過ぎたるは…

季節外れの台風の影響で、試験は一日スライドしたものの、中間試験もなんとか乗り切り試験開けの授業再開。いや、「私が」乗り切っただけですけど。
今回は、2年生で3年ぶりの満点が出たので、少し報われた気持ちにはなっています。光は差してくるものですね。

その高2の試験返却解説授業は「中間試験が終わりましたね!」「そうですね」「Say that in English.」というお決まりのスモールトークから。
欧陽菲菲の ”Love is over” の出だしを聴かせてから、意味順との対応を解説。
Love is over. の 「誰・何スロット」を「中間試験」で置き換えて、

  • 「中間試験」 is over. とするのが第一段階。ここが直ぐに「すっと」出るならまだ見込みはあるけど、ああでもないこうでもない、と2秒以上経過していてはね。
  • 「中間試験」は複数科目あるから、「中間 exams」だな、と思えれば、って思えるよね、そのために「四角化ドリル」を1年生の時から「来る日も来る日も…」やってきたんだから。で、複数形のexams に合わせて is をareに換えられるでしょ。だって「be動詞、時制が決まればとじかっこ。とじかっこのつくbe動詞の形は全部で5つ、丸覚え。Is, am, are, was, were」って何万回言ってる?

「意味順はOS」。「それぞれのスロットに何を入れるかの選択判断」と「そのスロットで『コンボボックス』脇のボタンをクリックしたら、ドロップダウンリストで候補がダーッと並んで出てきて、そこから選べるように語句を仕込む」のと両方が必要。という話。時代がようやく追いついたのだなぁ。
ということで、明示的知識のメタ知識を刺激して本題の試験解説へ。
試験の解説だというのに、いきなりThe Beatlesの初期ヒット曲を聴かせて、「この曲を聴いたことがあるか?」を問うという変化球。4割くらいの認知度。ただ、アーチスト名や曲名は出てこないので、タイトルを抜いて歌詞を印刷した紙を配布し、読みながら一通り聴いた後で、「曲名づけ」課題。
高1の3学期に、The Divine Comedy の曲 “Tonight we fly” を使っているクラスなので、英語の歌詞を見る視点として、

repetition (repeat)
contrast

と板書してから聴いて読んでもらいました。その結果、

  • Last night
  • Come on, girl!
  • Like I please you

などの衝撃的タイトルを経て、種明かし。
今日の曲は、

  • Please, please me.

でした。中1のtmrowing少年が「どうぞどうぞ私」だと思っていた話を紹介して、

Please, please me
Like I please you

というサビに着目させてコメント。「くり返し」と「対比」の確認。念のため辞書で、pleaseの「動詞」がどう扱われているか調べて、訳語で「実感」が持てるか、を問う。
『コーパス口頭英作文』の試験範囲にあった表現の、

  • It’s my pleasure.

はなぜ、「喜んで」で、pleasureを使うのか?板書した repetition (repeat) の伏線に気づいてもらう瞬間。意味の核と品詞が変わったことによる見た目の変化(「派生形」という言葉はまだ使っていないですね)に柔軟に対応できるかが大事という話から、別な設問で「四角化ドリル」からの、

  • the news his parents were happy with

にある、形容詞 happy のヨコにボタンマークを書いて、「ドロップダウンリスト」。

  • glad
  • disappointed
  • pleased

などの例を示して、「分詞形容詞」の復習。既知とのネットワーク、しっかりした軸足からの豊かな一歩。
ということで、「答え合わせ」の(殆ど)ない試験解説です。
この日は、高2は2コマあったので、2コマ目の最初のスモールトークは、

  • 今日の英語の授業の半分が終わりました。
  • (小声で)そうですね。
  • Say that in English!

という前事の復習+新たな悩み処。
halfという語の語法は、それ自身の冠詞(限定詞)もそうだけれど、動詞の形合わせでも悩むもの。英語の名詞の「数」というのは、どのレベルでもつきまとう「基礎」であり、「本質」なのです。
故に「名詞は四角化で視覚化」です。
この時間のハイライトは、意外にも、

  • Where are you?
  • Where are you from?

の対比と奥深さでした。この二つの英文から、本当に多くのことが学べます。高3は、「診断テスト100題」の中で、

  • ここはどこですか?

をやっているので、

  • Where are we?
  • Where am I?

