「連」

本業では、インカレも終わり「秋」の気配が漂い始める頃。オランダでは、世界選手権開幕。日本代表チームの更なる加速を祈っています。
戸田では、まだこの後、全日本選手権、全日本新人とあって、そこから長崎国体へと、選手、コーチには結構ハードなスケジュールです。天候(とりわけ風)に大きく左右される競技なので、それぞれの大会運営も、本当に大変。その中では、毎年決まった大会をある程度決まった時期に開催する、比較的「手順」のはっきりした「戸田」でのレース風景はこの競技の特性を考えるのに格好の材料を提供してくれます。

昨年は自分に関わる複数のイベントをこの時期に集めてインカレの視察にも行ったのだけれど、今年は前後の仕事があり、ネットで結果を見ることに。観客は例年以上に多かったようなのですが、どれだけの「ファン」を新たに獲得できたかは「?」。

そんなことを考えるきっかけとなったのが、今年の「全国英語教育学会」で訪れた徳島での光景でした。徳島といえば阿波踊り。学会の日程そのものが、阿波踊りにかからないように、設定されているくらい、多くの人が徳島県外からも訪れます。徳島初体験の私には驚くことばかり。駅前の大きな通りを中心に東西南北数カ所に「演舞場」が設置されています。私が滞在したホテルの裏手の川沿いにその舞台があり、どこぞの「連(=ダンスチーム)」と思しき人たちがリハーサルをしていました。踊りながら練り歩くと言えばいいでしょうか。そして、その練り歩く通りを囲むように、人の背丈をはるかに超えるくらいの高さまで、ベンチが組み上げられていて、通し番号が振られているのです。当然、数日前から設置をして、お祭りが終われば撤去なのではないでしょうか。年に一回、この「阿波踊り」のためにそれぞれのエリアで準備されているわけです。

翻って「戸田ボートコース」。
ゴール前の熾烈な争いを見届けるためにはラスト300m以内のエリアに陣取ることが必要です。でも、屋根付きのベンチは、ラスト100mくらいにしかありません。席数もごくわずか。しかも、その中央付近は、表彰式に備えた、大会関係者の席となっています。
ベンチの段差もほとんどなく、後ろからは艇はおろか、レーンさえほとんど見えなくなります。いきおい、皆、ベンチよりもずっと下の土手に移動します。でも、座っていたら見えません。皆、炎天下、立って観戦です。これまで、仮設スタンドを作って観客を収容しているところを見たことはありません。
「インカレ」は、大学生の大会だから、という言い訳もあり得るでしょう。かつて大学スポーツの花型だった「ラグビー」も、審判がマイクをつけたり、「見せる」ための工夫を競技をあげてしているように感じます。「見せる」ためには、水泳や陸上と違い、ボート競技の2000mという距離が問題だ、というのも理解はできます。では、駅伝ではどうしているでしょう?多くの企業を巻き込みTV中継を実現しています。

来月には「全日本選手権」が行われます。文字通りの日本一を決めるにふさわしい「舞台」を見る者への配慮は十分なされているでしょうか?昨年の東京国体の、ロープだけが張られた整地されていない、雨が降れば水たまりが広がり続ける「観客席」で、敬愛するMコーチと交わした言葉が頭から離れません。

  • 「愛がないよね」

この競技を深く愛する者の一人として、憂いもまた大きなものになります。

さて、
現任校での夏期課外講座も後半。よく、「後半戦に突入」などと形容しますが、「戦」の比喩が本当に適切で的確かは考えた方がいいなぁ、といつも思います。Johnson & Lakoffは、英語人の発想と表現で Argument is war.って比喩を整理していましたね。「そのもの」を「等価」で語るのは極めて難しいので、「要約」や「比喩」を援用するというか、比喩に逃げたり、頼ったりもするわけですが、「学び=Learning」 の比喩としては何が相応しいと捉えているのか、人「それぞれ」で異なるから、「議論」は噛み合わないことが多いのだと思います。

