記録的豪雨の中国地方でした。
私の住むエリアは、2009年の河川の氾濫を受け、浚渫工事など対策をとっていたこともあってか、雷に怯えて午前中を過ごしたものの、降雨での被害はそれほどではなかったのですが、「観測史上…」と形容される程の降雨が大きな被害をもたらした地域もありました。
メールやSNSで安否を気遣ってくれた方たちもいて、有り難いことだと思いました。
午前中は身動きができませんでしたから、部屋の「本のジャングル」を整理することに。
やっと床が見えました。
午後は、雨も小やみになってきたので、図書館と書店を巡り巡る一時。
気になる書籍をいくつか確認し、酒屋に寄ってから帰りました。
一夜明けて、午前中は進学クラスの課外講座。
若干名、遅刻がいたようですが、皆無事に登校です。
高1は、「対面リピート」でのチェックを私と生徒1対1で順番に全員と。やっていることの中身は「グルグル」と同じですから、私が一番疲れるんですよね。
高2の課外講座は私の担当分の前期が終了。
今日は、『話せる音読』から、新しい「物語」一本と、既習素材 (物語文) でのシャドウイングを2本。
いやあ、この『話せる音読』いいですよ。
都道府県の上位の進学校なら、高1で十分消化できるのでしょうね。
私が現任校に来て暫くは、高1で「英語 I」の教科書をやっていました。『単語帳』も持たせて小テストをしていて、さらに『森林本』まで持たせていました。にもかかわらず語彙も文法も定着度が悪く、音読もスムーズにいかないので、『ぜったい音読』の『緑本 (= 中1、中2の各社検定教科書から抜粋)』、『オレンジ本 (=同じく中3の各社抜粋)』を使い、高1の1学期で中学校の復習を徹底することにしました。高校レベルの素材文を読み進めるまで、必修基本語彙の手当もする必要があるので、それまで使っていた入試対策の『単語帳』はバッサリとやめて、高1の2学期までに中学レベルの『短文で覚える英単語』を終え、高1の3学期からは、『英単語ピーナツ・銅メダルコース』で、「語彙学習」は「技能学習」に先行するという、流れを作りました。その学年で、高1の終わりから高2の始めにかけて、模試での成績が急上昇してくれたこともあって、高1の初めは中学の復習を徹底、ただし語彙学習は先行しておく、ということに迷いはなくなりました。しかしながら、少人数クラスにもかかわらず、年々、入学者の習熟度のバラツキが大きくなり、「文法」の扱いは再考せざるを得なくなりました。『森林本』などの『総合本』には戻りたくなかったので、太田洋先生のNHKラジオ講座からのスピンオフ教材、『レベルアップ英文法』を高1で扱うことにして、高2では、阿部一・浦島久コンビの名作『コーパス口頭英作文』という私の指導では「定番」の教材に落ち着いていきました。
しかしながら、昨年度、困った出来事が生じたのです。
- 改訂
と
- 絶版
です。
絶版に関しては、『レベルアップ英文法』は、阿野幸一先生の『基礎英語3』からのスピンオフ教材で代替してなんとか対応したのですが、『コーパス口頭英作文』に関しては、代替教材がなく、方針を変えて、『書き込み式・意味順』を取り入れました。
一方、先行する語彙学習の屋台骨、根幹とも言える教材、『英単語ピーナツ』は改訂となり、コロケーションの見直しをしたのはいいのかも知れませんが、紙質は重く、片手で持ちにくく、網掛け多色刷りでツルツルしていて書き込みがしにくいものとなってしまいました。それでも、通称『P単』として、なんとか、これまでの指導手順やノウハウを継承して現在まで続いています。
その『P単』ですが、今年になって、新たに、『BASIC』が出ました。
- 『英単語ピーナツBASIC 1000』
出版社は金銀銅と同じく南雲堂ですが、著者は、
- 安河内哲也・佐藤誠司
のお二方。
この週末に地元の書店で手にとって見たのですが、”food additive” や “burn a bundle of letters”、 ”an ascending escalator” や “astronomical observation” などが目に入り、
- 『BASIC』という名前の割に、収録されているコロケーションの語彙水準が高くないか?
- 『銅メダルコース』と変わらないのでは?
