備えと憂い

1学期の終業式。
台風の接近で生徒は早めに帰すということで部活動はなし。
インターハイの弁当予約をネットで済ませて、宿泊費なども含めた稟議書を作成。
昼前に英語科会議。
習熟度別クラス編成、自校入試、新年度教科書選定などなど、問題・課題は山積。県の教育庁から教育課程に関わる資料の提出を求められていたので、私が記載責任者として実践報告。夏期休業中に集まりがあるそうな。
明日から、夏期課外開始なので、しっかり昼食をとり資料の準備をしてから帰宅。やれやれ。

以前、東京にある某大学のエクステンションで留学希望者に対してTOEFL対策講座を受け持っていたことがあるのだが、その時の「ライティング」指導で、受講者の質問カードが出てきたので、その質問への私が実際にした回答とともに抜粋しておく。
ちょうど、「パラグラフオーガニゼーション」の導入が終わって、1題書いた後くらいの学習段階ですので、高校上級以上であれば参考になるかと。

Topic Sentence, Supporting Sentences, Concluding Sentenceに関してのFAQs

1.Restatement & refocusのやり方が分からない→今やっているタスクをしっかりと考える。同意表現のバリエーションを増やす。一般的情報と個別的情報の区別をつける。良い文章をきちんと読む。「文章を詳しく見ても、全部が言い換えられているように見えて、どの部分が言い換えられているかわからない。」という人は、これを機会にしっかりと「品詞」について勉強し直すこと。誰がなんと言おうと、英語力とは「語彙力」と「文法力」です。
2.TSとCSで主語を同じにする必要はないのか?どの程度言い換えすればよいのか?→自分でできる範囲内で言い換えればよい。主題が変わらなければ主語が変わっても問題なし。主語ではなく、主題が最重要項目なのだから、主張の強さが変わるのがいやなら変えなければよい。長さは主題を言い換えて伝えられていれば長くても短くても問題ない。
3.どのような言い換えが強調をより意図出来るのか?→ よい文章を読んでそのテクニックを盗みなさい。自分で何十回も書いてみて覚えるものです。
4.パラグラフの適切な長さがわからない→50語でも主題に対するまとまりとつながりがあれば適切だし、400語でもその条件を満たしていなければ不適切。
5.過不足の境界線が分からない→ いま導入されたばかりのことがすぐできると思う方がどうかしているのです。一度読んで、意味のよく分かっている文章の中で、何回も読み返してみたいと思うような良い文章を吟味してみることです。
6.支持文の内容はどのように構成するのがベストなのでしょうか?いろんな視点から見た方がいいのか、1つの視点に絞った方がいいのか?→ 一つのパラグラフの中では一つに絞った方がbetterです。One paragraph, one ideaの原則です。
7.肯定文ばかりでいいか? → TSは主張なのでできる限り徹底して肯定文で作ることが望ましい。ディベートをやったことのある人は分かると思うが、反論・反駁の方が簡単なので、否定で論理展開をする場合にも、必ず「そうでない、というのなら、では、それにとって代わる考えを提示せよ」と自分に迫ることである。良い文章を読んでいればかならず、「否定があれば、それに取って代わる肯定の表現が続いている」はすである。
8.支持文の中で例文があげられないときは事実を並べても良いのでしょうか?→質問の意図が分からないが、支持文はできる限り事実でサポート、理由付け、説明、定義をすること。何を支持するのか?という本質を見失わないこと。
9.自分で書く文が単調になる→ 表現のバリエーションを増やす観点で英文を読み、「真似して」「覚えなさい」。
10.情報構造を満たすのに必要な順序とはどういうことか?→ 概要から詳細へ、一般から具体へ、旧情報から新情報へ、前提から焦点へ、比較の対象から焦点を当てるべき対象へ、意見からその裏付け・理由へ、疑問から解答へ、問いかけから応答へ、大きな集団・集合からその構成要素へ、などという流れです。
11.TSをどの程度具体的、かつ簡潔に書けばいいか分からない→TSが一番難しいので、最後まで悩んで下さい。
12.内容をまとめるときにどれを削ればいいかわからない→厳しい言い方をしますが、「どれを削ればいいかが分からないのではなく、本当に何をいいたいのか突き詰めて考えていない」ということです。「と、いうのはどういうことか?」「で、それは結局どういうことなのか?」という理詰めの訓練をすることが不可欠です。キーワードのみを書き出す訓練、それはClusteringですでに始めていますね?
13.パラグラフを変えるとき前の文とつなげなくてはならないのか?→ 今やっているのは一つのパラグラフでの中での話です。
14.1文の長さはどのくらいの長さがちょうど良いのか?→ いいたいことが一読で分かるのであれば、長くても短くても良い。ただし、一般的には、15語くらいで収められるように書くことを目安にすると良いだろう。そのためには、語彙力と文法力を「書く視点から見直す」ことです。
15.TS, SS,CSの分量の比率には規定があるのか?→ 規定はないが目安はあるのでは?良い文章を読んで発見してみましょう。
