群れるな、連なれ、今

高大接続での英語の「外部試験」利用に関する問題について、中国新聞に情報提供してきました。先月も新聞各社に投書をしていますが、どれも採用されていません。中国新聞にも駄目元で送っています。中国新聞に送ったものに加筆修正して、こちらに私の問題提起、個人的な意見を載せておきます。各種メディアの方々はこちらをお読みになって、もう少し報道のあり方を考えていただきたく思います。


2020年度から導入されるという大学入試での「民間試験」の活用に関して、問題が山積にも関わらず、それが広く周知されていないがために、一般市民どころか、当該の受験生や学校現場でも問題の深刻さに気付かないまま事態が進んでいることに大きな危惧を覚えるものです。

中国新聞は東大の阿部先生のインタビューを掲載するなど問題意識の高いことを知り、こうして情報を発した次第。頻りに「2020年に改革を」と期限が叫ばれているような印象を受けますが、今回の「民間試験の導入」は、次期学習指導要領の改訂 実施のタイミングとは全く連動しておらず、単なる「東京五輪」への便乗でしかありません。「民間業者」への利益誘導ありきのような「改革」には頷くことは出来ません。

文科省(そして大学入試センター(DNC))の「認定」では、複数の異なる試験団体の試験が認められていますが、その試験会場は全ての受験生に公平に開かれてはいません。現行のセンター試験では、出願締め切りまでに申し込めば、全ての受験生が必ず(どこかの会場で)受験することが可能です。これに対して、民間の英語の試験では必ずしもそうはならないのです。

認定された試験は確かに多いのです、

英検 / TEAP / TEAP CBT
GTEC / GTEC CBT
TOEFL iBT
TOEIC
ケンブリッジ英検
IELTS

では、この選択肢の中である受験生が希望しさえすれば、その試験が年2回受験できる保証はあるのでしょうか?
甚だ疑問である、としか考えられません。

例えば、英検ではTEAPという4技能型の試験を実施していますが、このTEAPの会場は中国5県全体で広島に一ヶ所のみしか設けられていません。

英検に問い合わせたところ、次のような回答を得ました。

TEAP運営事務局です。
さて、TEAPの受験会場について、以下より回答させていただきます。

1. 中国地区でどの都市に何ヶ所試験会場があるのか?
2017年度は広島1会場のみで、2018年度も引き続き広島のみでの実施を予定しております。
また、四国地区になりますが、2018年度は新規で香川県での実施も予定しております。

2. 九州地区でどの都市に何ヶ所試験会場があるのか?
2017年度は福岡1会場(博多)のみで、2018年度は福岡(博多)、熊本(市内)にてそれぞれ1会場での実施を予定しております。

試験会場については、以下のウェブサイトからもご覧いただけます。

その他でもご不明な点がございましたら、お気軽にお申し付けください。
何卒よろしくお願いいたします。

なんともありがたい情報です。
平成30年度のセンター試験の志願者は広島県だけで約1万5千人。私の住む山口県に は試験会場はありませんから、広島に受験に行くとすれば、約5千人が加わります。年2回受験可能として、二県だけで2万人X 2という計算での延べ4万人規模の受験生を英検のTEAPではどのくらい「受け入れる」予定なのでしょうか?
岡山、島根、鳥取の他県を合わせたら、中国5県全体では、どのくらいの受験生規模になると文科省では想定し、外部試験の認定が行われているのでしょうか?「山口はあんなにたくさんの新幹線の駅があるのだから、広島じゃなく、福岡・博多に行けばいいじゃないか」と言う人がいるかもしれません。福岡県単独でのセンター試験志願者は約2万5千人。広島よりもさらに1万人多いのです。しかも、TEAPの試験会場は、九州全域で博多一ヶ所だけなのです。これだけの受験生規模を、一ヶ所の試験会場でどう捌くおつもりなのでしょうか?

従来の英検は中学高校の会場を「準会場」として、教員の監督によって実施しており、さらに、1次試験の合格者のみ、面接でスピーキングの試験をしているこということが判断材料となってか、「落選」という報道に注目が集まっていました。しかし、この英検も新たに「公開会場」での4技能試験として認定されています。これまでに実施した実績がないにも関わらずです。「公開会場」といえば聞こえはいいのですが、試験会場はどう確保する算段なのでしょう?

会場として、高等学校の校舎を使わずに先程示した受験生規模に対応できるのでしょうか?試験監督は高校の教員を使わずに賄えるのでしょうか?試験監督を英検から派遣するとなった場合に、英検の職員で人数は足りるのでしょうか?見通しは暗いと思います。

では、万が一、高校が会場として認められるような場合に、自分の通う高校が会場となる生徒と他校の生徒で有利・不利は生じないのでしょうか?

