるのです。2. 焦点 (Focus) と情報構造 (Information Structure)
・ 文末焦点の原則 (End-Weight Principle): 英語では、新しい情報や重要な情報を文末に置く傾向があります。`It is ... to ...` の構文(専門的には extraposition と呼ばれます)は、本来主語であるはずの長い不定詞句 (`To think globally and act locally`) を文末に移動させるための構造です。
・ 効果: これにより、`to think globally and act locally` という本当に伝えたい行動内容に焦点が当たります。`To think globally and act locally is important.` という文も文法的には正しいですが、主語が長すぎて頭でっかちになり、読みにくく、リズムも良くありません。`It is...` を使うことで、文のバランスを整えつつ、最も重要な情報を際立たせることができます。
・ 圧の軽減: 命令文や `We must` が行動の主体(You / We)に直接的な圧力をかけるのに対し、`It is ... to ...` は行動内容そのもの(`to think globally...`)の「重要性」を客観的に提示する形をとるため、圧が和らぎます。これはクッションとしての機能です。3. フォーマリティ (Formality) と丁寧さ (Politeness)
・ 機能: 非人称的な表現は、一般的にフォーマルな文体(学術論文、公的文書、ビジネスレポートなど)で好まれます。個人的な感情を排し、冷静で分析的なトーンを維持するためです。
・ 効果: `We must...` のような直接的な表現は、文脈によってはやや強い、あるいは押し付けがましいと受け取られる可能性があります。`It is advisable to...` や `It is recommended that...` のような表現は、相手への配慮を示し、より丁寧で穏やかな提案となります。
・ 「申し訳なさ」の感覚: この構文が持つ「筆者として書いている自分はいません」という感覚は、このフォーマリティと非人称性の裏返しです。筆者は自身の姿を消すことで、文章の客観性や丁寧さを高めようとしますが、その代償として、文章に込めた個人的な情熱や責任感が希薄に見えてしまうのです。このトレードオフを敏感に感じ取られているのだと思います。まとめ:いつ、この構文を使うべきか?
この構文の評価は、文脈に大きく依存します。
・ 効果的な使用場面:
* 学術論文: 客観的な事実や一般論として何かを提示するとき。
* 政策提言・ビジネス文書: 組織としての公式見解を示し、個人的な意見ではないことを明確にしたいとき。
* 穏やかな提案: 相手にプレッシャーを与えずに、ある行動が望ましいことを伝えたいとき。・ 使用を躊躇うべき場面(ご自身の感覚が正しい場面):
* オピニオン記事やエッセイ: 筆者の個人的な信念や情熱を伝えたいとき。`I believe it is crucial that we...` のように、あえて人主語を立てる方が力強い。
* 強いリーダーシップが求められる場面: `We must act now.` のように、直接的で力強い言葉が人を動かす。
* 読者との共感を築きたいとき: `It is...` は読者との間に距離を作ります。`Let's work together to...` のような表現の方が、一体感を醸成します。先行研究・関連論文について
このテーマに直接「"It is important to"構文の文体論」といったタイトルで言及した論文を見つけるのは難しいかもしれませんが、以下の分野の研究が深く関連しています。1. 談話分析 (Discourse Analysis) / 文体論 (Stylistics):
* 主題: 書き手が特定の文法構造を選ぶことが、どのように意味や効果(説得、印象操作など)を生み出すかを分析します。
* キーワード:Stance (スタンス、立ち位置), Hedging (ヘッジング、断定を避ける表現), Impersonality (非人称性), Metadiscourse (メタ談話、書き手が文章内で自身の文章や読者について言及すること)。
* 代表的な研究者:
* Ken Hyland: 学術論文におけるスタンスやヘッジング研究の第一人者です。彼の著書 Metadiscourse: Exploring Interaction in Writing や Hedging in Scientific Research Articles などは、まさにこのような表現がどのように機能するかを論じています。
* Douglas Biber: コーパス言語学の手法を用いて、様々なジャンル(会話、学術文、小説など)でどのような文法構造が使われるかを統計的に分析しています。彼の共著 Longman Grammar of Spoken and Written English は、extraposition構文が学術文などのフォーマルな文体で多用されることをデータで示しています。2. 機能文法 (Functional Grammar):
* 主題: 文の構造を、それが果たすコミュニケーション上の「機能」から説明します。
* 代表的な研究者: M.A.K. Halliday が創始した選択体系機能文法 (Systemic Functional Linguistics) は、`It is...` のような構文を対人関係的機能 (Interpersonal Function)(書き手と読み手の関係を構築する機能)とテキスト的機能 (Textual Function)(情報を整理し、メッセージを効果的に伝える機能)の観点から分析します。extrapositionは、まさにテキストの焦点(Theme/Rheme構造)を操作する機能を持つと説明されます。3. 語用論 (Pragmatics):
* 主題: 文脈の中で言語がどのように使われ、解釈されるかを研究します。
* キーワード: Politeness Theory (ポライトネス理論).