という印象を受けたので、即購入し、帰宅後に少し調べてみました。
旧版の金銀銅それぞれの収録語彙のレベルに関しては、『十日日記』の渡辺さんがアルクのSVLに当て嵌めて調べてくれたエクセルのファイルがありますので、私はそれを活用しています。(渡辺さん本当に有り難うございます。)
十日日記: ピーナツの語彙水準
http://www.10days.org/diary/20070902.html
アルクのSVLは12000語まで、12段階、それぞれのレベルで1000語の語彙水準表となっています。今回は、時間がそれほど取れなかったので、パイロットテストというか、サンプル抽出で、『BASIC』の索引を見て、aとbで始まる語だけを調べてみました。計194語。著者によれば、全体で収録されている1000のコロケーションは、異なり語では1667語になるとのことです。そのうち、194語のサンプルを抽出して極めて大雑把に「数値化」したものだということをご承知おき下さい。
旧版の『銅』と同様、新刊の『BASIC』も、レベル1 (1000語水準) から レベル10 (1万語水準) までの分布となっていましたが、最も多く収録されていたのは、レベル2 (2000語水準) の語であり、『銅』のレベル3と比べれば、1つ下となりますから、難易度では『銅』>『BASIC』という見方ができそうです。ただ、ここで気になるのは、『BASIC』の「占有率」と、レベル2までの収録語が、全体の何割を賄っているかという、「カバー率」です。
レベル1の占有率は、72.7%で、銅から金まででは扱われていない基本語を厚く拾っていることを伺わせます。ところがレベル2では、40%とそれなりに厚いように見えるのですが、レベル5でも40%を越える占有率となっています。サンプル194語のうち、金銀銅では扱われていない、『BASIC』でしか学べない語は35.1%となっています。裏返せば、約65%の語は、金銀銅で扱われている訳です。
次に、「カバー率」。
- 銅メダルコースは1279語収録。そのうち、レベル3までの語が全体の、62.5%
- 銀メダルコースは930語収録。そのうち、レベル5までの語が全体の、72.3%
- 金メダルコースは1001語収録。そのうち、レベル7までの語が全体の、62.9%
というカバー率となっています。
多くの高校生は高1で『銅』をやって、高2で『銀』が終わるかどうか、高3で『金』まで辿り着くことができる生徒は少ないと思いますから、『銀』のカバー率が高くなっているというのは、非常に「ユーザーフレンドリー」な作りだな、と改めて思います。
では、『BASIC』ではどうなっているでしょうか?
サンプルの194語だけで判断するのは危険ですが、このサンプルのうち、レベル2までの語は全体の44.8%に過ぎませんでした。『銅』と同じレベルの、レベル3までを含めるとカバー率は、約66%まで上がります。私の印象が裏付けられたように思いますが、即断は禁物。全体を調べると、実は、レベル1,レベル2に手厚いのかもしれませんから。
この夏を使って、『BASIC 1000』の全収録語と、組田幸一郎先生の、
- 『フレーズで覚える英単語 1400』(文英堂)
との比較で、『銅メダルコース』の前に取り組むとしたら、より適切なのはどちらなのかを検証しようと思います。
もしもう既に検証されている方がいましたら、是非ともお知らせ下さい。
現時点で、この『BASIC 1000』を、高校1年生で使う場合には、『BASIC』という名前だけで判断するのではなく、収録されている語、コロケーションの質を吟味をする必要があると思ってもらえれば、休日の貴重な時間を使った甲斐があったというものです。
そうそう、言い忘れていましたが、この『BASIC 1000』では、紙質と印刷が旧版のテイストに近づきました。色づかいは抑えられて、紙も光沢のないものが使われており、古くからのユーザーにも嬉しい仕様です。肝心なのは、中身のピーナツなんですけれどね。
課外講座を終え、午後は湖へ。穏やかなコンディションではありましたが、豪雨の後ですから、漂流物、流木などを縫って、風上へ。
1年生を交代で2Xの整調に、私はずっとバウで2時間弱。流石に疲れました。
明日の天気も少々心配ですが、私の腰が持ち堪えてくれるか…。
本日のBGM: Come sing me a happy song to prove we all can get along the lumpy, bumpy, long and dusty road (Bert Jansch)