有識者とは誰のことか?

tmrowing2015-10-21

中間試験も終わり、悲喜交交も O. Henry の『賢者の贈り物』的。

Which instigates the moral reflection that life is made up of sobs, sniffles, and smiles, with sniffles predominating.

定期試験では、選択問題を採用して、生徒は自信のある問題を選んで点を取り、教師は生徒が何を避けたかで定着の度合いを推測するということもあります。表現や文法だとこんな感じ。蛇の道は邪道とも言えますけど。

選択問題例.png 直

明示的な指導というのも、用途が帯だったり襷だったりとハッキリしていればいいのではないかと思っています。

今教えている高1での「後置修飾」のドリル。二文連結はやらずに、名詞句の限定表現を、文から名詞句を括りだす、という手順で行っています。所謂「接触節」が先、その後で「主格」へ。人ならwho、モノならthatで導入しています。

2015後置修飾・接触節から関係詞へ.pdf 直

その一方で、高3は「受験学年」ということもあり「中間試験」直後に、記述型の模試。
トレーニングの成果を模試で試す、というのなら意味・意義はあるけど、「参加する」だけではねぇ…。
模試監督をしていて疑問に思うことの一つに、「知識の問い方」があります。
せいぜいがA2レベルの初学者なのに、語彙・文法・語法の細かいところまで知識を問う意義とは?比喩になりますが、そういう試験対策は、成人が摂取を推奨される分量で、蛋白質は40%しかとっていないにもかかわらず、ビタミンCだけ400%もとっている、みたいな感じがします。
摂取が必須の栄養素と、サプリとして補えばいいものとの識別・峻別といえばいいですかね。

例えば、いや、あくまでも「例えば」の話ですけど、

If it had not been for A (=名詞句), 主節.

を、

Had it not been for A, 主節.

へと書き換える意図とはなんでしょうか?
A2レベルのL2学習者が自発的な発話や作文で後者を使うだろうか?と訝しく思います。倒置で省略というかもしれませんが、単に省略であれば、If not for A, 主節. という表現も実際に使われているのですから。

Had it not been for A, …. と言う表現が「会話では使われない」などと言うつもりはありません。例によって、COCA から乱暴な検索結果を転載。

had it not been for (spoken).png 直

ただ、「試験」から英文和訳など「日本語」を排除したがために、理解しているかどうかを確かめる術が貧弱で、理解の段階でとどめておけばいいものまで、空所補充や整序作文などの形式で英文として「産出」を求めることは要再考だろうと感じています。

更に言えば、Aの部分が名詞句であれば前置詞 for を標識として使いますが、節を導く場合は接続詞thatになります。

were it not that節.png 直

Were it not that 節の例。これは入試では殆ど問われることはないのですが、書き言葉ですから、その部分を設問にしないというのも、まあ妥当な判断・見識でしょう。


ということで、こちらの記事・特集ページでもお読み下さい。

ELT Journal Debate: Language Testing Does More Harm Than Good

https://storify.com/OUPELTGlobal/iatefl-elt-journal-debate-primary-elt-does-more-h

このディベートのmotionは、畏友 Richard Smith (ウォーリック大)から。
日本の英語教育界では、取り上げられることさえ希な命題に取り組んでいます。
Richard Smith氏本人のサイトでも簡潔にまとめられています。

The Harm of (English) Language Testing

http://wp.me/p6Ej7F-6

「ディベート」だけに、4技能の外部試験導入に躍起になっている日本の有識者の方たちに参加して欲しかったですね。
そうそう、このディベートの対戦相手は、当初、Lynda Taylor氏だったのが、Anthony Green氏に変更になったのでした。大人の事情かしら?どちらもBedfordshire大学の研究者です。Bedfordshireの言語テスト研究機関のお墨付きをもらっている日本の言語テストでは、TEAPが既に「商用ベース」で運用されていますよね。

来月、11月14日開催の「第8回 山口県英語教育フォーラム」では、私自らが前座を務めますが、このRichardの提言・異議申し立ては、「英語力の可視化、かくかくしかじか」というタイトルの「かくかくしかじか」の部分に該当する大きなテーマでもあります。

ちょうど1年前に行われていた、
IATEFL Testing, Evaluation and Assessment SIG Conference
Hosted by Centro de Lenguas Modernas, Granada University

http://www.clm-granada.com/html/iatefl_conference/presentations.htm

にも、興味深いテーマが並んでいます。このカンファレンスに参加されていた方からの情報もお待ちしています。

最近は老眼が進んできたので、iPadにダウンロードしても、結局プリントアウトして読むことになります。パワポのスライドそのものはまだ良いけど、ハンドブックくらいの分量がある「マニュアル」はツライ…。

本日のBGM: The Blind Men and the Elephant (Natalie Merchant)