How pie in the sky is it?

いよいよ授業開き。
このブログにも「授業開き」という検索ワードで訪れる人が春になると増える。
私の場合は特別なことをしているわけではありません。以前は、前年度末に書いてもらった生徒による「総括表」や「後輩への親身のアドバイス」をもとに、後輩に当たる生徒に新たな1年を見通してもらっていたが、今はいわゆる生徒個人と英語学習履歴に関わる「アンケート & 自己申告」を使って、個々の音の聞き取りと発音、綴り字、視写、語順、音読、辞書引き、学習管理といった生徒個々のプロファイルを作るとっかかりにしている程度です。というのも、普通科の生徒の中には、進学クラスにいてもおかしくない学力の生徒もいれば、曜日や月の名前はおろか、friend の綴り字で躓く者もいます。教材そのものは一つですので、現時点での英語力の実態を把握しなければ、手当もトレーニングも上手くいきません。既知の足場も生徒によってバラバラです。もちろん、どのクラスでもバラツキはありますが、その振幅の桁が違いますから、レメディアルといっても、文字通り一人ひとりを見て教材をカスタマイズしていく必要があります。誤解を恐れず言えば、難易度を上げ続けていける進学クラスの授業の方が遙かにやりやすいです。ただし、どのレベルの学校でも、どんな習熟度の生徒でも、「英語はこうすれば必ずできるようになる」などという唯一の方法、必殺技などはありません。同じやり方をしていても、ある生徒はものすごくできるようになり、ある生徒はあまり成果が現れない。ただ、どんな生徒も、やらなかったとしたら全く伸びないどころか、むしろ英語力は低下し、英語の知識も失われていくだけ。身も蓋もない言い方ですが、学習ってそんなもの、というところからのスタートです。だからこそ、「やらずんばなるまい」と思える授業をどのようにして作り出すか。ものすごく静かな、ある意味醒めた、それでいて飽くなきチャレンジといっても良いでしょう。
さて、
第4文型の調べものをしている副産物として、「〜にとって」の toとforの使い分けの参考となる資料を見つけた (以前も同じところで「おおっ」と思っていたはずなのだが…) ので、防備録。

『教師のためのロイヤル英文法』では、SVO1O2の文をSVO2 +前置詞+O1で書き換える時の目安 (pp. 13 - 14 ) として、次のような分類で動詞のリストを示している。(ここでは動詞は私が抜粋してあるので悪しからず。詳細はオリジナルに当たられたし。)

(1) (前置詞に) toをとるもの toは「着点」を示す。(O2がO1に届く)
1. O2がSに伴ってO1まで移動する。 bring, take, carry
2.O2がSに伴わないで移動する。((a)の場合は物理的移動でなくともよい)
(a) give, allow; advance, cause; deny, refuse; pay, sell; serve, feed
(b) send, mail; throw, toss
3. コミュニケーションの動詞 ((a) は器機使用)
(a) telephone, telegraph
(b) tell, read, write, teach; quote, show
4. 実質的内容が相手に「到達」するのが未来のことになるもの
promise, permit, offer
(2) for をとるもの for は「利益」を示す。(O2のために…してやる)
1. 創作行為 make, cook, boil, sew, knit, paint, draw
2. 好意・選択 buy, call, find, get, choose, save, spare, order
3. 演技 sing, recite, play (演奏する), dance


最後の(2) には「4. その他」、というのがあるにはるのだけれど、文字通り「その他」のカテゴリーで、そこに分類するテストが弱いのでここでは考慮していません。でも、こうして眺めてみると、何らかのinsightを得られるのではないでしょうか。どうですかね、倫太郎さん。

私の最近のお気に入りは、

  • 薄井良夫 編 『基本文型の重点問題』 (日本英語教育協会、1985年)

ひたすら「文型」という観点で問題を集めた、小さな版型で100ページ少々の問題集です。当然ながら絶版。今の受験生はほとんど手が出ないであろう形式と難 (易) 度です。
はしがきにはこうあります。

  • 『英語学習を最も能率的に行うには…』と質問されたとしたら、『まず何よりも文型を重点的に勉強することです』と、いうのが筆者の答えである。『文型を制する者のみ、英語を制す』は、筆者の長い英語学習・教授の結論だからである。いわゆる五文型の知識は、英語の読解及び作文、文法などにおける、最も不可欠な基本力なのだ。故に、文型の十分な理解なしで英語に挑戦することは、舟が羅針盤なしで荒海に漕ぎ出すようなもの、山男が何の装備もなしにエベレストに挑むようなものであると言えよう。逆に、文型という道具を有効に活用することができれば、どんな英語でも恐れるに足らず、になるということになる。かくて、文型はいかなる学習者にとっても絶対に離すべからざる最高の友であり、この上なく頼り甲斐のある協力者なのである。(中略) 入試で文型そのものが問われるような出題が少ないことは否定できないが、前述したとおり、英語が正しく読め、正しく書けるという、いわゆる、英語の実力養成のためには、何をさしおいても文型の知識活用こそが、最も大切なのである。練習問題は、このような観点から、単なる文型練習だけに留まらず、文型練習という王道を通っての、広い意味における英語力の充実・向上を最大目標にして作られたものである。

という練習問題の一例がこちら。(p.118)

§23. S+V+O+to-不定詞
1. 次の各文の空所 ( ) に入れるべき語を、下記語群から選びなさい。必要があれば変化させること。なお、[ ] 内は適当な語に下線を引きなさい。
(A) Nobody will deny that concentration ( 1 ) us to remember more accurately, more fully, and more (2) [gradually, permanently, relentlessly].

(B) He was so exhausted (3) [by, till, after] the time we arrived that he ( 4 ) us to put him to bed without a word. he was ill for six weeks.

(C) Some cartoonists aim at very young readers, and (5) [like, give, limit] their words to infantile fantasies. Cartoons about cute little talking animals (6) [for, by, with] their animal or fairy protectors ( 7 ) little boys and girls to be kind and loving.

(D) The guest ( 8 ) him to order champagne for luncheon, telling him that she was not (9) [told, permitted, advised] to drink anything else by her doctor.

(E) the richer countries are in a position to ( 10 ) suppliers to accept the prices they want to (11) [lend, donate, pay] for their natural resources.

語群: ask, force, encourage, allow, help

どうですか?
語句の注は、解答・解説に載っているだけで、問題ページにはありません。高校生の英語のテスティングの観点からは、解答形式が煩雑な処理を求めるなど芳しくない評価になるかも知れませんが、文型の分類を求めるのではなく、結果的にその文型をとる動詞の用法が身に付いていないと解答できないように作られている問題を解くことで英語の力をつける、というのは結構面白いように思えて、この本で各種文型の問題をつらつらと眺めているわけです。
明日は朝から湖。
午後は車の定期点検です。
合間に、合否追跡調査の書類提出かな。

本日のBGM: I am not a know it all (クラムボン)