名目

久しぶりに風邪を引きました。
例年、この時期にはセンター試験の批評をブログにアップしているのですが、今年はこちらの表彰式に出席するために上京していて、その後風邪で体調を崩していたので、まとまった記述を残せていませんでした。

平成29年度文部科学大臣優秀教職員表彰
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/30/01/1400219.htm

往路は朝イチの便で飛ぶはずが、そろそろ「これから機内へとご案内…」の時間になってから、まさかの機体整備不良のアナウンスで欠航。仕方なく、2時間後の別会社の共同就航便へ振り替えて、搭乗し羽田へ。電車を乗り継ぎ、受付〆切時間ギリギリで会場へ。被表彰者の数が数だけに式次第、式自体がこれまた長く、講堂にずっといたので、乾燥で鼻&喉がやられてしまいました。表彰式の後は妻の実家にご挨拶に。翌朝の帰路の一便は、山口が濃霧で、条件付き飛行。福岡着陸か羽田に引き返すこともあるとのことで、同僚に連絡し、「万が一の場合は自習で」とお願いしてから搭乗。何とか、無事に山口に着陸して事なきを得たのはいいのですが、喉鼻の調子が劣悪で、その翌日からマスク着用の日々。この週末になって漸く回復の兆しが見えてきました。これだけの不調は、一昨年の全英連・山口大会の時期以来ですから、人間、「らしくない」ことをすると身体が正直に反応するということなんですかね?

ということで、地理のムーミンと、英語のタコ星人で話題沸騰の2018年センター試験、英語・筆記でざっくりと気になったところだけ掻い摘んでコメントを加えておきます。

巷では、筆記で「対話文」の空所補充完成がなくなった、という点を殊更取り上げているようでしたが、他の問題でもまだまだ「不必要に対話文が多い」とは思わないのが不思議ですね。


第1問は廃止すべき設問なので講評にも値しません。出題に定見なし。恐らく、総合点との相関も低いでしょう。問4の選択肢の中で、supermarket一つだけ語形成の背景が異なる気がします。原則として4音節以上の語で、副詞(一部形容詞)の強勢を問うこと自体が「?」だと思います。


第2問 Aは短文(1文から2文)での空所補充完成。語彙、語法、文法とも「瞬殺」のレベル。一番気になったのは、人物名ですね。

Jeff
Brenda
Nicole
Rafael
Melissa

こんなにたくさん必要ある?そして、どういう背景の人たち?特に深い意味はないの?じゃあ、「教師」「生徒」とか「生徒A」、「生徒B」とかで十分なんじゃないの?という部分になぜ誰も切り込まないんでしょうかね?

文法面でいうと、問6は丁寧に扱って欲しいところ。whatに後続する形となっている we thought は挿入ではなく、当事者の判断を表しているものなので。再度いいます。挿入じゃないんですよ!
問8から2枚抜きになっていますが、lookが直接目的語をとるケースはごく限られた意味ですから、この場合は錯乱肢としての効き目が薄いですよね。

She looked him in the eyes. (=to direct a look at)
He said nothing, but looked his disappointment. (=to express or suggest by looks)
He doesn't look his age. (= to appear equal to)


第2問Bは、対話文形式での整序完成。対話である必然性は?それぞれ日本語訳してみたら、整序完成した英文の意味内容で対話が終了になるとは考えにくいだろうに。ねえ?

問1
生徒:豪州からの留学生が着いたらどうする予定?
教師:初日の晩は、親睦をはかるために河原でバーベキューです。
そもそも、生徒はなぜ一人しかいないの?

問2
Bridget: あなたのバスケットボールは昨シーズンを振り返ってどうでしたか?
Toshi: 私はチームで二番目に多く得点をあげました。
Bridgetは、ほぼ女性で間違いないとは思うんですが、Toshi のこの答えを聞いてどう反応するのだろうか?契約更新時の査定で、女性オーナーとのインタビューの冒頭の場面?

問3
Evan: コンピューター買うの初めてなんだけど、どれ選んでいいんだか…。
Sam: 大丈夫。量販店には専門のスタッフが常駐していて、コンピュータ操作に不慣れな人向けに助言をしてくれるよ。
「エディオン」にするか「ヤマダ電機」にするか、それとも「アップルストア」にするか、でまた悩むのでは?もっとも、日本の学生なら、大学への進学が決まってから悩んでも間に合うと思うけど…。

整序完成とはいえ空所に当たる部分は完全に連続しているので、選択肢だけ見てもできてしまうのですが、多くの高校生は、この基本的な語順やコロケーション、表現そのものが身に付いていないために失点するのでしょうね。どうしましょうか?


第2問Cは対話文形式で、応答として適切な英文を完成するように、3つのパート(ブロック)の夫々で2択。選択肢は組み合わせどおりで8つあるのだけれど、どう考えても英語としてあり得ない語(句)の連続は排除されるから、最初のパートで4つに絞れたりします。この出題が始まってすぐに、「一刻も早く廃止して欲しい形式」と主張していたのですが、なんということでしょう、今年はこの出題のターンが増えました。いったい英語力の何を測っているんだろう?コミュケーションを支える文法力?

