王様の入っていけない所にある王国

選抜に向けて、本業で頭が痛い時に限って、教育関係でとんでもないことばかり起きるもの。
まずは、大阪の知事が言い出した「高校でのTOEFL 得点争い報奨金」。続いて、東京の特定大学の合格実績を上げるために、部活の時間を減らすよう迫ったり、予備校関係者や特定大学の大学生をコーチとして雇ったり、実績ある教員OBを活用したりという施策。大阪や東京の公立の教員は自分の身に降りかかる火の粉ということで静観なのだろうか?
東京都って相変わらず、特定の都立高校の特定大学の合格者数を計上して自分たちの教育行政が上手くいっていることをアピールしたいようなのだが、定員のある限られたパイを奪い合うようなもので「数値目標」をいくら立てたところで、総数は決まっているわけだから、どこかが増えればどこかが減るゼロサムゲームを演じているに過ぎないということがなぜ分からないのだろうか?
大阪は知事が自分の英語力の無さの鬱憤を晴らすかのように、TOEFLを持ち出したのだが、TOEFLを基準に高校生の英語力を図ろうというのがそもそも、英語力というものを分かっていない証左。東京都が頻りに気にする「都立高校の進学実績」を鑑みる時、せっかく近畿圏の私学に対抗してここまで頑張って来た府立高校の地盤沈下に繋がりかねない施策であろうから、府教委の担当部署が首を縦に振るとも思えないのだけれどね。
どの学校も、自分たちの教育目標を掲げてそれを実現しようとしているのだから、それをサポートするのが公教育の教育行政の役割でしょう。進学とか、留学とか、そういった「外付けではない」充実感をどうやったら生徒に持たせられるかに苦心腐心している高校の方が多いということもお忘れなく。高校生の英語力を伸ばしたいのだったら、まずは、専任の教員を確保し、学校が組みたいカリキュラムを組めるよう保証するのが知事の仕事だろうに。その上で、教員の自由裁量をもっと増やして、とことん授業に打ち込めるようにすればいいだけのこと。教員に英語力があることが大前提ですけれど。
もう一つこれらの話題に関連して言っておくと、新聞はこのような教育問題に関して、教育現場を離れて久しい評論家の尾木直樹にコメントを求めている場合じゃないと思う。尾木は小西真奈美のファンだと言うから、人を見る目はあるのだろうけれど、「国際社会じゃ通用しない」っていう反論がどうしようもなく紋切り型。
メディアも、まずは、都立なら進学校として老舗の日比谷と新興の八王子東の校長、府立なら北野や大手前あたりの校長から、リスクを孕んだ談話をとるくらいの気合いが入った取材をしてきて欲しいものである。
放言で終わっても仕方ないので、「つぶやき」から自らのことばをここに引いておきます。

  • critical thinking というものをまずは教師がきちんと身につけないといけないなと実感。言葉は世界を切り取るナイフ。美味しいものを愉しむのにも使えるし、他者を傷つけるのにも使われ得る。自分の吐いた言葉は常に刃として自分に向かってくるものという覚悟でものを言い続けます。

授業は高3の進学クラスが自宅学習期間に入ったので、高1、高2で淡々と。
本業は、火曜日になんとか湖まで行って、日が落ちるまで乗艇。
腕漕ぎを延々と。クラッチ加重しながらターン、という局面で、「イルカさんご一緒に」のブレードワークになるまでしつこく。
今日は、7限終了後、体育館でエルゴ。最大出力のトレーニング。
最後は、ローマンチェアーを逆から使ってぶら下がり自分の体をプルする広背筋のトレーニング。足は固定なので、グリップが縦の斜め懸垂みたいなもんですかね。

桐英会ブログで松山薫氏が紹介してくれた、

  • 菊谷彰 『日本語のすすめ』 (三修社、1984年)

を古書店で購入。一気に読んだ。音声の記述が具体的で精緻。菊谷氏は開成から東京高等師範の英語科に進んだとのこと。アナウンサーとしての訓練・研究の前に確かな素養が磨かれていたわけである。
本編読了後、後書きを眺めていて暫し凝視。

  • 二十年あまり前の「FMことばの教室」のころから、方言取材や日本語の発声・発音についての指導方法を教えてくださったのは、東京外国語大学の吉沢典男教授です。(p. 238)

嗚呼、言葉の先生であり続けた吉沢先生の薫陶を受けていた方でもあったのですね。何か、こみ上げてくるものがありました。

英作文、ヨコ糸紡ぎのための例文集研究も細々と続けています。

  • 池田義一郎 『文型中心 英作文例文記憶法』 (洛陽社)

これは核になる英語表現として、構文が25、機能別表現を含む文法事項で70、重要語法が94、和文英訳の練習問題が16題、という構成である。巻末に日本語表現の索引があり、確認テストとしても使えるよう配慮してある。

  • 坂本正 編著 『学習者の発想による 日本語表現文型例文集 初級後半から中級にかけて』 (凡人社、1996年)

入試の過去問をデータベースにするのではなく、現代の日本語で必須の表現文型をもとにした和文英訳のデータベースを考えるための材料として購入。現代を生きる我々が普段当たり前に使っている日本語表現や文型の客観視が必要だと感じているから。「学習者の発想による」というところに着目してみました。こういう分野で日本語教育や国語教育ともっと意見交換をしないといけないのだろうと思うので、よろしくお願いします。

『相棒』は戸田山氏の脚本。途中のコメディタッチもご愛敬。前回がちょっと首を捻る話しだったので、脚本家がいかに劇を支えているかを実感。気持ちよく就寝。

本日のBGM: けらいのひとりもいない王様 (友部正人)