より良い英語で、より良い教材、そして…。

tmrowing2014-01-26

怒涛の一週間でした。
「センター試験」が終わってすぐに、自分のところの高校入試。
筆記試験に面接、採点と大童。
入試が終わったところで、今日は朝から高1の模擬試験の監督。
やっと一息、というところです。

前回のエントリーで「センター試験」の雑感を書いていたのですが、何も今年になって「大学入試批評」を思い立って書いたわけではありません。
これまでにも、

マニア vs. オタク
http://t.co/SgpLnluR3z
少々古いエントリーですが、2009年のセンター試験。「語義」をしつこく扱っています。この日の前後のエントリーも併せてお読みいただけると幸せます。

酸いも甘いも
http://t.co/kS2vphvGEn
センター試験の出題・作問に関する寸評は、今年だけでなく以前にも書いています。こちらは2010年。私の基本スタンスも表明済みです。辛いとか甘いとか下らない評価はしておりません。

寒中お見舞い申し上げます
http://t.co/5XLRuy6czx
こちらは2011年のセンター試験の出題・作問を取り上げた記事。

『ゲレンデがとけるほど恋したい』
http://t.co/1okgxm3WEL
この時のエントリーでは2012年のセンター試験を題材に、高2生への「対策」で何をしているかを書いていました。

”O Captain! My Captain!”
http://t.co/2VlgEkU8Ig
去年のセンター試験でも、出題・作問で気になる部分だけ取り上げて私のコメントをつけています。


とまあ、結構な分量で、様々な観点から書いています。今は大学の先生をされているF先生が、予備校講師だった頃、ご自身のブログで的確な「センター試験」の講評をされていたこともあり、情報交換的な意味合いも兼ね、「解法」ではなく、自分なりの視点と立脚点で書いていました。現行の「センター入試英語問題」の問題点をあぶり出すことはできていると思います。

メディアで「センター試験」が取りざたされる時というのは、大きく分けて

受験生に向けた「対策」「解法」
前年度までとの「平均点」の比較

くらいなのですね。現に、試験から一週間経った今、センター試験の「中身」について何か建設的な批評や提言をしている人の声はネット上ではほとんど聞かれません。
「大学入試制度」を変えることで、高校英語教育を劇的に変えようなどという方たちが多数いらっしゃるようなのですが、「大学入試」というものは、受験者が50万を超すセンター試験でさえ、日本全国の高校生の半数には、全く関係ないのだ、という「事実」をしっかりと認識しなければなりません。「英語」だけをとってみても、大学入試を変えれば高校の教育が変わる、などという議論は、文字通り「話し半分」で聞くしかないのです。制度の変更が一体、誰の「利」になる議論なのか、要注意です。

センター試験の「中身」の話に戻しましょう。
今年の英語の読解問題のうち、第6問の英文は難儀した、という趣旨の話は前回書きました。「読みづらくて困った」というのが正直な感想です。
高2の生徒が「リアルチャレンジ」なるものを地元の予備校で受けてきたのですが、解説はその場であるわけではなく、申し込みをしておくと後日DVDを見に行ける、という何とも面倒な仕組みとなっているので、私の方で解説をすることになりました。

解説するに当たって、何でこんな文章になったのか、まずは筆者の気持ちに立とうと自分でノートに手書きしてみました。
それが、本日のエントリー冒頭の写真です。IMG_2301.JPG 直

東京にいた頃も、「受験生」の指導に関わらず、「教材」の読解用素材文は、短いものも長いものも、教材研究の前に必ず自分で全文を手書きしていました。
「英語 I」などや国立の個別試験などで、一つの文章で600語とか800語ならまだいいのですが、慶応のSFCの読解問題などになると1500語とか2000語弱になり、手書きではかなり疲れます。

書き始めは「視写」ですが、途中からは筆者・作者になったつもりで、展開、次の文へのつながりなどを思い浮かべながら原文との照らし合わせをして行くわけです。すると、

  • えーっ、なぜ、そこでその語を選ぶかなぁ?

とか、

  • うーん、流石。そのフレーズは今の私には全く思いつかない。脱帽。

とか、自分の筆力が揺すぶられて鍛えられるだけでなく、「良い文章」を見極める「眼」も養われるわけです。

今回、自分で問題文を書いて見て、名詞句の使い方に少々クセがある筆者だな、という印象を持ちました。ただ、語彙選択以上に気になったのは、段落内の文と文のつながり、結束性が緩いことと、文章全体を貫く主題に対する、各段落の役割が明確に打ち出せていないことでした。

過去ログで、「多読教材」に関して、「ライター問題」を指摘していましたが、教材に加えて、テスト問題の執筆を担当する「アイテムライター」に関しても「優秀」で「リーズナブルな対価」のライターの養成、確保は重大な問題だと思っています。

さて、「呟き」の方でも頻りに書いていたことをこちらでも。
「進学校」と称される高校の英語の先生はセンター試験が終わり、これから英作文の添削などでさぞ忙しいことでしょう。現役生は最後の伸びがスゴイ、と毎年思うかもしれません。でも、もし直前ではなく4月から「ライティング」を教えていたら、読解も文法も、もっと伸びていた可能性はありませんか?

個別入試までのあと1ヶ月弱では、「パラグラフ・ライティング」の基本からやっている余裕はない、とばかりに、過去問の模範解答を「どこかから」調達してきて、その英文を暗唱させる、というような「対策」に終始しないことを願って止みません。

今年度から始まった高校の新課程の科目には「英語表現」というものが開設されています。その科目は生きているでしょうか?活かされているでしょうか?
新課程1期生が巣立って行く2年後には、そういった悩みや苦労をする受験生や担当教員は少なくなっているでしょうか?


本日のBGM:いい言葉ちょうだい(Fishmans with 原田郁子)