Beware of English teachers

最近はすっかり週一ペースの更新。
無理せずに。

現任校では、週一で漢字テストがあるのですが、今週の漢字テストでの驚きから。
帽子の「帽」の字で、「日」の下にさらに日を書く者、日よりも「目」の方が大きく、透視図法のようなバランスの者などなど。ことばが文字になり、その語=字に意味がある、というのが漢字文化なのに…。「巾」は「雑巾」「頭巾」の例を出して「布地」ということは確認。
生徒の日誌で、「CIA暗躍」という時事ネタがあったので、「『暗』なのに、なぜ、それがニュースに?」と突っ込んだが、私の問いはわからなかった模様。「暗記・暗唱」の「暗」は?では、「ケネディ暗殺」という結びつきとの違いは?と問うて、「母語の足場」を確かなものにするHR活動でした。

今日は、土曜日課外の後、選手を連れて湖へ。2Xの修理。
圧着硬化したパテがはみ出したところをサンディングして、周りと同じ高さに均してレールを固定。ようやくストレッチャーが使えるように。
行き帰りの車の中で、選手に「暗殺と暗躍」から、自動詞性・他動詞性のクイズ。「他動詞っぽいな」ということが分かっても、そのあとの分類は大変。「目的語」という言葉の「求心力の弱さ」というか、「統率力の弱さ」「人徳のなさ」というか、まずは、「さっきのとは何か違うよね」「あれと、同じ感じ」というところから。

稲刈り
ぶどう狩り
茶摘み
湯沸かし
田植え
潮干狩り
穴掘り

その時はもっとたくさん出てきたのですが、今思い出せるのはその辺り。
「名詞化」って、ことばの醍醐味の一つだと感じてから早30年。分からないことだらけです。

  • 安井稔 『英語とはどんな言語か より深く英語を知るために』(開拓社、2014年)

の、第17章は、

  • 「英語における名詞化と日本語における名詞化について」(pp. 143-56)

に充てられています。
ここを読んでから、林語堂に戻ると視野が拡がる感じ。
もっと、細かく分析するなら、

  • 影山太郎 『日英対照 名詞の意味と構文』(大修館書店、2011年)

あたりでしょうか。
今日の課外講座は、高2は「ホワイトボード」での「副詞節」シリーズ。

in case
once
as soon as

が貧弱だったのでディクテーションで例文を補足しておきました。
in case は「訳語」を単純化してはダメですね。必ずしも「防止」はできないので。「備えあれば、何とやら」とか、「御用心、ゴヨウジン、ゴヨウジンジンジジンジン🎶」くらいから。「念のため」、文尾で付け足しのように使われる例も確認。
as soon asとonceは、『コウビルド英英和』に格好の用例があるのですが、それぞれ、soonの見出し語のところにもonceのところにもありません。『アプリ辞書』はこういう時に便利ですね。

She’s nervous about something, in case you didn’t notice.
As soon as the cake is done, remove it from the oven.
Try gargling with salt water as soon as a cough begins.
Once you have chosen a kennel, make a booking for your pet.
以上、全て『コウビルド英英和』より抜粋。

最後の例では、kennelの語義も補足。

高1は『意味順』。テキストが揃ったので、ガイダンス。英語だけ見ると、見るからに簡単な例文ばかりですが、問題は「自分の中から英語を紡ぎ出せるか」。

意味順はOS、つまり頭の中のシステムを作るもの。

ということを強調しましたが、こればっかりは、「やってみて初めて分かる」と思います。
昨年は新入生に入学前に配布していた「発音と綴り字」「音読の基礎基本」などの資料は今年は授業の中でその都度取り上げています。
最近になって、「弱形」を殊更強調する指導を目にしましたが、「弱形」についての詳しい解説は水光先生の『文法と発音』(大修館書店、1985年)に、「強勢」についての豊富な練習例は、今井先生の『ファンダメンタル音声学』(ひつじ書房、2007年)にありますね。 (http://t.co/cqvJ965HWB

