ナンギヨノー

いよいよ、残すところあと一週間となりました。

第8回 山口県英語教育フォーラム
2015年11月14日(土)開催
講師は

・ 松井孝志

・ 亘理陽一

・ 寺沢拓敬

の三人。参加費は無料。

詳細&申し込みはこちらの頁からお願いします。
http://choshu-elt-2015.g.hatena.ne.jp/tmrowing/20150908

おかげ様で懇親会は早々に満席となり、受付を締め切りましたが、フォーラム本編はまだまだ余裕がございます。午後からの参加でも構いませんので、よろしくご検討下さい。

事務局長として、印刷業者への入稿も終え(納期ギリギリでしたが)、あとは当日を待つだけ、と思っていたら、YCAMの中にあるレストランが閉店していることが分かり、労福協会館周辺の「土曜日ランチ営業」を確認する自転車ぶらり旅。ちょっと歩きますが、いくつか、土曜日でも営業しているお店を確認してきました。
自分のスライド準備と並行して「ランチマップ」も作成しないと。

さて、授業は淡々と。

高1の「全国縦断」は、青森の後、秋田、新潟、石川と日本海側を下っています。山形をとばしていますね。ご免なさい。


昨年と同じ問題で様子を見てみました。 

新潟の2013年の素材文は、昨年度の終わりに扱ったものを、過去ログにも記しておきました (http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20150205) が、それを書き換えたものがこちらになります。

原文の115語が180語へ増えています。

Hello, everyone.
My name is Mary White. I am one of the 20 members of Students Delegation from New York. We are here in this school for one day. This is our first visit to a Japanese school, so we are very excited. We are all in a special language course at our school, and we have studied Japanese for six months. Although we cannot read Chinese characters well, we are able to speak and listen to very basic Japanese. So, when you meet us, feel free to talk to us in easy Japanese.

We will join you at English, music and math classes in the morning. In the afternoon, we will give you a talk session. We will tell you about how our school life goes in New York. We will show you some pictures we took and talk about them in English. Please ask us in English or in Japanese if you have questions. The talk session will be held in the main hall at 1:30 p.m.

I hope we will have a good time with you today.
Thank you. (180 words)

生徒にはよく「話型(わけい)」といっていますが、物語文でいう、story grammar を、その他のテクストタイプでも身につけることが、個々の表現を覚えること以上に重要である、と説いています。内容の理解と保持、そして再現(再生)には勿論、自分で、つながりとまとまりのある話を紡いでいく際にも、それが役立つからです。

生徒たちは、この前に、青森での2011年の出題、Koji & Shiroのお話で、オリジナルと、書き換え後のものとを聞き比べ、読み比べをしています。
(過去ログ参照:http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20111128)

そして、この新潟の「Maryさんの『Youはどうしてニッポンに?』」のお話です。「Koji と Shiro のロンドン日記」との比較で何に気づくか?
放っておいたら、ほとんどの生徒は、何も気づきません。
私からの発問で、「話型」の種を植える段階です。

そして、この後に、石川県の2011年の出題へと進みました。
公立高校入試としては比較的「長文」になるかと思います。書き換え前のオリジナルでも、「大まかな内容理解の設問に答えること」は容易くとも、「その英文の内容をきちんと理解すること」は結構大変なのです。

今年は、中抜きで、最初と最後だけを印刷して与え、その抜いた部分を聞き取りにしています。
5つのパートを拵え、整序完成の課題で答え合わせ(=原文の確認)をする際に、なぜ、その順番は逆転しないのか?なぜ、このあとはこれ、このあとはこれ、とつながりがわかるのか?ということをやっています。

過去ログではこちらで扱っています。(http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20131125)

「Koji と Shiro のロンドン日記」「Mary の『Youはどうしてニッポンに?』」の二つのお話と、この「日本からやってきたMayumiと仲間達のニュース」を比較してわかることは?
本当に、面白いくらい、何に意識を働かせているか、言われないと分からない人が殆どですから、「種を蒔く人」の活動は続くのでした。
先ほどリンクを示した過去ログで既に書いたことですが、大事なことですので、再録して強調しておきます。

