masterpieces for young people

今日は、当初予定になかったコマを譲り受けたので、教科書の内容のまとめの活動にあててみた。
ディクトグロスについて、過日、県内の進学校の先生から質問を受けていたのだが、私のやっているのは所詮「もどき」なので、ただ一般論的な話しをするよりは、見てもらうのが良いだろうということで急遽このコマの授業参観に。ついでといってはなんだが、折角なので、普段お世話になっている県立高校の先生がかねてより授業を見たいとおっしゃっていたので、その先生と、お知り合いの若い方と二人お越しいただき90分の講座を見てもらった。「なんです山脈」の裾野くらいのところですかね。

サイドリーダー関連の紹介と冬休み中のBook Reviewの指示に始まり、音読による復習活動へ。全員で立ってRead & Look up、終わったら着席。生徒が音読している間に私は机間指導で、一人一人気になる「音声」を拾い出し、全体で練習。これは極少人数の進学クラスならではの展開なので、靜先生のように「分割統治でぐるぐる」でもやらない限り、普通の高校のクラスサイズでは参考にできないのではないかと思います。発音練習は、個々の音にフォーカスを当てている時はできるのだから、それが、より大きな単位や文章全体の流れの中で、リソースが分散しても出来るように、さらに個人練習をしてから、対面リピートへ。ペアの周りをうろうろしながら、音の崩れを指摘してやり直しさせる。クライマックスのパートで、一カ所文構造の難しいところがあるので、結構大変でしたが、なんとかクリアー。
10分間休憩して、後半戦。
教科書の内容を私がまとめた英文を使い、中抜きで「イカソーメン」。この学年でやるのは初の活動なので、もっとやさしい素材でもよかったのだが、将来的に本文のサマリーにどう繋げるか、パラフレーズにどう繋げるか、そして、来年度の「ライティング」という科目にどう繋げるか、を考えて、教科書の素材を足がかりにして書き換えてみた。
手順は、

  • 一人一文を割り当て。3分で覚えて口頭で伝えられるように個人練習。
  • グループの中で口頭のみでお互いに伝え合い、順序を確定。
  • 最終順序の通りに1列に並んで口頭で発表。

最終順序の確定、口頭発表の後、文章の出だしと並べ替えた最初の文のつながり、並べ替えの最後の文と文章の最後の部分とのつながりなど、名詞・代名詞の受け継ぎ、指示語の内容を中心にフィードバックを与え、着眼点を浮かび上がらせた上で、ホワイトボードに張り出した「正解」で確認。当然、自分の担当した文での細かいミスも確認・訂正します。
そのまま、ホワイトボード上の英文をRead aloud, Run & Write it down、でシャトルランを繰り返し自分の机に戻り、机上のワークシートに書き出していき、文章を完成する。ここで時間に余裕があれば、本当に正確に書けているか、生徒が自分の担当の文を、ぐるぐる回って全員分を赤ペンでチェックして、その後、再度各自個人でFlip & writeに移行するのだが、今日は「初イカソーメン」なので省略。ディスコースというものを何が支えているのか、sign posts, cohesion, coherenceというものを実感として身につけるのには我ながら良い活動だと思います。
その後、「全国縦断公立高校入試リスニングテスト制覇の旅」。
たまたま、福島県の素材文で、地球環境つながりのネタがあったので、そのモノローグを加工してみた。
参観者から2名に協力してもらって、複数グループでイカソーメン。高校入試素材を私が書き換えた英文を用いて、中抜きで。

  • いきなりhowever来たよ!
  • some of them ってあるんだから、themにあたる四角 (=名詞) がその前にあるはず。
  • other countriesの前に、どこかの国のことが述べられているんだから、こっちが先。

などと、口頭でのやりとりを経て最終順序確定。
グループで対抗させるところに意義があるわけではないが、最終順序確定でグループごとに読ませていって、グループ間で英文の流れにズレが生じた時が、学ぶレディネスのできた時でもあるので、最後まで読み終わったところで、ホワイトボードに張り出した英文を確認。「何がその順序を支えているのか?」を考える。
参観者お二人のご協力もあり、初回にしては非常にスムーズに運べたと思います。深謝。
年内にもう一コマ譲っていただいたので、しっかり総仕上げをして年を越したいと思います。

