commencement

今日は現任校の卒業式。
担任として卒業生を送りだすのはこの学校で3回目。
今回は進学クラスの担任として入学から持ち上がりで卒業まで。現時点でまだ国公立の前期試験の結果がわからないので、最終進路のまだ決定していない者もおりますが、節目は節目です。

  • 卒業おめでとうございます。


そして、このたび、私も「卒業」します。
大学新卒で都立高校の教諭を振り出しに33年間、主として高校の英語教員をしてきましたが、この3月末でそのキャリアにピリオドを打つことになりました。まだ高2,高1の学年末テストと評価などがありますし、現職の在籍は3月中は続きますので、仕事は責任を持って全うしますが、そこで一区切りです。


既に、一部の方には伝えていましたが、4月からは組田幸一郎氏の主宰・経営する「Sアカデミー」の専任として中学生から高卒生までを対象に英語を教えることになります。その意味では、まだ「英語教育」には関わり続けるとも言えますが、「本業」とずっと称してきた Rowing(ボート競技)のコーチングは休業です。もともと、英語教師としてではなく、Rowingの指導者として山口に来ましたのでやはり色々な思いが込み上げてきます。2011年の山口国体のボート競技の指導者として、2007年に県に招かれたものの、県立高校の教諭や教育委員会づきの職員としては採用されず、県内の私立高校も競技人口の少ないボートという競技で新たに部活動を興そうなどとは思ってくれず、どこもかしこも食指を動かすことのない中、現任校の学校法人の当時のO理事長の「そいつ、面白そうじゃないか。ウチでやろう!」という鶴の一声で、ボート部をつくってもらえることになり、採用され着任し12年が経ちました。

英語教育以上に、「教職」「公教育」への拘りは持っているつもりでしたが、昨今の「改革」の波、とでもいうのでしょうか、学校現場を市場として「民間」が参入し、現場が疲弊していくような実感が募ってくるなか、「教職」に就く「公教育の教師」という自分の姿と,自分の英語教師としての輪郭線との間にズレが生じて来て、自分の「あり方」を考えあぐねていました。昨年の8月初頭に、鈴木大裕さんのツイートで記事が紹介され、あるベテラン教員の言葉が引かれていたのを覚えている方はいるでしょうか?

  • 私が教職を去るのではない。「教師」というしごとが私を去っていったのだ。『クレスコ』4月号から

https://twitter.com/daiyusuzuki/status/1025160476823441408

このことばはその時に自分が感じていた「虚しさ」のようなものを代弁してくれたような気がしていましたが、同時にまた、「私自身が求める『教師というしごと』」(こんなにカッコつけなくても、とも思いますが)を続ける「最適解」がどこかにあるはずだとも思っていました。その「解」として、組田さんからのオファーを受ける決断をしたわけです。

先月の「東大シンポ」の講演の冒頭では、万感を込めて教職から離れる旨の挨拶をさせていただいていました。直に「シンポジウム」の報告書も公式サイトでアップされるでしょうから、そちらでご確認いただければと思います。


本業のRowing (ボート競技)の指導では挫折と失敗の繰り返しの日々でしたが、県内のボート関係者には本当にお世話になりました。ありがとうございます。悔しいレースの方が多いのですが、自校選手だけでなく、成年チームの優秀な選手にも恵まれ、良いレースができたことも良い思い出です。

生業の英語教育では「山口県英語教育フォーラム」を8回開催し、お招きした講師の方たちとの交流もでき、参加された方たち、少数ではありますが、県内外からここに集い、「確実に種が蒔かれたな」という方たちの存在も実感できましたし、同僚も含め、地元の先生が何人もフォーラムの運営をサポートしてくれましたので、まあ、結果オーライ、「プラマイプラスです!」ではないでしょうか。

自慢のフォーラム講師陣と各回のタイトルを今一度振り返っておきましょう。

第1回(2008年)英語授業維新はここから
• 松井孝志
• 阿野幸一
• 久保野雅史
• 田尻悟郎


第2回(2009年)現場教師の声に「力」を!Power to the people who teach English
• 今井康人
• 永末温子
• 久保野りえ


第3回(2010年)今こそ、豊かな「ことば」の生きる教室を求めて 〜 ことばへの気づき、学びへの気づき
• 柳瀬和明
• 大津由紀雄
• 加藤京子


第4回(2011年)『英語教師の視点と立脚点---「教育」「読む」「つくる」の立つ場所とそこから見えてくるもの』
• 組田幸一郎
• 佐藤綾子
• 萩原一郎


第5回(2012年)「英語教育改革」その前に…。
• 長沼君主
• 山岡憲史
• 奥住桂


第6回(2013年)教室の英語は今…。
• 高橋愛
• 山岡大基
• 植野伸子


第7回 (2014年) 英語教育、「見直したい」も見直したい。
• 松井孝志
• 田地野彰
• 胡子美由紀


第8回(2015年;最終回) 英語教育を語る視座を揺すぶる
• 松井孝志
• 寺沢拓敬
• 亘理陽一

講師を引き受けてくれた皆さん、本当にありがとうございました。私自身の心が折れそうな時に、どれだけ救われたことか。タイトルに込めた思いも、参加者の胸のうちで、それぞれ、それなり、そのうちに芽吹き、花開くことでしょう。

4月以降の私の具体的な仕事内容は、Sアカデミーからの情報発信の方が詳しく、確かだと思いますので、そちらをご覧下さい。

Sアカデミー
http://www.s-academy.net/

Sアカデミー先輩の先生方、宜しくお願いします。新年度の受講生の皆さん、Sアカデミーでお会いできることを楽しみにしています。


このブログも、2004年から足掛け15年。15歳といえば、日本では義務教育を卒業するくらいの年齢です。

2007年の「大いなる船出」に際して、私はこう書いていました。

英語教育の明日は一人一人の英語教師の手に委ねられています。一人が不安なら、団結するもよし。ただ、手をつなぐためにはそれまで握っていた何かを放さなければならないものです。

  • 鍵はいつも、掌にある。握りしめている間は使えない。

tmrowing.hatenablog.com

本当に、鍵はいつも「かたちをかえてそこにある」ものなのでしょう。

コメント欄は開放していますので、卒業する私への「はなむけ」のことばでも投げかけてやって下されば幸せます。

本日のBGM: グッドバイから始めよう(佐野元春)