♪流行遅れの恋の歌、今も君は口ずさむ♪

『相棒』の今シリーズ完了。
最終回スペシャルはCM間が異常に短かったりと、通常回とは全く違う展開。脚本は戸田山・輿水コンビ。このシナリオはいつ頃書いていたものなのだろうか。
ミッチーの配属替えがなかったので、次のシリーズか、さらに劇場版か続きはあるということだろう。もともとTVドラマなのだから、TVで完結して欲しいものだ。
学年末テスト終了。
成績点票提出完了。
悲喜交々。
高2の進学クラスは、英語IIのパラフレーズの出来がよくなかった。品詞の転換、句と節の理解、因果関係の逆転などまだまだ定着していないということだろう。
さて、自分の指導の至らなさを振り返りつつ、随分と前のエントリー (「またまた和訳のけむり」 http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20070223) になるが、その時に引いた江川泰一郎先生の言葉を反芻している。

  • 江川泰一郎「基本語法(中学課程篇)」、『現代英語教育講座6 英語の文法』(研究社、1965年)

この「形容詞」の項で、江川氏は、次のような指摘をしている。「今風の英語教育者たちはどう答えるだろうか?」と私がこのブログで問いかけてからもう4年。文法指導を取り巻く環境は悪化しているような気がするので、再び取り上げる次第である。

要するに、形容詞の場合に限らず、われわれ教師は生徒が訳語にたよる危険にたえず注意を払ってやらなければならない。中学校の英語教育では、英文和訳ということがあまり問題にならないが、現実的に考えれば、生徒は(教師の指導がどうあろうとも)多かれ少なかれ頭の中でつねに英文和訳をやっているのではなかろうか。われわれの生徒が日本語を生活語としている以上、彼らが日本語の訳語にたよるという現実を無視することはできない。無視するとすれば、各リーダーの巻末の語い表の日本語は全部削除すべきであるし、虎の巻はもちろん、英和辞典の使用も禁ずるべきで、ついでに学校においても家庭においても、生徒が日本語を使うことを一切禁止するのがよい。/とにかく、英語を英語的に理解する上において、中学校の英文和訳をどう考えたらよいかを現実に即してもう少し研究すべきであると思う。「中学校の英文和訳」などと口にすると、それだけで時代錯誤と思われるような風潮には、反撥を感ずる。(p. 99)

ここで江川氏が例として挙げている形容詞にどんなものがあるか想像がつくだろうか?入門期、初学者にとって、目標言語である英語だけで理解定着が難しいと思われる語の類。高校段階以上でしか英語を教えたことのない教師にとっては直ぐに思いつかないかも知れない。現に、私がそうであった。

  • kind / young / good / easy / happy

これら基本語の何が問題なのか?Murphyの “Grammar in use” がいかに優れた文法書だとしても、Swanの “Practical English Usage” がいかに有益な語法書だとしても、ここで江川氏が指摘しているような問題意識や洞察を得ることは出来ない。詳しくは是非、原典にあたられたし。ここでは例文を挙げるに留めておく。

  • My mother is very kind to me.
  • You are too young to go to school.
  • My mother is a good cook.
  • Well, you have a good knowledge of English.
  • Sleep on, Victor, and take a good rest.
  • They wanted to swim. But it is still cold, so it is dangerous to swim now. It is easy to catch cold, so I told them to go on a hike.
  • She sang another song. The baby looked very happy, but did not go to sleep.
  • Well, I see how you feel. You will not be happy if you don’t try.

江川氏が「基礎基本」に関してさらに挙げている例にたとえば「前置詞」がある。近年、「イメージ」とか「フィーリング」などの切り口で、基本動詞の用法と前置詞に関しては、従来型の文法指導はその意義を失っているかのような趨勢だが、ここでの江川氏の指摘は、一見「英語は英語で」という指導・学習がしやすいと思われる項目である「前置詞」も「そんなに簡単に通り過ぎて本当に大丈夫ですか?」と呼びかけているかのように感じられる。

  • I have a racket in my hand.
  • Just then two big robins came to the nest. They had something in their mouths.
  • She looked wonderful in her new dress.
  • In the prison he saw five prisoners in chains.
  • People laughed when they saw the boys walking in the sun.

