「そよそよ」でお願いします

暖冬とはどこの国のことか、というくらい寒いのですが、無事に暮らしています。

本日も告知から。

まずは、刺激的なブログemi’s でお馴染のemiさんから。

このワークショップは私がボランティアをしているTEDの字幕翻訳と英語学習指導のアイディアを組み合わせて、日本人英語学習者向けにつくり、昨秋から毎月実施しているものです。
回を重ね、改良を重ね、ようやく広くご案内できるところまでこぎつけました。
来月分の参加者募集を開始したところですので、もしよろしければ学生さんやお知り合いでご興味のありそうな方に情報をシェアして差し上げてください。

「TED翻訳体験+英語学習ワークショップ」
次回は日本時間2/27(土)朝10-12時/アメリカ東部2/26(金)夜8-10時を予定。
もちろん日本、アメリカ以外の地域からでもご参加いただけます。
料金は無料。詳細や参加者のご感想はこちらにあります。
http://www.englishcoaching.jp/workshop/ted

よろしくお願いいたします。

このTED翻訳体験のワークショップ以外にも、ブログのエントリーで紹介されていた、

「気持ち悪くない英語」のための授業アイディア
http://emisblog.exblog.jp/22314852/

がとっても気になります。
emiさん、上手くいったら、教材化を是非ともお願いします。


告知の2つ目は、九州大学留学生センターで行われる大名力先生(名古屋大学)の講演会。

 第4回 九州大学 留学生センター 日本語教育公開講演会
  日 時:2016年2月20日(土)13:00〜16:00
  会 場:九州大学(箱崎キャンパス)国際ホール(留学生センター1階)
  講演者:大名力(名古屋大学・国際開発研究科・教授)
  題 目:第一部「コーパス研究入門:基本と注意点」
      第二部「英語の綴りと発音の仕組み」

※ ポスターはこちらのpdfをダウンロードして下さい。
留学生センター講演会第4回目.pdf 直

お近くの方はご検討下さい。


さて、
このところ授業で時間を割いて模試の解説を続けているわけですが、同僚からも「珍しいね」などと言われたりしています。
今回1,2年生の授業で時間をとっているのは、授業で教えたこと、取り組んできたことが無駄になるのが嫌だから。

対話文の場面設定やディスコース、文法や語法・語彙の扱いにしても、読解のピースのリライトにしても、ライティングの出題や解答の英語の「つながりとまとまり(の無さ)」にしても、今や「模試」でしか遭遇しないようなものが散見されます。高1、高2では解答となる英語や日本語を直接書かせる「記述式」が主となるので、昔ながらの「総合問題」と言われる形式がまだまだ多いのです。

出題形式だけではなく、高1の表現系の作問と高2の読解のピースのリライト(というか肝心なところのカット)には問題がありありだなと思いました。

文法、語法・語彙の出題では、解答は確かにそれしかないかも知れないけれど、その判断の根拠を示すはずの「解説」が不十分だったり、いい加減だったりということで、生徒に配布されている冊子の記述をあちこち修正・訂正しています。

読解のピースの「書き下ろし」も高2くらいになると大変なのでしょう。ただ、どこかから「良さげ」な英文を拾ってきて、出題しやすいようにトリミングというのは、著作権絡みの諸問題をクリアーしたとしても、実は英語の、文体のセンスが問われるところなのです。

今回は高2の論説・解説文の類いの英文の扱いが「?」。
所々の語彙だけ手直しをすればイケる、との判断で選ばれたピースだったのでしょうが、原著(まあ、ベストセラー本といえるのでしょうね)にはセクション毎にある小見出しもカットして、具体例を詳述したある段落の殆どをカットして次の段落に無理やりつなげて、というような分量調整をしていました。ところが、原著では約350頁あるところ、前から60%くらい読んだところから都合よく問題文を切りだしているのです。

原典はこちら。
Don Norman 著、The design of everyday things (初版は1988年、改訂版は2013年)

[asin:B00E257T6C:detail]

