高2、高1と土曜日課外と並行しての作問天国。
背中の真ん中が凝りに凝っている感じ。こういうのを「懲り懲り」って言う?
高3の生徒には、「予告問題」を配布。週末で準備して下さいね。
今日の高2の講座での語彙指導。
前時に、”Charity begins ….” を宿題にしていたので、その意味と典型的な文脈を。
- Home is where the heart is.
という考え方を知っておくといいですよ、という話し。
「動詞」では、
I was bleeding. のbleedって面白いよね。breatheすると breathが出たり入ったりするけれど、bleedでbloodは出っぱなし。意志でコントロールもできないしね。定義で最後にあげた、”to let out blood” のletが使えると、英語らしさが掴めたような気になるね。私もお腹周りが気になり始めて、ズボンのウエストがパッツンパッツンで少し「出す」必要が…、なんて時の「出す」が “let out” だね。letの肌触りをよく感じること。あたかも「縫い代」の分、中のものが外に出たがっているようだから、「出させてあげる」で、その「意向に任せる」とでもいう感じでしょ。
他には、
この “(a lot of people) lined the streets” という他動詞のlineも不思議だよね。「『はてな通り』はこっちに並んで、そう。『原田様通り』は、もう一番前で構いませんよ。ああ、ちょっと、『TM通り』は一番後ろだからね!」って、通りそのものを交通整理しているわけじゃない。あくまでも「通りに並ぶ; 通りに沿って列を作る」という意味のはずだけれど、「どどいつ」ではなくて、名詞として目的語に「通り」をとっている。
という解説をしたのだけれど、「また始まったぞ。まったく、何をおもしろがっているのか分からないんだよね。こういう話しはテストに関係ないからな…。」というような顔で聞いていた生徒が一人いたので、
えっ?不思議に思わない?だって、これ、「通り」の方を主語にすると、 “the streets were lined with a lot of people” って受け身になるんだよ。しかも、前置詞はbyではなくてwith。『前置詞のハンドブック』のwithで「材料」とか「素材」のところを見といてよ!
という説明をしたら、急にスイッチが入ったように表情が変わっていました。現金なものですね。
最後は、教科書会社が教師用指導書で用意していた、レッスン全体の「要約文」にダメ出しをする課題。教師用指導書って、ハンドアウトを作成する時に本文を打ち込むためのデータファイルくらいでしか使わないので、これまであまり本気で、この「要約文」の英語を吟味していなかったのだけれど、ちょっと、いくらなんでもお粗末すぎます。これがもし教科書の方に入っていて、レッスンの本文の後に出ていたなら、検定通らなかったんじゃないかな。
生徒には、
来年度から、「新課程」になるので、教科書会社はどこも、現行版の教科書を更に良いものにするために、使用者からのフィードバックに耳を傾ける、などということはないと思うけれども、みんなからの要約文の出来の良いものをまとめて編集部に届けようと思っています。
と伝えてあります。
今は、多くの高校で、来年度に向けて教科書選定を終えたばかりだったり、まさに大詰めの局面にあるのではないかと思います。
教科書会社は、教科書だけでなく、『ワークブック』とか『テスト』とか、教師の労力を省こうというお膳立てが、これでもか、というくらい用意してくれているのだけれど、『教科書』本体を執筆製作する労力と比べた時、それ以上の時間を『ワーク』などにかけることは稀だと思うのです。良くて、同等。往々にして、やっつけとはいわないまでも、新年度に間に合わせるのに精一杯ということになりかねません。たとえば、小テストや復習テストを作成するための『テストメーカー』が、いくら使い勝手の良いソフトになっていたとしても、そのテストで出てくる「英文例」の英語表現が本文の劣化コピーのようなものでは困るでしょう。
今日の講座では、2年生に形容詞の “sound” を使った諺を辞書で引かせて、
- A sound mind in a sound body.
の意味と使い方を確認しました。これに倣えば、私が繰り返し言う、「より良い英語で、より良い教材を」というのも、所詮、祈りのようなものなのかも知れません。
これまでにも、新課程の『英語表現』教科書の残念な状況を書いてきましたが、高校の先生方は、「教科書」のどのようなところに一番注目して読み、比較検討しているのでしょうか?ちょっと気になりました。自分が、どのような授業をするか、ということに照らし合わせて読み込む人はどのくらいいるのでしょうか?
たとえば、「表現系」の授業であれば、次の指導手順を読んで、どんなことを感じるでしょうか?