* 代表的な研究者: Brown & Levinson のポライトネス理論では、`It is...` のような非人称的な表現は、相手の「面子 (face)」を脅かす可能性のある行為 (Face-Threatening Acts) を間接的に行うためのストラテジーの一種(off-record strategy)として解釈できます。これらの研究分野の文献を探すことで、ご自身の感覚を裏付ける理論的な背景を深く理解することができるでしょう。
ご自身の文体に対するその繊細な感覚は、書き手として非常に重要な資産です。その感覚を大切にしながら、文脈に応じて最適な表現を選択していくことが、より説得力のある文章を書く鍵となります。
これまた長文の回答でした。
専門的知見が盛り込まれてはいますが、文末重点と文末焦点など、正確性に欠ける回答もあり、内容の精査が必要不可欠ですね。
最後はClaude 4.0 Sonnet
非常に鋭い言語直感をお持ちですね。この現象は文体論や語用論で重要な研究対象となっています。
文体論的分析
1. 非人称化による客観性の演出
- `It is important...` 構文はimpersonal constructionとして、話者の主観を背景化する
- 責任の所在を曖昧にし、「普遍的真理」として提示する修辞技法
- academic writing では権威付けの手段として多用される
2. 語用論的効果の二面性
ポジティブ効果:
- 断定的表現の緩和(hedging)
- 読者への配慮表現(politeness strategy)
- 異文化間コミュニケーションでの衝突回避
ネガティブ効果:
- 責任回避的印象
- 感情的距離の創出
- authenticity の欠如
先行研究
主要論文:
1. Hyland, K. (2005). Metadiscourse: Exploring Interaction in Writing
- academic discourse における impersonal structures の機能分析
2. Myers, G. (1989). "The pragmatics of politeness in scientific articles"
- 科学論文での hedging strategies として it-extraposition を分析
3. Biber, D. et al. (1999). Longman Grammar of Spoken and Written English
- register analysis: formal writing での it-cleft の頻度と機能
4. Thompson, G. & Thetela, P. (1995). "The sound of one hand clapping: The management of interaction in written discourse"
- 書き言葉における interpersonal meaning の希薄化現象日本語研究:
- 田中望 (1990) 『英語の文体』 研究社
- 中右実 (1994) 『認知意味論の原理』 大修館書店
代替表現の効果比較
1. It is important to think globally... (客観化・距離感)
2. We must think globally... (包摂・責任共有)
3. Think globally... (直接性・行動促進)
4. I believe we should think globally... (主観明示・誠実性)
このAIからも長文の回答が返ってきました。
ただ、和書の参考文献で、研究社からの関連書籍では、
豊田昌倫 『英語のスタイル』 (1981年)
池田拓朗 『英語文体論』(1992年)
は確認できましたが、回答中にあった
田中望 (1990) 『英語の文体』 は確認できず。
田中という姓は、
H・G・ウィドウソン (著), 田中 英史、田口 孝夫 (訳)
『文体論から文学へ: 英語教育の方法』(彩流社、1989年)
