「何かの続きじゃ、嫌なんだろ?」

高2、高3は授業がスタート。
商業科高2は、「英語 I」の積み残しとなった課を一つ仕上げてから、「英語 II」へ進む予定。教科書は、Book 2にそのまま移るのではなく、三友社のものに変えました。読み物教材は進学クラスにうんざりするほど、多種多様なレベルの副読本があるし、リスニングタスクは自分で英語で書いて補充すればいいので。授業の展開は、基本的に昨年度と同じ流れ。ワークシートの活動を順番に進めていき、分からなくなったら前に戻りまた進む、というもの。進学クラスの生徒よりも英語の資質が高いかな、という生徒を足踏みさせたままではいけないので、「英語は英語で」も少し入れています。

2012_C2_AA1_L10_仕込み.pdf 直
2012_C2_AA1_L10.pdf 直
どちらのワークシートも両面印刷となります。

今週は1コマしかなかったので、「仕込み」で語彙と発音を徹底。このクラスは女子が良い音出すんだよね。

進学クラス高2は、ガイダンスから「英語 I」の第4課。英語による定義から、それに該当する「名詞」を探し出す作業は、さまざまな後置修飾の復習と定着を狙いにしています。生徒にも、その私の意図は明示してあります。解説は日本語で。
本文の読みは、「コラムナー・リーディング」と呼ばれる類の、速読教材で多く用いられる提示の仕方を用いています。『東大リスニング』 (ベネッセコーポレーション) のテキストで、「音読用スクリプト」というセクションがこの提示方法を採用しています。範読を聞きながら、その行に当てていた定規やペンを下へ下へとずらして進みます。裏面のフレーズ、順送り訳を参考にして、自分の疑問点を解消していき、私の解説で痒いところを掻き、それまで痒いと思っていなかったところの痒みを自覚してもらいます。適宜、英語でパラフレーズしたり、行間や段落間のギャップを英語で埋めたり。特に、日本語の文章の読解でも「話形」のストックが足りない生徒は、チャンクごとにスラッシュを入れて先へ先へという読み方だと、主題を見失いがちですから、第3段落の途中での疑問点でも、「では、なぜ、筆者は第1段落の記述を必要としたのか?」と問うことに意味があります。
2年生ならではの項目が「表現と論理」です。このパート1では、

  • 文章、段落の「基準時制」というものを常に把握すること。引用符は読んでいればすぐに分かるけれども、その前後の流れ、イメージを「聞き取り」だけでもちゃんと把握できているか?
  • どどいつの「いつ」を表す副詞に注意。alwaysを「いつも」という日本語訳で把握していてはダメ。ではその裏返しのneverは?
  • 「内容をまとめる」 itとthatの使い方、使い分け。いきなりitにするのは慎重に。まず、thatでまとめて、 itで引っ張る。
  • make sure の表す「意味」は「確かめる」で大丈夫か? 「目的語」となる節は wh-ではなく、that節。用例を観察して、「触れれば体温が感じられる」「斬れば血が出る」ような英語を残しておきましょう。 see (to it) that 節との対比で気づくことが多々あるはず。
  • A is as … as Bの論理は A ≧ B である。「学級文庫」にある『英語の素朴な疑問…』のどこかに書いてあるぞ!

というようなことを扱っています。

高3の「ライティング」は、「英作文・発想診断テスト」。恒例の短文和文英訳100題に入りました。
ノートを作るように指示してあったのですが、

  • 100題あるので、1題で1頁とスペースをたっぷり取るために、50 sheets以上のA4版ノートを用意すること。

というのが意外に高いハードルのようでした。
A4の50sheetsもので、個人的に最近一番使っているのは、

  • オキナの「プロジェクト」のリングノート

です。以前は、

  • Lifeの「クリッパー」のリングノート

を使っていました。
今、一番使いたいな、と思っているのは、

  • Lifeの「エキスパート」のリングノート

です。これは、万年筆の滑りもよく、発色も冴えていて、気持ちが良いのです。ただ、価格が…。

  • ツバメノート「5mm方眼」

これは、価格も手ごろ、「フールス紙」を使っていて、書き心地は大満足なのですが、40 sheetsなのですね。普通の横罫線であれば、A4で100 sheetsのものもあるのですが…。
今の時代、ネット通販が一番便利だと思います。GWまでに、100題を通過体験しますので、早めに準備して下さい。

