Gyrinidae? Am I hearing you right?

  • 大阪の私立高校で、生徒7人の受験料を負担し、関西の有名4私大の223学部・学科の受験手続きをしていたことがわかった。

というようなニュース、もうご覧になりましたか?
気持ちが悪くなりませんか?
違和感を覚えませんか?
ちなみに、web上でのニュースでは、現時点で
Yomiuri Online(読売新聞系)

Asahi com(朝日新聞系)

Mainichi Interactive(毎日新聞系)

Sankei Web(産経新聞系)

Nikkei Net Kansai(日本経済新聞系)

で読めます。(期間限定でしょうから、気にする人はお早めにご確認を!)

私が違和感を覚えるのは、「水増し」といわれる行為を推進した高校に対してではなく、報道の姿勢に対してである。三大紙と呼ばれる新聞社は系列の週刊雑誌を持っている。その雑誌メディアでは、季節の風物詩よろしく、こぞって、有名大学の「合格者数」を報じることによって部数を稼いでいるのではないのか?そういう愚かな競争を助長するような記事をまずやめればいいではないか。
300人が300学部学科に合格したものを300人、と報じることには誰も是非を唱えないだろう。でも、少子化、AOを含む超複線入試という現状では、合格者がその1校にしか合格しないということは稀である。では、100人が300学部学科に合格していて、それを述べ300人、とアピールすることは容認されて、10人が300学部に合格した場合に、それをアピールしてはいけない、いう理屈がわからない。延べ数では同じなのだから、それ自体を問題視することがおかしいだろう。受験者に対して、受験料を学校が負担するのはフェアーではない、とか売名行為に利用された生徒の心の傷が、とかいう話はそもそも議論のすり替えである。それを問題視するなら、特待生とか奨学生、授業料減免の制度など全てを問題視することになる。
そもそも、大学入試に合格したことに対して、その生徒が在籍していた高校の関与率というか寄与率というか貢献率は数値化できないでしょ?塾にも予備校にも行かず、参考書や問題集も使わず、模擬試験も通信教育も利用せず、純粋培養でその高校で入試を突破する力をつけたという奇跡のような生徒がいたとしましょう。でも、その合格はその生徒自身の試験突破力のおかげなのであって、学校でまとめて数で報じることにどんな意味があるというのか?「実人数ならいいが、延べ数ではダメ」という考えがそもそも、合格者数というものに価値を見いだすようにいつのまにか洗脳されているとしか思えない。
今や、そういうマインド、メンタリティーを持った親たちが「勝ち組」の子育て、教育に自分の資産を賭ける時代。情報を集めることに一喜一憂し、決してはずれくじを引かない戦略を立てるわけである。そうである以上、自分の集めた情報に「水増し」があっては困る、とでもいいたいのだろう。そして報道がすでに、こういうトレンドに飲み込まれているのだ。
今回、どのメディアも、直接取材したこの学校の教育内容などを報じてはいない。紋切り型の情報を流しておけば安心というわけだ。出てくるのは、数字だけ。そして、見出しは「合格者数水増し」。それっておかしいでしょ?延べ数で100人だったのを、300人と偽っていたなら水増しですよ。でも、受験者述べ数と合格者延べ数のうち、合格者延べ数に関しては事実なのだから、「水増し」というのは「まず、バッシングありき」の報道になってはいまいか?耐震偽装問題と同じではなかろう。
私自身、高校教師としての正業があり、当然、その時々の勤務校ならではの責務は生じる。進学校にいれば、右肩上がりの進学実績を求められたりする。でも、本当に喜んだり悲しんだりすべきなのは、合格者数の増減ではなく、一人一人の生徒の成長に関してではないのか。その生徒一人一人の喜び、悲しみを感じ取れる感性を失わないことの方が余程大切である。
私も20代から30代前半にかけて、某O社の『大学入試問題』の解答解説を執筆していたことがある。受験対策・入試問題のプロとして腕を磨きたかったからでは決してない。大学入試という高校にとっては出口にあたるところで、「過去問対策」だけのつまらない学習に自分の貴重なエネルギーを割いて欲しくないから、解答解説も含めてちゃんと英語の力がつけられるようなものを残してきた積もりである。教科書執筆しかり、辞書作りしかり、今はなくなってしまった全英連テスト部でのテスト作成しかり。
最近、監修したGTEC Writing Trainingのパンフレットに、私の言葉が引かれている。

  • ぜひ、この講座を受けて、英作文力だけでなく、論理的思考力や読解力を伸ばし、入試を超えた英語力を磨いていってくれることを祈っています。

当然、高校生向けの商品だから、企業は「入試への対応力」をアピールするだろう、けれども、私は入試対策のためだけにこの教材の基となったシラバスを構築したのではない。大学入試「にも」、GTEC「にも」対応できる、「ライティング」の授業を創ってきたその成果として教材を世に問うたつもりである。
ある新設校の教師をしていた時の卒業生が卒業時にこんな言葉を残していってくれた。

  • この学校を「進学校」にはしないで下さい。でも、生徒が助けを求めた時は、出来る限りの協力をしてあげて下さい。

生徒の方が余程大人である。

本日のBGM: Don’t get me wrong (The Pretenders)