I. Preview of key words
・a great deal; a great deal of
・in recent years = recently
「最近5年間彼から便りがない」→
cf. lately
these days
nowadays (書)
today
・from A till B; from A to B
・almost; most
・流行るもの catch on (with 大衆 (の心)); come into fashion
形容詞の整理→ well-known / popular / famous / renowned / notorious
・(be) absorbed in; be crazy about
・time to 原形
・(be) busy –ing
・industrial ←→ industrious
・at a distance; from a distance; in the distance
・the last + 名詞 + to原形
・hurry / hurry up
・oppose to; opposition
・「(TVなどを) つける」→ turn (=switch) on ←→ 「消す」 turn (=switch) off
cf. 「(電灯・火などを) つける」→ ←→ 「消す」
まずは、そのレッスンで扱われる、語彙・表現、語法をしっかりと押さえることに重点が置かれているようです。
そして、一連のエクササイズの締めくくりでは、まとまった英文を書くことになります。教科書の模範解答がこちら。
1. Television plays an important part in our life.
2. Video games have become more and more popular in recent years.
3. The children in lots of family enjoy playing video games together with their parents.
4. My father is opposed to our playing video games.
5. We sometimes enjoy playing video games at my cousin’s house.
この英文の解説は、このような内容でした。
1. part はroleでも可。…is important だけでは、漠然としすぎている。本来のライティングという意味では、「では、そのpart / roleとはどのようなものなのか、という分析」が続くべき段落である。
2. 「出てきました」、という日本語から<変化><時間の流れ>を読みとれるか、がポイント。
変化→比較級
時間の流れ→完了形
in recent years はrecentlyでも可。
3. 文頭のtheがかなり唐突な感じ。
より一般的な表現とするなら、
In lots of families, children and their parents enjoy playing video games together.
In a lot of families, children together with their parents enjoy playing video games.
ただ、日本人の英語では、”enjoy –ing” の多用・乱用が目立つので、淡泊に「…する」だけでも充分表せないか、気をつけたいところ。
4. その前の文で出てきた情報が、video gamesの話しなので、video gamesの流れから話しを続けることも考えられる。
「ビデオゲームは父から強い反発を受ける」
→ Video games meet with strong opposition from my father.
ただし、直前の文では、「子どもと一緒に家族も」という情報が提示されているので、家族の流れで続けるとすれば、模範解答のような展開で自然。この流れでの別解は、
My father doesn’t approve of video games. のような賛否を表す一般的表現でも、
My father takes a dim view of video games. のようなイディオムを用いても表せる。
5. この日本文がそもそも曖昧であることに注意が必要であろう。
「私たち」が誰と誰を含むのか?→私と父?私といとこ?私と父といとこ?
「私はいとこの家を訪ねた時には、二人でゲームをします」であれば、
When I visit my cousin, we sometimes play video games. となり意味は明確になる。
どうだったでしょうか?
このレッスンで扱われている日本語の、「TV」とか「ビデオゲーム」ということばでわかるように、素材となっているのは随分前の教材です。2001年度の、旧課程の『New Age English Writing』 (研究社) の第7課を用いて授業をしていた私の作ったワークシートの写し。干支が一回り近く前の高校2年生の「ライティング」の授業はこんな展開でした。各課の最後には、まとまった英文を書く課題もありますが、今回取り上げたものは「和文英訳」の形式で課されたものです。(ちなみに、New Ageでは、この和文英訳でその課は終わりではなく、モデルパッセージとして課の冒頭で示された英文を50語程度に要約させ、さらにvideo gamesに関する生徒個人の意見を80-100語の英語で書かせる、という構成です。)
この年度のシラバスでは、普段の授業ではこのような形で教科書を進めていき、文法と語法、文と文の繋がりを重点的に扱うので、それを補うように、1学期に2種類、年間で約5回、テクストタイプ別にまとまった分量で書く「パラグラフライティング」の課題を「設定課題」と称して課すことで、上述の各課末の「要約」と「意見文」はカットしていました。この次の年度の2002年度の総括は、生徒の声を過去ログのアーカイブに載せてあります。(http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20040904)
その更に前の90年代に行っていた授業の様子は、過去ログのここ (http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20060924) で書いています。
翻って、来年度から始まる新課程の『英語表現 I』は、この10年以上前の教科書、そして授業のレベルを遙かに超えた技能統合の実りをもたらしてくれることになるでしょうか?
本日のBGM: Things you think (Ben Folds & Nick Hornby featuring Pomplamoose)