the difference between loneliness and solitude

SLA研究の知見を取り入れ、TBLT的なアプローチで英語教育に取り組むとしても、「どの言語であれ、native writersは存在しない」という公理(?)からは逃れられないと思っています。その意味において、「ライティング指導の第一歩は文字指導から」と唱え続けているのです。

先日のJACETの「小学校英語の文字指導セミナー」で紹介した英国の教材(シリーズ)に、
Penpals for Handwriting (以下 PFH)があります。

私は、ケンブリッジ大学出版局から出ている「児童用テキスト」と「教師用指導書」を持っていって紹介したわけですが、このシリーズは実は、英国のHITACHIとのベンチャーで手がけたICT対応の教材となっています。

http://www.cambridge.org/gb/education/subject/english/literacy/penpals-handwriting-second-edition-series

日本だと、このシリーズを実際に指導で使っている学校や教室は多くないように思うのですが、兵庫教育大の吉田達弘先生のところでは、DVD版を購入したという話だったので、少しずつ広まっているのではないでしょうか。もし、使用中の方がおられましたら、情報交換などをお願いします。


全国英語教育学会での「小学校における文字指導」に関わる発表を見たり、巷の英語教育誌、教科書会社や企業のPR誌などを読んだりする限りでは、

小学校での英語の文字指導は、ペンマンシップのような四線の上に、ただアルファベットを写したり、書いていったりするドリルではなくて、児童が文字を書きたくなるような場面ややりとりの設定が肝心なんです。

という「有識者」が結構多いような印象を持っています。
私も、その部分は大事だとは思います。


ただ、私が指摘している一番のポイントのは、その後のことです。
書きたい気持ちが強くなれば、自然に書けるようになるものでしょうか?
文字認識と音韻意識、実際の運筆を支えるmotor skills などなど、実際に筆記具を手に持って書くということそのものをもっと深く考察するべきだろうと思うのです。

上述の、PFHの指導理念 (rationale) にはこういう文言が付されています。(p.5, Teacher’s Book 1)

3. Handwriting must also be practiced discretely and in context. Beyond the initial foundation stages, Penpals provides Workbooks for handwriting practice in the context of age-appropriate spelling, punctuation and grammar. Learning to associate the kinaesthetic handwriting movement with the visual letter pattern and the aural phonemes will help children with learning t spell. However, Penplas always takes a ‘handwriting first’ approach.

「handwritingの指導なのだから、当然handwriting-firstでしょう?」という「矜恃」のようなものが感じられます。

そして、その理念の最後は、fontについて。

4. Choosing the writing implement best suited to the task is an important part of a handwriting education. A Penplas Font CD-ROM supports practitioners who wish to use the Penpals font consistently in all aspects of teaching and learning.

初期段階では、Sassoon Infant を使い、その後発達段階が上がるにつれて joins がわかるような印刷がなされているのですが、これは、Sassoon系のフォントがもともと、fluentなrunning hand を実現することを想定してデザインされているからでもあります。

日本では、とかく「フォントおたく」のような捉えられ方をされがちですが、言語教育の現場で文字を扱うのに、その書体には無頓着、というのが私からすると違和感を通り越して、大問題に感じられます。

英語の発音はだいたいで良いんですよ、英語ネイティブの発音だっていろいろあるし、気にしていないから。

などと言って、

but, bit, bet, beat, bat, bot, bought, boat, bite, bait, bout, boot

の母音の違いは教えないで、同じ音で済ませる、という指導者は珍しいと思うのです。
であるなら、文字にしても、それぞれの識別、弁別ができ、よどみなく次の文字と連続し、語や句、さらには文が書けるように指導することになぜ「異」を唱えるのか、理解に苦しみます。

次のリンク先のコラムはお読みになったことがあるでしょうか?

松香洋子の私的小学校英語教育論
第5回 What and how
アルファベットの指導
https://www.mpi-j.co.jp/kiji/report_1508/

  • Rosemary Sassoon は書き順の権威?

これには驚くやら呆れるやら悲しむやら…。

前回のエントリーから、再録します。

7. Rosemary Sassoon

※ サスーンの代表的著作から、cとdだけでも英語を教える小中学校、高校に1冊揃えて欲しい。

a. The Acquisition of a Second Writing System. 1995. Intellect, London

b. Handwriting of the Twentieth Century. 1999. Routledge

c. Handwriting: the way to teach it (2nd). 2003. Paul Chapman Publishing, London

d. Handwriting Problems in the Secondary School. 2011. Paul Chapman Publishing, London

e. The Power of Letterforms: Handwritten, printed, cut or carved, how they affect us all. 2015. Unicorn Press

「(欧文)文字を書く」ということの問題点について、フォニクスの専門家、ましてや大家であっても、よく知らない、ということを知ることが大事だという好例でしょう。
確かに、戦後の実質アメリカによる占領で、教育制度改革に伴い、「アメリカ的」な指導法が「英語教育」にも大きく影響を与えました。Ball & Stick 体の「活字体;ブロック体」の指導が、英語圏では今日でも「当たり前」に行われている指導だと思われているのも、この「アメリカ的」な指導法が広まって行く辺りに源泉がありそうです。


それでも、少なくとも「文字指導」に関しては、
・ 出来上がった文字の形よりも、文字の型の類型化
・ 書き順よりも、motor skills
・ 語の書き方に移る前に文字の連続(joins)

を考えて指導するのが基礎基本ですから、そこには当然、「どんな文字を読ませて、どんな文字を書かせるのか」についての考察と対応、配慮が伴います。

上述のPFH の理念にあった、fontへの配慮・対応は彼らには必然なわけです。


先日の「小学校英語での文字指導セミナーの」でも、終了後に大文字のMに関しての質問があり、ちょっとどころか、かなりビックリしました。Mの真ん中の「谷」が基線まで届かないといけないと思い込んでいる人は多いようです。

大文字のM」の何を問題視しているんですかね?

「大事なことはそんなんじゃな〜い‼︎」(inspired by 岡村ちゃん) ということで、その他諸々を補足するハンドアウトを作りましたので、こちらで紹介しておきます。

MとW.pdf 直

つい先日発表された、「小学校外国語活動、外国語 研修ハンドブック」や「中学校学習指導要領解説」などを読んでも、やはり文字指導のうちの handwriting に関しては、「無策」に近い印象を受けました。

現時点では、教科化は時期尚早、外国語活動の前倒しではなく、現行の5年生、6年生の「活動」の充実を目指し、付け焼き刃ではなく時間をかけた教員の研修体制の整備を選択するのが、本来有るべき「教育」政策といえるのではないでしょうか?

「有識者」「専門家」に目を覚ましてもらうことを望むと同時に、やはり、現場の先生方が、「文字そのもの」に加えて「手書き (handwriting)」の基礎基本を学ぶことが必要だと思います。

そして、問題の「根」には、「それを今から学んで間に合うのか?」「学んですぐに指導に活かせるのか?」という、ともすれば答えたくない、答えを知りたくない問いが待っているように思います。

私に言えるのは、handwritingに関しては、このブログでまとめた情報や知見を活かして欲しい、ということと、新しく出た書籍で役に立つものを紹介することくらいでしょうか。

小学校で英語を教えるためのミニマム・エッセンシャルズ 小学校外国語科内容論

小学校で英語を教えるためのミニマム・エッセンシャルズ 小学校外国語科内容論

研修、研鑽も大事ですが、くれぐれも心身の健康第一でお願いします。
教育の「成果」は、それぞれ、それなり、そのうち、ですから。

本日のBGM: ダンデライオン 〜 遅咲きのたんぽぽ(原田知世)