の訳者には見つけられましたが、回答中にあった田中望は英語の文体論では見つかりませんでした。
田中 望 『日本語教育の方法』(大修館書店、1988年)
は出版年こそ近いですが、日本語教育なので内容は全く関連しません。
やれやれ、ですね。
高校生にかぎらず、私が教える際には、不定詞と意味上の主語でとかく取り上げられる前置詞ofとの比較で It is 形容詞 for 名詞 + to原形の練習をするよりも、活動などテーマとして取り上げる動名詞主語のチャンクを整備できるようにしましょう、と説くことが多いです。
とりわけ、実感を込めて、実体験を踏まえての説得や助言などでは意味上の主語つきの動名詞も含めてチャンクとして括り出せることが重要になってくることを結構しつこく言っています。
今回の「気になる語法」では、
- It is important (for + 意味上の主語) to 原形
を取り上げていますが、この背景には、過去ログで書いていたこのエピソードがありました。
2006年12月11日の拙ブログ記事からです。
『英語青年』1月号(研究社出版)の連載「リノベーションブルース」(佐藤良明)は高校教師も必読。
「彼らは常に正論を書くように鍛えられてきたのであった。並んだ、並んだ、important.」
として示される東大の学生の英文をもとに、佐藤は更に続ける。
- 日本の学校英語には、戦前の『英語青年』の和文英訳問題の、あの道徳的な内容が伝統としていまも息づいているんだろうか。
- 英語以前に、「自分の意見」というものが見つけられない学生がいることも知らされた。正論はそんなにいくつもないとしたら、それも道理ではある。
中での引用は今はなき雑誌 『英語青年』の2007年1月号に収録されていたもの。
この佐藤氏の “important” の指摘が、その時の私に物凄く響いたのですね。
だって20年近く経った今でも覚えているくらいだもの。
適切な生息域や表現の意図がズレてしまっている形式主語での不定詞の使われ方を見聞きするにつけ、そこに「空々しい」というか「浮ついた」「地に足のついていない」というか、「実体が伴わない」というか、
- 🎶 そこに〜あなたは〜いません〜 🎶
と歌ってあげたくなるような「欠落」「不在」を感じるのです。
冒頭であげた例文1を覚えていますか?
1. It is important to recognize that certain things are just not worth your effort.
(努力に値しないものがあるということに気づくのは大切です。)
教師の立場から生徒の様子を見ていて、
- 無駄な労力を割いて「勉強」しているなぁ…。
と思うことはあるにはあるわけですが、それを面と向かって「あなたのやっていることは無駄な努力だよ」というのは「角が立つ」わけです。ということで、本人の話として始めるのではなく、1. のような一般論で話し始め、例えば、「私の昔の友人の話なんだけどね」などとまわり道に連れていって、「そのエピソードを本人の状況と重ね合わせるチャンスをつくる」などの、まどろっこしいことをしたりもするわけです。
例文の2はどうでしょう?
2. It is natural for babies to cry when they are hungry.
(赤ちゃんがお腹をすかせたときに泣くのは当然です。)
「でも、言葉で表現できない赤ちゃんは、自分の異変を伝えるにも他に手段がないわけですから、病気など、空腹以外の原因がある可能性も忘れてはいけません」などと続くこともあり得ます。
「生息域」というくらいなんですから、教材に収録するその一文の前後にもちゃんと命の「息」を吹き込むことが重要です。
学習が上手くいかない生徒も、授業が上手くいかない教師も、まずは、お腹いっぱい食べて、しっかり寝ましょう。
冒頭では食欲が落ちたときの助言はしていましたが、寝れない(眠れない)ときの話しはしていませんでしたね。
そんなときはこちらのBGMでも。
本日のBGM: アザミ嬢のララバイ (中島みゆき)