「びしょ濡れになっても忘れないあの歌」

フォーラムの総括もまだまとまらないまま、実作は続く。
今日は高3が2コマ、高2が1コマ。
高3の『いいずな本』は、英文の筆致と解説・全文訳の温度差が気になり、足を止める。関東の私立大学の出題とのことだが、どうしてこう箸にも棒にもかからないというわけではないが、議論に値するまでに成熟していない論考や主張を取り上げるのだろうか。でも、こういう文章が「読めない」として入学試験で振り分けられてしまう高校生がいるという事実・現実を前にすると、英語ができるようにしてやらないと…、という思いに強く駆られるのも確か。
授業の中で強調したのは、

  • 文章全体、各段落での基本時制をしっかりとつかみ、時制の変化に敏感になること。助動詞に表される話者・筆者の心的態度 (顔の表情、声の調子) を掴むこと。とりわけ、may = may not, might = might not であることを踏まえて、安易に相手の主張に乗っからないこと。
  • 議論を進めるに当たって、筆者が「局地戦」に持ち込む目印となる語句 (条件節を導く、ifやas long as, provided [providing] , given / unless) などが上記、心的態度を表す語句と共に使われると、途端に筆者の「本気」を見失いがちであることに注意。

今回の英文では、このifでの局地戦への引き込み方が乱暴で、伏線の張り方が稚拙なので、最終段落での「決め」が弱い、おもしろみのない文章となっていたように感じた。文章そのものの醍醐味に欠けると、人の性、脱線で面白さを出そうとするもの。途中の先進国の政策を取り上げる中で、日本の施策に言及する下りは正直笑えないでしょう。

授業では時々説いているが、説得力のまるで感じられない主張には早々と見切りをつけ、反論を用意して読み進めることも大事。真面目な「受験生」はいいカモになっています。総力戦で勝ち目がないので、無理やり局地戦に持ち込んで、議論を仕掛けるような文章が入試長文ではまだまだ見られるので、慌てて局地戦に付き合って墓穴を掘ることのないように。とはいえ、多くの「受験生」はよく分からないジャングルに、人によって精度や倍率の異なるコンパスと双眼鏡を手にして足を踏み入れているようなものであり、鳥になって俯瞰したり、ヘリコプターに乗って地図の全体を手に、全体像を把握しているわけではない。常に「主題は何か?」「テーマは何だったか?」を頭に置いて、先へと進んでは迷子になり、敵の攻撃に怯える中で出口を探す、というような経験を積むことによって、「話形」「話型」を自分のものにするしかないのです。

高2は、副詞節の課題学習の続き。untilの用いられる典型的な場面、文脈を想起する練習。高2はまだまだまだ。同じネタを、2コマ目の高3の生徒に振ったら、レシピの例文が出てきて安堵。流石3年生だ。私の感触も、「偉人伝」か「レシピ」でした。高2は、『茅ヶ崎・0』で偉人伝をやってるんですけどね…。むーん。

昼休みにYouTubeで細野晴臣。ハッピーエンドの前と後の広がりと豊かさに思いを馳せる。

放課後は雨を縫って本業で湖へ。
一瞬、明るい空の青さが見えたのだが、途中で横殴りの雨。選手は後ろ向きに前に進んでいるのでまだいいですが、カタマランの私はたまらん。視界がなくなるので減速して少し遠目で観察。スパートで2分間上げ続けるメインメニューへ。1分レースペース。2枚上げて30秒、2枚上げて20秒、2枚上げて10秒でそこから死ぬ気でマックス!!って合計、2分超えてますね。このメインメニューで2周、8km。ダウンをきっちりと4km漕いで日没と共に終了。日が落ちるのが早くなったのでこの程度の距離しか漕げません。身体的負荷だけを考えればエルゴで代替できそうですが、やはり艇を動かすことも大事なので頭の痛いところ。帰りの車の中は風邪を引かないように暖房をつけてました。

帰宅して妻と遅い夕食。
暫しの振り返り。
フォーラムの講師で来て頂いた加藤京子先生と懇親会で随分と話し込んだ。私のブログを読んで気になったところを印刷して、印を付けたりして、「この人はいったいどんな風に英語を身につけたのかが気になっていた」と言われて、高校時代の恩師との関わりから大学時代の英文修業の話しをしたのだが、自分でもどこかでしっかりとまとめておこうと思った。というのも、フォーラムで柳瀬和明先生の示した、初級から上級までの学習方法の傾向で自分と似たようなプロファイルのものがほとんどなかったから。特に、高校時代の自分の学習で、今振り返って、何が良くて、というか何が幸いして、何が機能しなかったかを精査しておくことにも意味があろうかと。
加藤先生のことばで印象に残っていることは本当にたくさんあるのだが、オフレコの内容もいっぱいあるので、今日はひとつだけ。

  • 中学校の3年間で、「英語の秘密」に気が付かせてやりたい。

というのは響いた。「英語の秘密」。私は今の同僚の数学の先生にインスパイアーされて、「肝」と呼んでいる。語彙も文法も発音も大事なんだけど、ことばとして「英語ってそういうものだったんだ」という気づき、「英語ってこうだよね」という実感を、学習者に持たせてやりたいと思う。教師の英語運用力は大前提、指導技術は必要、話術や話芸を磨くのも結構、でもそれだけじゃない。そう、それに気が付いた人は、もう「同志」なのだと思います。私のanswer songは私の実作で。

本日のBGM: 小さな “Yes” (高野寛)