ありをりはべりつづれおり

この1週間に、メディアを賑わした二つのニュースが気になっている。
1. 親の収入 (所得) と大学進学率の調査結果
http://www.asahi.com/edu/news/TKY200907300473.html
調査元からの一次資料はこちら (クリックするとファイルのダウンロードが始まります)、
http://ump.p.u-tokyo.ac.jp/crump/resource/crump090731.pdf

2. 親の収入 (所得) と学力テストの正答率の調査結果
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090804-00000957-yom-soci
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090804-00000238-jij-pol
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090804-00000072-mai-soci

どのメディアも「格差」ありき、の伝え方です。
1. のニュースで取り上げられている一次資料を読めば、その最終頁に、

  • 昨今の経済状況の変化が、所得と大学進学率の関連に影響を及ぼしているのかを知りたい、というお問い合わせをしばしばいただきます。しかしながら、私たちの実施した調査は、2006年3月に高校を卒業した生徒とその保護者を対象としたものです。きわめてお金がかかる調査であり、その後、同じような調査をもう一度、実施することはしておりません。また、大きな地域的な偏りもなく全国の高校3年生を代表している点、保護者の年収を把握している点、高校卒業後の進路を尋ねた第2回調査の非回答者も少ない点で、これまでの調査にはない特徴を備えた初めての調査と言えるものであり、過去について、比較しうるデータはありません。つまり、全く同じ条件のもと行った調査は他にないため、トレンドを把握することはできません。

とあるのだが、この部分にはどのメディアも言及無しである。

2. のニュースで、時事通信の記事では、「世帯年収ごとに子供を分類すると、いずれも200万円未満の平均正答率(%)が最低だった。」というのだが、年収200万円以下の世帯と1200万円〜1500万円の世帯とを比較して、この解釈を導き出すことの意味はなんなのだろう。
サンプルの取り方は、政令5都市で、5800人という規模しかわからないのだが、たとえば、次のような基礎統計は考慮した上でのサンプリングなのだろうか?
「平成20年 国民生活基礎調査」
このうち、とりわけ次の2つが関連しようか。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa08/2-1.html
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa08/2-2.html
調査をしたところが厚生労働省ということで、もともとは年金絡みの基礎統計なのだろうが、現在の日本では、みんなどのくらいの収入を得ているのか (どのくらいの収入を得ている人が、どのくらいいるのか)、ということの目安を持たずして、上記、1や2 のニュースに頷いたり、憤慨したりしてもしょうがないと思うのである。
確かに、所得を一定の金額で区切らなければ調査にはならない。しかしながら、上に引いた、「国民生活基礎調査」によれば、
平均所得金額は、556万2千円。中央値は448万円。60.9%の世帯は、所得平均金額以下になっている。年収200万円以下の世帯は、調査した全世帯の18.5%であり、年収1200万円以上の世帯は、約7.1%である。
このくらいの背景知識を持っていて初めて、新たな研究から示されるデータのインパクトを受け止められるのだと思う。
このニュース 2.で取り上げられている、お茶の水女子大・耳塚教授らによる文科省の委託研究というのは、次に示す研究の発展したものだと思うのだが、そういったことには全く触れられていないのは、取材側メディアの怠慢のように思える。
http://benesse.jp/berd/center/open/report/kyoiku_kakusa/2008/index.html
この2008年の調査で所得金額の世帯分布が示されている (http://benesse.jp/berd/center/open/report/kyoiku_kakusa/2008/pdf/data_04.pdf, 表2-9、p.70 (通し頁)) のだが、上述の2008年の「国民生活基礎調査」の分布とは異なっている。

  • 200万円以下 4.7%
  • 1200万円以上 7.1%

今回の耳塚教授らの研究の一次資料も直に公開されるのだろうから、それを見て改めて考察したいと思う。

今週は本業でいつも使っている地元の水域のカタマランが修理でしばらく使用できないため、もう一つの湖で強化練習へ。自宅からだと往復で約100km。燃費が悪いのでガソリン代も馬鹿になりませんが、インターハイ組が不在な間は、貸し切り状態で練習できるので喜んだ方が良いのでしょう。
初日は、選手自身でのリギング実習。いつも人にやってもらっている時に「観察」しているかどうかが問われます。平面ではなく、空間把握の能力は本当に今の中高生の課題かも知れないと思いました。
今日は曇天から晴天へと移行する空模様で強風の中、午前14kmでインターバル中心、午後16kmでDPS中心。体重が軽くパワーがないので、逆風だとなかなかスピードが乗らなかったのですが、強化練習二日目で、ようやく、そこそこ漕げるようになってきました。疲れてくると、上体がひしゃげてくるのをどう踏みとどまらせるか、「体幹の強化」と言うのは簡単ですが、動きの中でできなければしょうがないのでね。
昼食時にトレーニングと栄養、休養の大まかなレクチャー。今回の強化練習では、昼食時にクエン酸のサプリ、午後練習の直後にはストレッチをしながら摂れるアミノ酸のサプリを与えています。
自分が摂取する飲食物に含まれる炭水化物と蛋白質とクエン酸については実感を伴った理解をして欲しいものです。明日は午前のみ練習で生徒はセミフライ。私は午後学校に戻ってAO入試希望者への調査書書きと面談の準備です。

昨日の移動の車中に起きたショッキングな出来事を思い出した。
ラジオから流れる知らない曲に、

  • キャロル・キングの出来損ないみたいな歌だな。

と思ったら、本人だった。
劣化コピーは他人事ではない。

本日のBGM: People Like Me, People Like You (Clare Bowditch & the Feeding Set)