などのinをどのように「実感」させ、「ことば」として定着させるか。
この江川氏の指摘から45年以上が経過したのだが、実質的な研究が中高現場レベルでどの程度進展したであろうか。
安井稔『仕事場の英語学』(開拓社)を引いた過去ログは、http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20051203。 
安井先生も、江川氏と同じような懸念を表している。

従来、英語教育における日本語の使用は、概してマイナス的とらえられ方をしてきた。が、最新の英語の普遍性を軸とする言語理論を前にするとき、外国語教育の中における日本語は、プラスのオリエンテーションを与えられ、その復権が承認されてよい時期にきていると思われる。比較的込み入った内容の英文が与えられた場合、それに対する我々の理解が、同じものに対する英米人の理解と大きく異ならないですみうるのは、日本語という、英語とは別の世界で、同じことを考えることができるからなのである。これは、日本語という「踏み台」の上に立って英語を理解するということである。踏み台は、高ければ高いほどよい。」(pp.280-281)

安井氏のことばで特筆すべきは、

  • 絵を描けばよいといわれるかもしれない、が、それは、ヒントを視覚化したものであり、日本語の使用を視覚化したものであるといってもよい。

絵・イラストを用いて導入すれば日本語使用を排除したことになるというのがいかにナイーブな思いこみであるかを教えてくれる。(詳しくは上掲書 (pp.279-280) にあたられたし。)安井氏の示す次の5つの用例を反芻したい。

  • a. red, white, sweet, sour
  • b. apple, dog, tiger
  • c. Nobody was in the room.
  • d. John is taller than any other boy in the class.
  • e. Death is the end of life.

とりわけ e. の解説は秀逸である。是非とも原典を。
「その一文がわからない」「その一語がわからない」という初学者にとって何が英語を難しくしているのか?という地に足の着いた、授業と直接関連した基礎研究に多くの人の目が向き、労力が注がれることに期待する。

正業の専門は一応「ライティング」ということになっているので、今年度の国公立大入試前期日程の出題から気になったものをいくつかあげておく。

和文英訳という出題形式を取り上げても、
首都大、熊本大では、英文の中に、日本語が書かれていて、その部分を英語に直す出題。ここでは、前後の英文が、解答の英語の「質」を絞り込むことを期待されていると思われる。巷でよく聞かれる「中学校レベルの英語」で解答してもまかないきれるのか、それとも、そのような簡単な英語では前後の英文とのバランスがとれないように設問が作られているのか、じっくり前後の英文を検討してみるのも面白いだろう。首都大の設問では、全体の分量が少なく、与えられた英文が解答の英語をコントロールする力が弱いように思われた。熊本大の出題はパラグラフライティングでの論証文を声高に求めるものではないものの、「趣味の効用」という話題で、序論での話題の導入部分、具体的論証、結論での主題の再強調の内容をそれぞれ英語に直させるものであり、今後とも注目である。同様にハイブリッドな出題が、金沢大。「辞書の重要性」とでもいうべき話題で英文の大枠は決まっているが、序論の段落は和文英訳でトピックステイトメントを英語に直させるもので、最後の段落は、「電子辞書か紙辞書か」という切り口と英語の書き出しを選び、その続きとなる論証を英語で書く出題となっている。今後の動向を見続けたい。

神戸大

問1 What does this graph tell us? Write a paragraph of around 60 words. Include one brief introductory sentence that outlines the general trend, and two snetences that discuss some specific details from the graph.
問2 At what age do you think people should get their first mobile phone? Write another paragraph of around 60 words giving your opinion. Include reasons to support your opinion.

グラフをもとにした出題。問1はexpositoryな英文を、問2はargumentativeな英文を求めている、といえば聞こえはいいのだが、いかんせん60語での論述なので、合格レベルの「内容」を持たせるにはほとんど同じような切り口の解答しか出てこないと思われる。グラフをもとにした出題は筑波大でも課されていたが、こちらは指定語句を含めて10語程度の英文2つで、グラフについて説明するもの。
広島大では、日本語による「表」が与えられ、その解釈を「説明文」で表現するもの。英文に盛り込むべき観点が4つ示されていることが特徴的。こちらを「説明文」にしたことで、もう一題が「意見文」となったと推測される。

広島大

「沈黙は金なり」ということわざに見られるように、自分の意見や本心を言わずに済ませてしまうことが日本ではよく見られます。このような態度をどう思いますか。賛成、反対、どちらとも言えないなど、あなたの意見を、その理由を含め100語程度の英語で書きなさい。コンマやピリオドは語数に含めません。解答欄の最初の ( ) に語数を記入しなさい。

『パラグラフライティング指導入門』では、「ことわざ」「慣用句」の定義・使用場面の説明を求める指導例を詳しくあげていたが、そのような「話題繋がり」でのテクストタイプの変換、という指導が今まで以上に求められるかも知れない。従来型の指導で充分に対応できる出題は、