16.違った表現を沢山使った方がよいのか?具体的な規定はあるのか?→数値ではかれるような規定は一般にはありません。ただし、同じ表現を漫然と繰り返して使うのは、その人の書く能力が低い、と思われます。これは英語のnative speakerでも同じことです。世界中のどの言語でも等しく共通にNative speakersは存在しても、native writersは存在しないのです。どの言語使用者であってもWritingは常に学ぶものなのですから。だからこそ、外国語として英語を学ぶ我々にも、native speakerに迫れる領域であるともいえるわけです。
17.抽象的・具体的な表現の区別が分からない → 日本語でも同じことです。普段から分析的に考える習慣をつけましょう。
18.TSとCSとは同じことをいわなきゃならないのか?→ 同じことを言いたくない、という心理がよくわかりません。英語の文章では、一つの文章では、一つの主題を述べるのが約束事なのだから、同じ事にならなければ英語の文章としては不適切です。
19.CSの前にSSとのつながりを持った自分の考察っぽいことを書いてしまうと主題と結論とのつながりがうまくいかなくなってしまう→原因は『考察っぽい』からでしょうか?SSで主題が『きちんと考察』されていれば、問題ないのでは?考察が不十分であれば、主題設定に戻ってネタを吟味することが必要なのでは?
20.大事なポイントや言いたいことを言い換えるのはしつこくならないのか?→言い換えないで、同じ表現がダラダラ繰り返されることの方を「しつこい」と思うのではないでしょうか?
21.主語のバリエーションを増やすためにいろいろ変える練習をするが、実際に文章を書くときは無理矢理にでも変えた方がいいのか?→できる範囲でやって下さい。
22.言い換えをする利点が分からない→ 言い換えをしたくないのなら言い換えないでそのまま書いてみたらどうでしょうか?
23.そもそも、日本語の文章でも主題文と結論文とで言っていることが変わってしまう場合はどうしたらいいでしょうか?→ 本当に言いたいことは何かを考え直して、書き直しです。
24.主題文は単なる意見なのに断定するような表現を使って良いのか?→『断定するような表現』が具体的に何を指しているのかがわからないので答えようがありません。たとえば、 must と is とではどちらが断定的だと思うのですか?
25.And so on の使い方がわからない。何で使ってはいけないのか?→「すしネタの話」を授業でしましたね。授業での説明をよく咀嚼して下さい。あなたが、and so onの使用法に自信があれば使っても良いですよ。
26.言い換えが簡単に思いつかない → 勉強ってそういうものなのでは?簡単ではないから、できるようになることに価値があるのではないでしょうか?
27.SSを書いて、急に再強調して上手く文がつながるか?→SSができていれば問題なし。つながらないのであれば、主題設定からやり直し。
28.まとまりのあるSSを書くにはどうしたらいいか?→まとまりのある主題を設定することにつきます。主題を突き詰めて考える訓練こそがライティングの第一歩です。本質は、日本語でも同じはずです。
29.対話では許容される文がTSとしては相応しくない、というのがよく分からない→書き言葉には書き言葉の約束事があるわけです。これからひとつずつ身につけていって下さい。
30.抽象的なことはTSには書いていけないが他の部分でも書いてはいけないのか?→当然、哲学とか理論について書くのであれば、抽象的なことを話題として述べることになる。しかしながら、英語では、一般的な情報だけ、抽象的な情報だけでは、パラグラフをつくっていくことが難しいのである。その抽象的、一般的な話題に関して、いったい何を伝えたいのか?という切り口がなければ文章は生まれません。情報の個別化・具体化のプロセスが求められることが書き手・読み手の間の約束事だと考えて下さい。
31.Manyとか書いてはいけないということは、具体的にmanyの内容を書けばいいのか?→その通りです。その具体的な事例で何を伝えたいのか?何のテーマを支持する具体例か?を常に考えることが大切。
32.つなぎ語の使い方、使い分けがわからない→ 一般的な練習方法としては、つなぎ語を使わないで書いてみて、つながりが悪いときに、文と文はどういう関係になっているかを考える。

今なら、もう少し丁寧に指導できるかな、とも思いますが、甘やかしてばかりいてはダメでしょう。
英語の出来る人はよく「読めれば書ける」などと言ったりしますが、「その英語を自分がスラスラと書けるのか?という問題意識で読むことが大切」というあたりが、学習者の真実ではないかと思います。
前任校でも現在の勤務校の進学クラスでも、

  • 読んで意味がわかったところで安心しちゃダメ。「ことば」を読みなさい。

というのが口癖でした。
夏は多読指導のチャンスですが、自分の守備範囲の中、またはその一回り大きいくらいの「英語」を多読する際に、

  • 細かいところは気にしなくていいから鷲掴みに!

という指導だけでは頭打ちとなるでしょう。読解の体力アップ、ストレッチでの可動域の拡大を考えると、上述したような「多読」で量をこなす一方で、

  • 語彙や構文が制限してある「読本」や「教科書」を利用しての、テクストタイプに応じた読みのトレーニング
  • 日本語の対訳などを利用しての、自分の守備範囲をかなり超えた「難しい」英語との格闘

も視野に入れておくことが肝要かと。

本日のBGM: People get ready (Kenny Rankin)