貯蓄
投資
建築
登山
マラソン
水泳
旅行

「あなたの学びは、貯蓄型?それとも旅行型?」とか、星占いや血液型占い程度のものだと割り切っていればいいのでしょうけれど、「思い入れ」の度が過ぎると、「鰯の頭も信心から」みたいなことになりかねません。「教義」「教条」となってくると、限りなく「宗教」に近づいてきます。「学び」に対しては敬虔でありたいとは思いますが、特定の指導者を「教祖」のように崇める姿勢からは遠いところにいたいというのが、偽らざる心境です。

今年で、第7回を迎える「山口県英語教育フォーラム」の告知を、こちらでしています。

2014年11月23日(日・祝)開催 第7回 山口県英語教育フォーラム
http://cho-shu-elt2014.g.hatena.ne.jp/tmrowing/20140813/1407895124

「参加費は無料」というのは、初回の企画時から続けています。当然、会場費や資料の印刷費、講師謝礼など「お金」はかかります。それらは「協賛金」で賄っています。一時期、「名義貸し後援」を新聞社や放送局にお願いしたこともありましたが、現在はしていません。今後どうなるかは未定です。
英語教育の学会などでは、「業界」の企業ブースが設けられ、書籍などを割引販売したりする様子をよく見ます。「協賛企業展示」ということで、その「協賛金」が大会運営費として生かされ、学会で発表する先生方の著書の販売促進にもつながる、win-winなシステムですから、それはそれで意味があることだと思っています。ただ、「山口県英語教育フォーラム」では、講師の方の書籍などを、紹介・告知・宣伝することはあっても、会場で割引販売したりすることはしていません。

10回、20回と回を重ねて、ゆくゆくは、学校や、英語教育関連の出版社でのつながりを超えて、地元のカフェやラーメン店、薬局やスーパー、花屋さんや美容院などを経営する方から、「山口県の英語教育、頑張ってよ」「今年もやるんだってね」と、応援してもらえて、さらには協賛金もいただけるような「集い」にしたい。

というのが、当初の願いでした。

「へえ〜、英語の先生の集まりがあるのか、どれどれ…」と、一般の方が覗きにくるイベントは稀でしょう。「英語教育の世界」の専門家、有識者が意見を交わし、政策に反映させることも重要です(現在の「有識者会議」のあり様は問題が多いと感じています)が、英語教師や業界関係者の視点で、とかく「英語教育のソトにいる人」と捉えがちな一般の方たちが、当事者意識を持てるような、世論への働きかけというのが、これからもっと重要になるように感じています。

「英語教育」が世間に対して開かれていること、そして、

  • 君と世間との戦いでは世間を支援せよ。

という「カフカ的」な視座で「英語教師としての自分の在り方」を捉え直すことは可能か、と思ってこれまでの6回を企画してきました(このカフカでも「戦い」なんですね)。

文科省の英語教育政策や官邸主導の教育改革の流れにただ竿をさすのではなく、諸外国の事例をただ真似るのでもなく、「カリスマ教師」の指導法の伝達講習会でもない、「英語教師としての自らの視座」を参加者だけでなく、講師として講演する方ご自身にも、揺すぶってもらえるような講師陣と講演内容を、とお願いして来ました。

今年で、第7回。
例年、70名から100名が参加してくれています。内訳としては、高校の先生が6割強、中学校の先生が3割弱。その他、大学の先生や、その先生のもとで学び研究されている大学生・大学院生、出版関係者となっています。県内の参加者が約8割。県外からの参加者も2割くらいいらっしゃいます。ここ何回かは、地元の国立大学で英語教育(教科教育法)を担当されている先生と、その教え子の方の参加もあり、徐々に地元での認知も高まってきたのかな、と感じています。

東京や千葉など首都圏からはるばる参加して下さる方も数名いらっしゃいます。
この秋から、スターフライヤーの羽田・宇部山口便が就航します。航空便の選択肢も増えました。12月中旬までは、スターフライヤー就航記念での割引もあると聞いています。東日本にお住まいの方で「山口は遠い」「連泊しようと思ったら海外に行ける」などと言って敬遠されていた方にも、ご検討いただければと思います。

おいでませ山口へ。

本日のBGM: come together (Paul Weller and Kelly Jones)