Chaos & Disorder

Princeの存在を知ったのは1980年代の前半。

N.Y.C 1983
オレは巣に戻りそこねた
魚だった
ここに来て初めての夜
ケネディ空港からマンハッタンの街中に至るまで
タクシーの中で ずっとオレは
イースト・リバーの重たいうねりを感じていた


初めの一ヶ月間
セントラル・パーク・ウエストにある安ホテルに
仮の宿をとったシャワーを浴びながらオレは
向かいの窓から聞こえてくる
Princeのファンクが
せつなく飢えた街の鼓動と
同期するのをみていた

(N.Y.C. 1983
佐野元春 「ハートランドからの手紙 #6」
『ハートランドからの手紙』角川文庫より)

天賦の才。
自分と同世代から生まれた歴史に名を残すであろうアーチストという認識でした。
Bowieの時もそうだったように、打ち拉がれながらも、日常という「うすのろ」は進むもの。

生業は生業で始まり、続いていきます。
高3は『教科書』を進めていきました。いつもより幾分かは丁寧に。

A3両面印刷で4頁構成のワークシート。表面は「フレーズ(チャンク)」でパート毎に読むページ。二つ折りをめくると、裏(内)面には、フレーズ順送り訳と、ベタ内のパラグラフを印刷。表の英文フォントはSassoonで、裏はArial。

私の作るハンドアウトやワークシートでは、フォントは基本をSassoon系で3年間ずっと通していたのですが、検定や入試など「時間との戦い」が求められる「読み」では、「読みにくさ」を感じる生徒もいるので、まずはArialで、その後徐々に「セリフ」のあるフォントに近づけて、慣れさせることを考え始めました。私も軟弱化、老化しましたかね。
でも、盛り込む内容は極力シンプルにしています。
最近は、本当に「(音であれ文字であれ)目の前に適切に用いられている英語があれば、そこから学ぶ」という感じでやっています。

語彙を「仕込む」ワークシートも作成。表面左、日本語で意味→英語の(音と綴り字で)仕込み、右側はフレーズのマッチングで、和→英の仕込み。母語で持つ知識を活かそうという目論見。裏面はflip & write など書く練習用で罫線。

どちらも「呟き」の方で、写真をアップしているので、探してみて下さいな。


高2は、「定義のミカタ」で、道具から動物など生きものの定義文に習熟する展開に。
ここで使っている教材は、

  • 長崎玄弥『奇跡の英文解釈』(1977年) 

です。
私が高2の時にやっていたもの。当時は返り読みをせず、一読了解で、「速読」の基礎訓練という位置づけの活動でしたが、今の生徒に対しては、このあとに取り組む「読み比べ」と、そこからの「四則演算(=足したり引いたり掛けたりして、いいとこ取りと却下でオリジナルの定義文を作成する活動)」に資するためにやっています。

前回扱った分の「道具」の定義文を引いておきましょう。

corkscrew

a. a device for pulling corks out of bottles
b. a tool used for pulling the corks out of wine bottles
c. a tool with a screw-like spike, used for drawing corks from bottles
d. a tool made of twisted metal that you use to pull a cork out of a bottle
e. a device for removing corks from bottles, which consists of a handle with a twisted metal rod to screw into the cork and pull it out

hammer

a. a tool with a heavy metal part on a long handle, used for hitting nails into wood
b. a tool that has a heavy metal head attached to a handle and that is used for hitting nails
c. a tool that has a heavy metal head attached to a handle and that is used for hitting nails or breaking things apart
d. a tool used for hitting things or forcing nails into wood that consists of a handle and a heavy metal top with one flat side
e. a tool with a heavy metal head mounted at right angles at the end of a handle, used for jobs such as breaking things and driving in nails

scissorsとtweezersはこちらのハンドアウトをご覧下さい。

定義のミカタその2:scissors & tweezers.pdf 直

後置修飾に習熟してから、今度は「場所」の説明で、関係副詞と前置詞+関係代名詞を用いざるを得ない課題へ。
「動物園」の定義を読み比べて、「水族館」、または「図書館」の定義文を作るグループワークです。

zoo, aquarium and library.pdf 直

高1は、ようやく「四角化ドリル」に入りました。
発音は、強弱のリズム、ビートに重点を置き、姿勢と呼吸と共鳴を確認してから調音へ。
発声と調音とは違うものなので、まずは力まないで、スッとやることが大事なんですけどね。
発音と綴り字の整理、グループ化のために『グル単』を使ってみたのは良いのですが、強勢の位置と長音、短音の整理の仕方で詰めが甘いので、結局、私が範読というかモデル音声を提供して、強勢の位置を書き込ませている、と言う感じです。結局、自作するしかないんですかね。