大阪大

日本語には「もったいない」という言葉があります。この言葉がどのような使われ方をするのか外国人に理解してもらいたいときに、あなたはどのように説明しますか。70語程度の英文で書きなさい。

これは、今では「検定教科書」にも頻出の話題であり、解答の質は高かったものと期待する。大阪外語大が大阪大の外国語学部となってしまって、独自色が薄れているのが気がかりである。

今年度は見た目の変化が大きかった大学の1つが、
九州大

次の問いに150語程度の英語で答えなさい。
What is one Japanese custom that you would like people in other countries to adopt? Describe the custom and then explain how people in other countries would benefit from the adoption of this custom. If you use Romanized Japanese words, you must explain them in English.

分量が150語程度に増量されたことで、「内容」「構成」でどの程度「豊か」になったかが気になるところ。公開される標準解答例を待ちたいと思います。

語彙・語法・文法の正確な知識、大量即解の読解力、そしてリスニングの集中力が問われた今年の出題を見ると、ライティングはもうそれほど難しくなくなったと思われる、
東京大

次の英文を読み、その内容について思うところを50〜60語の英語で記せ。ただし、understandとpainはそれぞれ一回しか用いてはならない。
It is not possible to understand other people’s pain.

これを見た時は、即ソンタグを思い浮かべました。(今年の東大の出題に関する秀逸な分析は福田哲哉先生のブログを→http://craigfukuda.blog.so-net.ne.jp/2011-02-27)

一橋大が先鞭をつけた、120-150語という上限下限共に解答の語数を設定する出題が拡がるのかな、と数年来注目しているのだが、まだまだ主流とまでは行かない模様。

埼玉大

Answer in a short essay between 120 and 150 words in English. The full score for this essay is 20 points.
Some people think that when they succeed, it is because of hard work and luck has nothing to do with the success. Do you agree or disagree with this opinion? Use specific reasons and examples to explain your position.

トリガーを果たすべき英語の指示文が少々弱いように感じたのは気のせいか。

いつもながらの三択での出題は、
一橋大

Write 120 to 150 words of English about one of the topics below. Indicate the number of the topic you have chosen. Also, indicate the number of words you have written at the end of the composition.
1 & 2 省略
3 Describe one historical person that you admire, explaining the reason for your admiration.

この3番は定番中の定番で、準備してきた受験生が多かったことでしょう。『パラグラフライティング指導入門』でも対応済み。

静岡大

現在ではインターネットで様々な情報を簡単に手に入れることができます。これは良いことでしょうか、悪いことでしょうか、あるいはその両方でしょうか。自分の意見を120語程度の英語で述べなさい。

千葉大・教育・中学校・英語科教育

Some people like to use the Internet to look for information for their research. Other people prefer reading books. Which do you prefer? Explain your answer with specific reasons and examples in 200 to 250 words. Count the total number of words and write it in the square on the answer sheet. Do not include periods and commas in the total.

似たような「話題」の2つの出題。千葉大は「英語教育専攻」ということで英語はこのライティングのみの出題。この千葉大と同等のレベルと分量の出題を課す大学はごく少数であり、予備校系サイトで示される模範解答の英語の論理展開の稚拙さはいつものことながら気になる。高校現場からの切実な情報発信が望まれるところである。

「英語教育」ネタは、このところ「小学校での英語」というトピックが乱用されていたが、直球ど真ん中の出題が、
旭川医大

Suppose your name is Michiru Asahikawa. Write a letter in English to the Minister of Education, Culture, Sports, Science and Technology containing your opinion(s) about how to improve English education in Japan.

これは、受験生からの解答例を知りたいところ。
ひとまずはこんなところで。

帰宅途中に、中古CD店に寄って物色。
JKの2008年のライブDVDとライダーズ関連商品を購入。
しばし充電。
昼が外食でラーメンだったので、遅めの夕飯は、和でリクエスト。
職場に届いた辞書を持ち帰り、読み比べ。
PODの5版がかなりいいコンディションで手に入ったのだが、そろそろこのサイズの辞書は見づらくなってきた。Merriam-Webster’s Essential Learner’s English Dictionaryはさらにしんどい。老眼鏡が必要か。電子辞書の利点として、表示する文字のサイズが変えられるという部分を期待していたのだが、電子辞書としての発展より先に、スマートフォンなどのデバイスとアプリの進化の方向に世間は進んでいる模様。ますます、時代から取り残されていきそうだ。

本日のBGM: 髭と口紅とバルコニー (鈴木慶一とムーンライダーズ/2010年リマスター盤)