広島と長崎の間で

山口県に移り住んで10年目になる。
このブログを書き始めたのが2004年の秋。故あって、非常勤講師として東京の私学で働いていた頃に書き始めて約3年で山口行きを決め一端ブログを閉じた。3ヶ月ほど全く書かない時期を経て、この地でブログを再開して、9年余り。既に東京勤めだった頃の3倍近い期間、ブログを続けていることになる。更新頻度で言えば、昔の方が高かったのだろうと思うが、今は自分の身体と頭と声とことばができるだけ齟齬を来さないような頻度で書いているので、「今んとこは、まあこんな感じなんだ」 (inspired by 曽我部恵一)。

夏の広島の話は山口に来た最初の夏に振り返りこちらに書いていた。1995年。私にとっても忘れられない夏の一日であった。

「傘を差さなくてもいい日」
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20070815

そして、ハラトモ様の故郷でもある長崎での思い出は2年前。
「国体」とはいえ、「国民体育大会」の方だけれども。

「舟に乗る準備を」
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20141023

「山口って、この二つの街の間に位置しているのだな」と改めて実感したのが、この一週間、いや四日間。
自分自身のことばが身にしみる機会でもあった。

  • 目の前にある「ことば」を生き直しなさい。

とは、授業で私がよく口にすることばであるが、奇しくも、その自分のことばが試されることとなった。自分が聞き手として選ばれ、語り掛けられた、と思える、意味の乗った、受け止める重さのある「ことば」と、飾られてはいるものの空疎な容器だけが運ばれ、自分を通り過ぎていくことば、との間の超えることの出来ない隔たりを痛切に感じた四日間であった。生き直すには、まずはそのことばが命を持って生まれてこなければ…。


さて、
前回のエントリーで、夏期課外前半までの振り返りで高1の分をあげていた。
今日は高3から少し。

読解の基本的な取り組み方に関しては、過去ログでもファイルを公開していたので、そちらを見てもらうとして、「つながり」と「まとまり」をどのように自分で咀嚼し、理解から表現への橋渡しを図る(諮る?)のか、という部分では、高2の時点での長い長い目で見た「仕込み」が重要であり、そのために、過去ログで示したような「図解」「百科事典」「Q&As」といった英語ネイティブの子供用の書籍類を学級文庫に入れている。
その「仕込み」を経て、明示的に指導・学習しているのが、DCT。Discourse Completion Tasks(談話を整合・完成させる課題)である。

私の授業の中ではナラティブの指導で、物語りを途中まで読み、その続きを書いて締めくくったり、中盤から終わりまでを示して、その書き出しを書かせたり、という「小説前後」のような活動をさせることが多いのだが、説明文(定義文)でも、談話を整合させるような活動を設定している。

長沼君主先生や工藤洋路先生を中心として、ELEC同友会英語教育学会のライティング研究部会が、数年前にこの基礎研究に取り組み、2010年の年次大会と紀要で発表しているので、詳しくは学会か部会にお問い合わせを。

http://elecfriends.com/

私自身の授業では、「中抜き」と称する、談話・段落の途中に空所を設ける課題を主として扱っている。
前後のつながりと、全体のまとまりを考えて「そこにいるべき、あるべき」情報の「核」「肝」は何か、をまずは日本語で考えてもらい、そこを足場として、その日本語の「意味の核・肝」を「意味順」に当て嵌めて英語に移していく、という流れである。

旧課程の「ライティング」、現行課程の「英語表現」の検定教科書以外に、ESL/EFL用の教材や指導の概説書、上述の「事典」「図解」などからも、典型例となる「パラグラフ」を引用している。
集中的、明示的に扱うために、段落の中から3文を抜きだしたり、3文に加工したりしているものもある。

授業で使うワークシートはこちらからダウンロード可。
DCT2016
DCT2016.pdf 直

「つながり」と「まとまり」については、これまでにも、折りに触れ指摘し、とりわけ読解の際には、しつこく確認してきたし、高1、高2段階でも、「イカソーメン」と私が名付けたdiscourse completion の活動が定番となっている。

このところ高1で扱っている『ぜったい音読』(講談社)の旧版の英文で、つながりまとまりを考える格好の素材文に関しては、高2、高3でも必ず振り返っている。(過去ログ参照 http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20090617)

それでも、この「中抜き」になると、生徒はなかなかに苦労するのである。
alsoやtoo, as well といった高校入試レベルでの「つなぎ語」であっても、市販の「大学」入試対策読解教材では「何に何が添加されているのか」「Aという情報とBという情報がどのような観点で同じレベルとして並んでいるのか」という部分に関しては極めてお粗末な解説が目立つので、膝突き合わせの授業の中で、明示的にきちんと扱う必要性を痛感して、今日に至っている。

このDCTの指導手順や生徒の取り組みに関しては、11月の全英連にて詳しく扱う予定。おいでませ、山口へ。

本日はこの辺りで。

本日のBGM: gone ---live 2006--- 『道はつづく---特別篇----』ボーナストラック / ハンバート ハンバート