ナラティブマスターは君に語りかける

『英語青年』4月号発売。
今号から、表紙・装丁が大きく変わった。
特集は「大学入試英語問題を批評する」。見出しの順番に紹介。中身は是非とも購入して読んで欲しいと思います。

  • これでいいのか、大学入試英語問題・英語教育およびテスト理論の立場から(靜哲人)
  • これでいいのか、大学入試英語問題・予備校の立場から(小林功)
  • これでいいのか、ライティング問題・高校の立場から(松井孝志)
  • 英語教育史から見た入試英語問題(江利川春雄)
  • 注文の多いテスト屋さん・大学英語入試作問事情(金谷憲)
  • 大学入試は高校の学習指導要領を超えてよいか(水光雅則)
  • 入試英語問題の批評空間を作り出す(柳瀬陽介)

これでいいのか?という視点で3人が論じているのだが、靜氏はリーディング、小林氏は語法、松井はライティングと三者の領域が棲み分けられたようになっており、しかも論じ方は三者三様。靜流家元と異名をとる靜氏の論考は、最後の柳瀬氏の論考と合わせ鏡のように読めば、この特集の面白さが倍増することだろう。柳瀬氏の静かで精緻な語り口が印象的。
これを機会に、若手教員も『英語青年』にアクセスしてくれるとなお嬉しい。新連載(リレー式のようであるが)の「英語・英文学・英語学<教育>を考える」(実際は教育という字句のフォントが大きいのだが<>で表した)の第一回は大津由紀雄氏(慶応大)が書いている。私が一番興味を引かれたのは、付記2としてあげられた、「大学英語教育に関わる別の問題として、児童(早期、小学校)英語のための教員養成がある。」というところ。これは英語教育の根幹にかかわる問題であるが、『英語教育』(大修館書店)のような教育系の雑誌ではおそらく正面切って料理できないだろうから、この雑誌でこそ論じて欲しかった。
「海外新潮」では、水越あゆみ氏の、英詩の韻律教授法に関する英国事情が、評者の顔が見えるようで良い。
新連載の目玉は「医学と英文学」。第一回はナラティブに関するもの (pp.25-27)。

  • 病気と医療の現場にはナラティブが満ち溢れている。
  • 量的情報から一般法則を導こうとする物理学や天文学とは違い、医学・医療という学問・営みの中心は、質的情報から個性とタイプを確定することであり、その意味で、医学は、文学研究をはじめとする人文学とよく似ている。

「やられた!」という感じ。
医者・教師・政治家など「せんせい」と呼ばれる職業人は、ナラティブのマスター(マイスター;マエストロ)であるべきなのです。