問1 の最初のパートで、直前で既に与えられている、that節中の主語に相当する語がitなので、人や擬人化できるものでなければ意味が整合しない、<plan to 原形>が能動で使われることはあり得ません。ここをwas planned to とすれば、英語になりますが、そうすると、選ぶのはA でもBでもよくなります。ということは、これは英語のテストになっていないということでしょう?ホントに、今年の追試はもう止められないので、来年の出題では是非とも廃止して下さい。お願いします。

対話形式なので肩書きや立場または名前が出てきます。

問1の "Shelly" といえば、画像検索でほぼこの人が出てきますね。

https://www.google.co.jp/search?biw=1200&bih=575&tbm=isch&sa=1&ei=7xtbWuXYKMv_8gX2jZaIBg&q=Shelly&oq=Shelly&gs_l=psy-ab.3..0l8.331394.331919.0.332603.2.2.0.0.0.0.102.191.1j1.2.0....0...1c.1.64.psy-ab..0.2.190....0.X56mgaoytv4

そして、相手のLisaで検索すると、こちらの方が!

https://www.google.co.jp/search?biw=1200&bih=575&tbm=isch&sa=1&ei=PR1bWpnUCIyw8wW-sJmgCw&q=Lisa&oq=Lisa&gs_l=psy-ab.3..0l8.79440.82387.0.83224.10.10.0.0.0.0.128.888.5j4.10.0....0...1c.1.64.psy-ab..0.9.888.0..0i4k1.71.792Fb-DP83I#imgrc=UqsEftCJ3v5ZoM …:

問2はTomohiro とCaseyの対話。 Tomohiroでは意外な検索結果が…。

https://www.google.co.jp/search?biw=1200&bih=575&tbm=isch&sa=1&ei=9B5bWpPWLYeA8wX2lKLgAQ&q=Tomohiro&oq=Tomohiro&gs_l=psy-ab.3...0.0.0.4693.0.0.0.0.0.0.0.0..0.0....0...1c..64.psy-ab..0.0.0....0.cIkI4p568Ao

Casey でようやく男女混交で出てきました。

https://www.google.co.jp/search?biw=1200&bih=575&tbm=isch&sa=1&ei=ER9bWoOqEsj_8QW4_oqICA&q=Casey&oq=Casey&gs_l=psy-ab.3..0i4k1l4j0l4.123541.128897.0.130862.16.15.0.0.0.0.157.1312.9j4.14.0....0...1c.1j4.64.psy-ab..6.9.812.0...75.RN1Sx_N-FN4

問3では、ほとんどの高校生が発音できていないであろう、Hoang と 日本人の名前っぽい Naoの対話。 Hoang は男性?女性?

https://www.google.co.jp/search?biw=1200&bih=575&tbm=isch&sa=1&ei=ix9bWsaxF8Hy8AWc77S4CQ&q=Hoang&oq=Hoang&gs_l=psy-ab.3..0l3j0i30k1l5.113489.118062.0.119372.10.10.0.0.0.0.132.870.8j1.10.0....0...1c.1.64.psy-ab..0.9.869.0..0i4k1.76.2GVmGW4b3jg

そして、今回の検索で最も驚くべき結果が、Naoでした。

https://www.google.co.jp/search?biw=1200&bih=575&tbm=isch&sa=1&ei=AyBbWseEKsf78QXg_LfYAg&q=Nao&oq=Nao&gs_l=psy-ab.3..0i4k1l3j0l3j0i4k1l2.63166.64828.0.65355.8.8.0.0.0.0.94.626.7.8.0....0...1c.1.64.psy-ab..0.7.625.0...74.rWWvMBiqw7g

インタビューや対談でもないのに対話文を読ませる出題って、いつごろからこんなに増えたんだろうか?私は、名前が読めない(音声化できない)ということでどれほど、思考や理解が阻害されるか、もっと気にして欲しいと思っています。言語テスティングの分野ではそういう研究はされているのだろうか?


第3問は、本来「読解」問題ではなく、「つながり」と「まとまり」を作る力があるのかを診る「ライティング」代替問題だというのが私の見立てです。その観点で言えば、今年は拍子抜けですかね。

Aの不要文選択の問2で「トマト」の話がありましたが、高校の授業でもこういう百科事典的定義(文)をもっと扱うべきだと思っています。以前の高2の授業ではこんなことをしていました。

http://tmrowing.hatenablog.com/entry/20130423

このピーナッツのキャラクターが登場する事典は1977年刊の古書。

例によって絶版ですが、類書には事欠きません。例えば、こちら。




英語ネイティブの子供用図鑑・事典のようなボードブックだけれど、Q&A形式で、回答はフラップをめくることでgeneralからspecificへと記述が進む構成。このレベルの英語が話せて書けることをまずは目指してもらっています。

B. の「ディスカッションもどき」問題も凄いですよ。登場人物は過去最多の7名。これっきりで最後まで何も言わないマイケルのターンが異様に長く、134語の意見語り。それをピンポイントで8語で要約してくれる敏腕司会者ジェニファー、そしてその要約にマイケルは全くダメ出しをしないというお約束設定。

この「やりとり」の最後はジェニファーのターンで終わっているけど、最後の一文の語りに、ジェニファーという名前をつけて新たに起こすのは、何か表記上のルールがあるのだろうか?この間に「発言者一同、大いに頷く」というようなト書きがあるなら、別な発言者として示す意味もわかるのだけれど。ここはひとつながりの発話ではないの?

「もどき」に対する批判は2010年くらいから続けていましたけれど、2015年にこんな批判をしたら、2017年の本試験でついに登場人物が増え、リスニングにも「もどき」設問が入りました。センター試験も「改善」されてきているということですね。
よりよい設問、より良い試験。

http://tmrowing.hatenablog.com/entry/20150118

無理に「ディスカッション」にしようとするから、登場人物の数やターンテイキング(の不自然さ)が問題になるわけで、最初から「もどき」を考えなければ、「やりとり」を見せるには、登場人物は二人で十分なんですよ。対話・対談、面接やインタビューです。2016 年の追試験みたいに。聴衆・参加者のたくさんいるはずのセミナーなのに、ひたすら二人で話しが進みますから。

以上、前半の第3問までをとりあえずアップしておきます。

本日のBGM: 名前をつけてやる(スピッツ)