音声指導の「弱形」と「強勢」に関して、「呟き」でもこのブログでも書いてきましたが、最近耳にした、「速い=×」「短い=○」って、何か上手いことを言ったつもりなのだろうか、と訝しく思います。「同じ距離を移動する時間がより短い」ことを「より速い」っていうのでしょう?「そもそも移動する距離そのものが短い」のだとすれば、「どこからどこまでの間のどこを通っていないのか?」などと、調音点の変化とか脱落とか、音声学の原理原則を踏まえ田植えで、いや踏まえた上で、「わかりやすく」説明すべきところでしょう。
英語教育関連領域だからなのかよくわかりませんが、何というのか、「過剰」な人に共通している「ある資質」があるように思います。

「弱形」も含めて音声って私が生まれる前からきちんと指導されているのに、思い込みの強い人ってどこにでもいるのですね。(http://t.co/oKKzf0eH7m

教室での音声指導の観点、「強さ」「長さ」「高さ」に関する持論は、こちらのエントリーで書いたものが、比較的わかりやすいでしょうか。

立待月 - 英語教育の明日はどっちだ! http://t.co/BegN2hmvpR

これは別のところで目にした記事。
<不定詞の本質>と題したコラム(http://t.co/sE7IB78jYX)。

このリンク先の記事中の (d) My dream is to ... の英文で、動名詞ではなく不定詞を使い to become となる、とあるのですが、私の語感ではこの文脈では to be の方がmore common な気がしました。COCAだと、3:14 で、be の方が、やや優勢です。

私の「不定詞」理解はこのレベルで停止中です。写真を見る限りでは新装版ですが、それも絶版ですかね?

「語法オタク」になることは勧めないけれど、先程のサイトで指摘されるような「言語事実」の多くは、既に、中高の英語教師は理解し把握しているでしょう。

私は高2〜高3でこれを片手に受験勉強していました。
今、「語法解説」って打とうとして、「ご崩壊説」と変換されていました。脳裏に浮かんだのは、とある記事。大津由紀雄先生は「深追いしすぎないこと」と「優しい嘘」の効用を説かれていましたが、それとて「出鱈目」とは違うわけだから。まずは「英語という言葉が分かっていませんね」と言われないように教材研究から。

毎年高3の1学期には必ず触れる「接頭辞・接尾辞盲信の戒め」講義。endanger とencourage では言葉の成り立ちそのものが違うということを解説。詳しくは過去ログを。

P.P.S. http://t.co/IIH2Te5rIj

レベルとラベル http://t.co/R1PWyObMnR

接頭辞の en- の「意味」を授業で教えている高校の英語の先生はどのくらいいるのでしょうか?

Etymologyに思う http://t.co/7mHTLYbaBZ

7年以上前の記事ですが、未だに訪れる人は多いようです。この記事の内容に関して、「語源」が専門の方のご意見をお待ちしております。

入試関連で、もう一つ。
九州大学から「前期入試 標準解答例配布について」が告知されていました。

平日のみで、5時までだと、午後の授業カットしないといけないんだよなぁ…。

国立大で個別試験に英語のライティングを課す大学が「解答例」を発表するのは望ましいことです。金沢大学前期入試の解答例はこちら。

我が母校でもある、東京外国語大学が公開している前期試験・解答例がこちら。

問題で、とりわけリスニングのスクリプトがないのが残念ですが、要約から推測は可能でしょうかね。
とまれ、ライティングの解答例は必見です。

この最後の200語論述。「エッセイ」の基本からいえば難点だらけですね。この英文で40点満点のうち何点なのか、気になります。英文リスニングの要約で「ライティング力」の基本を見て、200語の意見論述は「スピーキング力」の代替だ、とでもいうのならまだわかるのですが、「エッセイ」として見た場合には難点ありありでしょう。それでもこうして公開してくれるだけマシなのですが…。
昨年度から外語大入試はこの形式。リスニングでレクチャーを英語で要約、その後、英語で意見論述。文科省が謳う「技能統合」のお手本のようだけれど問題は山積。リスニングが不十分なら、要約も不十分、さらにライティングは不十分という結果になり得るのですから。テストの抱える根本的問題でもあります。
日本の高等教育における外国語教育の中心とも言える東京外国語大学で行われていることが、他の大学の「範」とならんことを切に願います。
入試に限らず、(小)中高の外国語教育の改善においても同じ願いです。

本日のBGM:点と線(山田稔明)