「発音指導・音声指導を見直そう」

「リストマニア」移植、第5弾。

発音指導・音声指導を見直そう
※2020年4月8日に加筆修正し、数点を入れ替えました。

近年「トンデモ」な音声指導を耳にしたり、目にしたりすることが増えてきたような気がするのは、私自身の老化や劣化だけではないように思います。大学で竹林滋・吉沢典男のお二方に「音声」のイロハを教わって来た者として、やはり粗悪な商品の流通には警鐘を鳴らし、真っ当な教材の存在を多くの人に知らせたいと思います。
竹林先生の『英語のフォニックス』(ジャパンタイムズ)でさえ絶版ですから、8. や 12. の持つ意味は大きいと思います。も、2019年にようやく復刊されました(研究社より)ので、多くの人に読んでほしいですね。

1. 英語音声学入門 竹林 滋

英語音声学入門

英語音声学入門

"一も二もなく、まずは、これから。「知ること」の基本中の基本でしょう。音声CD付きです。これが難しいという場合は、『初級…』の方から、ですかね?☆☆☆"

2. ファンダメンタル音声学 今井 邦彦

"ユーモア溢れる筆致だけでなく、「弱音」「強勢」などを徹底できます。CD-ROMの音声はMP3なので、トラック番号だけでなく、名前を付けるなどして管理ができるようにした方が使い勝手がいいような気がします。☆☆"

3. 英語徹底口練―発音とリスニングの力を同時に高める本 今井 邦彦

"「徹底口練」という看板に偽りなし!弱形や子音連続など、日本人学習者の弱点を想定した豊富な練習問題があります。音声CD。☆☆☆"

4. 音声学・音韻論 (日英語対照による英語学演習シリーズ) 窪薗 晴夫

"「英語音声学」を学ぶように、母語が日本語の場合でも、改めて「日本語音声学」を学ぶことが大切だと思います。日英語の対比・対照にはこちらを。音源はついていませんので、悪しからず。☆☆"

5. 教師のための英語発音―呼吸法を重視した訓練メソッド 長沢 邦紘

"秀逸なイラストに適切な練習問題、調音のコツなどなど…。名著なんだけれど、中古でも入手は難しいでしょうし、音源 (カセット) の現物を見るのももう無理ですかね。☆☆"

6. 英語の綴りと発音 成田 圭市

"綴り字から音へ、という「フォニクス」的アプローチの逆、「ある音」を書き表す「綴り字」を類型化した労作。音源は付いていません。☆☆☆"

7. 英語の文字・綴り・発音のしくみ  大名力

英語の文字・綴り・発音のしくみ

英語の文字・綴り・発音のしくみ

  • 作者:大名 力
  • 発売日: 2014/10/16
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
“英語学、音声学、英語史そして英語教育、その4つの知見が揃った希有な一冊。読み継いでいくべき書。こういう「長生きする英語本」だけあればいいと思わせてくれます。音源は付いていません。
結構難しい内容ですので、消化吸収には時間がかかると思います。密林の頁についている写真で10頁分位読めるので、買う前に必ず読んでおきましょう。
母音と母音字、子音と子音字、音としての開音節・閉音節、綴り字の上での開音節/閉音節の区別が理解できると視界が開けると思います。
☆☆☆☆”

8. マザーグースで身につける英語の発音とリズム 原岡笙子

“かつての名プログラム「上級・基礎英語」からのスピンオフ教材 (CDブック)。英語の個々の母音、子音を取り上げ、「マザーグース」の一節を利用して練習するもの。ハートマークでストレスリズムを示してくれています。同じ、「リズムを掴む」トレーニングでも、14. と比べると著者(指導者)の個性は出るものです。☆☆"

9. やさしい英語の発音―CDとイラストで楽しく学ぶ (CDブック) 原岡 笙子

"8. の「リズム」の前段階、個々の「音」の確認のために。ご自身の発音に自信のある方は、このくらいコンパクトなテキストでも間に合うでしょう。音声CD。☆"

10 英語の発音・ルールブック―つづりで身につく発音のコツ (NHK CD BOOK―新基礎英語) 手島 良

"いわゆる「フォニクス」のアプローチで、綴り字と発音を身につけます。入門期指導で「文字」をきちんと扱う数少ない良書です。音声CD。☆☆"

11. スラすら・読み書き・英単語 (CDブック) 手島良

"1990年代の名プログラムであった「基礎英語」からのスピンオフ教材。入門期指導で、綴り字と発音を丁寧に扱うのは、10. と同じ。絶版が惜しまれます。☆☆☆"


12. 必携英語発音指導マニュアル 東後勝明監修 御園和夫編集

必携 英語発音指導マニュアル

必携 英語発音指導マニュアル

“監修の東後先生が言われる次の言葉の通り。
「英語の文構造に一定の法則、つまり『文法』があるように、英語の音声にも一定の法則があり、文法の規則に従わない文が意味をなさないように、一定の音声の法則に従わない発話もまた意味をなさないことに気付く。このことからどのような発音が許容範囲内にあるのか十分に推測可能になってくる。」(はじめに)
英語ネイティブ任せの音声指導ではなく、現場の教師がmanageできる、sustainableな音声指導の体系と指導法を示したものと言えるでしょう。CD付き。古書でも入手困難ですね。☆☆”

13. 日本人のための英語音声学レッスン  牧野 武彦

日本人のための英語音声学レッスン

日本人のための英語音声学レッスン

音声学的に適切な扱いと、それを英語教育(学習)現場に反映させることとの両立は意外に難しいものですが、「日本語を母語とする」または「日本語環境で育ってきた」人が、英語の音声を知り、身に着けるための格好の教則本。指導者がまず、このレベルの知識をしっかりと学び、実際に「英語の音声」の精度を高め、学習者の得手不得手に配慮した指導ができるようになることが望ましい。
この 13. の著者の牧野先生が手掛けた、より学習者寄りの音声体系の記述として、三省堂から出ている学習用の英和辞典『グランドセンチュリー』の第4版がある。現代英語の音声を記述する体系として、使用する発音記号も含めて、完成されたと思える内容となっている。中学生を教える人も、高校上級生を教える人も、併せて使用してみてほしい。☆☆☆

14. 中学3年間の文法・単語・発音が1冊で身につく! 英語フレーズ101   田中 敦英

現職の中高教諭である著者が「NHKラジオ基礎英語1」の講師を務めた中から紡ぎだされた、「フレーズ暗唱」と「ビートで音読」に重点を置く、極めて良質の教材。英語の音声として、「調音の正確さ」も身に着けることが望ましいが、中学や高校の授業で十分な手当てができていないことの多い、「ビート」を体得するためのコツが満載です。指導者に恵まれない、と嘆くなら、この教材をとことん使い尽くしてみては?☆☆☆