「省くのかよっ!!」

父の死で喪に服していた昨年とは違った意味合いで、今年は落ち着いた正月です。
時間はたっぷりあったのですが年賀状の印刷で四苦八苦。人間、手を動かさなければダメですね。ご挨拶頂いた方々、返信が暫し遅れますので、平にご容赦を。礼。
元日は、例によって『相棒スペシャル』。
昨年と比べても脚本が今ひとつな感じ。薫ちゃんがいないことに慣れるまでちょっと大変ということか。
TVに飽きたらYoutubeで今シーズンのフィギュアを一通りおさらい。
あとは、読書三昧。
年末に読み始めた、加藤周一『読書術』(岩波同時代ライブラリー、1993年)に続いて、加藤典洋『文学地図 大江と村上と二十年』(朝日選書、2008年)。
新春のお笑い番組は見ていて呼吸が掴めず、鶴見俊輔『太夫才蔵伝 漫才をつらぬくもの』(平凡社、2000年)に逃避。漫才を語るのに、C.K. オグデン、I.A. リチャーズの『意味の意味』を持ち出す人はこの人くらいなものだろう。
意を決し、小島信夫『私の作家評伝 I, II, III』(新潮選書、1972年)再読。
北烏山さんの年間Best 5 で有島武郎が気になっていたので、「女の伊達巻/有島武郎」から。「狂気と羞恥/夏目漱石」に戻り、第二巻の「男子一生の事業/二葉亭四迷」、ときて第三巻へ。疲れた。それにしても、次のような言葉には翻弄されるがままという感じ。(『私の作家評伝 III』 あとがき)

  • (宇野)浩二についてのものが雑誌三カ月分の分量になったので、浩二だけを特に問題にしているように見えるかもしれませんが、別にそういうわけではないのであります。そうなったについては理由は二つばかりあるのですが、それは省きます。

そうそう、第二巻の「不易の人/岩野泡鳴」冒頭で引かれる、小島と吉行淳之介、大江健三郎三氏での座談会のエピソードがおもしろかった。機会があれば読まれたし。
今朝は、仕切直しの原田宗典『小林秀雄先生来る』(新潮社、2008年)読了。
読了というか、娘に読み聞かせるつもりでなんとか読み終えた。戯曲と考えるにしても、途中の講演(原田自身が「創作」といっているが)をどう扱ったものか。講演の前の対話の中の言葉も、下敷きにしている原典(原点?)が何なのか小林の著作を繙かせようという算段か?まさかね?

秀雄 しかし、君たちは自分が何を知らないのか、知らないだろう?
一佐・作太郎 はい。
秀雄 僕だって知らないよ。自分で自分に問うしかないじゃないか。どうして自問しないんだ、君たちは?何か質問してるか、君、自分自身に?覚えてばかりいなさんな。答えなんかどうでもいいじゃないか。問う時に僕らの頭は働くのであって、答える時に頭は働いていないんだからね。そうだろう?(飲む)
一佐 そうですね。
秀雄 何が?
一佐 え?(作太郎に)何が?
作太郎 分がんね。
一佐 分かりません。
秀雄 そうだろう。
(pp.88-89)

この部分を読んでいて、高校英語指導要領の改定案と旧版(現行版)との対照表を作ろうと思った自分の意識がどこから来たのかに気が付いた。

  • 授業は英語で行うことを基本とする。

という明文化以上に、自分の中にひっかかる何かがあり、その違和感の源は何なのか、それを知りたいのである。そう、誰かに答えてもらう以前に、「問いを立てる」そして、「自問する」ことが自分にとって意味のある行為なのだ。(答えがでればそれはそれで素晴らしいことだが。)
某所でも1951年の試案(http://www.nicer.go.jp/guideline/old/s26jhl1/)について書いたのが、この冒頭の「委員」の顔ぶれを見ると、当時の日本の叡智を集めようとしたことがよく分かる。人材が首都圏に偏っていることは否めないので、各地で不満のある人はいたのだろうけれども…。
年も明け、パブリックコメントの締め切りまで3週間足らず。高校現場も進学校や受験校といわれるところであれば、センター試験や推薦入試で大忙しな時期であり、校内などであっても十分な議論をする余裕のない時期であろうと思う。だからこそ、一人一人が自分にできることを冷静に進めることが大切。独善的、感情的にならず、諦観するのでもなく、誰かの言説にもたれ掛かって安心するのでもなく、今を生きる一教師として、かつてのまたこれからの一英語学習者として、一市民としての「自分の声」をきちんと届けることから始めたい。署名活動のように数に語らせるのとも違い、シンポジウムのようにスターに代弁してもらうのとも違って、自分の足で歩き、理想は低く、そして志しだけは少しだけ高く持とうと思う。
とりあえず、正月くらいは英語教育はお休み。
今夜は年賀状の返事を書くのが最優先。
犬山先生から、「プレゼントのプレゼント」のお礼のメールが届く。さてさて、彼の地でどんな展開を見せますか。

本日のBGM: ひとりに戻るんだ(TOMOVSKY)