4月読書録

今月購入して読み始めた本から幾つか紹介。

  1. 荒木茂『群読指導入門』民衆社(2000年)
  2. 太田洋・日臺滋之新しい語彙指導のカタチ 学習者コーパスを活用して』明治図書(2006年)
  3. 塚田泰彦編著『個人と協同の学びを支援する 国語教室のマッピング』教育出版(2005年)
  4. 『文字 終刊号 近代思想の幕開け--- 明治の知識人』ミネルヴァ書房(2006年)
  • かつて『現代英語教育』で、荒木茂『音読指導の方法と技術』(一光社)が紹介されていて、目を通したことがあったが、この人の音声表現の指導は骨太である。「群読」の定義の曖昧さ、実践のバラツキも含めて国語教育での実践の輪郭や肌触りを感じることは出来るだろう。なんといってもCDがついているので実際の授業をイメージすることができるのがよい。英語の授業実践で「音読」を取り上げるとした時、その指導過程がビデオやDVDでなく音声のみだったとしたなら商品として成立するだろうか?群読に適する教材の条件として挙げられているジャンル・文体の解説などは、翻って英語教育に於ける音読指導での教材観・教材論を見直すヒントとなるだろう。詩人の自作詩朗読肯定派・否定派の紹介なども面白く読んだ。
  • 『新しい…』は180ページ足らずの本だが、中学生の学習者コーパスから得られたデータが紹介されており、外国語学習者の発達段階を考えるのに貴重な資料である。国語教育の分野では井上一郎氏の著作などで、児童の語彙の発達段階がまとめられているが、英語教育の分野での語彙発達研究の端緒と言えるだろうか。
  • 『…マッピング』は、英語教育でも最近普及しつつあるidea generation& organizationの手法としてのマッピングを国語教育でどのように実践してきたかが記されている。国語教育の分野では20年間程の歴史があるとのこと。特に注目すべきは、「語彙指導」「読むことの指導」「書くことの指導」とそれぞれ分けてマッピングをどのように指導しているかを紹介している点。pp.164-165での生徒とのやりとりが英語教育に於ける最近の流行に対する重要な示唆を含むものである。
  • 「じつはこの生徒はもともと情報通信分野に関心が高く、このテーマに関してはかなり専門的な知識を持っている。にもかかわらず、このように主旨の伝わらない文章を書いたのはなぜか?面談をとおして彼のつまずきを検討すると、①自分のもっている情報が多すぎて、それを吟味・整理できずに、思いついたものを思いついたまま書いてしまった、②『デジタルデバイド』について十分咀嚼しないまま、文章に取り込んでしまったため、文章構成に混乱が生じた、ということがわかった。」
  • 『文字』に関しては、いつもお世話になっている編集者の方に教えて頂いた、石川九楊の責任編集ということで書店で探したら、みつかったのはなんと終刊号。あらあら、という感じ。収録されている論考のそれぞれが、ものすごく負荷が高い印象を持った。ここで述べられる語のひとつひとつの質量が高いとでもいおうか。疲れたぁ。草森紳一「咄嗟のカマイタチ」のなかで、荒木比呂彦の『バオー』が紹介されていたのにはびっくりした。

4月11日付けの記事(http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20060411)で触れた frighteninglyだが、今日、大修館書店の編集部からFaxが届いた。一応、南出先生にお伺いを立てたようで、ようやく不適切な記述を認め、「なるべく早い機会に」訂正したいとのこと。

  • frighteningly 副 1 [強調語]びっくりするほど、恐ろしいほど。2.ぞっとさせるように。

Faxには、「1.の意味で使われることがほとんどであるということです。」と丁寧に記してあったが、辞書には反映されないのだろうか。