高校入試レベルで、伝達文を用いる際には、その多くが、発話を引用符で囲み、sayやtellなどの動詞を用いる傾向にあります。思考や認識、記憶に関わる動詞 (think, know, rememberなど) においても、また、依頼や助言、激励などの対人機能を司る動詞 (ask, advise, encourageなど) においても、目的語には人称代名詞のみ、または、指示代名詞のthis, thatやit で「まとめ」られていることが多いようです。その結果、that節や、wh-節などの「名詞節」がほとんど用いられずに、かなり長い、内容も複雑な伝達を「引用符」で括り、しかも、その内容を、this, thatやitで引っ張っていくことになっています。
中学段階では、「話法の転換」に習熟していないから、と言う理由で、このような「名詞節」を避けているのでしょうか?あくまで印象の段階ですが、結果的に、高校に入り、教材に「説明文」「論説文」が増えてくると、名詞節の処理で相当に苦労することになっているように思います。私が高校入試の素材文を選ぶ際は、この「名詞節」、私の指導では、
• 「ワニの口」で、ワニのお腹の中に「とじかっこ」があるヤツ
と呼んでいる文法項目の使い所、効き目を確かめられるものが多くなっています。そこで確かめるのは、名詞節の固まりだけではなく、その「ワニ」を引き連れる、ワニ使いたる「動詞」の用法でもあります。

ということで、「ワニの生態観察」のワークシートを配布し、これまでの英文から、「ワニ」を捕獲するミッションへ。皆無事に生きて還れるでしょうか?


高2は、ホワイトボードシリーズ(副詞節シリーズ)を進めています。

till/ until
by the time
as soon as とonce
even though

までカバーしました。
個人での、Read & Look upに続いて、「タワー型」でのマッチアップ練習を経て、対面リピートまで。
改めて、辞書に収録されている例文の質の高さと、紙と活字の辞書の限界とを感じています。
私は、iPad mini(3) にアプリ辞書を複数入れていて、そのうちのいくつかは「用例検索」が可能ですから、絞り込み検索をかければ、お目当ての用例候補が瞬時にして得られます。
一方生徒は、見出し語から例文を見ていきますから、限られた用例をもとに、比較検討していく訳です。彼らの目から、手から漏れるお宝を拾っていくのが私の仕事となります。しかも、彼らが今手にしている『紙と活字の辞書』で、見出し語では検索できなかった用例が、どのエントリーの用例としてあがっているのかを指摘しています。
例えば、onceの用例。

Once they had ascertained that he was not a spy, they agreed to release him. (COBUILD AAW)
Once you have heard the song, you’ll never forget it. (Wisdom JE)
Once I have made a promise, it’s too late to back out. (Wisdom JE)

など、アプリ辞書の検索で、リアリティ溢れる用例が手に入ります。
ただ、『コウビルド英英和』では、ascertainの項目に、『ウィズダム和英』では、順に、「〜ものなら」(ひとたびその歌を聞こうものなら決して忘れないだろう)と「ひく」(約束してしまったのだから今となっては引くに引けない)の項目に載っている用例です。

even though では、こんな用例を補充しました。

He spoke boldly even though his legs were quaking.
Even though the teacher scolded the pupils, he had their best interests at heart.

ともに、『ランダムハウス英和大辞典』のアプリ辞書(物書堂版)からの用例です。
前者は、quakeの項に(「足は震えていたが、大胆に発言した」)、後者は、interestの項(「先生は生徒をしかっても、心では生徒のためを思っていた」)に載っています。

前者は、『オリバーツイスト』の、お粥お替わり事件を彷彿とさせるね。後者は、何だろう、正に今、みんなの目の前にその英文を体現している人が…。

というような雑談で補足しています。

ただ、いくら私が普段から「ことばの生息域に敏感になれ!」と力んでいても、これは紙と活字の辞書からは拾えないと思うのです。

デジタルネイティブ世代として今を生きる高校生諸君の多くがスマホを所有している「今」、何にお金とエネルギーをかけるのか?

