ライオンは醒めている

高3センター対策は、図表読解問題。語義を少し詳しく扱い、類義語とパラフレーズ。今回扱ったのは、abruptly。suddenlyやunexpectedlyでの言い換えは楽だが、 ここでは、形容詞の an abrupt slope などという時のイメージが一番しっくりくる。そう感じられれば、 steeply, sharplyでの置き換えも可能となる。
take steps [measures] to原形では、形容詞のコロケーションを補充。Prohibit A from B では、keep, ban, protect, prevent, deterあたりまで補充。
cut into sth を「〜を減ずる」「〜に食い込む」「〜を切り崩す」といった意味合いで用いる用例が英和辞書にあまりないので補充。この語句はこういう文脈で出てくる。

  • There are two main reasons for this, and both have cut into the sales of recorded music among young consumers. One is the high price of compact disks. (中略) The other is Internet music-sharing sites and software.

いわゆるパラグラフライティングの指導をしていると気が付く生徒の誤りを、読みの側から見ているような感触のある英文である。生徒は「理由の列挙」の処理が意外にヘタである。理由である以上、「ことがら」としてまとめられるはずなのだが、今引いた英文でも、1例目は The price of compact disks is high. と、ことがらへの読み替えが容易なのに対し、2例目では、be動詞のあとが名詞句だけ「ぽーん」と放り出されたかのごとく、うまくことがらに読み替えられない。こういう部分は、名詞句を「存在」そのものとしてとらえると突破口が開けることがある、という話をしてまとめる。いったん、意味のまとまりと繋がりを確認できたら、第二段階として、「インターネット上で音楽を共有できるサイトとソフトウエアーの存在である」などとするのも一手。
問題を解いた後で、比較に関わる基本事項の徹底。
最後は広島大のグラフ問題の予備校各社模範解答と奈良女子大の和文英訳のO社模範解答を印刷して配布。どの程度、自分の英語力アップに活かせるかが鍵。広大の模範解答では、Yのものがちょっと雑すぎる印象。This should be due to the fact that 節、って悪文の見本のようではないか。もっともSやO社では広大の問題そのものが扱われていないので、それこそ「問題外」なのだが…。
高1普通科の授業は一クラスが相変わらず低調。担任とも生徒の概況について話しをする。他教科の先生からも情報を得て、少し様子見のつもり。
放課後は英語科会。比較的順調にことが運ぶ。
高3の生徒から文末の分詞構文の表す意味と主節の意味のつながりで質問があったので、ハンドアウト作成。いいところで悩むようにはなってきたようだが、分詞構文に悩みすぎるのは時間の浪費。近畿圏、中国・四国地方の大学での近年の読解問題からの抜粋と、新聞記事からの抜粋。よく一般化で「文末の分詞構文は付帯状況」というのだが、曖昧なようで、これが一番すべてをカバーするような気もする。「同時性」「結果」「因果関係」などとclear cutできるものではなく、多分にmergeするものだろう。次の例はどうか?

  • The teachers visit several nearby schools, giving four to five hours of lessons a week at each school. 

香川大の読解問題で出ていた英文を少しいじったもの。設問で直接問われているわけではないので念のため。

私自身が受験生だった頃は、疑問に思った項目や語彙は、西尾孝の『実戦英文法活用辞典』『実戦英単語活用辞典』(英教)を使って、入試で問われる項目か否か?という目安にしていたのだが、今はどの教材もほぼ共通のデータをもとに作成されているので、いきおい『頻出問題精選』の方向に向かうのだろう。三省堂からは『クラウン受験英語辞典』(古藤晃編著)という大学入試問題をデータベースとして作成された辞書が出ている。これには私も少し関わったのだが、まだ数年しかたっていないのに今では入手が難しいようだ。私の場合は、授業を過去問対策だけで終わらせたくないので、自学自習に資するこういう教材にもエネルギーを割いているのだが、どうも世の中上手く回らないのだなぁ。

No South of the Border 経由のナタリーで、佐野元春の記事を読む(http://natalie.mu/news/show/id/3965)。一部引用。

  • ぼくはロックンロール音楽で育った。成長して作詞や作曲ができるようになり、10代の頃に感じたあんなポップソングを書いてみたいと思ってメジャーからデビューしてレコードを出した。音楽リスナーあってのビジネスです。ぼくのフィロソフィーはすごく簡単なんです。レコードビジネスはロックンロール音楽に恩恵を受けている。ロックンロール音楽を愛するリスナーにベネフィットを落としていくということを最優先で考えなければならない。しかしCCCDはどうだろうか。まるで大人向けの論理だ。音楽を、楽しいロックンロールを売る側がおまえのことを信じてないよ、と言う。その関係の中で流通される音楽はクールなのだろうか、と自問自答して「違うな」と思った。彼らが喜ぶことをやらなきゃいけない。それでぼくは自分のレーベルをスタートした。それが、DaisyMusic。

涙。
彼の音楽は十代の頃、EPの新譜発売を待ちこがれていた頃からずっと聴き続けているし、彼の文章はずっと読み続けている。私の中では、Joe Jacksonや Elvis Costelloなど、同時期に知ったアーチストは息が長い。杉真理は「佐野君の音楽や言葉を聞くと、頭の中が痒くなる」というような発言を以前していたのだが、その気持ちは判る気がする。

音楽も教育もビジネスの論理に呑み込まれている時代に、自分は何を歌うべきか、歌声をどこに響かせるか。

  • all the love there is of music for its own sake

本日のBGM: Rainbow in my soul(佐野元春)