a home-cooked dish

ようやく帯状疱疹後の痛みも治まってきて、普段通りの生活に戻ってきました。
「神経痛」という言葉の当て嵌まる年齢になってきたということですね。
熊本では、Winter's Cup で熱い戦いが繰り広げられていることでしょう。
私は今日も引き続き仕事部屋環境改善Day。
メジャーで縦横奥行きを測りまくり。
ブラインドだけだった窓に遮光のカーテンで冷気対策。
60cm幅限定で本棚を調達。奥行きは30cmですが、高さが235cmあれば、天井へは突っ張り棒みたいのがあるそうなので地震対策もなんとかなるでしょう。洋間だけれど、床が抜けないかが唯一の気がかり。
変形版の洋書などを入れるのに苦労してたけど、少しスッキリしてきたかな。保存する価値のない学参を処分の方向で。捨てる前に、「まずい英語の解答例」を記録しておかないと。
twitterで日向先生から「学習英文法」関連で書籍の問い合わせtweetがあったので、いくつかレス。
私がいいなぁ、と思う本はその多くが絶版なのだけれど、『英語教育基礎と臨床』、『英語教師の文法指導研究』は、亘理先生からも同意があったのでちょっと安心。
日向先生の知りたかったのは、「learnerとしてではなく、userとして」使う教材にはどんなものがあるのか、ということだったのだろうと思う。
呟きを見て、自分の書棚を見回したのだが、英語を"use"しながら、英語を身につけることを志向する初学者用の国産教材というのは、中学校の指導要領準拠教材では見たことがないですね。中学レベルであれば、文法項目別にターゲットを設定して、「コミュニカティブ」な味付けのgrammar activitiesを課すものが多い (実例を抜きに説明するのは難しいが、このタイプの活動は、私が教師になった80年代中頃に授業デザインの参考にしていた、Leo Jones がCambridgeから出していた、Ideasとか、Use of Englishなどの一連の著作をイメージしてもらうと、私の意図が分かってもらえるのではないかと期待する)。そうでなければ、一通り中高の学校で「教わったこと」に、英語ネイティブを模したperspectiveを与えるものが多いという印象。私が、90年代の終わりから、2000年代にかけて、「オーラル」の教科書を書いたり、「東京の教育21」などという公教育の開発の担当をしていた頃に考えていたのは、

  • Dornyei & Thurrell. 1992. Conversation And Dialogues In Action, Prentice Hall

のようなものが日本の高校生相手にできないものか、ということでした。結局、「オーラル」の教科書のクオリティは上がらず、「中学校で優れた実践をされている先生の教える中学3年生の使いこなす英語に見劣りするのではないか」という反省から、私はライティングへと特化していき、現在に至るわけです。「書くことで学び」、「学んだものを使って書き」、その一方、「使えるようになりたい言葉を学ぶために書いてみる」ことを志向してきました。そういう観点からのごく個人的な感想ですが、新課程の「英語表現」の教科書には大いに危惧を抱いています。「英語表現 I」が、従来の「オーラルコミュニケーション I」の教科書に、明示的な文法のまとめと例題をつけただけのものになってしまうのではないか、というものです。そして、文法を「体系的」に身につけるために、といって、学校採択用の「学参」や「問題集」がどんどん出て、それでもよく分からない生徒は塾や予備校へ、という事態にならないことを祈ります。そのような「英語表現 I」の延長線上にある「英語表現 II」で、現行課程の検定教科書『プラネットブルー』とか『ポールスター』、いまは無くなってしまいましたが、私が監修した通信教材『GTEC Writing Training』などで到達できている「英語表現」のクオリティを越えるものはたぶん出てこないのではないかと思っています。
全社からの「英語表現 I」新刊が出そろい、高校現場で教科書選定を行うまであと半年くらいあるでしょうか。半年後はまだいいのかもしれません。滑走路でスピードを上げるような段階ですから。でも、その翌年、もし、『英語表現 II』という科目を本当に「離陸」させようとして教科書選定をする時に、選べる教科書があるといいのですが…。私の勤務校では、「学校設定科目」を作って、「インテンシブ・リーディング」と「クリエイティブ・ライティング」を開講する予定なので、「読み」も「書き」もおそらく自主教材になると思います。
「教科書は頼りにならず、自主教材はとても…」、という方は、