という問いかけも忘れてはいませんけど。

高3は、「診断テスト100」の肉付け。
これまでの授業で、左のものを右に、タテのものをヨコにしただけで作業が終わっている人が、生まれ変わり、「学び」へと踏み込めるか、手が届くか、この時期まで来てしまうと流石に難しいですね。
文法や表現一つをとってみても、センター試験でよく見られる「グラフ」を表わす英文で、

  • 比較・増減・比例

などの表現を「整理」するわけです。模試の見直しをして、用例をノートに書いている生徒もいます。でも、その作業がそこで「閉じて」いたら、学びは発動しないと思うのです。
「診断テスト100」では、

64. 休暇を利用して海外旅行をする学生がますます増えている。
More and more students are taking advantage of their vacations to travel abroad.
A growing number [Growing numbers] of students are traveling overseas during their vacations.
The number of students traveling abroad for their vacations is increasing.
※ 主語に増減を意味する名詞を立てたら、とじカッコの時制に注意。
※ a number of とthe number of の対比だけで覚えようとすると、numbers of で躓きますよ。
※ increaseの中にすでに比較が含まれているので比較級とは同時に使えない。
※ 名詞(主語)と動詞の呼応を完璧に。人が増えるのではなく、「数」が増えるのです。

という足場がありますが、その足場は確かなものとして固まったのか?さらには居場所として広がったのか?が問われています。
この<増減>の項目では基本例文のストックが極めて重要です。知らなければバリエーションにまったく気が付かないことが多いからです。
肉付けする過程で、自分の知識も確かなものになっているかを、次のような用例で揺すぶっていきます。

「差」「変化」を確認すること。
1. Food prices increased by 10 % in less than a year.
「食品の価格が1年足らずで10%上がった」

2. The percentage dropped from 30% to 20%.
「その割合は30%から20%へ落ち込んだ」

3. Unemployment rose by 3% last year.
「失業率は昨年3%増加した」



「存在文」での表現。主語の選択と動詞の呼応に注意。
4. There has been a huge increase in profits.
「利益において多大な増加があった」

5. There was a slight increase [rise] in crime rate in major cities.
「大都市圏での犯罪率にわずかな増加があった」



動詞の選択に注意
6. Hourly output by workers declined 1.3% in the first quarter.
「被験者の1時間あたりの出力は最初の4分の1(= 2000mのレースのうち500m分に相当)で1.3%低下した」 

7. Raw-steel production decreased 2.1% last week.
「精製前の鉄鋼の生産量は先週2.1%減少した」



次の例の英語的発想(主語と動詞の選択)に注意。
8. We have seen a decrease of 3% in the rate of inflation.
「インフレ率は3%減少した」 



特に%や分数に関しては、基本の数量・割合を表す例文を完璧にしておく必要があります。

主語と動詞の呼応。
9. 90% of the land is cultivated. 「土地の90%が農地となっている」

10. Eighty per cent of the workforce is/are against the strike. 「労働者の80%がストに反対である」

11. 65% of children play computer games. 「子どもたちの65%がファミコンをしている」

12. Half (of) the members voted against increasing subscriptions.
  「委員の半数が講読数増加に反対した」

13. A quarter of the money has already been spent. 「お金の4分の1はもう使ってしまった」

14. Two thirds of the area is flooded. 「その地域の3分の2は洪水の被害にあった」

15. Three quarters of all graduates find jobs within six months.
「全卒業生の4分の3が6ヶ月以内で就職を決めている」

これらの用例は90年代の終わりに授業で使っていたハンドアウトからの抜粋です。「ファミコン」とか、時代を感じさせますね。ただ、笑ってばかりもいられません。

授業傍用の『前置詞のハンドブック』(私家版)では、

WITH
< 付随 →[時間をともにする] → [一点で] → 『〜とともに』『〜と同時に』>
[同方向へ移動する] → [流れで] → 『〜するにつれて』>
30) “Be yourself.” With these words, my father died.
   「自分は自分、他人は他人だ」父はそう言い残して世を去った。
31) Man will grow wise with age. You are old enough to know better.
    人は年をとるにつれて賢くなるものだ。お前も、もう分別がついていい年だ。
32) Grow old along with me, the best part of our life is waiting.
    僕と一緒に年をとっていこうよ、一番いい時期はこれからなんだ。

という用例が比喩的な発想と共に示されています。

このようなwithの用例で「比例」の感覚が掴めれば、先ほどの「増減」の表現との橋渡しも可能になると思っています。

「ヨンギノー」の前にやることが山ほどあるのです。

本日のBGM: 朝日のあたる道 As Time Goes By (album mix) / Original Love