に対応する、

  • YOU ARE HERE

の掲示が直ぐに思い浮かぶと思いますが、慣れないうちは、Where are you? と自分が口する場面が思い浮かびにくいものです。ということで、ドロシーのようにか細い声で私が言ってみたわけですが、反応は芳しくありません。高2生は『オズの魔法使い』にはあまり馴染がなかった模様で、「読み比べ多読」で名場面扱う必要性を感じました。

そうそう、1コマ目に聴いた、Please, please meの歌詞で、

I do all the pleasing with you
It's so hard to reason with you

という韻も踏む対比の2行があるのですが、この最初の文の “do all the pleasing” は、「現在時制」というものが何を意味するのか、ちょっとだけ「世界」を掴んだような気にさせてくれます。
過去ログで言うと、

written corrective feedback
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20120718

に「着眼点」も書いてありますから、そこも併せて読むと面白いと思います。
相変わらず、「空所無し適語補充」の苦手なものがいるようですが、何のために「L板」を使うのか、良く考えましょう。
「あれ?と思った時に戻れる確かな足場」があるかどうか、大事です。「あしか」がいるのは水族館です。今回の試験にも出ていましたね。

II. 次に示した表現は、全て「動物園 (a zoo)」の定義である。この定義を参考にして、次のa. か b. のうちどちらかの定義・説明を書きなさい。

a: 「水族館 (an aquarium)」
b. 「図書館 (a library)」

1. a large place where many types of wild animals are kept, usually in cages, so that people can see them (MED)
2. an area in which animals, especially wild animals, are kept so that people can go and look at them (Cambridge Academic Content Dictionary)
3. an area in which animals, especially wild animals, are kept so that people can go and look at them, or study them (Cambridge Learner’s)
4. a place, usually in a city, where animals of many kinds are kept so that people can go to look at them (LDOCE)
5. a place where many kinds of wild animals are kept for the public to see and where they are studied, bred and protected (OALD)
6. a park where live animals are kept so that people can look at them. (COBUILD Advanced Dictionary )

高3は、というと「診断テスト100」の準備で燃え尽きた者も数名いたようですが、ここからが「あなたの学び」ですよ。高2とは違って、「四分割・裏表・自作自演」も既にやっているのですから、「出来ない言い訳の出来ないシステム」に自分自身を乗せることです。

さて、
台風の影響で試験日が1日スライドした結果、月曜日まで試験だったので、その間の週末は本業に行かず終い。
『英語教育』を買おうと週末に出かけた書店では、肩透かし。その代わりに、棚で見かけた『総合教育技術』(2015年6月号、小学館)が、

  • これからの「小学校英語」

という特集だったので、買って帰りました。
私はまだ「答申」の段階かと思っていたのですが、来年、2016年に「学習指導要領」の改訂を本当にするのですか?新課程(現行課程)が3年目。2年間やってきて、問題山積ですよ。まずは「現行課程の検証・評価」が先でしょうに。
「ヨンギノー・ヨンギノー」と叫ぶ高校英語や大学入試の改革も「物語」ありきですが、この雑誌の特集で見る限り「小学校英語」を既定路線として推進する「物語」にも随分と問題があるように思います。

Part 1(pp.10-14) では教科調査官である直山木綿子氏の

「小学校英語」はこう変わる
外国語活動から教科としての英語へ
英語の性質に慣れる新たな領域の学びも

という原稿。p.13で自画自賛のように引かれている「補助教材」の扱いには驚きました。
過去ログをご覧下さい。

Look who’s talking!
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20150407

Part 2は「連続提言」
提言1(pp. 18-21) は吉田研作氏

これからの英語教育は、知識の蓄積ではなく「英語を使って何ができるか」を重視すべき

この初頭で引かれている

「先日、文部科学省が発表した高校3年生の英語力を測る統一テストの結果からも、ほとんどの生徒が想定した学力に達していないこと、特に「話す」「書く」については8割以上の生徒が中学程度の学力しか身につけられていないことがわかりました」(pp.18-19)

という部分は、極めてミスリーディングです。過去ログをご覧下さい。

明日の風で桶屋は儲かる?
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20150326

まだ「速報値」しか公表されていない「フィージビリティ調査」の、「数値」だけが独り歩きどころか、暴走し始めているような危惧を感じています。いったいいつ、「どのようなライティングのテストを課したのか」という「内容」が公表されるのでしょうか?テストそのものの「フィージビリティ」は一体誰が検証するのでしょうか?吉田氏は「有識者会議の座長」だったのですから、むしろ、そのテストの検証を指揮するような立場にあるべきなのでは?

提言3 (pp. 26-29) は寺沢拓敬氏。

社会の実態を正確に把握し
エビデンスに基づいた教育を

新進気鋭の 社会学者「応用言語学者」寺沢氏による提言は傾聴に値すると思います。寺沢氏に執筆を依頼した編集部に拍手。寺沢氏ご自身がブログでコメントをしていますので、そちらを是非。

こにしき(言葉、日本社会、教育)
「小学校英語とエビデンス」(『総合教育技術』6月号)
http://d.hatena.ne.jp/TerasawaT/20150517/1431886200

Part 3は「実践レポート」。
指定校から2校、特区で1校のレポート。中高の「実践報告」でも良く思うことだが、指定校や拠点校ではない、予算や人的加配などの支援が薄い(あるいは「無い」)「丸腰」の小学校は、何をどう備えればいいのだろうか?

とまれ、英語教育関係者は読んでおいて損はない特集なのでは、というのが率直な感想です。上記リンク先も是非。

本日のBGM: Something Better (Barry Mann)