♪間違えて、間違えて♪

1限の学年集会では、卒業生でもある地元企業の社長による講演。
私は1限に高2の授業が入っていたので、授業を終えてから、ご挨拶。
本業でお世話になっている大分のS先生の大学時代からの親友でもあり、世間の狭さを感じた瞬間でもあった。スポーツは違えども、日本一になっている人の話だけに、生徒は異口同音に「いい話でした」「感動しました」と言っていて、本物はやはり伝わるものなのだな、と感じた。

授業の方は、『やれでき』の関係詞の部分を一気に。
2コマで、118ページから、135ページまで。まずは全体像と頭の働かせ方を徹底。主格、目的格 (及び省略 = 接触節)、所有格、what、前置詞+関係詞、関係副詞まで一通り。問題を解く前に、ひたすら正しく用いられた名詞のかたまりを処理することから。四角化で視覚化、代入、とじかっこの予測と足跡の確認を淡々と。「手が止まっている時は思考も止まっていると思え」、と檄。
日本語 (訳) の表面に現れていない主語を補ったりしながら、日→英で、応用題。
例えば、所有格のところでは、

  • a singer whose song everybody knows その歌を誰もが知っている歌手

を例文から括りだして、

  • その名前を誰もが知っている野球選手

を英訳、

  • a baseball player whose name everybody knows
  • その歌声を誰もが覚えている歌手

なら、

  • a singer whose voice everybody remembers

という具合に、ひたすら名詞のかたまりを処理するわけです。
関係詞としてのwhatでは、一貫して「名詞のないところに名詞のかたまりをつくるwhat」、「wh-語には尋ねる働きと、説明する働きの二つがカードの裏表のように備わっている」という考え方。

  • 彼の言ったこと  what he said

では、

  • his word / his remark / his statement / his utterance

とは何が違うの?
と問い、時制を支配できるという関係詞の最大の利点を確認して、

  • 私の言いたいこと what I want to say
  • 私が本当に言いたいこと what I mean

へと前進。ともすると、 “what I mean to say” と膨らませないとピンとこない生徒が多いが、”mean” という動詞に充分慣れることが大切。

  • あなたがかつて言っていた (けど今は言わなくなった) こと  what you used to say
  • あなたが言おうとしていること what you are going to say

など、時制・助動詞の番付表のありがたみを噛みしめるため日→英で用例補足。

  • I cannot believe what he said.

では、

  • I cannot believe him.

との違いを再度問い、「関係詞ならでは」を感じてもらう。そこが本当に分かっていれば、

  • He is different from what he was when he was young.

では、なぜ、(X) He is different from him …. と言えないかよく分かろうというもの。
名詞句の理解ができたら、文全体の中での整合性を確認。「どどいつ」はどこでまとまるのかを問う。つまり、(X) When he was young, he is different from what he was. とは決してならず、 “what he was when he was young” が大きなかたまりになることが分かるのは、偏に「意味の整合性」によるものであり、統一した文脈の予測と一つひとつ読み進めての確認を素早く行っているのだということを実感してもらう。形と意味と、両方から攻められないと更なる飛躍はあまり期待できないものなので、ここが踏ん張りどころです。
前置詞と関係代名詞をしつこく、しつこく確認した後、さらりと関係副詞へ。
ここでやらなければならないのは、副詞の実感です。

  • here / there / everywhere
  • yesterday / today / tomorrow

私のクラスの習熟度がいくら低いとはいえ、このような簡単な副詞で躓く者はほとんどいません。
ところが、

  • at night / in the morning / on Monday / for a long time / during the summer / between the wars
  • next week / this month / last year / these days
  • at home / in my house / on my way home / just around the corner

などになると、とたんに、「副詞句」であることを感じられなくなってきます。
とくに、このような副詞句を then/ thereという副詞にという変換は言われればかなりの精度で答えられますが、then / thereという副詞から、文脈にあった「副詞句」を想定するのは、基本語彙・チャンク・コロケーションの定着にかかっていますので、なかなか大変です。裏を返せば、この関係副詞の指導が、副詞と副詞句をものにするチャンスでもあるのです。

  • Monday is the day when he is often absent.

の中から、名詞のかたまりを括りだし、

  • the day when he is often absent

の”when” を見た時に、そこからthenという副詞を想定し、それを副詞句に膨らませるには、 “on Monday” とか、”on his birthday” などが完全に定着していて、いわゆる「自動化」ができていなければなりません。ということで、副詞句と副詞を行ったり来たりの口慣らしです。
週末課題としては、高1でもやっている『ぜったい音読』の中から、主語や目的語などに、固有名詞や代名詞ではなく、具体的な名詞を用いた「英文」を列挙し、そこから名詞のかたまりを作るトレーニング。高1では書き出していますが、高2なのだから口頭でやるように指示。どうなりますか。
そうそう、『やれでき』といえば、この本を薦めた他校出身の受験生が、周囲の受験生が難しい教材を使っているのに惑わされることなく、『やれでき』を繰り返し完璧にしたところ、英語の伸びが顕著で、今年のセンター試験は190点を超えたそうです。「問題を解いた後は、4択穴埋めでも英文の音読とread & look up を厭わずに」、というアドバイスもしっかりと活かされ、リスニングも9割以上とのこと。この受験生には一度もお会いしたことがないのですが、世評に惑わされず、即効性とか、有用性とかもいったん棚上げして、ひたすら自分の選んだものを信じて打ち込むことの意義というか、価値を教えてもらいました。ありがとう。

高1は、その高2の取り組みを横目に見て、「定義文」から関係詞へのアプローチ。しつこく、think-aloudをデモしては、生徒にも同様に書き出させる。まだまだ「待ち」の姿勢から動けない者多し。時間がかかるね。家庭学習でできることは家庭で、教室でしかできないこと、私がいなければできないことにもっとリソースやエネルギーを振り分けてはどうかという「提案」を。

高1の学級文庫に「ことば」関連の本を強化しようという目論見で、大津由紀雄氏の一連の著作を購入。今のところ導入予定は、

  • 『ことばの力を育む』、『探検ことばの世界』、『ことばの宇宙への旅立ち --- 十代からの言語学』、『ことばの宇宙への旅立ち (2) --- 十代からの言語学』、『ことばに魅せられて –対話篇』

といった陣容。
新刊書しか買わない人はどうでもいいのだろうけれども、地方在住で新し目の本をそれなりの価格で買いたい時、とか、絶版になったものを手に入れたい時、マーケットプレイスとか、ブックオフオンライン (って語形成を考える材料になる名前だな) は便利。

高3の和訳・要約演習で、解答の日本語がなんだかおかしいと思ったら、あろうことか英文のタイプミスがあった。陳謝。費やした時間は返せないので、本当に申し訳ない。

放課後は、来週の予餞会で担任団で披露する「出し物」の打ち合わせ。月曜日までに各自練習してきて、週明けに摺り合わせとのこと。備品を家に持ち帰ったはいいものの、明日から週末は本業で県の強化合宿。どうしたものか。
まずはしっかり睡眠を取って、体調万全で合宿にいくことから、でしょうかね。

本日のBGM: 夢の中 (くるり)