『教科書』はどこへ行った?(その2)

大学入試英語ライティング問題に関して、今二つの原稿を書いている。一つは教師用概説書の資料として、一つは口頭発表用。
いわゆる「過去問」の扱いに関しては、これまでにいろいろ書いてきた。特に、模範解答・解答例の不備は目に余るので、何とかしたいと切実に思う。
問題集と称して、

  1. 過去問を集めて類型化し
  2. それを整理・提示し、
  3. 解答・
  4. 解説を加える

という感じで商品が世に出ているのだろうと思う。こういう書籍を書いている人も「英語教師」「英語講師」「英語インストラクター」などという肩書きの人なのだと思うのだが、このような問題集を作っている人自身は、いったい、いつ、どのような授業をしているのだろう?私が知りたいのは、授業でいつ「ライティング」、つまり、英語での文や文章の書き方を教えているのだろうか、ということである。
入試関連の参考書や問題集などの書籍を眺めるに、だいたいにおいて、「英文読解」をこなして、「語彙」と「文法」に関わる知識を身につけてから、「ライティング」という分野に進むことを是としているようなのだが、結局、「ライティング指導」そのものはブラックボックスなのだ。「問題集を2周する」間に身につけさせたい、技能・知識とは?
予備校の教材もこれまでに教え子が持ってくるのを何冊も見たが、その限りでは、「教科書」ではないのだなぁ。
素朴な疑問。

  • 「ライティング」の教材って、検定教科書以外にどんなものがあるのだろうか?

英語のリーディングの教材も、入試レベルとなったら、とたんに「過去問」をそれらしい体裁に精選・配列して解いていくものがほとんど(入試レベルを超えれば、「精読教材」にはいいものが多い)。ごく少数の例外として、『ポレポレ』、『ビジュアル』、「かんべ」マニュアルあたりは市場で生き延びている。それにしても、最大公約数的な知識と技能を、一定の順序と体系(らしきもの)提示しているものは、文法や読解の教材ばかり。
ライティング(英作文)の教材が貧弱なのは、今にはじまったことではないのだが、時々途方に暮れるのである。辺りを見渡しても、過去問の演習書ばかり。「タテ糸」と「ヨコ糸」をどう紡ぐのか、「教室」でしかできないことがあるだろうに。「教室」がイメージできないと言うことは、「授業」不在ということではないのか?
良い教材を世に送り出したいものだ。
今日は、高校入試の準備もあり、進学クラスのみの授業。
高1は、楠木誠一郎著『「同級生」で読む日本史・世界史』(光文社新書)の紹介。知識を仕入れる工夫をこの本から学べる、という話。
新書の紹介と雑談。最後に、語法の整理。『日本人英語の誤典』(石山宏一著、自由国民社、1986年)からいくつかを抜き出して指摘。この本が世に出て20年以上経っているのだから、今時の学参はこのレベルを超えていなければダメだと思う。
高2は、「ケネディになる日」。
暗誦の小テストをやるよりよほど真剣に取り組みます。チャイムが鳴って教室に行ったら、モニターTVとDVDプレーヤーで音声CDをリピートにして練習していました。
リハ20分。収録20分。結局、Take 9でなんとかまとまる。一応、それぞれの登場回数は2回で機会均等を計った模様。就任演説が1月20日、キング牧師の誕生日が1月21日というネタ振りの後、次回の課題配布。キング牧師の演説。『現代英語教育』の若林俊輔氏の解説を引用。リンカーンを背負う意味づけに関して次回は行方昭夫氏の大学生再入門教材の解説で補足の予定。
入試準備で職員会議。
帰宅後、市内の書店へ行くので、妻の買い物も一緒に済ませる。
『英和対訳ケネディ大統領演説集(CD2枚付)』(長谷川潔訳注、南雲堂、2007年)

  • 授業用資料として。

『国文学』2月号、(学燈社)

  • 第二特集の「追悼サイデンステッカー氏」での、安西徹雄氏の寄稿に惹かれて。

『考える人』2008年冬号(新潮社)

  • 追悼特集「さようなら、こんにちは河合隼雄さん」。

『荒地の恋』(ねじめ正一著、文藝春秋、2007年)

  • これは、読まねばなるまいて。

などなど。
原稿執筆の潤滑油とならんことを。
今日は、これから本業の合宿です。

本日のBGM: Goodbye (Mark Eitzel / Caught in a trap and I can’t back out ‘cause I love you too much, baby 収録)