  • パトリック・フォス、酒巻パレット有里 『英会話ほんとは論理力 思ったことが言える!ロジック練習帳』 (講談社インターナショナル、2004年)

などを参考にされては如何でしょう。惜しくも絶版ですが、まだ中古や新古で出回っていると思います。私の評価はアマゾンのカスタマーレビューにも書いています。
その前後を繋ぐのであれば、

  • 田地野彰 『意味順英作文のすすめ』 (岩波ジュニア新書、2011年)
  • 猪野真理枝、佐野洋 『英作文なんかこわくない 日本語の発想でマスターする英文ライティング 』 (東京外国語大学出版会、2011年)
  • ケリー伊藤 『英語ロジカルライティング講座』 (研究社、2011年)
  • ケリー伊藤 『英語パラグラフライティング講座』 (研究社、2002年)

などが参考になるでしょう。できれば、それと並行して、

  • 日向清人・狩野みき 『知られざる基本英単語のルール』 (DHC、2011年)

で扱われている「基本語」の用法と機能、文脈は押さえておきたいと思います。

自分の教材研究では、『チキチキバンバン』。
昨年、DVDは何回も見て名場面を確認してあったのだけれども、原作とは設定が違うので、これまでに手に入った書籍版の読み比べ。
ハードカバーの原書は、いくら子ども向けとはいえ、質・量とも、現任校の高校生にはかなり大変ということで、retold版を2冊。

  • Ian Fleming’s Story of Chitty Chitty Bang Bang! The magical Car, Beginner Books, Collins
  • Chitty-Chitty-Bang-Bang, Take Part Series, Ward Lock Educational

前者は、多読実践で広く使われているもので、文字も大きく英語も簡単な「絵本」。言葉が簡単すぎて味気ないようなところを、後者の「シナリオ」のような対話集で補充。前者はAl Perkinsによる1968年の書き直し、後者はSheila Lane & Marion Kempによる1970年の書き直し。
これらをもとにして、自分で「物語」が書けるくらい英語に習熟したいものです。

夕飯で出た酒粕入りの味噌汁が呼び水というわけではないが、晩酌を少々。
カーテンのおかげか、板の間でも少し寒さが和らいだような気がする。
今晩は、偉人の言葉を引いて就寝。

この本を書くについて、私は格別定まった計画を持っておりませんでした。ただ、発音は仮名書きにしようとか、日本人と英国人の、言葉の感じ方や並べ方のちがいを話してみようとか、できるだけやさしく書いてみようということでありました。また英語入門はいつも子供さんを相手にして書いてあるようですが、むしろ、おじいさんおばあさんの読みものになるような本にしたいというようなことをぼんやり考えておりました。 (中略)
その年月以来英語を教えてきて悟ったことは、英語に限らず外国語は何でもそうですが、教える人が口で話して見せ、習う人がそれを耳におぼえて口に繰返して、声音の流れとして無意識に習い取るのが一番早道でしかも確かな方法であることでありました。しかしそんな練習を書物ですることは不可能であります。それでは出来るだけそれに近いやり方を書物でも試みるというのが、一番良い方法のようでありますが、それは甚だおろかな手段であると思います。書物で習う人には書物で教える方法があろうと考えました。 (福原麟太郎 『英語を学ぶ人々のために』研究社、増補版1962年より;初版は1946年)

本日の晩酌: 醴泉・酒無垢・純米吟醸・生・雄山錦55%精米・23BY (岐阜県)
本日のBGM: Soup Song (Moose Hill featuring 原田知世)