それでも連休前で「その4」まで進めましたので、恒例の「ポニョの上の崖」のお絵描きタイムです。先輩の作品を見て、学んだり、自信を深めたり。
連休明けには「意味順」導入の予定。
これで、「名詞は四角化で視覚化」と「助動詞の番付表」を使う土台を作れます。

語彙は『短単』の例文を書けるかチェックしていますが、返却時に生徒に言っているのは、

自分の間違ったところ、書けなかったところに、返却されてすぐ赤で正解を書き込む作業やマインドから卒業しなさい。

ということ。

正解は『短単』本編に書いてあるのです。チェックに入る前に、Read & Look upで「見なくても言えるように」して、3回とか5回とか縦書き練習をして、「見なくても書けるように」していて、正解に至らなかったものが、赤で一回正解を書くことで劇的な変化を生むとは考えられません。答えを見直すのではなく、そこまでの自分の取り組みの「お粗末さ」「甘さ」と向き合うこと、取り組みの「ムラ」や「ムダ」をこそ見直し、「適切なトレーニング」を自分に課すことの方が余程大切。

まあ、そのうち分かりますから。それが「卒業後」じゃないといいな、とは思いますけど。


さて、
先日、ある英語本を取り上げました(http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20160417)が、しつこく続編。
この本の表紙にも取り上げられ揶揄されている、「気をつけて」に対応する英語表現 (項目037、pp.88-89)。
この著者は、”be careful of …” は使わないといいます。
代案で "watch out for ..." をあげているのですが、他にも自然な「英語表現」はいろいろありますよね。
私がすぐ思い浮かべたのは ball parks でのwarning signsでした。

watch out for

ballpark_watchoutfor.jpg 直
https://theviewfromhomeplate.files.wordpress.com/2011/07/img_0339.jpg?w=640&h=371

be alert for

wrigley_be_alert.jpg 直
http://chicagouncommon.com/photography/wrigley_be_alert.jpg

be aware of

please be aware of.jpg 直
https://careeringcrawdad.files.wordpress.com/2012/07/img_6902-edenton.jpg?w=620

beware of

beware of objects leaving.jpg 直
http://www.sandrawagnerwright.com/wp-content/uploads/IMG_1138-292x300.jpg

「掲示」ですから、確かに書き言葉でしょうが、危険性を確実に伝えるためには、誰もが分かる英語表現であることが求められるでしょうから、このような英語を使わない、という人はあまりいないのではないかと思うのです。
ここで気になるのは、be carefulは使わないというのに、watch out forの意味を理解するためには、be careful とか、notice を知らなければならないという基本的なことに、なぜ無自覚なのか?というところ。

ケンブリッジの句動詞辞典から。


watchoutfor.jpg 直

このケンブリッジの辞書の用例で、1例目は、「視覚」に関連したものなので、英語を覚えたての人でも理解は比較的容易だと思うのですが、2例目の「ビスケット」のingredientsに関しては、普通は「それ、見えないでしょ?」と思う訳ですよ。
で、この "watch out for ..." というのは、 "be alert for ..." のように、 "..." の部分には、ものであれ、人であれ(「こと」もあるかな?) "potential danger/harm" が来るということと、それに対する「注意、意識を喚起する」 表現なんですよ、という部分を押さえないとダメだと思うんです。

Shorter Oxford Dictionary では、

watch out
a colloq. be alert, look out (freq. as imper.);
b (Cricket, now rare) field;
c watch out for ―, be on the watch for, be alert for.

という定義となっています。一般の英語ネイティブは、"be alert for" で語義を言い換えている訳です。

この辺りが「基礎語彙」の扱いの難しさでしょう。一定年齢以上の英語ネイティブや、熟達した運用者にとって「自然な」英語表現が、必ずしも、発達段階で、より初期に身につけるものとは限らないということですね。
指導する側での「目利き」が求められるところです。

そうそう、この英語本の079で取り上げられている、「英語をもう一度やり直す」で、自然な英語としてあげられている、”brush up (on) my English” ですが、訳者が分かっていないのか、著者本人の語感なのか、「ブラシをかけて磨き上げる」という日本語訳が気になりました。

この項目に関しては既に、このブログで取り上げていますので、過去ログをご覧下さい。久保野雅史先生のコメントまで是非。

"A Triton among the minnows"
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20090412

「雨の日に靴を磨くかのように」
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20090413

英語はもはやネイティブスピーカーだけのものではなくなっている、と言われて久しいと思うのですが、それに対する意見も賛否が分かれるのでしょうね。
次の Ngram viewer の各項目をよく見て欲しいと思います。


for or against.png 直

本日のBGM: Sometimes It Snows in April (Prince And The Revolution)