FBで、高校の時の同期だったHarukoさんから、コメントと質問を受けたので返信したのですが、同期の目には、やっぱり英語ばっかりやっていたように映っていたのでしょうかね。
私が英語とマジメに取り組んだのは、中3の時の不純な動機からでした。以前、Mariさんにも同じような質問を受けて書いたものが、ここ (http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20101120) にあります。その他、FBのコメント欄では書き切れませんので過去ログ、http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20110301 をご笑覧いただければ幸いです。
あらためて、自分の学びを振り返って思うこと。

  • 万人に向く英語の学習方法というものがあるのでしょうか?

原理原則というのは確かにある気がします。ただ、自分がやってみて効果的な方法を人に勧める、というレベルだと、「世間で行われているダイエット法」の世界とほとんど変わらないような。摂取カロリーが消費カロリーを上回ると太る、という程度には原理原則は受け入れられているのでしょう。では、英語学習では?百家争鳴?
1970年代から80年代にかけて私が通過し、経験してきた「英語教育」が、当時、日本各地の「英語教室」で行われていたものと同じであった保障はどこにもありません。地域が違い、生徒が違い、教師が違うのですから。それでも、日本各地で、同時多発的に「英語が出来る中学生」「英語が出来る高校生」は生まれていたでしょ?少なくとも、私が中学・高校で教わってきた英語の先生は皆、例外なく、当時の私よりも英語が出来る人でした。
私は自分で幸運だったな、と思うのは、Y先生、M先生のように「よき師」と呼べる人と出会えて、「良い教材」を見つけ、それを消化吸収する「時間」があったことです。「そのように教わり、そのように学び、そのようにトレーニングしたから、今、この程度に英語がわかり、使えている」という事実を誤魔化したくはありません。文科省であれ、学会であれ、研究会であれ、過去の英語教育を十把一絡げで批判・否定し、それに取って代わる新たな指導法を喧伝するだけでは、「ダイエット商法」と変わらないでしょう。
かつての教え子の、この言葉をいつも忘れないようにしています。 (http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20070218)

英語の先生はみんなそうですが、それぞれ自分が一番英語力の伸びた方法を絶対的なものだと信じこんで、他のやり方を批判する節があります。それは五十歩百歩だと私は思うので私は一人の先生の話を全面的に信じようとは思いません。

今週は、同僚から、不変化詞というのか、副詞として働いているbyについて質問を受けていたので、自宅から参考資料を持って準備室へ。

  • Seth Lindstromberg, 2010, English Prepositions Explained, John Benjamins Pub Co; Revised

改訂版が出たので、最近の知見も少し整理されたかな、と思います。

  • 『英語前置詞の意味論』 アンドレア・タイラー、ビビアン・エバンズ (著)、木村 哲也、 国広 哲弥 (訳) 、研究社、2005年

翻訳っていうのは有り難いものだと実感する一冊。

  • G. A. Meyer, 1975, The Two-Word Verb, A Dictionary of the Verb-Preposition Phrases in American English, mouton de gruyter

これは、当然の如く今では絶版。コーパス言語学、などという言葉さえないような時代に天才の手によって編まれた労作です。(過去ログではここで紹介→http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20100912)

タイラー & エヴァンスとメイヤーの間には、Lakoff & Johnsonとかいろいろあるのでしょうが、とりあえず、手元にあるもので。準備室で英語に関してやりとりが出来る環境というのはいいものですね。かつて、自分が同僚のY先生やH先生にしてもらったことを今自分がしてあげられるようになったのかな、と思います。深謝。

本日のBGM: クリア・スタート (TOMOVSKY) ※1曲リピート