聞き取りのコツ(ふたたび)

前回、リスニングによる内容理解とグラマーディクテーションとをミックスした練習方法を紹介した。多くの英語教育関係者が読む全国的な雑誌でも、この手法に基づく授業を紹介してもらったのだが、反響はほとんどない。日本人学習者に最適といっても良い学習方法で、しかも理論的裏付けもしっかりしていると判断したので、あえて紹介してみたわけだが、多くの教授者にとっては自分が試してみるまでは実態がわからないからであろう、議論を呼ぶこともなく、光を当てられることもなく消えてしまう運命である。もし、これが、海外の著名な実践家や研究者、学者の採用している手法で、それを日本で高名な大学の教授などが紹介していれば話が変わってきたりするから不思議である。ということで、ELT Journal Volume 57/4 Oct 2003 (Oxford Univ. Press)に掲載された Magnus Wilson の論文を紹介。
Discovery Listening と題された、彼の論文では、「概要把握のためにtop-down処理を要求する昨今のリスニングのタスクは成果を上げていないのではないか?」という切り口で、「どうすれば適切なbottom-upの処理をさせながら、学習者にリスニングタスクに取り組ませることが出来るか?」という問いに答えた、極めて良質の論文である。
top-down strategyの方がbottom-up strategyより優れた方法である、という錯覚を持っている教授者(そして学習者)、正しく理解しているものの、適切なbottom-up 処理の練習方法を開発できていない教授者に内省を迫る内容だけに、「今風の」英語教育のトレンドには馴染まないのだろう。英語教育関係者でこの論文が真剣に議論されたかどうかを知りたいものである。ちなみに、著者のWilson氏は日本で6年間の教授経験のある人です。
興味のある方は↓のあたりからアクセスして論文を入手して下さい。一読の価値はありますよ。
http://eltj.oupjournals.org/cgi/reprint/57/4/335