「そのうち」はそのうちに

おかげさまで、「第7回山口県英語教育フォーラム」は90余名の参加を得て無事終了いたしました。

千葉県、東京都、埼玉県、長野県、愛知県、岐阜県、大阪府、京都府、岡山県、広島県、福岡県、大分県など県外からの参加者が、約40%、地元山口県からの参加者が約60%となっております。

講師の田地野彰先生、胡子美由紀先生をはじめ、参加された皆さん一人一人に改めて御礼申し上げます。
ありがたいことに「呟き」のまとめもしていただいております。

togetter: 2014第7回山口県英語教育フォーラム!
http://togetter.com/li/749009

毎回主催者側として思うのは、「皆さんの価値観を揺すぶること」です。
好意的な反応もあれば、疑義が沸いてくることもあるでしょうし、自分の実践を否定されたような思いに駆られることもあるでしょう。
そういった思いはまさに「それぞれ・それなり」だと思います。そして会場の磁場を離れて、ご自身のメインフィールドに立った時に、じわじわと染み出してくるようなところに「本当の理解」があるのかもしれません。そういう「そのうち」の訪れをお待ち下さい。
会場に90余名がいて、「呟き」は数名の方から発せられているということの意味も考えておきたいです。昨年のフォーラムから、実況的な「呟き」が登場しました。時代の流れでしょうか。
録画や撮影は遠慮していただいていますが、実況の「呟き」を特に禁じているわけではありあませんし、事前事後も含めて、フォーラムの内容をレポートすることに制約を設けているわけでもありません。「二次使用」に関する、「当たり前」の配慮をしていただくだけのことです。
ただ、このブログや、「呟き」のようなSNSでは聞こえてこない「声」にこそ耳を澄ませる感性というか、「リテラシー」と「デリカシー」が、情報の受け手には求められるのでしょう。

私の座右の銘は「群れるな、連なれ」ですが、この「山口県英語教育フォーラム」が、居心地の良い群れでの馴れ合いになってしまっては、このフォーラムを始めた意味がなくなると思っています。
まず第一に「揺すぶる」必要があるのは私自身の在り方、ということなのでしょう。

今年のフォーラムは第一回以来の自分の発表がありました。

とかく「伝達講習会」になりがちなセミナーへの異議申し立て、というのがこの「フォーラム」の立ち上げでもありましたから、今回は「どうFBするか?」という技術論よりも「タスク」と「タスク」を「つなげる」FBの必要性と、下位タスクが最終作品で「まとまる」ためのFBの在り方を感じて欲しかったというのが根底にあります。
私の見えている景色を複写してお見せする、というのではなく、「私はどこからどこまで行って今の景色を見ているのか」という「ナラティブ」というか「ミニ・オーラルヒストリー」というかそういう類いの「語り」です。独善的な「騙り」にならないように、そして参加者の皆さんの善意・好意に「集る」ことのないように心してはいます。

「システム論」とか「マネジメント論」の目を持つと、今回の三講演の共通点が見えるでしょうか。
私は、この研究会の事務局長ではありますが、講師の人選に関しては、「私が心折れそうな時、行き詰まった時、に声を、話を聴きたい人」という、極めてpersonalな思いが基準となっています。

  • 今回、なぜ(私も含めた)この三人だったのか?

ということも振り返り、揺すぶって見て下さい。
私の担当した講座は、私の「分(ぶ)」ですから、例によって「悩み処では悩んで下さい」という調子です。綺麗に「ノウハウ」をまとめたとしても、最大公約数は、個々人の実数に及ばないのです。これからの課題を最小公倍数で示しても、2と5の最小公倍数は10ですし、2と5と6になれば、その最小公倍数は30ですから最小値の「2」にとっては高嶺の花になりかねません。そしてこのような「比喩」も実体(実態?)の何を表わしているのかは怪しいもの。Skepticalな目や耳も必要です。

ライティングに関わる「ノウハウを伝授」というなら『パラグラフ・ライティング指導入門』を読んでもらうのが一番かと思います。本当に、まだお読みでない方は、今すぐにでも。
ただ、以前時折言われた「それは先生だからできる実践」 というのは、反応としてわからなくもないのですが、余り意味がないと思っています。「では、そう言うあなただからできている実践はどんなもの?」と訊かれたらなんと答えますか?

  • 「それぞれ・それなり」x「よりまし」/「そのうち」

ですから「そよそよ」くらいの歩み、進みで良いんですよ。

田地野先生が冒頭で話してくれた、京大の英語プログラム改革裏話は刺激的でした。
知と情の相互作用というか、鬩ぎ合いというか、落とし所というか、まさに「システム」の構築とは?という粋(すい)。だからこそ、粋(いき)ですよね。

個々の教師の実践も「誰でもできる実践」 の部分で、自分のリソースを浮かしておいて、ここぞという「自分ならでは」のこだわり部分に集中的に投下できることがcrucialなのでは?
自分の抱えている「実数」を最大に活かすことを阻害する要因は何?では、個々の学習者(生徒)が抱えている「実数」を最大に活かすことを阻害している要因は? そのうち、自分が教師としてコントロールできるもの(こと)は何?優先順位は? 自分自身の発表も含めそういうことを考えた一日でした。

午前のプログラム(松井分)のみ、講演資料をダウンロードできます(パスワードなし)。

この2つの内容は同じものです。
[file:tmrowing:2014Forum_Matsui_presentation 公開用.pdf]
[file:tmrowing:2014Forum_Matsui_presentation 公開用.zip]

