”because you turned me upside down”

リオ五輪も終了。夏期課外講座も、夏期休業中の担当分は終了。
五輪については、競技スポーツのコーチとしてイロイロと感じることがありますので、また日を改めて書こうと思います。

今日は、生業の課外の振り返り。

高2の学級文庫活用がどの程度だったかは二学期の授業での生徒諸君の取り組みが教えてくれることでしょう。

私の場合は「名詞句の限定表現」から「助動詞と時制・相・態」に進みつつ、「意味順」を文法指導の中心に据えてシラバスを組んでいるわけですが、意味順のそれぞれの「スロット」に、どの語(句)を入れるのか、での悩み処というのは当然出て来るわけです。

高1の時の「虫の目」で、「そういうものなのかなぁ…」と渋々扱ってきた言語材料も、高2になって、同じ虫でも森の高台に立って見晴らしを得た段階や、鳥までは行かずとも、羽を持ち少し高く飛べるようになった虫なら「見える」ものがいろいろ出て来ます。

例えば、

慣用表現で覚えていて使いこなしているであろう、

  • Where are you from?

という表現も、「文」の構造として、意味順のスロットに入れる時に、ちょっと「ムムっ」となります。「どどいつ」の「どこ」にあたる <前置詞+名詞>のうちの、名詞だけが疑問詞として文頭の「玉手箱」へと移動するわけですから。
意味も分かっていて、使えるけれども、「しくみ」を問われると、ちょっとドマドマする例でしょう。
一方、「しくみ」としては、いたって簡単な次の例はどうでしょうか?

  • Where are you?
  • Where are we?

「どどいつ」としての<副詞>の扱いですから、あまり悩まずにスロットに投入可能でしょう。でも、このそれぞれの文の生息域は実感できているでしょうか?誰が、誰に対して、どこで、いつ、どんな風に、どうして言っている文なのか?

答えになるかどうかわかりませんが、私の授業での定番教材は『オズの魔法使い』なんですよ、とだけ言っておきます。


単純な「しくみ」としては、「受け身」「受動態」の文での、前置詞の扱いも「悩み処」でしょう。

  • People all over the world were surprised at the news.

で、述部の「する・です」の動詞句のスロットに何を入れるか?です。
生徒には、

a. were surprised at を「する・です」スロットに入れて、その次の「だれ・なに」スロットに the news を入れる。
b. 「する・です」スロットには were surprisedだけを入れて、その次の「だれ・なに」スロットはとばして「どどいつ」のスロットに at the newsを入れる。

という二つの「案」を示して考えさせています。
私の授業では「どどいつ」と読んでいる「副詞(句・節)」の中には、「どうして?」に相当する語句も入りますので、

  • I’m so glad to meet you.

という英文での、 to meet you は「うれしい」のは「どうして?」の合いの手を入れて、「どどいつ」のスロットに入れていますから、ある程度英語の姿が見えてきた高2(あくまでも私が今教えているクラスの話ですよ)だと、上述の受け身も、プランbの方が「頷くことの多い」考え方となります。
当然、when やbecause などの接続詞に導かれる「副詞節」も、この延長線上で扱うことになります。

接続詞で文が長くなると、「意味順」では、「二階建て」や「三階建て」にするわけですが、住宅建築とは違って、下に階を重ねていくことになります。これは、私も慣れるのにちょっと苦労しました。副詞節の場合は、並び順で最後のスロットである「どどいつ」のスロットに接続詞だけが入り、その下の階に、SVが並ぶことになるので、建て増し増し…していくことになります。ここが悩み処です。

  • On July 20, 1969, as the whole world was watching, Neil Armstrong left his spaceship and walked on the moon.

文としては、頭にある「イントロ」や「スポットライト」の「どどいつ」を扱う際、一番右のスロットに入れるのに抵抗があったりします。「玉手箱」としてのスロットを使う場合に、副詞節を導く接続詞を入れるか入れないか、も悩みます。
この文の場合に

  • on July 20m 1969 と as SV は同じ「どどいつ」のスロットに入れるのか?
  • 等位接続詞のand を玉手箱に入れるとしたら、 as SV も 玉手箱でいいのではないか?

ということを考えた上で、 最小限の建て増しで済むように、as SVのas は玉手箱を使っています。

その場合に、as と and の機能の差を、どのスロットに入るかのみで識別することが困難になるので、私の授業では、接続詞は○で囲む、という補助的な記号付けをすることと、並列やペアはナンバリングをすることで対処しています。

文頭の接続詞が if やbecause の場合には、「どどいつ」での「どうして」や「どのように」「どんなふうに」「どれくらい」という日本語の「意味」がうまくあてはまらないので、「玉手箱」を用意して、スムーズに文をスタートしておくことの方が大事かな、というのが現状認識です。

こんな手順で進んでいくと、ある程度進んで、振り返り、見渡し、見晴らして「それまでのルール」を修正していくことを余儀無くされるのですが、多くの学習者にとって、(さらには、少なからぬ指導者にとっても)これはなかなか「キツイ」のだろうな、とは思っています。ただ、言葉の学び、ってそうやって、アップデートしていくものなのでね。「デジタルネイティブ世代」で、アプリが頻繁に更新されるのに慣れている生徒には理解可能な比喩かな、とも思います。


今年度の高3は、DCTを一度経験してから、「イカソーメン」と「副詞節シリーズ、マッチングでの対面リピート」をやっています。

イカソーメンは、「つなぎ語」が多用されていなくても、「この順番で並べないとダメだよね」ということが分かる「素材文」を用意することが大事です。
今回イカソーメン導入に使ったのは、こちら。

Title: The enemy, man
0. Man is an enemy to many animals.
1. Baby seals are caught and killed for their skins.
2. Crocodiles are also caught and their skins are used for handbags and shoes.
3. Elephants are destroyed for their ivory that is used for jewelry.
4. Whales are hunted for their oil.
5. Whole species are being endangered for fashion or human desire.
(Ruth Wajnryb (1990). Grammar Dictationより一部改編)

0を提示して、1から5までを整序させるか、0から6までを整序させるかは、グループの人数にあわせて微調整します。

Generalな情報提供 からspecificな具体例での「列挙」の部分の処理をした上で、「まとまり」を作る最後の文へと繋げることができるか、を見ています。
このパラグラフだと、動物の例は、大きさを基準として、小から大へ、という順序となっています。

次の例では、締めくくりへと向かう最後の3文の並べ方が大事です。
(Ruth Wajnryb (1990). Grammar Dictation より一部改編)

Title: Yuri Gagarin

0. It is nearly fifty-five years since man’s first flight into space.

1. This was performed by the Russian, Yuri Gagarin, a farmer’s son and father of two.

2. Gagarin became a hero not only to the Russians but also all over the world.

3. His life was cut short in a tragic plane crash in 1968.

4. However, his name is kept alive in the many streets and parks.

5. They were named to show great respect for him.

オリジナルでは、最後の2文は関係代名詞を使った簡潔な一文で示されていましたので、整序完成したあとで比較検討です。howeverでの対比での焦点を考えると、関係代名詞を使うことで、メインの動詞の時制が遡らずに締めくくることの出来るオリジナルの方が優れていると思います。

  • However, his name is kept alive in the many streets and parks that were named in his honor.

とまあ、こんな具合に「つながりとまとまり」を行きつ戻りつですね。

副詞節のマッチングに関しては、過去ログの、

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20151028

や、有嶋宏一先生のブログなどをご覧下さい。

http://arishima.hatenadiary.jp/entry/2015/01/18/072726

本日はこの辺で。

本日のBGM: Yesterday, when I was drunk (Gangway)