愉気

今年度出講先の授業・テスト・成績処理も全て終了。

前回のエントリーで、高2の「総括票」となるアンケートの抜粋を載せましたが、そこで多くの生徒が言及していた「ライティング課題」とその「フィードバック」に関して、補足を少々。

ソーシャルメディアの twitter では、既にいくつかつぶやいていました。

今年の某大の前期のライティングが、ベタな「お題」でびっくり。
語数の制約が異なると難易度は激変するけれど、高2でこの前やったものとほぼ同じお題。

私が授業で課題として扱う場合は、「お題」として適切なものに修正して課すようにしていますので、今回の高2の課題も、ここで取り上げた入試問題のような雑な設定にはしていません。

雑な扱いといえば、「制限語数と理由付けの個数」というのも、独特の入試文化の中で生き延びていますね。
日本の英語教育に対しては兎角「ガラパゴス」というような揶揄をする世間が、なぜこのような雑なお題での出題を放置しておくのか理解に苦しみます。私の解決策の提言は既に2006年の『英語青年』の特集でしていますが、改善の兆しは一部の大学だけで、他にはほとんど波及していませんね。

別の某大学は入試改革や高大接続の研究では最先端の筈なのに、英文ライティングでは●ソみたいなお題。表の情報から外れずに理由を3つあるのは良いけど、80語の制限では一つ一つの理由付の論理がスカスカになるでしょうに。その上個人的体験を盛り込め?大学が標準解答例を責任持って公開して下さい。

まあ、「ウ」を入れるか、「ク」を入れるかはご自由に。

私の基本的なシラバスは次の通り。

私の場合、高2段階ではテクストタイプ別に100−150語程度でつながりとまとまりのある英文を書けることを目指し、高3段階では語彙構文を成熟させ80語程度の英文にまとめる、データなども含めさらにサポートを充実させて300語程度の英文に展開する、というのが指導の基本ですね。高1はチャンクで英作文!

https://twitter.com/tmrowing/status/1497508249989365762

この基本は、1990年代の終わりからそれほど変わっていません。ただ、そこに至る「お膳立て」としての、高1、高2での活動と教材・学習材の整備・精選には手間ひまかけてきました。

それが形になったのが、『チャンクで積み上げ英作文』(三省堂)です。学校採択教材ですので、中高現場の先生方、多くの高校生の手元に届くよう、ご検討よろしくお願いします。

『チャンクで積み上げ英作文!』(三省堂)
をベイシック&スタンダード編までやっておけば、大学入試でよく見られる「お題型」の英文ライティングの出題に取り組むレディネス「も」充分できますよ。

「英語表現」という科目を弔うこともせず、「論理・表現」という科目が始まろうとしていますが、「シラバス」の中に writing という技能を位置づけるのであれば、まずはこれをお読みいただき、その上で、超えていって下さい。 2008年の本ですのでね、。

古いことは古いですが、中高の指導者向けではこれを超えるものはいまのところないかな。

ということで、振り出しの課題にもどって再考。

生徒が理由付けで「コミュニケーション能力」と「感情」を取り上げたい気持ちは分かるが、論理が甘い次のようなものは書き直しが必要。
This type of work involves empathizing with people. However, computers cannot communicate with empathy. So they will not be able to replace counselors.

https://twitter.com/tmrowing/status/1505808685452333065

生徒作品をそのまま出すわけにも行かないので、あくまでも、生徒が書いてきたものからの一般化・最大公約数のような英文にして示していますが、問題点は十分露見しています。

毎回ライティングのフィードバックは個別に書いているが、今回は次のような文言を書く機会が多かった。

主題のサポートにダイレクトに入るべし。XXX という職業に求められる特有の資質を限定的に述べるのは楽。その資質を人は備えているが、AIには欠落していることを例証するところが腕の見せ所。

https://twitter.com/tmrowing/status/1505816702130409473

ホントに、「ズバッと!」書くには練習が必要なんですよ。

そして、重要な指摘。

あと、十数年前には見なかった書き方が
I believe that XXX will never be replaced by AI. First, SV1. Also, SV2 接 SV3. Second, SV4. Moreover, SV5.
のような、何の最初の情報なのか?に全く配慮のない「いきなり序数」と「添加マーカー天国」のような展開。どっかで教わってるんだろうなぁ…。

この「いきなり序数」は I have two reasons to support my view. One is that SV1. The other is .... というような「ナンバリング」から、「レーベリング」に進む、「紋切り型の稚拙な構成」に取って代わるものとして示されているのだとしたら要再考。何の順序なのか読めば分かるって言われてもね。

詳しいことは、私の高2、または高3の授業か、オンラインのセミナーで!

https://twitter.com/tmrowing/status/1505811911245373442


ということで、4月からは、高2、高3は「英語表現」、新高1は「論理・表現」という科目が並行して走ることになるわけですが、 writing をするのであれば、「エイブン」ではなく」「英文」ができ上がるような授業を心がけたいものです。

新年度のセミナー等、ご縁がありましたらよろしくお願いします。
現時点で、生業の「英語教育」関連で予定しているのは、

2022年 3月30日(水曜日) 13:00ー14:00 「入試改革を考える会」主催記者会見。 於:文部科学省記者クラブ

「東京都立高校入試での英語スピーキングテスト (= ESAT-J)」に関わるものです。
スピーカーは、代表の大内裕和、私 (松井孝志)、そして鳥飼玖美子氏の三名です。
ネットでの中継も計画されているようです。問題山積のまま進む、この事業に関心のある方、スケジュールを空けておいて下さい。


以下は、オンラインセミナー。初級、中級の日時をお間違えのないように。

2022年4月2日(土曜日)
文字指導/handwriting 指導法セミナー・中級編

passmarket.yahoo.co.jp

2022年4月30日(土曜日)
文字指導/handwriting 指導法セミナー・初級編

passmarket.yahoo.co.jp

2022年5月7日(土曜日)
文字指導/handwriting 指導法セミナー・中級編

passmarket.yahoo.co.jp


本日はこの辺で。


本日のBGM: I'm cured (Aimee Mann)