心焉に在らざれば視れども見えず

本日は告知から。

山岡大基先生より、ご恵贈いただきました。誠にありがとうございます。巻末では、過分な謝辞までいただき恐縮しております。話せば長くなるので詳細は省きますが、この書が世に出て本当に良かった。自力で活用できる高校生は限られるかもしれませんが、まずは指導者が読んで試してみましょう。まさに地道にマジメな臨床の知の結晶です。 (密林へのリンクはこのエントリー最後にもあります)


(MP3音声無料DLつき) 英語ライティングの原理原則――テストに強くなる、レポート・論文で評価される

(MP3音声無料DLつき) 英語ライティングの原理原則――テストに強くなる、レポート・論文で評価される

今日は、2018年センター試験批評の「その2」。
恐らく、この「センター批評」も今年で最後になるだろうから、例年以上に、「普段の授業」との接点を念頭に置いて論じてみたい。

第4問・A 所謂「図表・グラフ」問題。近年のこの問題を見るたびに思うのです、

  • 英語力の何を診る設問なのか?

そして、

  • 現行の学習指導要領に基づく教育課程で「英語表現」の教科書はどの程度「グラフ」や「表」を英語で説明するためのスキルを養えているだろうか?

と。

この第4問Aでは、グラフ (Figure 1.) の説明にある、

The percentages of the participants who placed high importance on color when purchasing six everyday products.

がきちんと読めることが大前提。

  • 関係代名詞whoは主格
  • place importance on A 「Aに重きを置く;Aを重視する」
  • when purchasing ≒ in purchasing 「購入に際して」

あたりが怪しいと厳しいですよね。
そして、このplace A on B が接触節となることで、後々の文では即座に反応できずに、話の展開を推測できなくなった受験生が少なかったことを願うばかりです。
私のクラスでも、既習の文から、接触節や関係詞節を作ることで名詞句を括り出す練習は、中学校素材から始めて高校素材でも折りに触れて行っているが、状況は余り明るいとは言えませんから。

棒グラフの「棒」のそれぞれを特定するのが、問2なのですが、この設問は、第3段落の、

A total of 36.4% of the participants placed importance on color for cellphones. This was the highest among the electronic products but only slightly more than half of that for bags, which appeared one rank above.

という2文が読めるか、を問うているに過ぎません。でも、ほとんどの高校生が、このレベルの英文がきちんと読めないわけですよ。「コミュニケーション英語」という科目では、グラフや表の読み方として、実数、少数、分数、比例・割合・パーセンテージ、増減、序列・序数をどの程度扱っているでしょうか?では、「英語表現」では「表現」するまえに、読んだり、聴いたりする活動が十分に保証されているでしょうか?

でも、よくよく考えてみてください。裏返してみれば、我々が日常で英文とグラフを見るときは、そこについている凡例で、どの棒が何を表しているか、既に見ていることが多いわけです。グラフ全体という非連続テキストの中の各々の棒という限定的な連続テキストとして。その上で、脳内(?)で言語化するなり、ことばを補うなりして、「読み」に移行するわけですから、むしろ、グラフは全部与えておいて、それを適切に言語化したものとして「英文を完成させる」ことこそ、英語力の試験として適切なのではないのか、という思いは消えません。

「言語テスティングの観点」といえば、「論理的な次の展開」を推測させる設問は「常套手段」です。ただ、問4の、

  • What topic is most likely to follow the last paragraph?

という問いは、昨年でも指摘しましたが、作問としては稚拙。

この設問では、最終段落に

Therefore, it is necessary to consider the importance consumers in other parts of the world place on color in their choices of products. The next part of this passage will examine this topic.

と書いてしまっているのだから。

にもかかわらず、多くの高校生は、このレベルの英文が一読了解とはならないわけです。上述した、place A on B が接触節になったのと、when purchasing として述べていた部分が、in their choices of に言い換えられただけなんですけど。
でもね、これって「センター」を「ヨンギノー」試験に置き換えたら、みんな出来るようになるんですよね、たぶん、きっと…。

B. の「料理教室の告知文」に関わる設問は、私は高校生に課すべき英語力の試験だとは認めていないので、例年同様取り上げません。来年、これ以上に配点が増えたら生徒は可哀想ですが、仕方ありません。

ということで、本日のセンター批評はここまで。次回は「タコ星人」を取り上げます。
嗚呼、そうか、今になって思いついたのですが、今年の第4問のBは「料理教室」ネタにするにしても、そのネタを「『明石焼』のレシピを伝授!」とでもしておけば第5問への伏線として面白かったんでしょうね。


さて、
呟きのタイムラインで気になったことがあったので、連投したのですが、こちらにも再録して終わりとします。

「お題とテクストタイプ」に関して。

センター試験が終わると、二次試験対策で「意見文」ばかり書かせる「進学校の指導」がそろそろ収まって欲しいと思うのですよ。「お題とテクスト」に関して、このエントリーだけでも相当多くの気付きがあるだろうと思います。
http://tmrowing.hatenablog.com/entry/20130423

それでも、「意見文」「論証文」の指導が必要になるなら、まずは指導者の方がこちらをどうぞ。
(MP3音声無料DLつき) 英語ライティングの原理原則――テストに強くなる、レポート・論文で評価される 山岡 大基
(MP3音声無料DLつき) 英語ライティングの原理原則――テストに強くなる、レポート・論文で評価される

相変わらずの「添削」に関する teacher's beliefs。

「お題」に対して学習者が書いた「英文」にFBを与えるのは主として教師の仕事。「添削は書く意欲を下げる」と言う教師は、「お題」設定の前段階からやり直した方がいい。それは「プロセスライティング」の流儀や作法以前の問題。そういうことを学べるのが『パラグラフ・ライティング指導入門』です。

「意見文」の指導が大好きな教師がいたら、こう尋ねてみるといいですよ。 50語であれ、80語であれ、100語であれ、その分量できちんとつながりとまとまりのある「英文」を、その課題以前に学習者が「読む」機会をどれだけ設けましたか? 同様の質問は「要約」の指導が大好きな英語教師にも是非。

あるお題で書かれた80語の意見文のお題を外して10ピース位用意して、それを全部読んだ上で、「お題」は何か?を考える。次に、その10の意見を賛成・反対・その他などに類型化し、自分の意見に一番近いものを選ぶ、等々、授業でライティングを続けている教師だからこそ書く前に出来ることが見えるもの。

本日のBGM: Colour Field / 青春はいちどだけ (Flipper's Guitar)