むしのめととりのめ

所謂「夏休み」中の課外講座は一コマ90分。
高3は、「四角化ドリル」上級生版の取り組みがお粗末だったのでダメ出しして、次回の冒頭で確認をする予定なのですが、どうなることやら。ここまでの3ヶ月で達成できなかったものが、1週間でできるものなの?まあ、普通に考えたらムリですけどね?私から見れば「教材」、彼らから見れば「学習材」を消化吸収して「自分のもの」にしないのに、何かが積み上がるとは思えません。

高1版とは違い、名詞句の限定表現のレベルも上がっていますから、惰性では乗り切れません。
例えば「名詞+前置詞+関係代名詞+(足跡)」のパターンでは、

1. 自分で自分を評価する度合い
the degree to which you value yourself
2. 彼女の歓迎での熱狂ぶり
the enthusiasm with which she was welcomed
3. アルコールが行動に及ぼす影響の度合い
the extent to which alcohol influences behavior
4. 60歳での定年退職制度     
the system under which workers retire at age 60
5. 食品の安全で守るべき原則   
the principle according to which food must be safe
6. 第二言語学習に伴う苦労
the difficulty with which you learn a second language

という表現を扱っていますが、この前提として、

  • to … degree [extent]
  • with … difficulty [enthusiasm]
  • under the system
  • according to the principle

といった、<前置詞+名詞=副詞句>の理解と定着が求められています。

また、「同格のthat」を取る or 取らない、で済まされがちな「…という名詞」も、that S+V で言えないなら、どう言えばいいのか、まで身につけていなければ何にもなりません。名詞の分類、頼れる仲間を集めての一致団結が必要です。

1. 幽霊は存在するという考え
the belief that ghosts exist
2. 彼女は裏表がない人だという私の印象
my impression that she is honest
3. パスワードが正しくないというエラーメッセージ
an error message saying that the password is incorrect
4. 客室乗務員として働いていた彼女の経験
her experience of working as a flight attendant

高1では「A of B でBのA」で済んでいたものが、その後、<a lot of +名詞>を経て、 < a sheet of paper>などの助数詞系の名詞をクリアーした先で、迷い所・悩み処・躓き所と出会うことになります。それこそが、<of の細道>ですから。これは、そっくりこちらにあげておきます。なぜ、この15個なのか、きちんとやればわかります。

1. 全くのお金の無駄 a complete waste of money
2. 環境の破壊 the destruction of the environment
3. 愛する人を失うこと the loss of a loved one
4. 原田知世への彼の深い愛 his deep love of Tomoyo Harada
5. あなたの思い出 a memory of you
6. 外国の慣習を私たちが知らないこと our ignorance of foreign customs
7. ヒトクローンの誕生 the birth of a human clone
8. 文明の栄枯盛衰 the rise and fall of civilizations
9. インターネットの急速な発達 the rapid growth of the Internet
10. 民族の移動 the movement of races
11. 男女の平等 the equality of men and women
12. 東西文化の融合 the mixture of Eastern and Western cultures
13. 何時間にも及ぶ議論 hours and hours of debate
14. 七日分の食料と水 seven days’ worth of food and water
15. 一年分の給料 a year’s worth of your salary

そして、名詞の無いところに名詞を作りだすことの出来る what の有難みを感じる最終セット。
<ワニの口>がモノや人に言及することもあるので注意が必要ですが、その場合でも「そのコトガラ性」のようなものを感じることが大切です。
この最終セットの最初に、比較検討する例として、なぜ以下の表現が並んでいるのか、今一度噛みしめるべきでしょう。

例1:his word(s) / his remark / his statement / his utterance
例2:his warning to us / things he has told us not to do
例3:what he did not say

「彼の意見」という時に、 “his opinion” という表現を用いた場合と、 “what he has to say” を用いた場合とで何が違うのか?何が変わるのか?ということを考える材料として、

3. あなたが考えてきたこと
what you have had in mind
4. 以前はそこにあったもの
what used to be there
5. 変わらずに残っているもの    
what remains unchanged

