「パブリックコメント」提出!

「次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめへの意見」を提出しました。
以下、提出内容です。

「小学校」に関わることと、「外国語」に関わることで、2件提出しました。

個人情報は割愛。

氏名: 松井孝志 
職業: 高等学校英語科教諭


分類番号 3 小学校

要旨
1. 小学校で英語を2020年度に教科化するという拙速な計画は止め、全教科科目の中での授業時数の調整、教員養成も含めた十分な議論を引き続き行うこと。

2. 小学校3年生からの外国語活動導入に伴い、小学校5年から「書く」ことの指導を行う場合には、一斉実施(完全実施)ではなく、「学年進行」で、小学校3年から外国語活動を実施してきた学年が5年生になった時に初めて行うよう、計画を変更すること。


小学校英語活動の教科化に関連して

• 小学校英語を教科化できる下準備が整っていることを示す具体的な材料には何があるのか?
• 全国に約2万校ある小学校全てで教えられる教員は確保できているのか?養成は間に合うのか?
• 小学生にモジュールで教えて身につくのなら、中学校の英語もモジュールでいいのでは?
• 教員がいないからといって「DVD」で大丈夫なのか?もし大丈夫なのであれば、中学校の英語もDVDでいいのではないのか?
• 授業は細切れの「モジュール」をつなぎ合わせて何とかなるかも知れないが、評価はいつ、どのように行うのか?
• 45分連続の一回の授業と、モジュールで短時間の帯で実施する授業では活動が異なるはずだけれども、その到達度の指標となるCan-doは別物として作るのか?もしその二つの物差しが別物だとすると、身についた「英語力」も異なることになるのか?
• 教科化が取り沙汰されてから、民間の教育産業が地方自治体と提携して、「教材」を一括採用するケースが続出しているが、教科書検定制度の守備範囲外の小学校の英語に関して、教材の質や採択に当たっての公平性、客観性は担保されているのか?
• 文字指導に関連して、現在の外国語活動の指導では「音韻意識」の育成にも中途半端で、「手書き文字」の指導の体系が全く示されていない状態で、高学年で「書くこと」を取り入れることは、あまりに拙速で混乱や被害が大きくなることが懸念される。英国の National Handwriting Association で提唱している一連の指導手順、体系、左利きの児童やディスレクシアの児童への配慮など、発達段階を考慮した「文字」の扱いと、視認性が高く、手書き文字とのギャップの少ないフォントの採用や四線の間隔で、baselineとx-heightの間隔が、他の間隔よりも広くなった書式で練習するなど、英語が母語の国の初等教育で効果をあげている指導方法を積極的に取り入れるべきである。
• 仮に、小学校5年で「文字指導」を行うとしても、それ以前の学年、例えば小学校3年から現行の「外国語活動」のような指導を行い、その指導を踏まえた上で、児童が学年進行で、小学校5年生に進級してきてから行うこと。


分類番号 19 外国語

要旨

1. 「これまでの審議のまとめ」で述べられた有識者の意見の中で、「高3英語力フィージビリティ調査」の結果に基づいているものが多々見られたが、それらの意見の前提となる「フィージビリティ調査」には問題点が多く、調査そのもののフィージビリティが担保されていない。

2. 高等学校の科目再編で、とりわけ「書くこと」に関連した「論理・表現」の指導内容・目標の設計で、「高3英語力フィージビリティ調査」の結果に基づいた考察がなされているとすれば、それを一旦白紙に戻して、書くこと、話すことの「専門家」である大学の研究者の知見を取り入れると共に、高校現場での実践者たる優秀な教員の助言のもとに、「書くこと」に関するきちんとしたテストを設計・実施し、再検討すべきである。

3. 2020年に新指導要領を実施するという「改訂時期ありき」の議論ではなく、教育内容と方法の「改善」のための議論を進めることを求める。


高等学校の科目再編に関して

・ 現行の「コミュニケーション英語」と新課程の「英語コミュニケーション」の対応に大きなギャップがある。現行の「コミュニケーション英語基礎」では、習熟度の低い生徒が「学び直し」で履修する科目として設けられたにも関わらず、検定教科書が複数存在しないために、授業シラバスなどが絵に描いた餅で終わった学校があったように聞いている。今回、そのような習熟度の低い生徒を想定した「学び直し」の科目を設定しないのは、「英語コミュニケーション I」の中で吸収せよということなのか?その場合、「英語コミュニケーション I」を、学び直し想定で履修しする生徒用に、難易度や達成度を低く設定した教科書が検定を通る、という認識でいいか?さらには、その生徒たちが上級学年で履修できる「英語コミュニケーション II」の教科書も同様に検定を通る、という理解でいいか?
・ 現行の「英語表現」の「 I 」の教科書が、ことごとく「文法シラバス」の教科書となったのは、指導要領の趣旨を教科書検定で反映させられなかった、検定での失策・失政だと思われるのだが、その反省や改善なしに、「論理・表現」といったお題目だけを掲げて「発信力強化」を謳っても、絵に描いた餅に終わるのではないか?
・ 26年度、27年度と数万人規模で「高3英語力フィージビリティ調査」を行っていたが、一民間企業に丸投げしたと思しき設問で、とりわけ「書くこと」においては、テスト問題そのものに問題が多い。
・ 26年度は第1問「聞き取り要約」、第2問「課題作文」。
・ 27年度は第1問「課題作文」、第2問「聞き取り要約」。
・ 受験者の心理的、認知的な取り組みやすさを考えると、27年度の順番に解答した方が、力を発揮できるのではないかと思われるが、この2つのテストの結果を「同じ物差し」で評価分析してもいいのだろうか?
・ 26年度当初の計画では、テストの対象はCEFRで、A2-B2の英語運用力を測定すると明示していながら、ライティングで0点が大半を占めたテストの結果が速報で出てから、正式な報告書が出されるまでの間に、A1-B2へと何の断りもなしに下方修正されていた。この経緯を見るに、そもそもテストの対象の設定、問題の設計、テストデザインに大きな欠陥があったと思わざるを得ない。その部分の反省が、27年度のライティングのテストで設問の順序が変わっている部分に活かされたのだろうか?だとしたら、同じ試験として評価・分析するのに無理があるだろう。
・ そして、その二年分の「フィージビリティ調査」の結果に基づいて、新課程の科目再編の叩き台が作られているとしたら、少なくとも、「書くこと」においては、現行指導要領下での教育成果の評価分析が適切になされていないわけであるから、その不適切な根底・前提に基づいた全ての議論は、新課程の立案に活かされるべきではない。
・ 以上の観点から、現在の「叩き台」で示されている、2020年という合理的整合性のないタイムリミットに基づく計画は一旦白紙に戻して、書くこと、話すことの「専門家」である大学の研究者の知見を取り入れると共に、高校現場での実践者たる優秀な教員の助言のもとに、「書くこと」に関するきちんとしたテストを設計・実施し、再検討すべきである。

以上です。

パブリックコメントの受付は今月7日まで。お急ぎ下さい。

「次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめ」に関するパブリックコメント(意見公募手続)の実施について

http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=185000847&Mode=0

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