青息吐息

  • 何をどの学年で教えるか。これは教科書を見れば分かるが、そのもとは学習指導要領に示されている。(中略) 学習指導要領は、ほぼ10年ごとに改訂されてきた。これからも同じように改訂されていくかどうかは分からないが、時代の要請によって変えられていくことは確かである。これまでの学習指導要領を見ると○○全体について、○○の個々の内容についての見方・考え方が固定しているわけではなく、それぞれの時代を背景にして違っていることが分かる。それを見ることによって、○○について考えるべきことについての示唆を得ることもできるからである。(p.296)

ある教科教育に関わる書籍からの抜粋です。さあ、○○に入る教科名は何でしょう?
この続きにはこんな一節も出てきます。

  • 平成10年の学習指導要領の改訂については、基本方針から納得できないところであるが、現実に週5日制と総合的な学習の導入にともなって、○○の内容も3割削減せざるを得なくなった。そうして作らざるを得なくなった学習指導要領であるから、レベルが下がるのはやむを得ないとしても、変え方がおかしいと思われることがいくつか見られた。その是非は別にして、そのおかしいと思われることを見ておくことは、学習指導要領を見るとき、そして○○教育のあり方を考えるときの示唆を与えてくれると思い、あえて取り上げることにする。これからの○○教育を考えるときの参考になれば幸いである。(p.298)

これは、過日のエントリーでも紹介した杉山吉茂教授講義筆記 『初等科数学科教育学序説』 (東洋館出版社) からの抜粋である。小学校の数学を教える人が最低限知っておかなければならないことが懇切丁寧に説かれた講義録であり、「基礎概念」を理解し、それを授業・指導に活かすという点で英語教師にも十分示唆を与えてくれるものである。

  • 難しいから易しい言葉で、ということは子どもに対していうことであり、教育の専門家に対してすることではない。教師は専門の用語に通じ、言葉を正しく使い分けることができるように勉強すべきである。(p. 299)
  • 「概念」に関して言えば、「感覚を豊かにする」という文言が気になる。1学年の目標の中に「数についての感覚を豊かにする」「量の大きさについての感覚を豊かにする」「図形についての感覚を豊かにする」とあるが、1学年に示された内容で「感覚を豊かにする」などと言えるだろうか。/ 数についての学習は多いので、数についての感覚を豊かにするということを期待してよいかもしれないが、数の概念を形成することの方が先である。量については「長さ」だけを、せいぜい「任意単位による測定」の程度の学習しかしないのに、 「量」の「感覚を豊かにする」ことを目標にかかげてよいものであろうか。2学年にも同じ文言が繰り返されているが、「長さ」しか学習しないのだから「量」とは言えまい。/ 図形についても同じである。1学年では「ものの形」について学習しているだけであり、「図形」とはいえない程度のものである。「ものの形を認めたり、その特徴をとらえたりすること」だけである。そのようなことで養われる豊かな感覚とはどんなものをさすのであろうか。 (中略) 目標は、達成されることが期待される内容のはずである。「目標」の意味も分かっていないと言われかねまい。(pp. 299-300)

翻って、指導要領の英語に関わる記述。ことばの教科として胸を張れる文言となっているか、用語の選択・定義は妥当か、など「当然」と思っていることを改めて考えてみることが必要であるし、指導要領が改められたら、「今後どうするか」ということばかりに目を向けるのではなく、上に引いた杉山氏のように、この変え方はおかしい、というような「評価」をすることがそれ以上に大切であると感じた次第。

先日電話があった懐かしい教え子からのメールが北京から届く。どっちが帰国なんだか。ブログを見るとやっぱり女優の顔になっているのだね。流石。私のブログにも目を通してくれた模様。

  • 先生のブログ面白いです。また英語勉強してみたくなりましたよ。タイトルを付けるセンスも素敵です。

この、最後に相手の喜びそうな褒め言葉を忘れないのが皆に愛される秘訣なのだろう。私にはマネ出来ませんが。

さて、今週は体育祭の練習があるため授業は特別時間割。
高3は、夏休み中にあった、某予備校のセンター模試の復習に一コマ。あまりにもお粗末な出題があったので、その部分を補足しつつ、センターレベルの英語力とはどのようなものかを再考させる。整序作文は、高1から説き続けている「四角化で視覚化」と「助動詞の番付表」の効能を思い起こさせる。まあ、どんなストラテジーも使いこなしてなんぼの世界ですけれど…。第6問は、音読で設問に該当している部分以外の英文をちゃんと読んでいるか確認の作業。なんのことはない、ただ最初から最後まで音読をして、読み終わったら用紙を裏返して、どんなことが書いてあったか書き出してみる、という極めて原始的で乱暴なものです。これをいろいろな方面から洗練して、タスク化するとおそらく「コピーグロス」のような優れた活動になるのだろうと思います。香住っ子さん&N先生、今度詳しく教えて下さいね。
高2は、”ball” と”bowl” の顛末をコメントして、昨日のエントリーで紹介したTEDのスピーチ&パフォーマンスをPodcastのMP4で落としておいて、PowerBookからminiDVI経由でTVモニターに繋げ、字幕無しで見る。感動的。教科書は、カラー写真を増やしたり、挿話的なコラムを作ったりと、こういう新たなメディアとまともに張り合おうとするのではなく、紙と活字と音声にとことんこだわり、「ことばとしてのクオリティ」を上げることの方にエネルギーを投入するべきだろうと思った。

高1のオーラルの時間に、市の関わる国際交流事業で来日・滞在している外国人成年 (主として大学生男女十数名) が授業視察に訪れた。ロシア、イタリア、セルビア (モンテネグロ?) などなど普段あまり接する機会のない多様な国々から参加していて、貴重な機会となった。ちょうど、キング牧師のスピーチ暗誦の個人作業に取りかかるところだったので、各自がB4縦の用紙に、自分の割り当て部分をチャンクごとに改行して写していく下準備を経て、視察にきた青年たちと生徒での即席ペアによる「対面リピート」が実現。視察団のみなさんには、県立大の学生がお手伝いに入り、尻込みしがちな生徒を相手に親切に丁寧にリピートの相手をしてくれました。多謝。彼らの帰国後、世界中に「対面リピート」が普及したらいいのになぁ…。彼らは嬉々として、授業の半分くらいの時間は活動に参加した後、空手と剣道の演舞・実技を見学するため移動していきました。再見。

防衛大学校の募集要項と願書を学校に届けてもらう。昨年の3年担任の先生に朝電話してもらったのだが、昼には届いていた。平時から仕事が速いのだな。
本業では、明後日に迫った国体の結団式の要項と派遣依頼がようやく学校に届く。そりゃぁ、9月1日に出したら、届くのは早くて2日ですよね。急いで出張届けを提出。自チームの9月期の強化計画表も締め切りが4日。ふうーっ。

放課後、ちょっと体調が思わしくなかったので、早めに家路に。途中、ドラッグストアで買い物。麻黄湯を呑んで寝ます。

本日の失われたBGM: 北京で朝食を (佐藤隆)