講座修了後の情報交換では、私がなぜ、もともと「ディクトグロス」をやっていたのに、今では「対面リピート」とか「イカソーメン」をやっているのか、という物語を。
まず、チャンク単位で英語を聞き、口に出し、読み、書き出す、という訓練が不可欠である。チャンク単位で口頭練習が出来るだけでは不十分で、語彙の難易度が上がれば、当然、紙に書き出す負荷は上がるのだし、チャンクの構造に習熟していないと、語順と意味順で処理の負荷が上がり、書き出す手が止まってしまうから。この点では、私のクラスでは、『P単』を使っていることがベースとなっている。チャンク単位で読み、聞き、書く、ということ、とりわけ「書く」ということをとにかく毎日のようにやっている。「対面リピート」でも、長い文はチャンクごとに分割しても良いことにしているし、普段の私の授業でも、リピートさせる時に、敢えて、チャンクだけを抜き出したり、チャンクの切り出し方を変えたりして、意味と英語のまとまり・固まりを一致させるべく練習をしている。
次の段階は、談話レベルでの処理。もっと分かりやすい単位で言えば、「段落」はなぜ段落として機能できるのか、なぜ、その文で始まり、その文で終われるのか、ということを理屈と実感との鬩ぎ合いの中で自分のものにしていく。これは、一昔前であれば、「精読」が果たしていた役割でもあるだろう。「イカソーメン」をいくつかこなす中で、「気づき」「着眼点」を得たら、それを読解の作業中にも適用させることが可能となり、より深い読み、より確かな読みへと繋げることが可能となる。
今回は教科書のサマリー的な活動だったのだが、個人的にはretellingに近いものだと思っている。これは、多分に、今高1に課している「サイドリーダー、同じ物語を難易取り混ぜ行ったり来たり」を念頭に置いて自分自身で読み比べをしていることに影響を受けているからだと思う。
今後、この生徒達も様々な文章に接し、読み込み、自分の言葉でそれを語ったり、あるトピックに対して、パラグラフの単位で英文を綴り、まとめる、といった経験をすることになるわけだが、例えば、「要約」を指導する時、段落の最初と最後の文に線を引いて、それを繋ぎ合わせてから体裁を整えるようにトリミングする、という手順は決してとらない。そんな粗雑なことで英語のディスコースは成り立っていない、ということを学ぶのが高校段階で接する「文章」という単位の言語材料なのだと思っている。きちんと読めれば、内容理解も、速さも、ちゃんとついてくるもの。このことは、パラグラフ単位でしっかりとつながりがあり、きちんとまとまった文章を書く練習を続けている生徒の方がよく理解してくれるものだ。
「対面リピート」ではセンテンス単位での保持を求め、「イカソーメン」では談話構造に関する知識が運用できるレベルにあるか、を求めているわけだが、これらを「口頭」で行うことで直線での処理を頭の中で複層的というか、立体的な構造へと変換できるかも求めている。最終確認で、文字列、文章という「形」で理解を改めたり深めたりしてから、個人や一斉で課される「音読」では、再度、直線での処理をすることになるわけだが、ここでは当然、一段階レベルアップした処理ができるようになっているはずである。このくらい下位技能の訓練で下準備をして、尚かつ、テーマ関連語彙が仕込まれている、という前提がないと、初見で行うディクトグロスの御利益はそれほど大きくならないだろうと思う。

遅い昼食をとり、帰宅。
まだ腹部の痛みが残っているが、自宅に届いた書籍を整理しがてら、頁を繰る。

  • 下嶋統一 著『日本おとぎ話 I』 (評論社、1969年)

これは、シリーズの中のレベルではA = 中学上級から高校初級。とあるが、何分、40年以上前の教材である。今の指導要領下では、完全に高校2年生以上のレベルと見るべきだろう。段落に番号が振ってあるのは復習の際に便利かも知れない。

  • 下嶋統一 訳注 『O. ヘンリー短編選 二十年後 ほか』 (評論社、1974年)

これはシリーズ中のレベルでは C = 高校上級以上。案の定、原文のまま。訳注が付いているので、高校生でも分からなくはないが、語彙でスピードやリズムが滞ると、やはり楽しむところまでは行かないように思う。
年内に後数点、このシリーズのものが届く予定なので、3学期に学級文庫に入れるものを仕分けしたいと思う。
フィギュアスケートは全日本の後のEx。これはスポンサーが付いて、『メダリストオンアイス』として行われている興業でもある。
今シーズン充実した作品を作ってきた、町田選手の “Don’t stop me now” が良かった。次は『四大陸選手権』。世界選手権行きを逃した本人はいろいろ悔いが残っているのだろうけれど、このチャンスを活かして、そろそろタイトルを取ってしまって下さい。
村上選手は、今日のような滑りが昨日できていたら間違いなく優勝だったろうと思うが、そこはタラレバ。
羽生選手の「今」は生で見たいと思う。インタビューで、高橋選手、小塚選手との競演について訊かれて、

  • 先輩達が絶頂期のうちに追いつきたい。

と発言していた。凄い17歳である。
浅田選手は、オープニングからスパイラル。本当に、神が宿るとはこのことか、と思うほど美しいポジション。
今回は、ゲストで五輪女王・荒川静香、世界王者・パトリック・チャンが滑っていた。スケートは滑ってナンボの世界、ということがよく分かる演出だった。
ロキソニンを飲んで早めの就寝。

本日のBGM: Old-fashioned (キセル)