センター試験の自己採点が終わり、データの集計を業者に委ねてその結果待ち、といったところに現在位置しています。この後、高3は個別指導に移行し、高1、高2の授業は並行してあるので、教師もなかなか落ち着きませんが、たとえ試験が終わっても「学び」は続くので、個別試験(2次試験)に向けた学習だけで終わるのではなく、チャンネルは常に開いておかないとね。

前回のエントリーで「物語文」「ナラティブ」の話をしましたが、やはり良質のナラティブをしっかりと読んで高校段階を卒業して欲しいという思いを四半世紀持ち続けて来ました。

東京を離れる直前の英授研関東支部の新春特別「福袋」企画で、「英語の歌」の実践発表をしてから早9 年が経ちますが、私が「歌」で、もっと言えば、「歌詞」で扱っていたのは「良質のナラティブ素材」なのだと思います。

この「英授研」での発表に関してはこちらの過去ログを
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20070114
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20070120

先日も、ある旧知の英語の先生から、「卒業前の最後の授業であなたなら何をしますか?」という質問があり、暫し(二三日)考えていて、次のように答えました。

これは難しい「お題」ですね。
大学進学であっても、志望分野も英語の習熟の度合いも違うとなると、「試験対策」というよりは「これからの英語との付き合い方への示唆・啓蒙」の要素が多くなるのかなと。
高校卒業段階最後の教材で2コマ与えられるのであれば、個人的には「良質のナラティブ素材」を読ませるか、「物語性が強く、象徴的なメッセージが汲み取れる洋楽曲」を聴かせる(歌詞を読む)、という感じですかね。 「もし私が、今(2016年1月)、そういう状況下で2回の授業をする」のだったら、David Bowieへの追悼文となっている英語を集めて読ませて、彼の曲を1曲歌うと思います。

その後も、この「お題」のことは考えていたのですが、今回のセンターの大問5にまつわるあれやこれやがあり、改めて、「良質のナラティブ素材」を経験させることの意義、そもそもの「良質なナラティブ素材はどこに?」ということへと考えが及んでいました。

私が東京で働いていた1990年代の終り頃から、現在まで、高3で読ませていることの多い「物語」は、こちらの短編になります。

Grandma's Lovely Looking Glass, A Mirror to the Past
By Jonnie Carter Bassaro
Christian Science Monitor, August 18, 1995
http://www.csmonitor.com/1995/0818/18161.html

そろそろ20年になりますが、1996年の津田塾大学の英文学科の入試問題・長文で、この短編が一部書き換えられて使われていました。私は当時、O文社の入試問題正解を書いていて、津田塾大を担当していたこともあって、この問題文と、その原文とを知ることになりました。津田塾大の90〜00年代の出題英文のセレクションは流石にセンスが良いなぁと思っていましたが、その中でも、この短編は良く出来ているなぁと思ったので、それ以来、度々「人文系進学希望」の人たちを中心に読ませています。
著作権の問題があろうかとは思いますが、入試に使われた改編版の英文と内容理解を問う設問(のみ)とをこちらに紹介しておきます。

津田塾大・英文学科・1996年
津田塾96.pdf 直

当然、この問題の『…正解』での解説は私が書いているわけですので、拙いものですが、そちらも貼り付けておきます。一部、私の原稿執筆後の著者校のあとで勝手に差し替えられている記述(「却下条件」などという用語を私は使いませんので)がありますが、概ね私の書いたものが使われていると考えて頂いて差し支えありません。今思えば、 “Miss Mitchell” の呼称の統一などツメが甘いところが見られますが、この当時の私の仕事はこの程度だったということです。

ただし、この年度から『…正解』は、編集方針が変わり、問題本文と解答・解説が別冊となった以外に、個々の設問への解説を詳しくするよりも、「全文訳」をつけてくれ、という注文がつくようになりました。私は、「全文訳を読んで、自分の読み誤りに気づける高校生ばかりではない。解説がなければ答え合わせだけで終わってしまう。原稿の分量は決まっているのに、全文訳はスペースを取り過ぎる。」と言って、その方針に反対したのですが、聞き入れられず、この私の原稿では「大意」というせめてもの抵抗をしています。この翌年に「全文訳」の注文は更に厳しくなったこともあり、私はこの仕事から手を引いたというのが顛末です。

津田塾96解答解説.pdf 直

この大意や解説に誤りや疑義がありましたら、メール等でお知らせ下さい。
二昔前のネタですが、高校段階での「物語文」の指導に活用いただければ幸せます。

本日のBGM: Believe (Nils Lofgren with Neil Young @Bridge School Benefit 2015)