の3例をわざわざ配置している訳ですから。それを踏まえた上で、以下の実例を生き直すことです。

6. 生きる上での信条 what you live by
7. 正しいと思うこと what you think is right
8. あなたの個性 what makes you different from others
9. 地元の市場にあるもの what you will find at the local market
14. 昔の政治家の姿 who politicians used to be
15. こうであって欲しいと彼らの思う龍馬像 who they want Ryoma to be
16. もののしくみ how things work (= the way things work)
18. その他何でも whatever you name it
19. 一瞬とも思えた短い経過時間で in what seemed like an instant

意味順を活かすのは、結局、四角化ドリルと助動詞の番付表なんですよ。



高2はコマ数そのものが少ないのですが、『コーパス口頭英作文』の暗誦が基本です。
それと並行して、学級文庫の活用を求めています。
GRなど様々な物語系なら20冊、英語ネイティブの子供用事典・図解系なら5冊、英語ネイティブ用のQ&As系なら2冊という目安を与えています。
物語系は、私のシラバスで定番の「名作読み比べ」でもいいと言ってあります。
以下、カテゴリーごとの表紙の抜粋。

読み物1.jpeg 直
読み比べ1.jpeg 直
読み比べ2.jpeg 直
オリバー!.jpeg 直
how things work.jpeg 直
事典&図解.jpeg 直
事典2.jpeg 直
See Inside1.jpeg 直
See Inside2.jpeg 直
Q&A.jpeg 直
Q&A子供用1.jpeg 直
Q&A子供用2.jpeg 直


高1は、まだまだ中学での積み残しの解消に時間が掛かっています。
所謂「不定詞」と「分詞」の形容詞的用法を経て、漸く、関係詞へ。英語教師になってから約30年、関係詞の指導で「二文連結」というのをしたことがありません。一貫して、所謂「接触節」から指導しています。

基本は、既に理解している文から名詞句を括りだすドリルです。「長崎玄弥」方式ですね。自分自身が高校生の時に長崎氏の著作から教わったことを、その効果を教室で確認しながら練ってきた指導手順と言えるでしょうか。

この辺までくると、生徒も自分の足跡を少し振り返ったり、先を見通しておいた方がいいでしょう、ということで、虫の目から鳥の目へ、というハンドアウトを作ってみました。
でも、これ、高2、高3の生徒もちゃんと確認しておくべき項目ですよ。

名詞句の限定表現 得手不得手.pdf 直
この修正版がこちら。どこが変わったかは、見比べて下さい。
名詞句の限定表現 得手不得手 再修正版.pdf 直

過去ログでも何度か言及していますけれど、語研にしろ、英授研にしろ、ELEC同友会にしろ、中学校段階での「授業研究」を取り扱う場合に、「名詞の後置修飾」っていうのは「花形」のように頻繁に取り上げられます。金谷憲先生のグループの尽力で、最近でこそ、「導入」の時期と「定着」の時期のズレ、時間差というものが認識されるようになってきたかと思うのですが、「名詞の後置修飾」にどのようなパターンがあって、それらは「前置修飾」とはどう違うのか?そして、「後置修飾のそれぞれの持ち味・効き目・有難み」とは何か?いう点に関しては高校入学以前に、明示的に教わる機会は少ないように思っています。でも、それらがよく分かっていないことには、それぞれの表現の生息域を実感することが難しいと思うのです。

上述の分類と用例、そして得手不得手の表は網羅的ではありませんが、ガイドライン、道先案内くらいにはなるのではないかと思います。

1年生のこの時期では、a swimming poolとか、 sleeping tabletsなどの <動名詞の前置修飾>は敢えて外しています。現在分詞の前置修飾との比較は夏休み後半か、二学期に別個取り上げる予定でいますので安心して下さい。いや、覚悟しておいて下さいかな?

本日はこの辺で。

本日のBGM: 境/界/線 (堂島孝平)