この問題は、英検だけでなく、ベネッセのGTECでも同じことです。GTECは4技能対応の試験であれ、これまでに「公開会場」での実施実績はありません。全て、高校が団体申し込みをして、高校を試験会場として、高校の教員が監督をして行われてきました。年間数十万人という受験実績はこのようにして積み重ねられているのです。2020年までに、全ての都道府県で試験会場を設けることを条件として認定されていますが、具体的に何処が会場となるのか、どの程度の収容規模なのかは、現時点で全く不明です。

「大学入試英語成績提供システム参加要件」なるものが、大学入試センターの理事長裁定で2017年の11月1日付けで出ているが、有名無実も甚だしい。
http://www.dnc.ac.jp/albums/abm.php?f=abm00011205.pdf&n=1_

6. 毎 年 度 4 月 か ら 1 2 月 ま で の 間 に 複 数 回 の 試 験 を 実 施 す る こ と 。
当 該 複 数 回 の 試 験 は 、 原 則 と し て 、 毎 年 度 全 都 道 府 県 で 実 施 す る こ と 。た だ し 、 当 分 の 間 、 受 検 希 望 者 が 著 し く 少 な い 地 域 で は 、 近 隣 の 複 数 県 を 併 せた 地 域 で 合 同 実 施 す る こ と が で き る 。こ の 場 合 で あ っ て も 、全 国 各 地 の 計 1 0 か 所以 上 で 複 数 回 の 試 験 を 実 施 し て い る こ と を 要 す る も の と す る 。そ の 試 験 に 申 し 込 ん だ 受 検 希 望 者 の 受 検 機 会 の 確 保 に 努 め る こ と 。

常識的に考えて、受験生そのものが少ない地域は受験希望者が少なくなるに決まっています。その場合には隣県での合同実施でよい、などと認めていたら、地方在住者は居住都道府県で受験出来る試験の選択肢がないままじゃないですか。

さらには、「受験生となる高校生をその高校の教師が監督をしたり採点をしたりしてはいけない」というような限りなくグレーな文言もあります。

9. 試 験 監 督 及 び 採 点 の 公 平 性 ・ 公 正 性 を 確 保 す る た め の 方 策 を 公 表 し て い る こ と 。
そ の 際 、 次 の ( 1 ) 及 び ( 2 ) の 要 件 を 満 た し て い る こ と 。
(1) 会 場 ご と の 実 施 責 任 者 及 び 各 室 ご と の 試 験 監 督 責 任 者 が 、 受 検 生 の 所属 高 等 学 校 等 の 教 職 員 で な い こ と 。そ れ 以 外 の 試 験 の 実 施 に 協 力 す る 者 と し て は 、 同 教 職 員 の 参 画 を 認 める が 、 こ の 場 合 に は 研 修 の 受 講 や 誓 約 書 の 提 出 を 課 す こ と 。
(2) 受 検 生 の 所 属 高 等 学 校 等 の 教 職 員 が 採 点 に 関 わ ら な い こ と 。

驚きです。これって、高等学校を試験会場として想定し、試験監督さらには採点者まで高校の教員を想定しているということですよね?

現行の「センター試験」でも、高等学校を試験会場で使用しているところが、全国で五十数校あると思いますが、その年一回実施のセンター試験でさえセキュリティー管理にどれだけ腐心しているか。それを年複数回行えますか?当該高校の教育活動にいったい年間延べ何日の制約を課すつもりなのでしょうか?

受験機会の公平性を担保する、などという「お題目」で、高等学校を会場として「公開」を謳った試験の実施を認めなさい、というような運用になっていくのではないかと危惧しています。例えば、大規模のA高校の試験会場はA高校の教員が監督でB、C高校の生徒が受験。B高校会場では、B高校の教員が監督し、A高校の生徒を受け入れ、過年度生とともに受験のように。高等学校の教員が監督をする試験を、「大学入試」として認めて本当にいいのですか?模擬試験の監督じゃないんですよ!
さらに、その「採点」で他校とは言え高校教員が関わるなど、言語道断でしょう?誓約書を書けばいいってものではありません。

大都市圏には、試験そのもので複数の選択肢が与えられているのに対して、地方ではその選択肢自体が限られ、さらに地方の中でも居住地&受験地によって、その格差が拡大するという状況を詳しく調査し、報道していただきたいと思います。さらには、「大学入試」という大きな意味を持つ試験で、その監督や採点に高校教員が関わりを持つ、ということの是非を広く問うて、問題意識を喚起し、国民的な合意形成に資する報道を、是非ともお願いします。

「問題山積です」というだけなら私でも言えますから。


本日のBGM: Gypsy (Suzanne Vega @ Solitude Standing Live 2012)