原著でここまで読んできた人であれば、既に6割読み進めてきたのですから、もう意味の分かっているはずのキーワードも、この問題では「注」にある、拙い 短い日本語の解説のみが頼りだったりします。また、本来、注が必要な語句がスルーされたりしていて、一読ではなかなか理解が覚束ない部分が出てきています。出題者は恐らく、「そこは設問で問うていないから、文句を言われる筋合いはない」とでも思っているのでしょう。でも、だったら読解問題なんて、小見出しだけ読ませれば良いことになっちゃうでしょ? 書き手は、推敲するにせよ、でき上がった文章は、最初から最後まで、一つずつつながって、まとまっているんですよ。

本当に、こういったものを「問題として」読まされるから英語の感覚が狂っていくのではないかとさえ思います。

一見「ライティング」に見える出題も、実際のところ「構文」や「定型表現」を当て嵌めることができるかという設問が多く、英語としての「つながり」「まとまり」を生み難い「和文英訳」から脱し切れていません。そもそもの日本文に問題ありなんですよね。

今回の高2の模試で、もし、

  • A house must be a place where young children feel secure.
  • Parent should teach them dos and don’ts.
  • I will always be a strict father to my children, no matter what.

って書いてたら何点もらえるんだろうか?

文法や語法関連の設問で生徒に各種英英辞典を引かせて確認したのは、こちらの語。結局は語彙ですかね。

まずは、
形容詞closeの語義。乱暴者・面倒くさがりには “careful + thorough” という足し算パラフレーズをベン図を描いて示しておきました。定義も読んでおくと良いですよ。

thorough, often, strict
ex. Pay close attention. (World Book Dictionary)

giving your full attention to something so that you notice its details
ex. I wasn’t the one driving, so I wasn’t paying close attention to the route we took. (CACD)

C2
looking at or listening to someone or something very carefully: Police are paying close attention to the situation. Take a closer look at this photograph. (Cambridge Advanced Learners Dictionary)

careful and involving attention to every detail
ex. I’ll take a closer look at your homework tomorrow. (Macmillan English Dictinary)

この語が、もともとは「物理的な距離の近さ」を表わしているとしても、解答解説では、現在の語義をきちんと示して欲しいものです。

その他、主として「英作文」では、

house
home
household
family

さらには

rules
manners
behavior
principle
policy

あたりを。「辞書の定義を活用することが大事。そのためには複数の辞書の定義を比較する横断読みが有効。」というメッセージを送っています。

というのも、例えば、COBUILD の英英和で rule を引くと、

instructions that tell you what you are allowed to do and what you are not allowed to do

って出ているんですよね。

Merriam-Webster の学習辞典では、

a statement that tells you what is or is not allowed in a particular game, situation, etc.

CACDだと、

an accepted principle or instruction that states the way things are or should be done, and tells you what you are allowed or are not allowed to do

とあるのです。
andやorで作られる、英語として通りが良い対比、並列の構造を掴むのに良いお手本であるだけでなく、「だったら、くどくど言わないで、rules だけでいいじゃない!」という英語の語感を掴むことにも役立つでしょう?

授業や学習をいかに豊かにするかに腐心したいものです。

高1の「英作文」での、「ゆるキャラ騒動」はまたいつの日にか。


今日は帰宅途中で、商店街まで車で。
山口に来てから長らくお世話になってきた「スコットランドマート」さんが新展開を控えての閉店、ということでご挨拶に行って来ました。
東京でもいろんなお店で服を買ったり、オーダーしたりしていましたが、服好きとしては、ただ単に、

  • セレクトショップ

ということばでは表わせない愛着のあるお店になっています。
年末には、系列店である、自宅にほど近い SPICE さんが先に閉店していました。

山口に来て、床屋を見つけるのに苦労して、服を買うところに悩んでいたところで、本当にぶらりと入ったのがもう9年前の秋口。
最初に買ったのは、確かハイペリオンの白いコール天。そのすぐあとチノパンを二本色違いで買ったのだと思います。
オーナーがいろいろと「攻め」の提案をしてくるのが何とも楽しく、そんなにたくさん買い物をしている訳ではないと思うのですが、立ち寄るのが楽しみになっていました。
私も志を持ちこの地に来たとはいえ、本業や生業が上手く行っていない時など、このお店の「素敵な一着」、「お気に入りの一枚」のおかげで救われたと思うこともありました。
そんなスコットランドマートも屋号とともになくなる、ということで名残惜しくはありますが、3月に、全く新たなお店としてオープンということですので、楽しみに待つこととします。
ありがとうございました。

本日のBGM: Something Better (Barry Mann)