※注※ 2019年12月現在、リンクが切れていますので、noteにファイルを再掲しています。

rivise & rewriteの際の、自己チェックリストのついた原稿用紙 (argumentation用) です。
[file:tmrowing:argument原稿用紙.pdf]

※2015年8月29日追記:生徒作品の典型例をいくつか取り上げフィードバックの文言を印刷し、比較的よく書けた作品は縮小コピーをそのまま貼りつけておき、授業で解説し、クラスで共有します。この2クラス2枚分が、両面印刷になります。
[file:tmrowing:「例」チャールズ1.jpeg]
[file:tmrowing:「例」チャールズ2.jpeg]

私のハンドアウトで使用しているフォントは、Sassoon系のフォントで、今回のはSassoon Primary Regular という英国の小学校の教材でも使われているものです。買わないとダメですけど。 http://www.sassoonfont.co.uk/fonts/sas/WhySassoon1.3.pdf

先行研究を消化吸収する基本姿勢は出典の明記だと思っています。
たとえば、こちらの過去ログでは、<is to 原形>と「不定詞」「動名詞」について持論も交えて書いていますが、そこには私の「基本文献」を記しています。なぜなら basic = primary = the first thing to do = the most important = major だから。

♪月のない夜に人の子供の形をして「それ」はやってくる♪
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20141002

「フォーラム」の午後の講座、田地野彰先生の「意味順」への質問で、組田先生が投げ掛けた「名詞句」の扱いに関連して。
私の場合はこんなドリルからスタートです。

「名詞は四角化で視覚化」 - http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20130428

巷では「後置修飾」と呼ばれるものも扱っています。中学校の公開授業などでも、見栄えがするのか、「後置修飾」はよく取り上げられるのですが、肝心の「被修飾語」である名詞そのものの考察が不十分なまま、「後ろ」のことばだけを見つめているようなものが散見されるのが気になっています。
私の指導の中心はやはり「四角=名詞」の方です。<不定詞の形容詞的用法>の指導の見直しにもご活用下さい。

「そして僕らは気づき始める」 - http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20130629

ということで、著しく検索性を低くして、普段のブログを書いているのですが、「フォーラム」でお話した内容のほとんどは、既にブログで書いていますので、「森の住人」は無理でも、「旅人」くらいにはなったつもりで、足を踏み入れてみて下さい。

昨日の高3の授業で、”Who owns English?” という2005年のNewsweekの特集を読んでいたのですが、そこで話した、”fluency” の話は、振り返って見ると、次のエントリーにある "fluency" と "accuracy" の話と同じものになっています。

碑文と秘伝 - http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20130613

とまれ、多くの方々の「集い」として、このフォーラムが「活きる」ことが私の願いです。

次の過去ログには、夏の「全国英語教育学会」徳島大会での体験を契機として、本業のrowingの「インカレ」の「見せ方」に絡めて、「山口県英語教育フォーラム」への願いが記されています。

「連」 - http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20140825

願いが届きますように。

さて、
フォーラムと並行するかのように、フランスはボルドーでは、フィギュアスケートGPシリーズの終盤戦、TEBが行われていました。

  • 祝!エレーナ・ラジオノワ選手優勝!

Le Cru du Jour: Many scenes of morning practice
http://web.icenetwork.com/news/2014/11/22/102219520/le-cru-du-jour-many-scenes-of-morning-practice?tcid=tw_share

これぞ「本家、ぐうかわ」といって良いでしょう。まさか、50歳になって「ぐうかわ」ということばを自分が使うようになるとは思いもしませんでした。
記事のことば選びも良し。
いつでもひたむきにベストを尽くし、自己ベストを超えよう、という姿勢は、彼女が「浅田真央」から学んだものなのでしょう。彼女にとって、「浅田真央」というスケーターは、競技から離れてもなお、まだまだ「先」にいる、追いつき、超えなければならない存在なのでしょうか?


フォーラム、そして懇親会、さらには二次会を終え、一夜明けてから帰宅して、録画したTEBを見ました。
フォーラムの前夜、Icenetworkのライブストリーミングは見ていたので、演技内容も結果も知ってはいましたが、女子フリーのエレーナ・ラジオノワ選手の演技を再び見て落涙。
終盤のコレオシークエンスからビールマンスピンでの笑顔は、まるで花が開くかのよう。

初戦のスケートアメリカでは、得意の3Lz(トリプルルッツ)で着氷時にフリーレッグのブレードが氷に触れるなど若干のミスがあり、さらにはLP(フリー演技)での終盤の2A(ダブルアクセル;2回転半)が2つ連続して、単調な印象を与えていましたが、今回は、見事に修正してきただけではなく、多様なTR(トランジション;要素間のつなぎの滑りやステップ)の詰め込まれた技巧派の演技で、ラフマニノフの曲にふさわしいものになってきていると思いました。しかもまだ伸び代がありますから。

  • (ぐうかわ)だけじゃない、エレーナ!

フリーの演技、そして表彰式で画面に栄えるその「青」の衣装に、ファンとしては「女王」への階段を上る彼女を想像してしまいますが、成長を急ぎすぎてはいけません。コーチのゴンチャレンコさんの「声」を大事にして「そのうち」の訪れを待って欲しいと切に願います。

本日のBGM:さよならは夜明けの夢に(ムーンライダーズ)